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8章 中年は平和を望んでみる
第76話 まずは先生になってみるって話
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誤字訂正、ご意見ご感想などもお待ちしております。
作者の励みになります。
これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
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私はチェスターの学校にいる。
この町に住む子供は無償でこの学校に通い、お昼ご飯まで食べることができる。
全てはキジュとステイン先生の努力の賜物で、昼食の費用やステイン先生の生活費などは
全て町が負担している。
この世界では15歳くらいになると『天啓』を授かることができるが、
小さい頃は何の『天啓』を授かるかが分からないため、
『読み』『書き』『計算』『運動』『魔法』を一通り無難に教える。
一応王都には王都魔法学院が存在する。
しかしそこはいわゆる『天啓』で魔法系のスキルを授かった人しか行かない。
それには誤った考え方があるから。
『天啓で魔法系のスキルを授からないと魔法が使えない。』
そう思われている。一部エリス教教会の思惑もあるのだろうが、
実は『洗礼』さえ受けていれば威力は低いがみんな魔法を使えるはずなのである。
もちろん小さな子はまだレベルが低く、MPも低いので使えないかもしれないが、
ある程度の年齢になれば十分、火魔法と水魔法くらいは使えるようになる。
あのリースでさえこの考え方に汚染?されていてほとんど魔法は使わない。
チェスターがまだ村だったころ、『魔法が使える人』と『魔法が使えない人』に
分かれていたことが非常に気になっていたから、一度ステイン先生に相談しようと
思っていたのだ。
「えっ?天啓も加護もなしに火魔法が使えるのですか?」
ステイン先生は『キョトン!』という表現がぴったりの顔をしている。
「まぁ正確には加護なのかもしれませんが、皆さんが受けている『洗礼』の効果なんです。」
私は王立図書館で読んだ本の知識を少しだけステイン先生に話した。
「そっそうなんですか。『洗礼』のことはあまり詳しくわからないので、一度ウカンデさんたちにも相談したいところですね。」
という事で、一緒に神殿に行くことになった。
神殿ではニテが冒険者の治療をしていた。
私が来たことを見つけて、『にこっ』っと笑顔を向けてくれた。
私は軽く手を挙げて答えると、ステイン先生と共にウカンデ神殿長の部屋を訪ねた。
「おぉステインさん、それにシュウさんもお揃いで珍しいですな。」
「はい。神殿長もお忙しそうで。少しよろしいでしょうか?」
ステイン先生とウカンデ神殿長のやり取りを聞いていると仲が良いことが分かる。
まぁお隣通しのご近所さんなのだから頻繁に会っているんだろう。
「神殿長、先日はありがとうございました。無事、洗礼を完了しました。」
私は左手の甲の聖痕を見せてお礼を言った。
「おぉシュウさんそれはよかった。また面白いところに刻みましたのぉ~」
「自分でやったもので、ここしか刻めませんでした。」
軽い挨拶を交わしてから本題に入る。
「ほ~~。火の加護なしで火魔法が使えるのですか?」
「神殿長。正確には洗礼の印の力で、軽い生活魔法程度は使えるとある書物に書いてありました。
そこで神殿長のご意見を伺いたく、ステイン先生と伺ったわけです。」
「なるほどなるほど、ん~~~正直わしの知っている範囲ではそのような人を知らぬ故何とも言えませんの~。」
「『洗礼』の効果という意味で、何かご存知のことはありますか?」
「ん~私たち神官はエリス教教本部にて研修を受け、『洗礼』の施し方や、『加護』の施し方、聖魔法により治療方法などを学びます。
その際に、いわゆる『洗礼』の印についても教えてもらえるのですが、『洗礼』はあくまでもエリス神様の元ですくすくと育つよう与えられるものです。
そのため、幼子に施すことが一般的ですなぁ~~。」
「うちに通う子供たちの中には親が忘れていて『洗礼』を受けていない子もおりました。
それらの子らにもウカンデ神殿長が『洗礼』無償で施していただきました。」
「まぁ『洗礼』には対価をいただいておりませんからの~。
基本的には生まれてきたことへの祝福という意味が込められております故。」
「なるほど~。すばらしい教義です。」
ステイン先生も子供たちのことになると非常に真剣ですごいと思う。
ウカンデ神殿長は思ったほど俗物でなくてちょっと「ほっ」とした。
私はそれではという事で、加護と魔法の関係をわかりやすいようにと、
シズンデさんとニテに闇魔法を教える提案をしてみた。
二人とも闇魔法の加護は受けてはいない。しかし、聖魔法が使えるのだから『特級』なのである。
ウカンデ神殿長的にも今現在、このチェスターの教会で『加護』を施せるのは神殿長だけなので、
シズンデさんやニテが『加護』を施せるのは非常に助かるという事だった。
それによって私が話した聖痕のランクと魔法の関係が少し分かるのではないかという事で提案してみた。
ステイン先生にはそのチャレンジができた後で、子供たちや魔法の使えない一般の人に
魔法を教えるべきかどうかを考えることにしましょう。という事になった。
それから、私は教会の祭壇の方に行き、冒険者の治療をしているシズンデさんとニテの傍に行った。
数人の冒険者がまだ待っていたようだが、ニテもシズンデさんもMP切れギリギリである。
「少しお手伝いしましょう。」
といって私がニテの傍により聖魔法を使う。私はかなりのMP量があるので回復程度ならかなり簡単である。
私が聖魔法を使ったことで、ウカンデさん、シズンデさんステイン先生、そしてニテまでも驚いていた。
「以前にルマン神殿で一応聖魔法の加護を受けましたので・・・」
と疑われないようにフォローしておいた。
(実際はもう一人の私が加護を受けている。多分ルマン神殿の台帳には私の名前がある。)
冒険者達の治療をさっさと終わらせてついでにニテに魔力を少し分けておいた。
それから、ウカンデ神殿長から、シズンデさんとニテの特訓を行うことを伝えて貰った。
私が「本当に闇魔法が使えるのか?」といった感じで見られたので、一応簡単に『闇転写』と使い、
紙に『初級』の聖痕を描いて見せた。(初級の聖痕も王都で転写した魔法陣の中にあるのでわかっている。)
ウカンデ神殿長から『なんと!』とかなり驚かれて、『王都のエリス教本部に推薦状を書いてやろうか?』と言われたが、
今はまだリリスに会うわけにはいかないので丁重にお断り申し上げた。(ニアミスしてしまいそうで危なかった。)
一応、その場にいた人には『まだもう少し冒険者を続けたいので私の魔法についてはご内密に・・』とお願いしておいた。
『冒険者を続けたい。』という理由にみんな『なるほど』と納得がいったようだ。
まずは二人に私が紙に出した『洗礼』の印(『初級』の聖痕)を覚えてもらうようにお願いした。
ちゃんと一人1枚づつ渡して、何ならそれを見ながらでも頭の中で明確にイメージしてもらうようにお願いした。
ちなみに余談ではあるがウカンデ神殿長も『天啓』持ちで彼の特別加護は『毒魔法』なんだそうだ。
上手く使うと『薬師』のように人の体を聖魔法以外の方法で治せるらしい。
シズンデさんとニテが『洗礼』や加護を行えるようになったのはそれからたった2日後だった。
ニテから『先生が逆になっちゃったね。』とほほ笑まれた。
何となく嬉しそうなので教えてよかったと思った。
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