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第1章 初めての町(タカギ)

第28話 魔道通信設備が便利すぎる件

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自分の部屋に向かうとヒバリさん、、ではなくアヤメさんが待っていた。

「あれ?アヤメさん、タドコロへの準備は大丈夫なの?」

『あっヤストさんおかえりなさい。色々渡しておくものがあって待ってたの。』

そういうと、アヤメさんは何やらバックをゴソゴソと探り出した。

『まずはこれ!』

アヤメさんが手渡してくれたのは小さな水晶がはめ込まれた指輪。

「指輪?」

『これは魔道通信機よ。まぁ単純な連絡用だから、
 この水晶の波長を知っている人なら基本誰とでも通信できるわ。
 それほど複雑な魔道具じゃないから一般的にみんな持ってるわよ。』

タウンリングといい、この通信魔道具といい、
現実世界の指輪がある意味シンプルで非常に使いやすすぎる気がしてしまうのは、
まだ学生だったほうの世界でスマホを使っていた俺が抜け切れていないからだろう。

「波長?」

『あっそうか、まだ魔力操作は初歩しか伝えてなかったわよね。』

そういいながらアヤメさんの手が俺の目を覆うようにあてがわれる。
凄くやわらかな感触と暖かい魔力が流れ込んでくる。

『魔力を込めた状態でこれが見える?』

アヤメさんが指にはめている指輪を見ると、水晶がいくつかの色に分かれて見える。

「白、黒、赤、黄、青、白?」

『そうそう、それが私の水晶の波長よ。』

アヤメさんからの話だと、魔力を込めた水晶はその魔力の波長によって
魔力的な色が変わるらしい。黒白赤青黄無緑紫橙水桃肌藍紅茶の15色。

実は魔道通信機も遠見の水晶もこれら波長を合わせて、特定の水晶とつながるようだ。
スマホになれていた俺としてはせめて数字にしてほしいと思ったが、
アヤメさん達からすればこれが普通なんだろう。

それから、10分ほど、
水晶を使った魔力色の調整方法や魔力の込め方を
アヤメさんに教わっていた。

『ヤスト~~~!今日から4日間よろしくね~~~』

ヒバリさんがやってきた。
基本俺の部屋は、パートナーメンバーは基本入れるように指輪が設定されている。
よく見ると俺のタウンリングにも魔力の波長による色分けが見えた。
これで個人識別をしているってことなんだろう。

『あっ通信機ね~。私の波長も教えておかなきゃ~』
ヒバリさんが左手にはめている指輪を見せようとしてくる。

『ヒバリさんお疲れ様です。
 ヤストさんのパートナーチームのメンバーと
 甲テーブルのメンバーの波長は紙に書き出してきましたから
 これをヤストさんに渡しておきますね~』

アヤメさんが準備万端で魔道通信の波長がいくつも書かれた紙を俺に渡してくれた。
パートナーメンバーだけでなく、遠見の水晶で見る特定の劇場の波長や、
音声を聞く際のラジオ?の波長などいろいろな波長の一覧といった感じだ。

『アヤメありがと~。あっじゃあみんなにヤストの波長も送っておこうか。』

ヒバリさんはそういって俺の指輪にコツンと指輪をぶつけた。

『じゃあこれパートナーメンバーに送っておくね~~。』

『ヒバリさんありがとうございます。あと先生とブライアントさんにも送っておいてください。』

『はいよ~~』

ヒバリさんが指輪にゆっくりと魔力を流しているのが分かる。

「さっきのコツンって指輪をぶつけたのは?」

『ああ、あればヤストさんの波長をヒバリさんの水晶が記憶したんですよ。
 水晶の大きさにもよりますけど大体ヤストさんの魔道通信水晶で50か所程度までは
 記憶できますよ。記憶した分は魔力を流しながらその人をイメージすれば繋がります。』

「おぉそれがあるならわざわざ波長覚えなくてもいいじゃん。」

『いえいえ、あくまでも通信に使う魔力は術者本人の物ですから、
 水晶はあくまで補助するだけですよ。』

それからやんややんやとアヤメさん、ヒバリさん、俺の3人で
魔道通信のお試しをしながら、30分ほど遊んでいた。

他にも部屋が拡張されたことで置かれている魔道具などの説明も受けた。

部屋はかなり広くなって、使いやすそうな作りになっていた。
部屋の扉を開けてまずはエントランスというか玄関というか、
半畳ほどのスペースがある。

正面の廊下の左手にはトイレとお風呂、洗面所がまとめられたスペース。
もちろんトイレとお風呂の扉は別々になっているが、
お風呂場は3,4人がゆっくり入れる広さの洗い場と湯船があり、
絶えず源泉かけ流し状態になっていた。

