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8章 中年は平和を望んでみる
第89話 便利は人をダメにする?って話
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作者の励みになります。
これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
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爺さんが転移したのを見送って、私は思い出したように生産ギルドに向かった。
生産ギルドで魔道具の打ち合わせをソシアとして、ギルドを出ようとしたとき、
ソシアに引き留められた。
「ちょっと相談があるんだけどいい?」
ソシアにはいつも助けられている。特にパンツとか。
「うん。いいけどどうしたの?ソシアからの相談とか珍しいね。」
「セシアの事なんだけど・・・」
話の内容はこうだ。
今チェスターの町は景気がいい。生産ギルドの収益は上々。
ソシアとセシアはそのギルドマスターやサブマスターとして何不自由ない暮らしをしている。
最近、趣向品としてお酒を飲むようになったチェスターの人々は実に活気があっていい。
しかし、飲みすぎたり、お酒に依存してしまう人が増えてきているのも事実だ。
そんな中、もう一つの懸念事項が出ている。
最初は煙草のようなものとして、安眠効果などを謳ったお香が一時期から流通し始めた。
その中の一つにセシアがドはまりしているらしく。
最新の魔道具などを取りそろえた私が作ったマンションの一室を借りて、
ここ3日ほど、出てこなくなっているらしい。
最初は病気なのかと思って様子を見に行ったりしていたが、
ここ最近は特に様子がおかしいらしく、私に様子を見てほしいという事なのである。
セシアにはダンジョンでもお世話になったりしたので、『是非力になろう!』と思い、
様子を見に行くことにした。
生産ギルドから少し歩きマンションを目指す。
ソシアから教えてもらった一室に入ると私は驚愕した。
そこにはセシアの友人だろうか、若い人も混ざって4,5人の男女が居た。
部屋の中には煙が充満しており、私は思わず魔法で自分の周辺を覆った。
浄化魔法の一種で、空気などを正常化してくれる。毒の沼などを渡るときに必要な魔法なのだが、
この部屋の空気はまさに瘴気とも呼べる煙が覆っていた。
『阿片』なのだろう。
この世界の物理法則や、石灰岩などの物質法則が現世と一緒なのは何となく理解できた。
まぁ爺さんが作った最初は現世とつながっていた世界なのだから。
という事は当然、人体に有害なものを多数存在する。
『阿片』は確かにお香の一種として、苦痛緩和や安息の効果はあるが、常用性がある。
現世で私は煙草を吸わなかったのであまりこういった常用性があるものの経験はないが、以前、女の子を求めて繁華街を彷徨った時に怪しげなハプニングバーでこの匂いを嗅いだ事がある。
私はすぐに気分が悪くなって店を出た記憶が蘇った。
しかし、『阿片』は厄介である。
一見は毒とは分からない。しかしその常用性や効果からゆっくりと肉体と精神を壊していく。
セシアが何故こんな状態になっているのかを考えると、一応生産ギルドのサブマスターとして、
色々な新商品が届く。もちろんお香の類も新商品が続々と生産ギルドに集まる。
治療自体は聖魔法でも可能だが、それで常用性までを払拭できるかは分からない。
しかも、ただの植物なのだから安息効果があると言われれば、確かにそうだと言わざるを得ない。
この世界に常用性の危険性などを説得する方法を私は思い浮かばない。
現世においてでもそれで沢山の人が死に。戦争まで起こった結果。
『麻薬』という分類ができて、取り締まり対象となっているわけである。
他にも『大麻』なども同じ麻薬としての常用性があるが、『鎮痛効果がある』と言われれば確かにそうなのである。
この世界には当然、『麻薬取締法』なんて言うものはない。
こんな辺境の町にまで流通しているという事は、私が知らないうちに王都やその周辺の貴族には蔓延している可能性がある。
まず風魔法を駆使して換気を行う。
次に催眠魔法を駆使して全員眠らせてから、聖魔法で一旦毒素を体から取り除く。
先にセシアの友人たちなのであろう、若いほぼ全裸の男女を起こし、服を着せて自宅に帰るように促す。
というか、全員このマンションの住人だったらしくそれぞれの家に帰っていった。
<なんか私の作ったマンションは変な社交場と化してしまっていたのか。>
となんだか残念な気持ちになる。
一応セシアが眠っている間に洋服を着せてあげて、優しく起こす。
ソシアが心配していたことを告げて、生産者ギルドに一緒についていく。
セシアを受付の職員に渡し、ソシアに報告に行く。
「あら、シュウさん。セシアどうだった?」
「ああ、ちゃんと起こして今受付の人に任せてきたよ、ちょっとソシアに知っていてほしいことがあって。」
それから私はソシアに『麻薬とは何か?』、『阿片』や『大麻』に関して知っている範囲で伝えた。
「まぁそんなものがあるの!確かに最近『安息香』が流行っているからセシアもかなり高い奴を買ってた気がするけど。」
「そうか。流行っているってことは既にかなり流通しているのだろう。とにかくできればチェスター内での販売は控えてほしいのと、
今はなした『常用性』に関して連絡をしてほしい。甘い毒というのもあるように、麻薬は危険だ。」
「そうなの。私も最近夜寝る前に嗅いでたからそういわれると不安だわ。」
「ああ気を付けてくれ。」
念のためソシアにも解毒の魔法をかけておいた。
常用性は精神的作用が大きいので最悪洗脳魔法のような精神魔法で解除しなければいけなくなるかもしれない。
生活が便利になり、豊かになれば、趣向品に目が行くのもわかる。
あまりにも便利になりすぎるのも考え物だ。
しかし、これだけの商品を作り出している人は、その効果を知らないのだろうか?
知っていて販売しているならハッキリ言って確信犯である。
国中で悲劇が起きるのはまだかなり先の事なんだろうか?
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