~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A

文字の大きさ
上 下
29 / 87

29話

しおりを挟む
 ダンジョンボスの部屋に辿り着くと、案の定ボスを倒すために待機している人たちが扉の前で並んでいた。

「3番目か。ってことは2時間くらい待たされるのかな」

 ここのダンジョンボスはかなり防御力が高いらしく、攻撃特化のチームでもなかなか倒せないと聞く。

 その分攻撃力はかなり低く、比較的安全に戦えるので確実にダンジョンボスを倒したい探索者はここを選ぶのだとか。

 というわけで堅実な探索者しか基本的に集まらないので、一人でダンジョンボスに挑むのは無謀だとか、俺の恰好が軽装すぎて探索者を舐めているのかと突っかかってくる威勢の良い探索者は誰一人として居なかった。


「よし、行こうか」

 そして入った2分後、ダンジョンボスは倒れた。普通に2パンでした。




「こっちがメインイベントだね」

 先ほどのダンジョンから出た後、本命の国指定のダンジョンにやってきていた。

「入ろう」

 そしてダンジョンに足を踏み入れると、視界がぐにゃりと曲がり、前が見えなくなった。

「ふう」

 それから数秒後、視界が安定して前が見えるようになった。

 様子を確認するために周囲を見渡してみるが、先ほど入ってきたばかりの入り口は見当たらない。四方どこを見ても森が広がるだけだ。

「これがランダムダンジョンね」

 ランダムダンジョン。それはダンジョンの入り口に足を踏み入れた瞬間、ダンジョンのどこかに飛ばされる仕様のダンジョンだ。

 基本的にAランク以上のダンジョンが持っている特性ではあるが、時折ここのように低いランクのダンジョンでもこの特性を持って生まれることがある。

 ちなみに国指定のDランクダンジョンは全てこの性質を持ち合わせている。つまるところ、探索者に早い段階でランダムダンジョンに慣れておいて欲しいという意図が込められているというわけだ。

 実際、それ以外の難易度は他のDランクダンジョンと変わらないし。

「とりあえず現在位置を確認しようか」

 俺はスマホの地図と周囲の環境を比較しつつ、現在位置を探る。

 初手森の中という一番現在位置を確認しにくい場所に出てしまったので、とりあえず脱出するべく適当な方向にまっすぐ進むことにした。

 そして走り始めると間もなく、

『立ち去れ……!』

 という声と共に俺にめがけて弓矢が飛んできた。

「うわっ!」

 その声に気づいたときには弓矢は頭のすぐ横を通り過ぎていた。

「何するんですか!」

 単なる嫌がらせにしても度が過ぎている。今回は当たらなかったから良いものの、危うく人死にが出るところだったんだぞ。

『立ち去れ……!』

 弓矢が飛んできた方向に対して文句を言うも、普通に無視されて攻撃を再開してきた。

「立ち去れってどこにですか!こっちは入った瞬間にここなんですよ!」

 流石に二回目なのですぐに気づいて事前に避けられたけど、これは怒らざるを得ない。

『貴様、私の言葉が分かるのか……!』

 すると、その声の主は俺が内容を理解していることに驚いているようだった。

「そりゃあ日本語で話してきているんだから分かりますよ!!」

 変な魔法を使っているせいなのか声が反響して聞こえるけれど、それ以外はただの日本語である。

『日本語……?なるほど、貴様にはそう聞こえるのか』

「とにかく出てきてくださいよ」

『……それもそうだな』

 声の主はそう言うと、目の前にあった木から降りてきた。全く気付かなかったが、意外と近い所に居たらしい。

「えっ……!?」

 そして現れたのは純日本人……ではなく褐色肌の女性だった。

 これだけなら日本を拠点にしている外国人と考えられたのだが、彼女は耳が尖っていたのだ。

 それはまるでエルフのようだった。

『なんだ、私の事を人間だと思っていたのか?』

「そりゃそうですよ。日本語で話しかけてきたんですから」

『残念だったな。私はダークエルフだ』

「ダークエルフ?なら何で……?」

 ダンジョンのモンスターとは、相手がたとえ人間並みの知性を持っていたとしても言葉を交わすことは不可能だとされている。

 理由は単純で、相手が地球の言語を知らないからだ。

 しかし、今目の前に居るダークエルフはこちらの言葉を完全に理解している。

『それは……そうか、なるほど。いや、そうだな。恐らくお前が魔法に対する耐性が低かった事が原因だろう』

「耐性が低い……?」

 確かに低いけどさ。魔法に関連するスキルは全く持っていないから。でも何の関係が……?

『ああ。私は話すときは常に言語魔法という、お互いの言語が分からなくても意思疎通が可能になる魔法を使用している。しかし人間は無意識に私の魔法に抵抗しているから効かないのだ。だが、お前は魔法に対する抵抗力がここに来る人間にしては異常に低かった。だから魔法が通じ、意思疎通が出来たのだ』

「そうなんですか。ということは他の人も抵抗を抑えれば意思疎通が出来るってことですか?」

『いや、無理だ。いくら抑えてもお前レベルの抵抗力まで抑えることは出来ないからな』

「そんなに低いんですか……」

『ああ。一般的な赤子レベルだ』

 いくらスキルで強化していないと言っても、そんなことある?

『まあ、そんなことはどうでも良い。とりあえずここから出て行ってくれ。私はゆっくりしたいんだ』

「と言われましても。突然森のど真ん中に飛ばされたのでどこに行けばいいのか分かんないんですよ」

 恐らくここだろうという当てはあるし、どこかにまっすぐ進めば出られることはしっている。

 しかし、どうせ追い出されるならどの方面に進めば下の階層にすぐ降りられるか聞いておいた方が得だよね。

『どうして分からないんだ。自身で扉を開いてあちら側から入ってきたのではないのか?』

 ダークエルフは困惑した様子で俺の後ろを指さしていた。

「扉ってなんですか?ここ第2層ですよね?」

 このダンジョンはボスの階層含めて6階層で出来ているのだが、森があるのは第2層と第6層のボス部屋のみ。

 ランダムダンジョンでボス部屋に飛ばされることは無いので、今いるのは第2層というわけだ。扉なんてあるわけがない。

『何を言っているんだ。ここは第6層。ダンジョンボスの部屋だぞ』

「え?」

『ん?』

「ってことは……?」

『私がこのダンジョンのボスだ』

「えええええ!?!?!?」

 今話しているこの人ってダンジョンボスなんですか!?!?!?

『本当にボス部屋だとは気づいていなかったらしいな』

「えっと、そうですね」

『なるほどな、でどうするんだ?』

「ダンジョンボスを倒して素材を持って帰るってのが目的だったんですけど、流石に……」

 最初は弓矢で攻撃されていたとはいえ、今の今まで仲良く談笑していた相手を殺すのは流石に気が引ける。

『そうか、確かに私もお前を殺すのは嫌だな。私としても久々に話すことが出来た人型の生物だからな。というわけで少し待っていろ』

 そういってダークエルフはどこかに去っていった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

スキルは見るだけ簡単入手! ~ローグの冒険譚~

夜夢
ファンタジー
剣と魔法の世界に生まれた主人公は、子供の頃から何の取り柄もない平凡な村人だった。 盗賊が村を襲うまでは…。 成長したある日、狩りに出掛けた森で不思議な子供と出会った。助けてあげると、不思議な子供からこれまた不思議な力を貰った。 不思議な力を貰った主人公は、両親と親友を救う旅に出ることにした。 王道ファンタジー物語。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

処理中です...