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8章 中年は平和を望んでみる
第97話 魅了との再会って話
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家族揃っての食事は本当に美味しかった。
カリテは彼女を連れてくるし、ウリテはとにかく食べまくる。
ニテは早速カリテの彼女と仲良くなっていたし、
私とカリテは今後のチェスターについて色々な建築物の話をした。
今は深夜。夜明けまでまだかなり時間がある。
私はリーデンスに教えてもらった広域の気配探知で今は王都のエリス教本部を探知している。
30分ほど前にもう一人の私と思われる大きなエネルギーを感知した。
まさかチェスターにいる私まではいくら何でも強制送還されないだろうとは思いつつ、
もう一人の私の反応が消えるまではここでおとなしくしているつもりだ。
横には幸せそうに眠りについているニテがいる。
私は一応全身を黒い洋服で包んで、いつでも出発できる準備をしている。
王都の教会裏まで転移し、すぐに異空間に入り、リリスの部屋に仕込んだ異空間に移動する。
そこから様子を確認し、隠密を発動しながらリリスの背後を取る。
何と表現していいか分からない緊張感が私を覆っている。
別にリリスの戦闘力が心配ではない。
唯一の懸念材料は、『天寿転送の腕輪』。
最悪、リリスが合言葉を唱える寸前で教会入り口まで転移できるように備えておく。
万が一にも失敗することはないと思う。
目的は『リリスの無効化』可能であれば、リリスに隷属魔法をかけ、
奴隷にした後で、天寿転送の腕輪を奪い、吸精の杖を破壊する。
どのくらい時間が経ったか分からないほど、
頭の中でリリスの部屋での動きをシュミレートしながらその時を待つ。
次の瞬間。
もう一人の私と思われるエネルギーが急速に減少し始める。
まもなくリリスが『天寿転送の腕輪』を発動する。
ニテを抱きしめる手に力が入る。
少しして、もう一人の私と思われるエネルギー反応は消えた。
不意に目をつぶってしまっていた私はゆっくりと目を開ける。
目の前にはスヤスヤ眠っているニテがいる。
<よし!もう一人の私は無事に現世に戻り、私はまだここにいる!>
効果範囲外で問題なし!
次に私は王都の教会裏に転移する。転移先に人影はない。
隠密は発動しっぱなしである。
そのまま、異空間に入り、リリスの部屋の異空間に移動する。
金貨ほどの大きさに縮めておいた異空間の入り口から部屋の内部を覗く。
もちろん、もう一人の私はいない。
部屋には素っ裸に腕輪と杖を装備したリリスだけである。
部屋までの移動に問題はなし!
一度深呼吸をしてから、再度隠密の発動中であることを確認し、
一瞬だけ異空間の入り口を広げる。
隠密の効果が切れないよう細心の注意を払いながらリリスの背後に向かう。
次の瞬間!
私がリリスに手をかけようとした瞬間、吸精の杖が砕けた。
もう一人の私は推定でもレベル400程度。
SSランクの桜花のメンバーと比べてもレベル差だけでも3倍以上ある。
そのエネルギーに吸精の杖が絶えれなかったのだろう。
そのままリリスの後ろから催眠魔法をかける。
リリスからすれば何が起こっているかすら分からないだろう。
その場に、ドサッと倒れる。
すかさず、天寿転送の腕輪を回収し、異空間に収納する。
昏睡しているリリスの背中に隷属魔法の魔法陣を刻む。
リリスは何も装備しない素っ裸のままで私を縛り付けていた椅子に拘束する。
拘束が完了したことろで覚醒魔法を発動しリリスを起こす。
「んっんんん・・・なに?え?どうなったの?吸精の杖が割れて・・・あれ何故?」
リリスはさっきまで相手を拘束していたはずなのに自分が拘束されていることに気づく。
床には割れてしまった吸精の杖の残骸が転がっている。
「えっ?えっ?リターン!、リターン!!」
何度も腕輪を発動させようとしているが、そもそも今のリリスは腕はを付けていない。
腕輪自体は異空間に収納されている。
私は、もう一人の私が着てきたであろう洋服を回収し、同じく異空間に収納する。
「えっ?何?何が起こっているの?どうして私が椅子に縛られているの?何?」
リリスはまだ、自分に隷属魔法がかかっていることすら気づいていない。
軽いパニックを起こしている。
私は、洋服を片付けた後テーブルと椅子をリリスの椅子の傍に寄せる。
そして、床に散らばった吸精の杖のかけらなどをテーブルの上に集める。
一応うるさいといけないのでこの部屋自体を防音と密閉の結界で覆う。
これで音も漏れないし、私が結界を解くか、誰かが破らない限りこの部屋には誰も入れない。
「何?何がどうなってるのサカイさん!」
<ドクンッ>
一瞬、リリスの体が跳ね上がったように見えた。
私の名前を呼んだことでリリスの体が隷属魔法に反応したのだろう。
「あっ、あっ、あっ・・」
全く状況が把握できないままにリリスは何故か言葉が出なくなっている。
私はリリスの前に椅子を持って来て座り、静かに問いかけた。
「自分が他人にしていたことを自分がされる気分とはどんな感じだい?」
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