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6話
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「疲れたわ」
学校を終えた私は、事務所に辿り着くなり疲労でソファに寝そべっていた。
「お疲れ様」
「基本的に秋のせいでしょ」
クラスメイトが私に強い興味を持っているのは事実だけれど、秋がそれを焚きつけたからあそこまでひっきりなしに皆が話しかけてくる状況が生まれていた。
「だからこうして尽くしているのです」
どこから持ってきたのか分からない大きなうちわで私を扇いでいた。
「普通の高校に行っているから。ちゃんとそういう高校に行けば何も言われない」
最近芸能人やその卵が通う転校したらしい凜がそう言ってきた。
出席日数とか注目度とかを考えるとそれが最適であるのは分かるのだけれど、学業もちゃんとやるということを考えると厳しい。
「天才売りするんだから私たちの高校に来るのはちょっと相性悪いよね~」
そう言おうと思ったら、翼が言いたいことを代弁してくれた。
「凜は天才。教師なんて軽く超越しているのだからどこに行っても頭脳は変わらない」
しかし私と神格化している凜には通じなかったらしい。
「その高校に通ったら既にやっている所をもう一回やらなきゃいけなくなるからかえって時間の無駄なのよ」
という理由もあり転校をしていないわけだけど、本当に忙しくなった場合は京東大学の模試あたりでA判定取って見せて学校に行かなくても良い所に行くつもりね。
その場合秋はどうするか、って話もあるけど着いてきそうね。
そう考えると転校はあまり勧められた行為では無いわね。
「残念。一緒の高校に行きたかったのに」
どうやら凜の本当の目的は私と高校生活を送りたいということらしい。
「その代わりにここでは仲良くできるでしょ」
私は凜の後ろに回り、抱きしめた。
「アリス大好き」
凜は嬉しそうにしている。
「じゃあ私も!」
そう言って翼が私たち二人を包むような形で抱きしめてきた。
「アリスは私のだからね!」
対抗心を燃やした秋も私たちを抱きしめた。流石に4人はちょっと熱い。
「仲良くしているようで何より」
そんな女子だけの空間に入り込んだのはウチの社長である大原ジョンソン。
「何の用ですか?」
「酷いなあ秋ちゃん。一応僕雇用主だよ?」
なんだかんだで社員になった秋が、社長に冷たく返事をして、大原さんは少し悲しい顔をしていた。
「ならちゃんと仕事を持ってきたんですか?」
「ウチの社員は皆僕に厳しいなあ。ちゃんと持ってきたよ!これ!」
そう言って取り出したのは広告だった。
「何ですか?」
「アリス君。よくぞ聞いてくれた。これは日本各地から注目のアイドルが集まるライブフェス。その名もILFESだ!」
と自信満々に宣言する大原さん。
「おおー!流石社長!」
「なかなかやるね」
正直これが何なのかはよく分からないけれど、翼と凜の反応的にそこそこ大きいものなのでしょう。
「そしてOurTubeで上手くいったことにより予算が出来た!つまり新曲だ!はい森川くん!」
「はい。こちらをどうぞ」
やってきた森川さんが開いたパソコンには、新曲と書かれたファイルの中に新曲の音源が入っていた。
「ついにですね!」
翼がめちゃくちゃ喜んでいる。念願の新曲に興味津々のようだ。
「じゃあ再生しますね」
今回用意された新曲は3曲。どれもアップテンポでかっこよさを押し出した曲だった。
「とてもいい曲。だけど難しそう」
「これは時間がかかりそうだね」
凜と翼は新曲を気に入っているものの、歌自体の難易度が高いことに心配していた。
「アリスくんのレベルに難易度を合わせたからね。ただ二人もどうにかなりそうなレベルだとは思っているよ」
「いざとなれば私が引っ張ってあげるから安心して」
私は天才なのだから、それくらい出来て当然だ。
「私も付いているから!」
と自信満々に語る秋ではあるが、私は秋がどうしようも無い音痴だということを知っていた。
「まさかこっちで苦労するとはね」
「この踊り難しいもんね~完全な素人にさせるものじゃないよ」
二人が歌の方に苦労している中、私は踊りの方に悪戦苦闘していた。
「どうしてこんな動きをするのよ。不合理じゃない」
「それは勿論カッコいいから。完璧に出来たら凄いことになる。こんな風にやれば出来る」
簡単そうにお手本を見せる凜。どうしてこんなに簡単そうに出来るのか分からない。
話によると、凜と翼は幼少期からダンスのレッスンに通っていたらしく、相当な腕前らしい。
