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16話
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「えっ、ここ!?」
「何でもあるからスキルを獲得するには最適よ」
そう言って連れてこられたのはギルド『師走の先』の研究所だった。
ただの1ギルドの研究所の筈だが、そうは思えない位には広そうだ。大学二つくらいなら余裕で収まるんじゃないかな。
「さっきギルド辞めたよね?」
なんて思考はどうでもいい。何故ここに来ちゃっているんだ。もう外部の人間でしょあなた。
「ええ。辞めたわ。でもそれと何の関係が?」
「いや、ギルドの関係者以外は利用しちゃいけないでしょ」
これはどの世界でも共通の常識だと思うんですが。
「麗奈姉が良いって言っているから問題無いわ」
「ええ……」
「他にも何か言いたそうな表情をしているわね」
「わざわざこのギルドを辞めて自分でギルドを作る理由って優秀なお姉さんへの対抗意識があるからじゃないの?」
「当然そうだけど」
「じゃあ猶更この施設を使うのはどうなの?」
姉には頼らないとか、自分は独自の方法で進むから必要無いとかさ……
「使えるものは使った方が良いじゃない。何を言っているの」
「ええ……」
多分プライドで独立したっぽいのに理性的すぎる意見だ……
最早何故独立したのか分かんないよこの人。それなら二人仲良く『師走の先』に居て姉を超えてから独立で良かったじゃないですか。
「とにかく、スキルを獲得しに行くわよ」
「う、うん……」
まあ、当の本人が良いって言うのなら問題無いか……
それから数分歩き、スキル研究エリアと呼ばれる場所に到達した。
そのまま俺たちは中央にある巨大な施設に入り、正面にあったエレベーターで20階へと上がった。
「蓮見!居るわよね!!」
そしてエレベーターから降りるなり、杏奈さんは鼓膜が破れそうな声量でそう叫んだ。加減してください。
「そんな大声で叫んだら迷惑だよ……」
その蓮見って人以外にも研究者は居るんだろうし。びっくりして手を止めちゃうよ。
「これでも足りない位よ。ちょっと待ってみようかしら」
そして待つこと1分。誰の何の反応も無かった、
「でしょ?」
「そこまで熱中しているって凄いね……」
やっぱり研究者はそれくらいの集中力が無いとやっていけないんだな。
「違うわよ。単に寝ているだけよ」
「今20時なんだけど」
成人した方が寝るにしては早すぎるし、ここは家じゃないですよね。
「昼寝中よ」
「20時は昼じゃないんだけど」
何がどうあろうとも全人類が20時は夜って答えますが。
「15時から寝ているから昼寝よ」
「5時間睡眠は昼寝じゃないですね」
昼寝ってのは1時間とか2時間とかの短時間の睡眠を指すわけで。それはただの睡眠なんですよ。こっちも全人類が否定しますね。
「私もそう思うわ」
「突然こっち側に来ないでください」
「と言われても、私は最初からそっち側よ」
じゃあ今俺は誰にツッコミを入れていたんですか。
「全部蓮見が言っていた事よ」
「大丈夫なんですかその人」
まだ会ったことも無いし、性別すら分からないけど、もうその人が駄目な人にしか思えない。
「大丈夫では無いわね。だからここにずっと居るわけだし」
「なるほど」
よく考えればスキルは全く役に立たないという風潮の中でスキルを研究している人がまともなわけが無かった。
「とりあえず直接叩き起こしに行くわよ」
「うん」
そして研究室の中を進み、蓮見さんが寝ているであろう部屋の前に辿り着いた。
「やたらとファンシーな装飾ですね」
ここに辿り着くまでの研究室はよくある無機質な空間だったけれど、この部屋の扉だけは全然違った。
扉は全部ピンクに塗装されており、造花が敷き詰められている。そして他の扉であれば部屋番号の書かれていたはずの看板には代わりにラメ塗装された丸文字で『はすみちゃんのへや』と書いてあった。
「ええ。そうでもしなきゃ釣り合いが取れないもの」
「もしかしてこれって杏奈さんが?」
