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30話
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それから数分後、
『これでどうだ?』
ダークエルフは巨大な生物の死体を持ってきた。ぱっと見はただの巨大なカメレオンである。
「これは……?」
『私の先代のダンジョンボスだ。お前が欲しがっているのはこれだろう?』
「先代……?」
ダンジョンボスに代替わりとかあるのか?
『ああ。ダンジョンボスになる資格がある者がボスを倒すとボスとして成り替わることが出来るんだ。お前もダンジョンを攻略した時に選択肢が現れたであろう?』
「確かに……」
杏奈さんとか他の人には出なくて、自分にだけ出たってのは俺が資格を持っていたってことなんだ。
「ちなみに、ダンジョンボスになると何か恩恵があるんですか?」
『そうだな、分かりやすいものだと死ななくなることか。厳密に言えば死んでも生き返るというのが正しいが』
「死んでも生き返る?」
『ああ。ダンジョンボスは何度倒されようと新しく生まれているだろう?あれはダンジョンがボスを復活させているんだ』
「確かにそれはメリットなんですかね」
死ねなくなることがデメリットといえばデメリットだけど。
『そしてもう一つは、代替わりさせられた際にダンジョンの外へ出る選択肢を取れること。基本的に我々はダンジョンの外に出られないからな』
「え!?」
ってことはあのカメレオンは外に……?
『大丈夫だ。あのカメレオンは既にダンジョンの中に残ることを選択したからな。まあ、元ダンジョンボスがそこら辺を徘徊しているというのは危険な話かもしれないがな』
「良かった……」
Dランクダンジョンのボスが外に出ていたらダンジョン崩壊なんて話にならないレベルの大惨事になるところだった。
『ちなみに、代償としてダンジョンのボスでいる間は技術を磨く以外の方法では強くなれないんだがな』
「そうなんですね」
ダンジョン内の一般モンスター同士では強さに結構な個体差があるのに、ダンジョンボスに関しては一切変わらないのはそういう事だったのか。
『残念ながらな。だが私はそれでも外に出たいんだ』
「じゃあそのカメレオンを待っているんですか?」
『ああ。そしてわざと倒されて外に出る権利を獲得する。まあ、その間にカメレオンが人間に倒されている可能性もあるがな』
「倒されていたらどうなるんですか?」
『他のモンスターが勇気を出して私に挑んでくるのを待つのみだ』
「一応出られるんですね」
『時間はかかるだろうがな。そうだ、これを受け取ってはくれないか?』
そう言ってダークエルフはポケットから宝石のようなものを取り出した。
「これは?」
『発信石だ。今後私がダンジョンから出られるようになった時、最初にお前のところに向かえるように持っていて欲しい。外の世界の住人に当てがないからな』
「そういうことなら構いませんよ。いつでも頼ってください」
『ああ、助かる』
「そうだ、名前を聞いていませんでしたね。俺は如月飛鳥です」
『私はイザベル・ラ・ディアブロだ』
「イザベルさん、ですね。ではそろそろ帰りますね」
『またな、キサラギ』
「はい、また会いましょう」
俺は入口からボス部屋を出て、そのままダンジョンの入り口から外に出た。
そのまま俺は役所に素材を提出し、無事にCランクになることが出来た。
イザベルさんの件についてはいずれバレる事ではあるだろうけど、何も言わないことにした。
今思えば、イザベルさんは最初から人間を殺す気は無かっただろうし。
最低でもCランク以上の実力があるイザベルさんが、10mもない距離から弓矢を外すわけがない。
だから大ごとになることは無いだろうと思う。いずれダンジョンのモンスターに討伐されて外に出てきてまた会えると思う。
とにかくBランクに昇格しないと。
