上 下
35 / 70
第2章 タカギ争乱

第35話 ヨシノに向けて出発の件

しおりを挟む
閲覧いただきありがとうございます。
誤字訂正、ご意見ご感想などもお待ちしております。
お気に入り設定など、作者の励みになります。

これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

-------------------------------------------------------------

俺とマリさんはまだ自室に閉じこもっている。

タカギの住民たちは続々と街に戻ってきている。

ヒバリさんがパートナーチームのみんなを招集し、
夕方の4時には総勢10人パートナーが皆、俺の部屋に集まってくれた。

俺は今日の夕食から周りのみんなとは別行動を行うことになった。
旅の支度の資金にとシズネ先生はタドコロで売った素材の収入から
1000万円を俺に渡してくれた。

パートナーには俺が狙われるといった情報ではなく
シズネ先生のお使いでみんなとは別ルートでヨシノに向かい、
テシマで合流する旨を伝えた。

まだ夜伽を済ませていない7人のパートナーは少し悲しそうにしていたが、
合流してから長期休暇が取れるという事もあり、渋々納得してくれた。

5時になり、皆は夕食に向かったが、俺はとりあえず売店にマリさんと訪れていた。

「ん~なんか新しい品物がかなり増えたね~何が必要だろうか?」

『ヤスト様、一部の魔道具は私で作成可能ですので、
 できればその材料となるものをご購入いただければ幸いです。』

それから、俺が作成できる魔物の一覧を作成したりして
マリさんが購入に適したものを選び出していく。

丁度みんなが夕食が終わったころ、ブライアントさんとも話して、
屑魔石やまだ俺が作成できない魔物の素材などをかなりの数もらった。

「この瓶詰めのセットは何ですか?」

『おおそれはシズネの頼まれておったスライム系の魔物の体液のセットじゃ。
お主が来たら渡してやるように言われておったもんじゃ。』

小さな木箱にカラフルな液体の入った瓶が8個ほど入っている。

『左からベススラにノーマルスライム、ホーリースライムにリーフスライム、
 ポイズンスライムにサンダースライム、アイススライムにフレイムスライムじゃ。
 まぁお主なら、手に持ったら分かるじゃろう。』

ブライアントさんもいろいろと俺のことを機にかけていてくれるみたいで、
色々な魔物の素材を準備していてくれたみたいだ。

「ありがとうございます。」

『よいよ、よいよ。わしも久しぶりに倉庫中を回れて楽しかったわい。』

ブライアントさんにお礼を言って一旦部屋に戻る。
荷物の準備もほとんどマリさんがまとめてくれている。

マリさんの亜空間魔法で運べるのか?と聞くと、
魔石を使わない空間固定は絶えず空間維持するために魔力が消費されるため
運べるが1日程度しか維持できないと言われた。

部屋に戻って、荷物を運ぶために、マリさんにマジックバックなる者を作成してもらう。

見た目はちょっと大きめのトートバックなのだが、
ブライアントさんにいただいた素材や当面の食料。部屋にあった本や魔道具、
生活道具や衣類なども一式収まってしまった。

「便利な道具があるもんだな~。」

『はい。これはマジックバックと言い、今ではその作り手はほとんど残っておりません。
 しかし、魔道具としてその製法や魔法陣などは各文献をより集め、製造可能と判断しました。』

マリさん曰くこれらの作り方も、沢山の文献を読んだことで
作れるようになった魔道具の一つなんだという。

バックの中身はただのだだっ広い部屋のような感じで高さは1メートルほど
中をのぞくと広さは書斎と同じ程度くらいある空間になっていた。

その床下収納のような部屋の半分を魔物の素材が占めている。
まぁ俺の生活用具なんてほとんどなかったし、
食材は最悪、食べられるモンスターを作成して食せばいい。

バタバタと準備をしているとユリが俺を呼びに来てくれた。

もうすぐ9時でシズネさんの予知ではもう少ししたところで
ヤックルが休憩を取るために停まるという頃だった。

1階にはパートナーのみんなが集まってくれていた。
既に夜伽を済ませているユリ、アヤメさん、ヒバリさん
まだ夜伽を済ませていないユンユンさん、ミズホさん、
アキコさん、ミハルさん、シズカさん、アイラさん、サエさん。
ユリ以外は皆さん基本的に年上なんだが、
普段が活動的な生活だからなのだろうか凄く若々しい。