一方私はダンスなんて運動会位でしかやったことは無いし、前世でも踊る機会は存在しなかった。運動神経には自信があるのだけれど、経験者には流石に及ばないらしい。
「大丈夫!初心者にしてはめちゃくちゃ上手だから!普通にそこら辺の経験者並みに出来ているよ!」
「ありがとう。私は天才だからね。これくらい出来ないとね」
「そう。アリスは何でもできる」
「二人も歌をしっかり頑張りなさい」
各々苦戦するところはあったものの、練習自体は順調に進み、本番当日を迎えた。
「ついに、本番だね。みんな頑張って!」
「勿論」
「頑張ってくるよ!」
その後秋は関係者用の席に向かい、私たちはアイドル用の楽屋に向かった。
「まあ妥当って感じの扱いね」
私たち専用の楽屋を見て、そう感想を述べた。
「専用の楽屋ってなかなか無いんだからね」
翼曰く、専用の楽屋を貰うためにはそこそこの地位に居なければならないらしい。
「私たちはもういい感じのアイドル。1回しかライブしていないけど」
一回しかライブをしていないけれど、OurTube活動のお陰でそこらのアイドルに負けない位の人気を得られている。今回呼ばれたのはそこが理由の一つらしい。
「1回もしていれば十分よ」
私たちは最強のアイドルなのだから、回数なんて問題では無いわ。
「ねえ二人とも、楽屋挨拶に行かない?」
二人がライブに集中している中、一人違うものに集中している人が居た。翼だ。
「別に必要ないでしょ?森川さんに言われてたし」
大原さんならともかく、森川さんにそう言われている以上別にする必要性は無い。
「そういうことじゃないよ。折角有名なアイドルが来ているんだよ!会わなきゃ!」
どうやら、magic starsの今後の為に関係を築くのでは無く、単にアイドルが好きだから直接会いたいかららしい。
「流石翼」
今後の為に他のアイドルを視察しておこうと名目で、翼の希望通りにあいさつ回りをすることになった。
「「「こんにちは~magic starsです!今日はよろしくお願いします!」」」
「よろしく~」
「OurTube見たよ!面白かった!」
「ありがとうございます!嬉しいです!」
「ASAKIさんのライブ、めちゃくちゃ好きです!」
「見てくれているんだ。嬉しい」
「勿論ですよ!」
基本的には三人で挨拶した後、翼がアイドルたちと話すという流れだった。
意外と私たちの動画を見てくれている人は多く、邪険に扱ってくる人たちは居なかったわ。
「そして最後はあの『YAMA』だよ!」
『YAMA』。今回参加するアイドルユニットの中では最も人気の高いグループらしい。リーダーのヒミコ、元気担当のサクラ、可愛い担当のココロで構成されているらしい。
翼は、その中のヒミコが大好きらしい。ルックスも性格もクールでカッコいいのが理由とのこと。
「「「magic starsです!よろしくお願いします!」」」
挨拶と共に中に入ると、『YAMA』の面々が揃っていた。
「あら。いらっしゃい」
慣れたように出迎えるヒミコさんだったけれど、見慣れているけど見慣れていない光景がそこにはあった。
「どうしたの?」
「大丈夫?」
心配そうに私に声をかけるサクラさんとココロさん。しかしそれどころでは無かった。
「アレは……?」
ヒミコさんの座っていた椅子の近くに置いてあるカバン。そこには魔法陣が描かれた紙が入っていた。
「アレ?ヒミコの趣味だよ。なんかカッコいい模様を描くのが好きなんだって」
「絵を描くのが好きだって言っていましたもんね」
「そうそう」
サクラさんと翼は何も知らないらしいが、アレはどう見ても魔法に使われるものだ。それも私が生きていた時代よりも遥か昔に使われていた奴。
「これが気になるの?よかったらあげるよ」
私の興味を察して紙を取ってきてくれた。
「ありがとうございます」
改めて中身をよく見る。確かにこれは本物だ。それも天候を変えるような大規模なもの。
「良かったら連絡先を交換しない?」
「はい」
周囲の事を忘れて観察していたら、ヒミコさんがそう申し出たので受け入れた。
これをこの人が作っているのであれば、ヒミコさんは魔法使いであり、私と同じ立場の人だ。
「私も良いですか?」
「私も」
その流れに乗って翼と凜が申し出た。
「いいよ~」
「じゃあ全員で交換しよ」
結局私たちは『YAMA』の全員と連絡先の交換をした。
「やったあ!あの『YAMA』と連絡先交換しちゃった!」
本当にあのグループが好きだったらしく、テンションが最高潮に達していた。