「そうよ。可愛いでしょ?」
「可愛いけど……」
杏奈さんがこれを作った様子が全く想像つかなかった。
今日だけの付き合いだけど、ピンクとかそこら辺の色はむしろ嫌いそうに見える。
「とにかく入るわよ」
「はい」
杏奈さんはそんなファンシーな扉を開き、中に入る。
俺もそれに続いて中に入ると、
「うわっ……」
その部屋の壁は文字がびっちりと書き連ねてあった。
「ね?」
「あそこまでした理由が良く分かったよ」
確かにこの部屋の気色悪さに対抗するためにはアレくらいは必要だ。
ただ、部屋の前のファンシーさのせいで中の怖さを引き立たせたという説もあるんですが。
そして中を進むと、キングサイズのベッドの上で気持ちさそうに寝ている女性が一人。
何故キングサイズなのかは分からないが、金を持っているからベッドも家も自然と大きくなったということだろう。
金持ちの持っているものって大体大きいし。家とか車とか。
にしても大きいベッドって良いな。将来金を稼げるようになったら絶対ベッドはキングサイズにしよう。
そんな貧乏人の戯言はどうでも良くて、とりあえずこの人がはすみちゃんなのだろう。睡眠中なのにちゃんと白衣を着ているし。
「起きなさい。転ゴブの第7期が決定したわよ」
「え!?!?!?!?本当に!!!!!!」
そんな彼女は、あり得ない嘘を杏奈さんに囁かれて跳ね起きた。
「あるわけないでしょ。まだ4期が終わったばかりじゃない」
「あっ、そうだった……」
アニメの期を飛ばすのはどれだけ人気なアニメでも、どれだけハジケたアニメでも不可能な技である。例外は存在しない。
「というわけで、起きたのなら働いてくれるかしら?」
「もう少し寝て居たいんだけど……」
「駄目よ。私のギルドで給料を貰っているのだから」
「うう……」
そこがはすみちゃんさんの弱みなのか、眠たそうに目を擦りながらベッドから脱出し、別の白衣を着直していた。
でももう杏奈さんは『師走の先』のギルド員じゃないんだよなあ……
それから洗面所に向かい、何故か右目に赤、左目に翡翠色のカラコンをつけてきてから俺たちの元にやってきた。
「何でもあるからスキルを獲得するには最適よ」
そう言って連れてこられたのはギルド『師走の先』の研究所だった。
ただの1ギルドの研究所の筈だが、そうは思えない位には広そうだ。大学二つくらいなら余裕で収まるんじゃないかな。
「さっきギルド辞めたよね?」
なんて思考はどうでもいい。何故ここに来ちゃっているんだ。もう外部の人間でしょあなた。
「ええ。辞めたわ。でもそれと何の関係が?」
「いや、ギルドの関係者以外は利用しちゃいけないでしょ」
これはどの世界でも共通の常識だと思うんですが。
「麗奈姉が良いって言っているから問題無いわ」
「ええ……」
「他にも何か言いたそうな表情をしているわね」
「わざわざこのギルドを辞めて自分でギルドを作る理由って優秀なお姉さんへの対抗意識があるからじゃないの?」
「当然そうだけど」
「じゃあ猶更この施設を使うのはどうなの?」
姉には頼らないとか、自分は独自の方法で進むから必要無いとかさ……
「使えるものは使った方が良いじゃない。何を言っているの」
「ええ……」
多分プライドで独立したっぽいのに理性的すぎる意見だ……
最早何故独立したのか分かんないよこの人。それなら二人仲良く『師走の先』に居て姉を超えてから独立で良かったじゃないですか。
「とにかく、スキルを獲得しに行くわよ」
「う、うん……」
まあ、当の本人が良いって言うのなら問題無いか……
それから数分歩き、スキル研究エリアと呼ばれる場所に到達した。
そのまま俺たちは中央にある巨大な施設に入り、正面にあったエレベーターで20階へと上がった。
「蓮見!居るわよね!!」
そしてエレベーターから降りるなり、杏奈さんは鼓膜が破れそうな声量でそう叫んだ。加減してください。
「そんな大声で叫んだら迷惑だよ……」
その蓮見って人以外にも研究者は居るんだろうし。びっくりして手を止めちゃうよ。
「これでも足りない位よ。ちょっと待ってみようかしら」