そして迎えた最終日、俺はBランクに昇格するべくC+ダンジョンへと来ていた。
C+ダンジョンとはその名の通り、Cランクの中では強いがBランクに届かないダンジョンである。
Bランクへの昇格条件は、単独でC+ダンジョンのボスを討伐すること。
正直今までの昇格条件よりも遥かに厳しい。今までは複数人で条件を満たすことも可能だったのに、B級は単独でクリアしなければならないからだ。
実際Bランク相当のレベルの人でもこの昇格条件を達成できず、Cランクのままという人もいる。
一応優秀な探索者を失いたくないという理由があるのだが、にしても厳しすぎると思う。せめて普通のCランクダンジョンを対象にしても良いと思う。
「じゃあ、行きましょうか」
ただ、そんな文句は言っていられない。もう試験は始まってしまうのだから。
「はい」
俺は試験官の方の後ろについてダンジョンに入った。
Bランクへの昇格に関しては、試験官としてAランク以上の探索者が一名一緒に来てくれることになっている。
理由は二つ。不正防止と安全確保のためだ。
複数人での討伐ならともかく、単独討伐を映像撮影や自己申告のような各自に任せる形にしてしまうといくらでも不正が出来る。これでは試験の意味が無い。
そして、昇級目的で本当に単独でダンジョンボスに挑んで実力が足りなかった場合、ボスから逃げ損ねたら冗談抜きで死んでしまう。
昇級条件を簡単にして死者を出したくないという目的で試験を厳しくしているのに、その試験のせいで死者が出るのは本末転倒だ。
というわけで今回は安藤さんというAランクの男性探索者の方と共にダンジョンに潜ることになっている。
安藤さんは魔法剣士らしく、剣を持っているのに魔法使いが良く着るローブを身にまとっている。
「敵が居ました。少々下がってください」
「はい」
ボス部屋に向かう道中、敵が現れたので安藤さんが戦ってくれることに。ボス以外は試験とは関係ないからね。
敵はグレートオーク一体。体は3mほどで、10mもあったダイヤモンドメイルと比べるとかなり小さいが、異常なまでに筋肉が発達しており、攻撃力だけで言えばBランクダンジョンのボスであるダイヤモンドメイルに迫る勢いである。
そんな敵に対し安藤さんは真正面から剣を構えた。
そして安藤さんは魔法を使ったのか、全身からバチバチと電気が迸る。
「はっ!」
安藤さんがそう掛け声をかけた瞬間、目にもとまらぬスピードでオークに急接近し、いともたやすくオークを切り刻んだ。
「では、進みましょう」
「はい」
Aランクだよね?滅茶苦茶実力離れてませんか?今の俺とか杏奈さんが全力を出したところで絶対にあのスピードで動けないんですが。
結構スピードには自信があったのに……
『これでどうだ?』
ダークエルフは巨大な生物の死体を持ってきた。ぱっと見はただの巨大なカメレオンである。
「これは……?」
『私の先代のダンジョンボスだ。お前が欲しがっているのはこれだろう?』
「先代……?」
ダンジョンボスに代替わりとかあるのか?
『ああ。ダンジョンボスになる資格がある者がボスを倒すとボスとして成り替わることが出来るんだ。お前もダンジョンを攻略した時に選択肢が現れたであろう?』
「確かに……」
杏奈さんとか他の人には出なくて、自分にだけ出たってのは俺が資格を持っていたってことなんだ。
「ちなみに、ダンジョンボスになると何か恩恵があるんですか?」
『そうだな、分かりやすいものだと死ななくなることか。厳密に言えば死んでも生き返るというのが正しいが』
「死んでも生き返る?」
『ああ。ダンジョンボスは何度倒されようと新しく生まれているだろう?あれはダンジョンがボスを復活させているんだ』
「確かにそれはメリットなんですかね」
死ねなくなることがデメリットといえばデメリットだけど。
『そしてもう一つは、代替わりさせられた際にダンジョンの外へ出る選択肢を取れること。基本的に我々はダンジョンの外に出られないからな』
「え!?」
ってことはあのカメレオンは外に……?
