~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A

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21話

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「ほら、殴りなさい」

「了解!」

「こっちも」

「はい!!」

「遅いわ、来なさい!」

「分かってますって!」

 基本的に杏奈さんが攻撃を引き付けて、その隙に俺が一発入れて倒すというスタイルだ。

 一人で戦っていた時は一撃で倒すことは出来なかったのだが、杏奈さんが戦闘に加わる段階で倒し方を教えてくれたお陰で出来るようになった。

 鎧の中心側を殴るのではなく、鎧の腕と胴体を切り離すようなイメージで殴れば良いらしい。

 強さを見る目的があるとは言ってもさ、一人で戦う前に弱点を教えてほしかったよ。


 無駄な様子見をする必要が無く、敵も一撃で倒せてしまうのであっという間にダンジョン最下層にあるボス部屋手前までたどり着いてしまった。

「ここのボスはダイヤモンドメイル。とにかく大きくて硬いから拳を傷めないように全力で殴りなさい」

「矛盾しかないよね」

 全力で硬いものを殴ったら当然拳を傷めるものなんですが。

「とにかく気を付けなさいよ」

「分かったよ」

 指示にあまり納得はいかないが、そもそも殴る蹴る以外の選択肢があまり……

 あれがあったわ。


 杏奈さんがボス部屋への扉を開くと、中央でダイヤモンドメイルが膝をついて待機していた。

 ダイヤモンドメイルはその名の通りダイヤモンドで出来た鎧を身にまとっており、ギラギラと光を反射している。

 シルエットに関してはこれまでの鎧と大差無いが、身長は10mを超えており、これまでの弱点だった腕と胴体部分は綺麗にくっついているので分離させられるイメージが湧かない。

 加えて、武器を持っておらず素手の状態だった。

「ねえ杏奈さん」

「何かしら?」

「見間違いじゃなければさ、あれってダイヤモンドで出来たゴーレムじゃないかな?」

 何をどう見てもゴーレムの特徴でしかない。

 正しくはダイヤモンドゴーレムじゃないだろうか。

「よく見なさい。顔と足は鎧っぽいでしょう」

「確かに」

 言われてみればそこは鎧っぽかった。

「ダイヤモンドの鎧を身に着けているゴーレム。だからダイヤモンドメイルだって姉が言っていたわ」

「名付け親って麗奈さんなんだ」

「そうよ。というかBランクのダンジョンボスは大抵姉が最初に倒して姉が名づけをしているわ」

「そうなんだ……」

「だからさっさとBランクダンジョンから抜け出したいのよ」

「なるほどね」

「そんな無駄話をしている間にあいつが動き出したわ」
「ほんとだ」

 ダイヤモンドメイルは俺たちが入ってきたことにようやく気づいたらしく、ゆっくりと立ち上がっていた。

「じゃあ早速私が気を引くわ。好きなところから攻撃しなさい」

「オッケー」


 というわけで杏奈さんが正面に立ち、注意を引くべく攻撃を始めた。

 見た感じ攻撃は効いていないようだが、煩わしいと考えたのかゆっくりと杏奈さんに向けて攻撃を始めた。

 その隙に俺はダイヤモンドメイルの背後に回る。

 そして俺は攻撃を仕掛けるべく右足に急接近したが、

「!!!!!」

 突然ダイヤモンドメイルが右足を上げた。俺はそれによって生まれた風圧によって吹き飛ばされた。

 体勢を立て直して再度攻撃に向かおうとする間に、右足は杏奈さんのいる方向へと振り下ろされた。

 鼓膜が破れそうな程の爆音が鳴り響いたが、攻撃速度自体はさほど早く無かったので杏奈さんは軽く回避できていた。

「とりあえずこっちかな」

 そのまま右足の方へ向かうとダイヤモンドメイルの視界に入ってしまう恐れがあるので左足の方へと向かう。

 そして今度は左足に攻撃をしかけようと近づいた瞬間、今度は左足を上げてきたせいで再び吹き飛ばされた。

「まさか、見えている?いや、まさかね」

 杏奈さんへの攻撃に集中している中、首を下に動かさないと見えない位置にいる小さな男の姿なんて補足できるわけがない。

 何回かやれば確実に当たるだろう。偶然だよ偶然。


 しかし、似たようなタイミングで足を動かされ続け、結果的に攻撃を当てることが叶わなかった。

「まだかしら??」

 一人手間取っていると、ダイヤモンドメイルの攻撃を避け続けている杏奈さんが大声で聞いてきた。

「何故か攻撃を避けられているんだよ!!死角のはずなのに!」

 流石に何度も避けられると偶然で片付けられない。確実に分かっていて避けてきている。

 分かっているのになぜこちらを攻撃してこないのかは分からないが、攻撃を確認する手段が存在するはずである。

「早くしなさい!避け続けるのも楽ではないのよ!」

「分かっているよ!」

 しかし、このままでは攻撃を当てられる未来が見えない。

 そう判断したので一旦距離を取ることにした。

 ダイヤモンドメイルは俺には一切目もくれることなく、終始杏奈さんだけを攻撃し続けている。

 攻撃速度が遅すぎるので当たってはいないが、どの攻撃も正面に立つ杏奈さんを的確に狙っている。

 つまり杏奈さんの方向を常にとらえているということだ。普通ならそんな状況で真逆の位置にいる俺の攻撃を見分けられるわけがない。

 だって攻撃の際に足元を見下ろして……

 下を見ていない?よく見るとずっと顔は杏奈さんの方ではなく正面を向いていた。

 ということは目は頭ではなく別の場所にある?

「杏奈さん!ダイヤモンドメイルの周囲を回って欲しい!」

「周囲を?」

「うん!遠回りでも構わないから!」

「とりあえずやってみるわ!」

 杏奈さんはそう答えた後、周囲をぐるぐる回り始めた。

 ダイヤモンドメイルはそれを見て体の向きを変えることは無く、足だけを動かして杏奈さんを攻撃しようとしていた。

「やっぱり……!」

 ダイヤモンドメイルは完全に俺の攻撃は見えていたのだ。

 足元に居た俺の攻撃だけでなく、少し離れた位置で攻撃を引き付けていた杏奈さんの事も見えていた。

 つまり目は顔の位置ではなく別の場所にある。それもかなり低い位置に。

 どこかから定点カメラのような形で見ている可能性も否めないが、その場合俺たちの事がどうやっても見えない位置があるはずである。

 そう考えると狙うは一択。

「ふんっ!!!」

 俺はゴーレムが居る側とは反対側の壁に向かって全力で跳躍し、天井付近の壁を蹴ってゴーレムの肩へと着地した。

「予想通り!」

 人型なのに上側の視界は無いらしく、俺が着地したことへの反応は一切見られない。今がチャンスだ。

「はっ!!!」

 俺はゴーレムの大きな首を持ち、全力で引っ張る。

「うぐぐぐぐぐぐぐ!!!!」

 ダイヤモンドの名を冠しているだけあって首も異常に硬く、まったくびくともしなかった。

 流石の攻撃力でも上手くは行かないか……

 しかし、足を持って投げることが叶わない以上頭を引きちぎる以外に方法は無い。

 ここが正念場だと信じ、再度全力で力を入れた。
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