転生した最強の魔法使いはトップアイドルを目指す

僧侶A

文字の大きさ
上 下
9 / 20

9話

しおりを挟む
「お守り?」

「良いの?」

「大きなライブだからね。ヒミコさんと遊んだ時に買ったんだ」

 これで準備は万端。前のグループも最後の曲を歌い終え、私たちの居る方とは逆の出口にはけていった。

 私たちは気を引き締め、皆から注目されるステージへと向かった。

『よく来たな信者たち!私たちはmagicstarsだ!』

『私たちのテンションにちゃんと付いてきてね!』

『今から魔法をかけてあげる』

『では行くぞ!最初の曲は、新曲の【Trinity magic】!』

 私たちの煽りに乗ってテンションが最高潮にまで上がった観客と共にライブが始まった。

 各々が自分の個性を存分に発揮し、観客を魅了する。

 ダンスも歌も超高難易度ではあったが、それの甲斐がある位には素晴らしいものを提供することが出来た。

 遠目であるため一人一人の表情を読み取ることは難しかったが、皆満足していたと確信できた。

 私たちの出番はあれよあれよという間に過ぎ去り、終わってしまった。

『それではまた会おう!』

『じゃーねー』

『また来てね』

 各々好き勝手に別れの挨拶を投げかけた後、ステージを後にした。

「今回も無事大成功だったね!」

「当然。天才のアリスと元気で可愛い翼、そしてこの私が揃った完璧なグループなんだから」

 喜ぶ翼に対して、誇らしげに返答する凜。

「自分で完璧なグループって言うか~まあ合っているけどね!」

「そうそう。二人はこの天才アリス様に付いてこれているんだから、完璧に決まっているわ!」

 本当に、他の人ではどうなっていたか分からないわ。

「でもダンスは私より下手じゃん」

「痛いところを突くね」

 歌に関しては自信があったけれど、ダンスに関しては結局二人には及ばなかった。いくら天才でも経験にはまだ勝てないらしい。

「でもこれから絶対アリスは上手くなる。私達も歌を頑張ろ」

「そうだね。アリスに私たちの方が天才でしたすみません、って言わせないとね」

「その調子だよ二人とも。かかってきなさい!」

「「やー!」」

 私はテンションが上がった二人にもみくちゃにされた。


 何はともあれ、ライブは大成功を収めることが出来た。



 その帰りの新幹線にて、

「二人とも寝ちゃったんだね」

 翼と凜は疲れ果ててしまったようで、肩を寄せ合ってぐっすり眠っていた。

 ちなみに大原さんと森川さんは今回のライブ成功を理由に新たなライブの参加へこじつけるべくしばらく残るらしい。

「まあ全力だったからね」

「そうだね。凄く良かったもん」

 まあ本当の原因は魔法を使い続けたからなんだけどね。

 実はヒミコに会った時にこうなることを既に予測していて、防御用の魔法陣を作ってもらっていた。

 ヒミコはとても良い魔法使いだったけれど、別にこの世の魔法使い全員が良い人なわけではない。

 私が生きていた時代に魔法を使った犯罪があっていたのと同じように、現代でも魔法を悪用する輩が出ないとは断言できない。

 そういったそんな人が現れた際に二人に大きな危害が加わるかもしれない。

 とは言っても二人には魔法が使えない。それに今から教えたとしてもまともに使えたものではない。

 そこで結論として出たのが、ヒミコが考案したらしい自動発動式の魔法陣。

 魔力を持った人が魔力を外に放出すると、自動で発動してくれるという優れモノだ。

 魔力を持っているが魔法が使えない人間は基本的には魔力がダダ洩れの状態だから、現状の二人にはうってつけの道具だった。

 だが、紙切れを単体で渡すのは明らかに不自然。

 というわけでお守りに魔法陣を書いた紙を畳んで入れていた。

 お守りならあのタイミングでも不自然ではないから。

『loveshine』の方々は妨害しようと様々な魔法を撃っていたようだけど、どう思ったのかしらね。

 まああの人達はあそこから成長することは無いでしょうし、考える必要もないかしら。








 それから数カ月は、地方のイベントを中心にアイドル活動を行っていた。というのも、大原さんがネットにライブの動画を上げたいと言い出したからだ。

 それに私たちには単独ライブの経験が無い。地方のイベントであれば基本的に単独であることが多いし、多少失敗してもそこまで傷を負うことは無い。お膳立てが無くてもどうにかなるように経験を積ませたいらしい。

