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第2章 タカギ争乱

第49話 ブライアントさんの能力はやっぱり規格外な件

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夕食も終わり、各自が部屋に戻っていく中、
俺はマリさんと一緒にブライアントさんにあるお願いをしてみた。

もともと、魔石合成の魔法陣はマリさんが王立図書館の文献から見つけてきたものだ。

マリさんに少し前に聞いた話では、合成前と合成後の物質の編成が分かれば、
魔法陣で自動化することも可能かもしれないと聞いていた。

例えばアダマンチウムとミスリル。

アダマンチウムはすごく固くて、一定以上の魔力を使って変形させることはできるが、
ハッキリ言って物理的に叩いて伸ばしたりすることは不可能。
そのうえ熱や冷気にも強いため、加工できるのはMP600を超える人に限られる。

一方ミスリルは魔力との親和性が高く、
魔法剣やタウンリングのような魔道具にも使用される。
ある程度の硬度はあるが、鉄と同じように熱による変形なども可能で、
比較的加工が容易な金属。

俺が高校生をやっていた世界でも合金というものが沢山あったが、
この世界での合金はあまり見たこともなく、
マリさんに聞いてもそういった研究の書籍や論文は見当たらなかったようだ。

あと気になっているのは魔石と水晶。

クリスタルヒューマンゴーレムから手に入れられる水晶は、
遠見の水晶や魔道通信機にも使用する。

水晶に魔法陣を刻み込み使用するのが一般的で、
大きな水晶ほど大きな魔法陣が描けるので、
遠距離魔道通信にはある程度の大きさの水晶が必要だったりする。

魔石は魔物からとれる魔力を内蔵した石の事だ。
今ではスパさん、モクさんの頑張りもあり、アダマンチウムで囲われた空間で
限界まで魔石の純度を上げることができるようになった。

一応マリさんに聞いてみたときに、その物質は"魔水晶"という物質らしく。
これはほとんど産出されず、文献だけが多少残っているようだ。
大きさの割に魔石よりも多くの魔力を内包できるらしく、
魔水晶をあしらった杖は一応国宝として王都に保管されているらしい。

遠い昔、クレインとの戦闘にこの杖が活躍し、極大魔法の連発が可能だったと
その恐ろしいほどの魔力蓄積量が書かれていたそうだ。

この二つの組み合わせに関して、合成後の物が手に入れば、
マリさんが解析して、合成の魔法陣を作ってくれるというので、
ブライアントさんに合成をお願いしに来たというわけだ。

『ブライアントさんの合成のスキルは非常に有用で、
 その合成結果を解析して本に残すだけで人類の財産になる!』
とまでマリさんに言わしめた能力なのだ。

というわけで、物資保管庫の一角にある、くつろぎスペースのような空間に案内される。

『ほっほっ。ここはわしが普段おることになる場所じゃ、
 まぁ二人ともくつろいでくれ。』

ブライアントさんは自慢のニュータカギでの初夜を子供のようにはしゃいでいる。
このじいさん今日は寝ないつもりなのか?と思うくらい元気だ。

早速、マリさんが手持ちのマジックバックから色々な素材を広げる。

まずは、アダマンチウムとミスリルから。

『わしのスキルは、合成するものの体積に応じて魔力量が必要になる。
 まぁヤストのお願いという事で、小さなものならどんどん合成してやるぞい!』

目の前で合成をやってくれるようだ。
右の手のひらにアダマンチウムとミスリルを乗せる。
ブライアントさんがゆっくりと魔力を込めると、その二つが輝きを増して合成されていく。

『ありゃりゃ。ちょいとばかしミスリルが多かったようじゃの。』

ブライアントさんの右手の上には何とも言えない光沢をもつ金属とその横に小さな金属があった。

『これはヒヒイロカネじゃな。
 わしも昔作ったことはあるが、そもそもアダマンチウムが貴重じゃから、
 目にするのは十数年ぶりかの~。』

って作ったことあったんかーい!ってまぁ確かにだれでも思いつく組み合わせではある。

『おっこれは魔水晶を作るつもりじゃな。
 しかしこれほどの純度の魔石はなかなかない。
 どれほどの魔水晶ができるか楽しみじゃの~。』
ってこっちも作ったことあるのかよ!

ゆっくりと光が収まっていき、また手のひらに2つの塊が残る。
今度は水晶が多かったようだ。

それから30分ほど色々な素材を合成してくれた。

『いや~今日はなかなか面白いもんを試させてもろうた。
 そういえばヤストのパートナーにはアヤメがおったじゃろう。
 あ奴ならば昔わしが合成したものをいくつも解析しておるから、
 その資料を見せてもらうといい。色々と面白いもんを作ったからの~。』

ブライアントさんはこういった新しいものを作り出すのが楽しいタイプらしい。
というかこのスキルともう数十年一緒にいるんだから、
確かにそうだろうな~。

『そうじゃ面白いもんを見せてやろう!』

そういってブライアントさんは右手に何も持たないまま魔力を込め始めた。

右手の上で少し宙に浮かんだ光が輝きを増していく。

そこには冷気を漂わせる四角い水晶のかけらのようなものが現れる。

『これは空気中の物質を固めて合成したものじゃ。
 外を固ーいクリスタルで多い、中は非常に冷たい物が入れてある。
 こいつのいいところはかなり長い間冷たいままな所かの~。』

ブライアントさんのスキルはかなりの魔力を使うらしいが
本当に色々と使えるようだ。

ブライアントさんが合成してくれたものたちを大事そうに手に取り
解析しているマリさんは真剣な表情だ。

『ブライアント様、この外側の物質はダイヤモンドという非常に硬い鉱物です。
その中に閉じ込めてある物質は、現状、開封してみなければわかりません。』

マリさんが解析結果を伝える。
ダイヤモンドって、あの指輪とかに使ってあった宝石じゃないか!
ブライアントさんのスキルって本当に有用。
素材なしでダイヤモンド作り出せるとかすごいと思う。

そんな感じで話しながら色々なものを作ってもらっていると、
あっという間に1時間が経っていた。

あまり遅くまでお邪魔してもしょうがないので、
ブライアントさんにお礼を言って遊撃隊専用車に戻った。

ユンユンさんがお待ちかねだったらしく、
二人で俺の寝室に行くことになった。

マリさんは今夜中にブライアントさんが作ってくれた物質を解析し、
合成の魔法陣を作りたいらしい。

みんなにお休みの挨拶をして寝室に向かった。

ユンユンさんは小柄で色白。
普段はポーション作成などを行っているのであまり筋肉質ではない。
何度が、タカギ総出のモンスター狩りで一緒になっているので、
俺としてもかなり親しみを持っている。

年齢的にはヒバリさんの少し下といった感じだが、
見た目だけで言えばかなり幼く見えるかもしれない。

ゆっくりと抱きしめ合って、唇を重ねると、
もうそれだけで柔らかな感覚に包まれて力が抜けてしまった。

お互いに相手を隅々まで愛し合ったあと、
時計の針を見ると既に夜中の12時を過ぎていた。
何度も果てたユンユンさんは満足そうに俺の胸元で寝息を立てていた。

最初は、夜伽に慣れるかどうか心配だったけど、
こうしてチームになるとすごく愛情が沸く感じが分かる。

元の世界なら、
「ユリも好き、アヤメさんもヒバリさんもユンユンさんも好き!」
とか言おうものなら気の多い浮気性な奴だと思われるかもしれない。

だけど実際に家族として一緒生活することを考えると、
「みんな大好き!みんな大事!」という感情が自然とわいてくる。
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