正面廊下の右手には書斎だろうか、
本棚や使いやすそうな書斎テーブルなども置いてある。
改修前の部屋に置いていた本などはここに入れてくれている。

廊下の奥の扉を開けるとキッチンダイニング。
キッチンには魔道具のコンロと冷蔵庫らしき食料保管庫が備え付けられている。
俺がこの部屋に籠ることもあるので2,3人が1週間ほど食べられるだろう食材が
ギュウギュウに詰め込んである。

キッチンダイニングの奥にはリビング。
昨日売店で見かけたラグっぽい毛皮とクッション風の塊が置いてあり、
天井からは昨日買った遠見の水晶と投影機を組み合わせた、
魔道プロジェクター的なものが取り付けられている。
ラジオ用に買っていた魔道通信機も連動されて設置されていたので、
この魔道通信機に魔力を流して、波長を変えれるらしい。
ちなみに俺の指輪にも連動させてくれて、リモコンいらずな感じだ。
魔力操作にはまだ慣れていないが、ちょっと操作すればいずれ慣れるだろう。

リビングの右側にある扉を開けると寝室になっていた。

どうやって運び込んだのだろうと思えるほど大きなベッドが備え付けられている。

ミサカさんからのプレゼントという事で、
記憶した音楽をず~っと再生し続ける発音魔道具が設置されており、
音量は同じく指輪の魔道通信機で魔力を飛ばして調節できる。

キッチンダイニング左側の扉を開けると、1階にあった儀式室のような石壁の部屋。
いくつかの道具や素材が木箱に収められていて、このまま自室でレベル上げもできそうだ。

正直、あまりにも至れり尽くせりな感じがしたが、
唯一この部屋に満足できない点があるとすれば、窓が寝室に1つしかない。
しかも大きさ的には横幅が1メートルもない程度で、それ以外の部屋は、
常時、照明の魔道具で明るく照らされていて中にいる時には時計でしか時間が分からない。
寝室だけは発音魔道具を通じて明るさを変更できるようだが、
基本的にカーテンがないので外の明かりに影響を受けるようだ。
(一応、明るさを調節できるようにするために発音魔道具を付けたらしい。)

窓から見える景色は、3階の廊下を歩くときに見える外の風景だ。
外には少し高さのある城壁のようなものが見えるので、
今見えている街並みがタドコロなのだろう。

『あっそれじゃあ最後にもう一つ、これですね。』

最後にヒバリチョウの羽が出てきた。
昨日、アヤメさんとの夜伽をしたのもあって、やっとパートナーと認められたようだ。
ユリの羽よりも少し小ぶりだが、形はきれいな木葉型。
色は少し薄い青といった感じだ。

「ありがとう。これからもよろしくね。」

『はい!』

アヤメさんは満面の笑みで応えてくれた。
新しい部屋や通信魔道具などのいくつかの魔道具の説明を終り、
アヤメさんは今日は自分の部屋で休んで明日の朝、タドコロにいくらしい。
移動都市の住人はもちろん自室で寝泊まりしてもいいし、
城塞都市で夜を明かしてもいいらしいが、月に一度のイベントのようなものなので、
大半の住人は城塞都市で連泊するらしい。

しばらくしてアヤメさんが部屋を出ていくと、ヒバリさんに何か連絡があったようだ。

俺の部屋の扉を開けに行くと、2体のマリオネットが部屋に招かれた。
マリオネット自体は誰かの付き添いがないと、部屋を自由に出入りできないようだ。

「あれ?マリオネットって2体も付いてくれるの?」

『1体は私がサルサさんから借りてきているのよ。
 最近マリオネットの制御も覚えようと思ってね。』

ヒバリさんの話では狩猟部隊でも人員不足が深刻で、
何とかマリオネットを索敵や荷運びなどで活用できないかと
チャレンジ中らしい。

『まぁとりあえず、夕食を作ってもらいましょうか。』

1体のマリオネットにヒバリさんが指示して夕食を作ってもらう。
そもそも、あまり複雑な命令はできないようで、焼くだけとか煮るだけとか
逐次指示を出すしかないようだ。
ちなみに、サルサさんはこれを駆使してタカギの町の住民の食事を作成しているらしい。

つくづくこの町のみんなはすごい人ばかりだ。
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