 そんな理由から森川さんも賛成側に回り、全国各地を転々とすることになった。

「はーい押さないで押さないで、順番を待てばちゃんと話せるから」

 今日はそのライブの終わりに握手会をすることになっていたのだけど、思っていたそうとはかなり違う層の方がやってきていた。

 それは小学生やそれより小さい子供たち。

「アリスちゃん大好き!カッコいいから!」

「そうだろうそうだろう、私はカッコいいもんな!見どころあるよ少年!」

「どうやったら魔法を使えるようになるの?」

「心も体も強くすればいずれ使えるようになるよ」

 OurTube活動の影響で私たちのファンは中高生が基本的に多いのだけれど、実は幼い子達にも人気があるらしい。

 その理由は、魔法を前面に押し出していたアイドルだから。頻繁に魔法魔法言っていたこともあり、魔法や剣、ヒーロー等が大好きな子供たちの心を得ていたらしい。

 もしMVを作る時が来たら、1個くらいはカッコいい炎や爆発の演出を過剰に入れたものを作ろうと提案しようと思う。


 そんな日が続き、ある程度実力が付き地方のファンも獲得したので、そろそろ単独で大きな箱を開こうという話が議題に上がった。

「確かにファンの数は有名なアイドルグループに匹敵するとは思いますが、中高生がメインというのがネックですね」

 そんな提案に森川さんは乗り気では無かった。

「もっと言えば時点に当たるファン層は小学生以下ですしね」

 それに付け加えたのは秋。

「まあ箱を少し小さくすれば大丈夫でしょ」

 そう言って大原さんが示したのは1000人位が入るライブ会場だった。

「1000人はちゃんと大きいライブですよね!?」

 翼は当然のように大規模になっていくライブ計画を聞いて驚いていた。

「でも近い人気のアイドルグループとかだと2000人とか普通に埋まるからね」

「すっごい……」

 翼はそこまで人気になったという自覚が無かったためか、それ以外の語彙力が消失していた。

「それはそうとして、どうやって宣伝するつもりですか?」

 当然OurTubeで告知をするのは当然だが、それ以外にも目途は経っているのかと思い質問した。

「それはね、こちらです!」

 出てきたのは、有名バラエティ番組『7トーク』の資料。

「これは……!」

 その資料に凜は目を輝かせていた。

「好きなの?」

「うん。毎回録画では無くてリアルタイムで見るくらいには。この人がめちゃくちゃ面白いの」

 凜が指差したのはMCではなく、ひな壇で場を盛り上げている芸人の一人。確か名前は堀口源だったかしらね。

「乗り気みたいで良かったよ。もしライブをするのなら、告知がてら出てみないかという話になっていてね」

「その番組の日程は決まっているの?」

 私は大原さんに確認する。

「えっと、収録は次の木曜日だね」

 指定された収録日はあまりにも早いものだった。

「そんなすぐなんですか!」

 翼は、突然降ってわいた予定に驚きを隠せない様子。

「善は急げって思ってね。そのあたりにライブとかの仕事が入っていなかったし丁度いいかなって」

「確かに仕事は無いですけど!心の準備があるんです!」

 大人気バラエティの主役として参加するのは、大きなライブとはまた違った緊張感だろう。

「大丈夫大丈夫。芸人の人たちがどうにかしてくれるから!」

 大原さんは笑ってそう言った。

「それに、何かあったらリーダーのアリスが全てをやってくれる」

 凜は私を何だと思っているのよ。

「それなら……」

「よし、決定だね!」

 はいそこ。納得するんじゃない!そしてそのままOKサインを出さない!

「私も出たこと無いんだけど」

 全てを私に押し付けられる気がしたので、ここで釘をさしておく。

「でも、アリスちゃんは天才なんでしょ?」

 そう言ってきたのは翼。

「それは勿論。私に出来ないことなど無いわ」

「なら良いじゃん。出来るんでしょ?」

 嵌められた!!

 私は思わず机を叩いた。

「よし、アリスちゃん主体でバラエティを頑張ってもらおうか!」

 というわけで私への負担が余りにも重すぎる人生初のバラエティ番組出演が決定した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

帰還した吞兵衛勇者〜異世界から帰ってきたら日本がダンジョンだらけになっていたんだが?〜

まぐな
ファンタジー
 異世界転移に巻き込まれた主人公、梶谷太一は無事に異世界の魔王討伐を成し遂げ、元の世界の日本に帰還した……はずだった。  だが、太一が戻った日本には異世界でよくみたモンスターが蔓延るダンジョンが発生。  日本には元々ダンジョンがあったかのように人々の生活に馴染んでおり、モンスターを討伐する専門組織、討伐隊ギルドなども設立されていた。 「とりあえず難しいことは置いておいて酒盛りだ!」  しかし、太一は何よりも酒のことで頭がいっぱいだった。  異世界で鍛え上げた能力を持つ太一を、人手不足に陥っている討伐隊ギルドは放っておくはずもなく……。 カクヨムにも掲載してます。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...