そして待つこと1分。誰の何の反応も無かった、
「でしょ?」
「そこまで熱中しているって凄いね……」
やっぱり研究者はそれくらいの集中力が無いとやっていけないんだな。
「違うわよ。単に寝ているだけよ」
「今20時なんだけど」
成人した方が寝るにしては早すぎるし、ここは家じゃないですよね。
「昼寝中よ」
「20時は昼じゃないんだけど」
何がどうあろうとも全人類が20時は夜って答えますが。
「15時から寝ているから昼寝よ」
「5時間睡眠は昼寝じゃないですね」
昼寝ってのは1時間とか2時間とかの短時間の睡眠を指すわけで。それはただの睡眠なんですよ。こっちも全人類が否定しますね。
「私もそう思うわ」
「突然こっち側に来ないでください」
「と言われても、私は最初からそっち側よ」
じゃあ今俺は誰にツッコミを入れていたんですか。
「全部蓮見が言っていた事よ」
「大丈夫なんですかその人」
まだ会ったことも無いし、性別すら分からないけど、もうその人が駄目な人にしか思えない。
「大丈夫では無いわね。だからここにずっと居るわけだし」
「なるほど」
よく考えればスキルは全く役に立たないという風潮の中でスキルを研究している人がまともなわけが無かった。
「とりあえず直接叩き起こしに行くわよ」
「うん」
そして研究室の中を進み、蓮見さんが寝ているであろう部屋の前に辿り着いた。
「やたらとファンシーな装飾ですね」
ここに辿り着くまでの研究室はよくある無機質な空間だったけれど、この部屋の扉だけは全然違った。
扉は全部ピンクに塗装されており、造花が敷き詰められている。そして他の扉であれば部屋番号の書かれていたはずの看板には代わりにラメ塗装された丸文字で『はすみちゃんのへや』と書いてあった。
「ええ。そうでもしなきゃ釣り合いが取れないもの」
「もしかしてこれって杏奈さんが?」
「そうよ。可愛いでしょ?」
「可愛いけど……」
杏奈さんがこれを作った様子が全く想像つかなかった。
今日だけの付き合いだけど、ピンクとかそこら辺の色はむしろ嫌いそうに見える。
「とにかく入るわよ」
「はい」
杏奈さんはそんなファンシーな扉を開き、中に入る。
俺もそれに続いて中に入ると、
「うわっ……」
その部屋の壁は文字がびっちりと書き連ねてあった。
「ね?」
「あそこまでした理由が良く分かったよ」
確かにこの部屋の気色悪さに対抗するためにはアレくらいは必要だ。
ただ、部屋の前のファンシーさのせいで中の怖さを引き立たせたという説もあるんですが。
そして中を進むと、キングサイズのベッドの上で気持ちさそうに寝ている女性が一人。
何故キングサイズなのかは分からないが、金を持っているからベッドも家も自然と大きくなったということだろう。
金持ちの持っているものって大体大きいし。家とか車とか。
にしても大きいベッドって良いな。将来金を稼げるようになったら絶対ベッドはキングサイズにしよう。
そんな貧乏人の戯言はどうでも良くて、とりあえずこの人がはすみちゃんなのだろう。睡眠中なのにちゃんと白衣を着ているし。
「起きなさい。転ゴブの第7期が決定したわよ」
「え!?!?!?!?本当に!!!!!!」
そんな彼女は、あり得ない嘘を杏奈さんに囁かれて跳ね起きた。
「あるわけないでしょ。まだ4期が終わったばかりじゃない」
「あっ、そうだった……」
アニメの期を飛ばすのはどれだけ人気なアニメでも、どれだけハジケたアニメでも不可能な技である。例外は存在しない。
「というわけで、起きたのなら働いてくれるかしら?」
「もう少し寝て居たいんだけど……」
「駄目よ。私のギルドで給料を貰っているのだから」
「うう……」
そこがはすみちゃんさんの弱みなのか、眠たそうに目を擦りながらベッドから脱出し、別の白衣を着直していた。
でももう杏奈さんは『師走の先』のギルド員じゃないんだよなあ……
それから洗面所に向かい、何故か右目に赤、左目に翡翠色のカラコンをつけてきてから俺たちの元にやってきた。
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