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1話
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「ギギギギ……」
俺は息を殺して、不用心に曲がり角まで歩いてくるゴブリンを待つ。
あと5m……
今だ!
「はあっ!」
俺はゴブリンの正面に突っ込み、持っていた剣を上から振り下ろす。
「ギエッ!」
いくら真正面からだとしても、突然現れた敵に反応出来なかったようで、防御することすら出来ずに切り倒されてくれた。
「どうだ……?」
『ゴブリン累計討伐数が100体を突破しました。よってスキル【ゴブリンキラー[中級]】が取得可能になります』
一番聞きたくなかった音声と共に、俺の淡い期待は打ち砕かれた。
「はあ……」
またしてもレベルが上がらなかった。
「いや、もしかしたら」
あり得ないことは脳内で理解しつつも、自身のステータス画面を開く。
如月飛鳥 レベル1
スキル
無し
しかしそんな事は無く、何度も食い入る程見たいつも通りのステータス画面だった。
「なんで俺だけ……」
普通はどんな人であれ、ダンジョンに居るモンスターを倒せば経験値を獲得して、レベルが上がる。
例えば今倒した緑色の人型モンスターであるゴブリン。これは現在確認されているモンスターの中でも最弱に位置するのだが、それでも5体倒せばレベル1から2に上昇する。
これは人によって個人差があるみたいな事はなく、老若男女問わず共通して同じはずである。
しかし、俺は違った。
スライムを100匹倒しても、ゴブリンを100匹倒しても、決してレベルが上がることは無かったのだ。
ダンジョンに潜り、モンスターを倒すことで生計を立てる探索者という職業は、どれだけスキルが強かろうと、レベルが低ければ意味が無い。
人はスキルを5つしか取得できない上、その取れるスキルは全て誤差レベルの影響しか無いからだ。
この世のスキルは、何個かを除いて初級、中級、上級、最上級、特級の5つの段階があるのだが、効果がそれぞれ1%、2%、3%、4%,5%しかない。
それでも特級だけを取れば合計で25%分の補正が得られるのでマシだと捉えられるかもしれない。
しかし、任意の等級のスキルを獲得するためには下位全てのスキルを取得している必要がある。
一応効果は乗算とはいえ、特定の能力が1.15倍にしかならないのはあまりにもしょっぱすぎる。
なんなら一度取ったスキルは二度と捨てることは出来ない。最早呪いである。
更に、特級を取るのは異次元の難易度。
今回中級を獲得したゴブリンキラーの場合、特級を取りたい場合はこの1000倍。つまり10万体のゴブリンを討伐する必要がある。取れるわけないだろ。
長々と言ったが、レベルを上げられない俺はどうあがこうがちょっと強い一般人にしかなれないというだけの話である。
「ちゃんと、諦めよう」
スライムとゴブリンをそれぞれ100体討伐し、スライムキラーとゴブリンキラーの中級の取得条件を満たすまでにレベルが上がらなかったら探索者を諦めることにしていた。
悔しいけれど仕方がない。レベルが上がらなければ強くなれないのだから。
「とりあえず、魔石を回収してから帰ろう」
100体目ということもあり、非常に慣れた手つきでゴブリンの心臓をくり抜いて中にある魔石をバッグに入れてからダンジョンを出た。
「では、お願いします」
魔石を買い取って貰うため、ダンジョンから一番近い役所に着いた俺は、受付の人に今日取ってきたゴブリンの魔石を渡した。
「はい。こちら二つで間違いないですか?」
「はい。合っています」
いつも通りたった二つしかない魔石を受け取った受付の人は、正体を調べる装置がある奥の部屋に向かった。
それから間もなくして受付は戻ってきた。
「お待たせしました。ゴブリンの魔石がお二つで200円となります」
1つ100円。最下級であるF級モンスターだからこんなものである。
