上 下
66 / 70
第3章 世界巡り

第66話 魔物だから殺していい?っていう件

しおりを挟む

閲覧いただきありがとうございます。
誤字訂正、ご意見ご感想などもお待ちしております。
お気に入り設定など、作者の励みになります。

これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

-------------------------------------------------------------

サキュちゃんのスキルの確認結果では、
魔石同士の移動にはなんの問題もないことが分かった、
これなら、パペさんやマリさんもいずれ魔水晶へのグレードアップも可能になるかもしれない。

「マリさん聞こえる?」

「はい。ヤスト様、いかがいたしましたか?」

「ちょっと試したいことがあって、魔水晶を6個持って訓練室まで来てほしい。あとパペさんも連れてきて。」

「魔水晶の大きさはどれくらいのものが必要になりますか?」

「2つはスパさんとモクさんに使うから二人の魔石とおないくらいの大きさ、
 あとは3つづつマリさんとパペさんに使うから同じく今使っている魔石と同じ大きさのものを頼むよ。」

「了解いたしました。」

程なくして、マリさんとパペさんも訓練室に来てくれた。

まずはサキュちゃんを使って心変わりのスキルで今の高純度魔力結晶から魔水晶に移してみることを話してみた。

「マスターのお考えはわかりました。今の私でもでも十分な魔力量をいただいているにも関わらず、さらなるパワーアップを図れるのであれば、これほどうれしいことはありません。是非、お願いいたします。」

マリさんのパペさんも快く承諾してくれた。

ちなみにマリさん曰く、パペさんとマリさんは既に複数コアで行っているので、仮に失敗した場合でも、他の魔石がバックアップになるとのこと、
試してみる価値はありそうという結論になった。

最初にパペさんが志願してくれた。

「サキュちゃんよろしくね。」

「はーい。ご主人様。」

パペさんが提供してくれた高純度魔力結晶から魔水晶に心変わりをかけてもらう。
それを先ほどまで高純度魔力結晶が収められていた場所に戻す。

「それでは一旦バックアップを切り離します。」

・・・・・

「マスター。成功です。高純度魔力結晶から魔水晶への転移には何ら問題はありません。」

パペさんのお墨付きが出たことで、マリさんも同じように魔水晶に置き換える。

「おぉ今までにないほどの魔力総量です!これならかなり作業がはかどります。」

ここまではバックアップがあるマリさんとパペさんだったので問題ない。

マリさん曰く、パペさんとマリさんに入っている残り2個づつの高純度魔力結晶は、
メインとなるコアが魔水晶になったので、置換できるとのことだったので心変わりを使わずに置換を行ってもらった。

さて残るは二人、スパさんとモクさんだ。
この二人にはバックアップは今のところない。
大丈夫だろうか?

「スパさんとモクさんは高純度魔力結晶精製用の格納庫を一時的にバックアップとして使用することができるかもしれません。」
マリさんが今自分たちから取り出した高純度魔力結晶をバックアップにしてみる案を提案してくれた。

「殿、某もこちらのバックアップを使用することは可能です。何卒、パワーアップなるものをお願いいたします!」

モクさんやる気満々!いいね。

「それじゃあ、同じようにやってみようか。」

サキュちゃんの協力もあり、コアの置き換えは結果的に成功となった。

一通りみんなのグレードアップが終了した。
まぁ見た目は全く変わってないので、単純な魔力総量が増えただけなんだけどね。

「ヤスト様、ありがとうございました。しかしながら、大変恐縮ですが、失礼いたします。」

マリさんが俺にお礼を述べた次の瞬間。

---ザシュ!---

マリさんの右手には以前俺が使っていたアダマンチウムの刀が握られている。
その前方を見ると、胴体を袈裟切りにされたサキュちゃん。

「な、なんで!大丈夫か、サキュちゃん!」

俺はマリさんがいきなりサキュちゃんを切り付けた意味が全く分からなかった。

「ご主人様、私は一時でもご主人様の下僕になれて幸せでした。・・・」

笑顔のまま息を引き取るサキュちゃん。もう誰が見ても完全に致命傷。助からない。

「マリさん!なんでだ!どうしてサキュを切った!」

俺は今までマリさんにしたことがないくらい厳しい口調でその真意を問いただした。

「サキュバスは十分な知性を持ち合わせ、感情や意識共有が可能な魔物です。
 しかし魔物である以上、ヤスト様にいつ害意を持つか予測できません。
 もちろんヤスト様の新たなスキルは従順に使役させることができると想定できますが、
 ヤスト様のみならず、私たちドロイド、ひいては奥方様たちをも危機にさらしてしまう可能性があるため処分いたしました。」

「それならそれで一言、俺に相談してからでもいいじゃないか!」

「いいえ。ヤスト様はお優しい、きっと先ほどの魔物を処分するお気持ちにはならないでしょう。」

マリさんが言うのも一理ある。
先ほどのスパさんやモクさんを見ていれば、彼女の魅了はドロイドにとってはかなり有効なスキルだ。
仮にドロイドが彼女の配下に就いた場合。今の俺では止めようがなく、この遊撃隊は殲滅される。
本当に他の選択肢はなかったのか?短い時間ではあったが確かに少し情のようなものを持ち始めたところだった。
多分俺にはこれほど見事にサキュを殺せない。

しかし、解せない。何となく心にモヤモヤが残ったまま、俺は訓練室を出た。

俺は、この世界に来て数十万匹の魔物を"素材"と称して狩ってきた。
魔力からできた魔物。確かに人間とは全く別の生き物だ。
だからと言って殺していいのかが分からなかった。

俺は食欲もないまま、自分の寝室で一人、ベッドに寝そべっていた。

なんだか少し不安になってしまい、一度リングさんも外した。

「どうしたんだヤスト。夕食にも来ないからみんな心配しているぞ。」

俺を心配してヒバリさんが俺の部屋を訪ねてきた。

「ヒバリさんは魔物を殺すとき、魔物の気持ちとか考えたことある?」

「いや、ないな。向こうも襲い掛かってくるし、何より魔物を倒して素材を手に入れて、それを糧に生活しているからかな。」

俺が何やら元気がないことに気づいて、ヒバリさんが優しく接してくれる。
何となく答えが出ないと分かっている。

「ヒバリ、ちょっと相手してもらっていいか?」

「えっ?どうしたヤスト珍しいな。私はヤストならいつでも大歓迎だ。ヤストのすべてを受け止めるよ。」

俺は、何も考えず、ただ欲望が赴くままにヒバリの体を貪った。
理由も説明も何もいらない。ただ本能のままに身体を絡めあった。

俺もヒバリも何度果てたか分からない。
だけどまだモヤモヤするから抱きしめる。

本当に獣のように、何度も・・何度も・・・

俺はいつの間にか眠っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました

峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
貞操逆転で1/100な異世界に迷い込みました 不意に迷い込んだ貞操逆転世界、男女比は1/100、色々違うけど、それなりに楽しくやらせていただきます。 カクヨムで11万文字ほど書けたので、こちらにも置かせていただきます。 ストック切れるまでは毎日投稿予定です ジャンルは割と謎、現実では無いから異世界だけど、剣と魔法では無いし、現代と言うにも若干微妙、恋愛と言うには雑音多め? デストピア文学ぽくも見えるしと言う感じに、ラブコメっぽいという事で良いですか?

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

彼女の幸福

豆狸
恋愛
私の首は体に繋がっています。今は、まだ。

処理中です...