『大丈夫だ。あのカメレオンは既にダンジョンの中に残ることを選択したからな。まあ、元ダンジョンボスがそこら辺を徘徊しているというのは危険な話かもしれないがな』
「良かった……」
Dランクダンジョンのボスが外に出ていたらダンジョン崩壊なんて話にならないレベルの大惨事になるところだった。
『ちなみに、代償としてダンジョンのボスでいる間は技術を磨く以外の方法では強くなれないんだがな』
「そうなんですね」
ダンジョン内の一般モンスター同士では強さに結構な個体差があるのに、ダンジョンボスに関しては一切変わらないのはそういう事だったのか。
『残念ながらな。だが私はそれでも外に出たいんだ』
「じゃあそのカメレオンを待っているんですか?」
『ああ。そしてわざと倒されて外に出る権利を獲得する。まあ、その間にカメレオンが人間に倒されている可能性もあるがな』
「倒されていたらどうなるんですか?」
『他のモンスターが勇気を出して私に挑んでくるのを待つのみだ』
「一応出られるんですね」
『時間はかかるだろうがな。そうだ、これを受け取ってはくれないか?』
そう言ってダークエルフはポケットから宝石のようなものを取り出した。
「これは?」
『発信石だ。今後私がダンジョンから出られるようになった時、最初にお前のところに向かえるように持っていて欲しい。外の世界の住人に当てがないからな』
「そういうことなら構いませんよ。いつでも頼ってください」
『ああ、助かる』
「そうだ、名前を聞いていませんでしたね。俺は如月飛鳥です」
『私はイザベル・ラ・ディアブロだ』
「イザベルさん、ですね。ではそろそろ帰りますね」
『またな、キサラギ』
「はい、また会いましょう」
俺は入口からボス部屋を出て、そのままダンジョンの入り口から外に出た。
そのまま俺は役所に素材を提出し、無事にCランクになることが出来た。
イザベルさんの件についてはいずれバレる事ではあるだろうけど、何も言わないことにした。
今思えば、イザベルさんは最初から人間を殺す気は無かっただろうし。
最低でもCランク以上の実力があるイザベルさんが、10mもない距離から弓矢を外すわけがない。
だから大ごとになることは無いだろうと思う。いずれダンジョンのモンスターに討伐されて外に出てきてまた会えると思う。
とにかくBランクに昇格しないと。
そして迎えた最終日、俺はBランクに昇格するべくC+ダンジョンへと来ていた。
C+ダンジョンとはその名の通り、Cランクの中では強いがBランクに届かないダンジョンである。
Bランクへの昇格条件は、単独でC+ダンジョンのボスを討伐すること。
正直今までの昇格条件よりも遥かに厳しい。今までは複数人で条件を満たすことも可能だったのに、B級は単独でクリアしなければならないからだ。
実際Bランク相当のレベルの人でもこの昇格条件を達成できず、Cランクのままという人もいる。
一応優秀な探索者を失いたくないという理由があるのだが、にしても厳しすぎると思う。せめて普通のCランクダンジョンを対象にしても良いと思う。
「じゃあ、行きましょうか」
ただ、そんな文句は言っていられない。もう試験は始まってしまうのだから。
「はい」
俺は試験官の方の後ろについてダンジョンに入った。
Bランクへの昇格に関しては、試験官としてAランク以上の探索者が一名一緒に来てくれることになっている。
理由は二つ。不正防止と安全確保のためだ。
複数人での討伐ならともかく、単独討伐を映像撮影や自己申告のような各自に任せる形にしてしまうといくらでも不正が出来る。これでは試験の意味が無い。
そして、昇級目的で本当に単独でダンジョンボスに挑んで実力が足りなかった場合、ボスから逃げ損ねたら冗談抜きで死んでしまう。
昇級条件を簡単にして死者を出したくないという目的で試験を厳しくしているのに、その試験のせいで死者が出るのは本末転倒だ。
というわけで今回は安藤さんというAランクの男性探索者の方と共にダンジョンに潜ることになっている。
安藤さんは魔法剣士らしく、剣を持っているのに魔法使いが良く着るローブを身にまとっている。
「敵が居ました。少々下がってください」
「はい」
ボス部屋に向かう道中、敵が現れたので安藤さんが戦ってくれることに。ボス以外は試験とは関係ないからね。
敵はグレートオーク一体。体は3mほどで、10mもあったダイヤモンドメイルと比べるとかなり小さいが、異常なまでに筋肉が発達しており、攻撃力だけで言えばBランクダンジョンのボスであるダイヤモンドメイルに迫る勢いである。
そんな敵に対し安藤さんは真正面から剣を構えた。
そして安藤さんは魔法を使ったのか、全身からバチバチと電気が迸る。
「はっ!」
安藤さんがそう掛け声をかけた瞬間、目にもとまらぬスピードでオークに急接近し、いともたやすくオークを切り刻んだ。
「では、進みましょう」
「はい」
Aランクだよね?滅茶苦茶実力離れてませんか?今の俺とか杏奈さんが全力を出したところで絶対にあのスピードで動けないんですが。
結構スピードには自信があったのに……
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