「はい、ありがとうございます」
小銭を受け取った俺は、役所を出て探索者として最後の目的地へと向かった。
「これで最後か……」
その目的地とは探索者養成に特化した高校である『国立探索者高校』。俺が今日の今日まで通い続けていた高校。
俺は誰にも気づかれないようにこっそりと教室に向かった。
「まあ、誰も居るわけがないよな」
10月の夜7時だからな。部活をやっている生徒でも半分くらいは帰宅している時間だし、そもそも俺のクラスは3年だから部活をやっているわけがない。
誰かが居ることに若干期待していたが、会えなくて良かったと思う。
俺は教室に置いていた自分の道具を回収し、教室を出る。
「と言っても大した荷物じゃないんだけどな」
卒業までにギルドに就職する事が最優先の為、3年になってから行う座学は殆ど無いし、実践に関しても学校の備品を使うからな。
持ってきたリュックサックの半分位の容量を満たし、学校を出る。
そしてそのまま隣にある建物へ。高校に併設された寮である。
流石にこちらには人がいる。クラスメイトも同様である。
だから自分の部屋に向かう為には普通絶対に誰かに会わないといけないのだが、俺の部屋は一階にあるのだ。
「よっと」
俺は事前に開けてあった部屋の窓から中に侵入した。
学校側が用意した最低限の家具しか置いていないので、個性の一切無い殺風景な部屋である。
流石に日用品とかは全て私物だけれども。
「これで最後かな」
服や歯ブラシと言った私物をある程度回収し終えたので、そのまま窓から立ち去ろうと思った時、
「探索者に関連する道具は置いて行こう」
そう思った。
もう探索者は辞めるんだから。持って帰る必要は無いよね。
俺は今着ていた探索者用の服を脱ぎ去り、丁寧に畳んで机の上に置いた。そして剣は机の下に。
「ありがとう、ございました」
それから私服に着替え、完全に探索者から脱した俺は、誰も居ない部屋にお礼を言って窓から脱出した。
「行こうか」
そして俺は本屋に立ち寄った後、自分の家へと歩いて帰った。
俺は息を殺して、不用心に曲がり角まで歩いてくるゴブリンを待つ。
あと5m……
今だ!
「はあっ!」
俺はゴブリンの正面に突っ込み、持っていた剣を上から振り下ろす。
「ギエッ!」
いくら真正面からだとしても、突然現れた敵に反応出来なかったようで、防御することすら出来ずに切り倒されてくれた。
「どうだ……?」
『ゴブリン累計討伐数が100体を突破しました。よってスキル【ゴブリンキラー[中級]】が取得可能になります』
一番聞きたくなかった音声と共に、俺の淡い期待は打ち砕かれた。
「はあ……」
またしてもレベルが上がらなかった。
「いや、もしかしたら」
あり得ないことは脳内で理解しつつも、自身のステータス画面を開く。
如月飛鳥 レベル1
スキル
無し
しかしそんな事は無く、何度も食い入る程見たいつも通りのステータス画面だった。
「なんで俺だけ……」
普通はどんな人であれ、ダンジョンに居るモンスターを倒せば経験値を獲得して、レベルが上がる。
例えば今倒した緑色の人型モンスターであるゴブリン。これは現在確認されているモンスターの中でも最弱に位置するのだが、それでも5体倒せばレベル1から2に上昇する。
これは人によって個人差があるみたいな事はなく、老若男女問わず共通して同じはずである。
しかし、俺は違った。
スライムを100匹倒しても、ゴブリンを100匹倒しても、決してレベルが上がることは無かったのだ。
ダンジョンに潜り、モンスターを倒すことで生計を立てる探索者という職業は、どれだけスキルが強かろうと、レベルが低ければ意味が無い。
人はスキルを5つしか取得できない上、その取れるスキルは全て誤差レベルの影響しか無いからだ。
この世のスキルは、何個かを除いて初級、中級、上級、最上級、特級の5つの段階があるのだが、効果がそれぞれ1%、2%、3%、4%,5%しかない。