「とりあえずライブ終わってから。今は本番に向けて集中しよ」
「そうだね!」
学校を終えた私は、事務所に辿り着くなり疲労でソファに寝そべっていた。
「お疲れ様」
「基本的に秋のせいでしょ」
クラスメイトが私に強い興味を持っているのは事実だけれど、秋がそれを焚きつけたからあそこまでひっきりなしに皆が話しかけてくる状況が生まれていた。
「だからこうして尽くしているのです」
どこから持ってきたのか分からない大きなうちわで私を扇いでいた。
「普通の高校に行っているから。ちゃんとそういう高校に行けば何も言われない」
最近芸能人やその卵が通う転校したらしい凜がそう言ってきた。
出席日数とか注目度とかを考えるとそれが最適であるのは分かるのだけれど、学業もちゃんとやるということを考えると厳しい。
「天才売りするんだから私たちの高校に来るのはちょっと相性悪いよね~」
そう言おうと思ったら、翼が言いたいことを代弁してくれた。
「凜は天才。教師なんて軽く超越しているのだからどこに行っても頭脳は変わらない」
しかし私と神格化している凜には通じなかったらしい。
「その高校に通ったら既にやっている所をもう一回やらなきゃいけなくなるからかえって時間の無駄なのよ」
という理由もあり転校をしていないわけだけど、本当に忙しくなった場合は京東大学の模試あたりでA判定取って見せて学校に行かなくても良い所に行くつもりね。
その場合秋はどうするか、って話もあるけど着いてきそうね。
そう考えると転校はあまり勧められた行為では無いわね。
「残念。一緒の高校に行きたかったのに」
どうやら凜の本当の目的は私と高校生活を送りたいということらしい。
「その代わりにここでは仲良くできるでしょ」
私は凜の後ろに回り、抱きしめた。
「アリス大好き」
凜は嬉しそうにしている。
「じゃあ私も!」
そう言って翼が私たち二人を包むような形で抱きしめてきた。
「アリスは私のだからね!」
対抗心を燃やした秋も私たちを抱きしめた。流石に4人はちょっと熱い。
「仲良くしているようで何より」
そんな女子だけの空間に入り込んだのはウチの社長である大原ジョンソン。
「何の用ですか?」
「酷いなあ秋ちゃん。一応僕雇用主だよ?」
なんだかんだで社員になった秋が、社長に冷たく返事をして、大原さんは少し悲しい顔をしていた。
「ならちゃんと仕事を持ってきたんですか?」
「ウチの社員は皆僕に厳しいなあ。ちゃんと持ってきたよ!これ!」
そう言って取り出したのは広告だった。
「何ですか?」
「アリス君。よくぞ聞いてくれた。これは日本各地から注目のアイドルが集まるライブフェス。その名もILFESだ!」
と自信満々に宣言する大原さん。
「おおー!流石社長!」
「なかなかやるね」
正直これが何なのかはよく分からないけれど、翼と凜の反応的にそこそこ大きいものなのでしょう。
「そしてOurTubeで上手くいったことにより予算が出来た!つまり新曲だ!はい森川くん!」
「はい。こちらをどうぞ」
やってきた森川さんが開いたパソコンには、新曲と書かれたファイルの中に新曲の音源が入っていた。
「ついにですね!」
翼がめちゃくちゃ喜んでいる。念願の新曲に興味津々のようだ。
「じゃあ再生しますね」
今回用意された新曲は3曲。どれもアップテンポでかっこよさを押し出した曲だった。
「とてもいい曲。だけど難しそう」
「これは時間がかかりそうだね」
凜と翼は新曲を気に入っているものの、歌自体の難易度が高いことに心配していた。
「アリスくんのレベルに難易度を合わせたからね。ただ二人もどうにかなりそうなレベルだとは思っているよ」
「いざとなれば私が引っ張ってあげるから安心して」
私は天才なのだから、それくらい出来て当然だ。
「私も付いているから!」
と自信満々に語る秋ではあるが、私は秋がどうしようも無い音痴だということを知っていた。
「まさかこっちで苦労するとはね」
「この踊り難しいもんね~完全な素人にさせるものじゃないよ」
二人が歌の方に苦労している中、私は踊りの方に悪戦苦闘していた。
「どうしてこんな動きをするのよ。不合理じゃない」
「それは勿論カッコいいから。完璧に出来たら凄いことになる。こんな風にやれば出来る」
簡単そうにお手本を見せる凜。どうしてこんなに簡単そうに出来るのか分からない。
話によると、凜と翼は幼少期からダンスのレッスンに通っていたらしく、相当な腕前らしい。
一方私はダンスなんて運動会位でしかやったことは無いし、前世でも踊る機会は存在しなかった。運動神経には自信があるのだけれど、経験者には流石に及ばないらしい。