みんなが、無事にテシマで合流できるようにと祈ってくれた。

程なく、ヤックルが停まる。

『今よ!』
ヒバリさんの合図で、すぐに馬車をタカギの外に出す。
俺とマリさんはタカギを降りて馬車に乗り込む。

時間にして1分も経たないうちにヤックルが再び動き出す。
丁度、そこにある池の水を飲むために停まったらしい。

遠く離れていくタカギの窓に、
パートナーのみんなが笑顔で手を振ってくれていた。

ヤックルは基本的に夜行性。
その為昼間は太陽の熱を吸収し体温を温めようと停止する。
逆に夜は移動して習性に従って城塞都市を目指す。

正確には各城塞都市ではにヤックルの子供が飼育されており、
親はその子供たちをめぐりながら生活している感じだ。

タカギももう少しすれば自走式の移動都市に改修できるらしいが、
今のヤックルにも愛着があるらしく、野に返してしまうのが忍びないようだ。

そんな野性味あふれるヤックルだから、夜の時間にどこで停まるかなんて
ハッキリ言って分からないものらしい。
そこはやはりシズネ先生のスキルのおかげというほかないらしい。
マリさんでも何ヵ所か候補は想定できるが、
何時にどこに停止するかまでは読めないらしい。

まぁスキルの予知と、マリさんの知識からの推理では
流石にその能力には埋めようのない差があるとしか言えない。

マリさんと相談しまずは何をしようかという話になったのだが、
とりあえず、今夜から4日はこの場所を動かずに大人しくして、
長旅の準備を整えようという事になった。

一応、馬車なのであるが実は馬がいない。
というよりも、マリさんが魔力を動力とする簡易自走式馬車にするという事で、
そもそもタドコロで馬車の荷台部分しか購入していないのである。

外側には魔物除けの認識阻害魔法が施されており、
中は空間拡張されているので、タカギの特別室より広い。

というか、こちらの世界に来てなかなか同じ部屋で
ゆっくりというわけにはいかなかった。
漸くゆっくりできる部屋になる予定だ。

トイレやお風呂はついていないのだが、
今夜のうちにマリさんが一部改装してくれるらしい。

元々、空間拡張は魔法陣と魔石を組み合わせたものであるため、
マリさんでも容易に改造できるらしい。
一旦その箱だけ馬車から外に出ると魔法陣を停止させる。
中は一度扉が付いただけの普通の馬車の箱になる。

その状態から再度魔法陣を修正し、
対応した大きさの魔石に魔力を込めて配置する。
それによってタワーマンションのリビングよりもかなり広い空間が出来上がる。
空間が出来上がったら次は防音、防寒、耐衝撃などの魔法陣を
その拡張した空間分の広さで設定する。次に各部屋の間仕切りをしていく。
玄関、廊下、キッチン、ダイニング、リビング、寝室、書斎、訓練部屋、
最後に風呂とトイレ。結局タカギの部屋と同じ間取りになった。
照明の魔道具を設置しようとしたところで、
さすがにマリさんのリジェネが追い付かず魔力が少し足りなくなるという事で
一旦俺がマナヒールで全回復させてあげた。
まだ魔力の総量ではマリさんより俺の方があるため
補給には事欠かない。
小さいながらも窓が複数あり、書斎や寝室、
リビングなど、全ての部屋で外の景色が感じられた。
強度的な問題もあり訓練室だけは外の景色が見れる窓はない。

夕食にはタカギから持ってきた携帯食を食べた。
とりあえず寝室にマリさんが持ってきていたベッドを出してもらい、
車輪付き箱だけハウスにて就寝することにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

彼女の幸福

豆狸
恋愛
私の首は体に繋がっています。今は、まだ。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...