それでも特級だけを取れば合計で25%分の補正が得られるのでマシだと捉えられるかもしれない。
しかし、任意の等級のスキルを獲得するためには下位全てのスキルを取得している必要がある。
一応効果は乗算とはいえ、特定の能力が1.15倍にしかならないのはあまりにもしょっぱすぎる。
なんなら一度取ったスキルは二度と捨てることは出来ない。最早呪いである。
更に、特級を取るのは異次元の難易度。
今回中級を獲得したゴブリンキラーの場合、特級を取りたい場合はこの1000倍。つまり10万体のゴブリンを討伐する必要がある。取れるわけないだろ。
長々と言ったが、レベルを上げられない俺はどうあがこうがちょっと強い一般人にしかなれないというだけの話である。
「ちゃんと、諦めよう」
スライムとゴブリンをそれぞれ100体討伐し、スライムキラーとゴブリンキラーの中級の取得条件を満たすまでにレベルが上がらなかったら探索者を諦めることにしていた。
悔しいけれど仕方がない。レベルが上がらなければ強くなれないのだから。
「とりあえず、魔石を回収してから帰ろう」
100体目ということもあり、非常に慣れた手つきでゴブリンの心臓をくり抜いて中にある魔石をバッグに入れてからダンジョンを出た。
「では、お願いします」
魔石を買い取って貰うため、ダンジョンから一番近い役所に着いた俺は、受付の人に今日取ってきたゴブリンの魔石を渡した。
「はい。こちら二つで間違いないですか?」
「はい。合っています」
いつも通りたった二つしかない魔石を受け取った受付の人は、正体を調べる装置がある奥の部屋に向かった。
それから間もなくして受付は戻ってきた。
「お待たせしました。ゴブリンの魔石がお二つで200円となります」
1つ100円。最下級であるF級モンスターだからこんなものである。
「はい、ありがとうございます」
小銭を受け取った俺は、役所を出て探索者として最後の目的地へと向かった。
「これで最後か……」
その目的地とは探索者養成に特化した高校である『国立探索者高校』。俺が今日の今日まで通い続けていた高校。
俺は誰にも気づかれないようにこっそりと教室に向かった。
「まあ、誰も居るわけがないよな」
10月の夜7時だからな。部活をやっている生徒でも半分くらいは帰宅している時間だし、そもそも俺のクラスは3年だから部活をやっているわけがない。
誰かが居ることに若干期待していたが、会えなくて良かったと思う。
俺は教室に置いていた自分の道具を回収し、教室を出る。
「と言っても大した荷物じゃないんだけどな」
卒業までにギルドに就職する事が最優先の為、3年になってから行う座学は殆ど無いし、実践に関しても学校の備品を使うからな。
持ってきたリュックサックの半分位の容量を満たし、学校を出る。
そしてそのまま隣にある建物へ。高校に併設された寮である。
流石にこちらには人がいる。クラスメイトも同様である。
だから自分の部屋に向かう為には普通絶対に誰かに会わないといけないのだが、俺の部屋は一階にあるのだ。
「よっと」
俺は事前に開けてあった部屋の窓から中に侵入した。
学校側が用意した最低限の家具しか置いていないので、個性の一切無い殺風景な部屋である。
流石に日用品とかは全て私物だけれども。
「これで最後かな」
服や歯ブラシと言った私物をある程度回収し終えたので、そのまま窓から立ち去ろうと思った時、
「探索者に関連する道具は置いて行こう」
そう思った。
もう探索者は辞めるんだから。持って帰る必要は無いよね。
俺は今着ていた探索者用の服を脱ぎ去り、丁寧に畳んで机の上に置いた。そして剣は机の下に。
「ありがとう、ございました」
それから私服に着替え、完全に探索者から脱した俺は、誰も居ない部屋にお礼を言って窓から脱出した。
「行こうか」
そして俺は本屋に立ち寄った後、自分の家へと歩いて帰った。
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