「大丈夫!初心者にしてはめちゃくちゃ上手だから!普通にそこら辺の経験者並みに出来ているよ!」
「ありがとう。私は天才だからね。これくらい出来ないとね」
「そう。アリスは何でもできる」
「二人も歌をしっかり頑張りなさい」
各々苦戦するところはあったものの、練習自体は順調に進み、本番当日を迎えた。
「ついに、本番だね。みんな頑張って!」
「勿論」
「頑張ってくるよ!」
その後秋は関係者用の席に向かい、私たちはアイドル用の楽屋に向かった。
「まあ妥当って感じの扱いね」
私たち専用の楽屋を見て、そう感想を述べた。
「専用の楽屋ってなかなか無いんだからね」
翼曰く、専用の楽屋を貰うためにはそこそこの地位に居なければならないらしい。
「私たちはもういい感じのアイドル。1回しかライブしていないけど」
一回しかライブをしていないけれど、OurTube活動のお陰でそこらのアイドルに負けない位の人気を得られている。今回呼ばれたのはそこが理由の一つらしい。
「1回もしていれば十分よ」
私たちは最強のアイドルなのだから、回数なんて問題では無いわ。
「ねえ二人とも、楽屋挨拶に行かない?」
二人がライブに集中している中、一人違うものに集中している人が居た。翼だ。
「別に必要ないでしょ?森川さんに言われてたし」
大原さんならともかく、森川さんにそう言われている以上別にする必要性は無い。
「そういうことじゃないよ。折角有名なアイドルが来ているんだよ!会わなきゃ!」
どうやら、magic starsの今後の為に関係を築くのでは無く、単にアイドルが好きだから直接会いたいかららしい。
「流石翼」
今後の為に他のアイドルを視察しておこうと名目で、翼の希望通りにあいさつ回りをすることになった。
「「「こんにちは~magic starsです!今日はよろしくお願いします!」」」
「よろしく~」
「OurTube見たよ!面白かった!」
「ありがとうございます!嬉しいです!」
「ASAKIさんのライブ、めちゃくちゃ好きです!」
「見てくれているんだ。嬉しい」
「勿論ですよ!」
基本的には三人で挨拶した後、翼がアイドルたちと話すという流れだった。
意外と私たちの動画を見てくれている人は多く、邪険に扱ってくる人たちは居なかったわ。
「そして最後はあの『YAMA』だよ!」
『YAMA』。今回参加するアイドルユニットの中では最も人気の高いグループらしい。リーダーのヒミコ、元気担当のサクラ、可愛い担当のココロで構成されているらしい。
翼は、その中のヒミコが大好きらしい。ルックスも性格もクールでカッコいいのが理由とのこと。
「「「magic starsです!よろしくお願いします!」」」
挨拶と共に中に入ると、『YAMA』の面々が揃っていた。
「あら。いらっしゃい」
慣れたように出迎えるヒミコさんだったけれど、見慣れているけど見慣れていない光景がそこにはあった。
「どうしたの?」
「大丈夫?」
心配そうに私に声をかけるサクラさんとココロさん。しかしそれどころでは無かった。
「アレは……?」
ヒミコさんの座っていた椅子の近くに置いてあるカバン。そこには魔法陣が描かれた紙が入っていた。
「アレ?ヒミコの趣味だよ。なんかカッコいい模様を描くのが好きなんだって」
「絵を描くのが好きだって言っていましたもんね」
「そうそう」
サクラさんと翼は何も知らないらしいが、アレはどう見ても魔法に使われるものだ。それも私が生きていた時代よりも遥か昔に使われていた奴。
「これが気になるの?よかったらあげるよ」
私の興味を察して紙を取ってきてくれた。
「ありがとうございます」
改めて中身をよく見る。確かにこれは本物だ。それも天候を変えるような大規模なもの。
「良かったら連絡先を交換しない?」
「はい」
周囲の事を忘れて観察していたら、ヒミコさんがそう申し出たので受け入れた。
これをこの人が作っているのであれば、ヒミコさんは魔法使いであり、私と同じ立場の人だ。
「私も良いですか?」
「私も」
その流れに乗って翼と凜が申し出た。
「いいよ~」
「じゃあ全員で交換しよ」
結局私たちは『YAMA』の全員と連絡先の交換をした。
「やったあ!あの『YAMA』と連絡先交換しちゃった!」
本当にあのグループが好きだったらしく、テンションが最高潮に達していた。
「とりあえずライブ終わってから。今は本番に向けて集中しよ」
「そうだね!」
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