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7章 中年は色々頑張ってみる

第70話 スキルは使えるのか?って話

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ソシアとフェダの治療を終え、冒険者ギルドに寄って、
スクロールを換金したものをみんなに分配してほしいとリーアにお願いしておいた。
よくよく考えてみると、今回のドロップ品で一番お金になったのはスクロールだ。
しかしみんなそれを私に譲ってくれていたのだ。

キジュやリース、セシアもニテもみんなそれぞれに冒険者としての経験を持っている。
だからスクロールが高価なことは知っていたはずなのである。

それを『今後の為に』という言葉で私に譲ってくれていたのだ。
結局、スクロールの代金を合わせれば一人金貨14枚。冒険者としてもかなり悪くない収入。
それぞれがギルド長やそれに準じる仕事をしているので、それほど生活に困っている風ではないが、
やはりA級というべきか、あのメンバーが揃えば、基本的に生活には困らないのだろう。
下手をすれば今よりもいい生活ができるはずである。

冒険者ギルドで再分配をお願いしていたところに、一緒についてきたニテが言った。

「みんなお金じゃなくて『やりたいか』『やりたくないか』で動いてる。
年齢的にも、もうみんな冒険者を引退しようと考えているからこそ、
この町の繁栄がいつの間にか目的になっちゃってるのよ。」

それぞれが街の仕事をして、日々の仕事に追われている。
たまに暇を見つけたら、仲間と集まって軽く酒を飲んだりする。
彼らはきっと今の暮らしが幸せなんだと思った。

私も、リリスの件がなければこのままチェスターにずっといて
ルマン領の発展やこの町の発展に尽力したい気持ちでいっぱいである。
しかし、あと数か月もしないうちにもう一人の私は領主になる。

そしてリリスに消されたあと、領主不在のブランディング領が残る。
サーシャ、ユーリナ、ミューリ、シュレームや他の人々を守らなきゃいけない。
金を持ち力を持って、正直舞い上がって調子に乗っていた私がしたことの、
ツケは清算しなければいけない。

再分配したお金で冒険者ギルドのツケは全て生産した。
それでも金貨12枚程度残ったので、ギルドの装備品も返却し、
明日、新たな自分の装備を買う事にした。

翌日の朝食をニテにおごることを約束し、その日は家に戻って眠った。

翌朝、ニテが家を訪ねてきた。二人で冒険者ギルドに向かうと、
リースが『分配受け取ったぜ、キジュにも渡しておいたから。』と挨拶をしに来てくれた。

3人でダンジョン探索がすごく楽しかったと話しながら朝食を食べ、
あのメンバーで私がレベル40になれば、多分この町で一番のチームになるだろうと言われた。

正直最高到達の80階層を超えて最深部まで到達できる可能性をリースは考えたらしい。

ニテは『私はいつでもお手伝いしますよ。』と笑って答えてくれたが、
やはり、キジュのリーダーシップのたまものだろうという事も付け加えておいた。

その後、ニテは教会に、リースはギルマスの仕事に戻り、私は街へ出た。

私は武器屋や防具屋によって、簡単な片手剣と腰ベルトなどを買って雑貨屋へと向かった。
手持ちの残りは金貨4枚ほどが残っている。簡単な雑貨を買ってから、家に戻った。

家に戻っても特にすることがないので、その後こっそりソロでダンジョンに向かった。
まぁ要するに、他にやることがないから、ただ自分を無心に鍛えることしかできなかった。

多分外は夜になったころだろう、今はダンジョンの10階でソロをやっている。
ほとんどパチンコを使った遠距離攻撃で初撃を与えてから剣で切り倒す。
複数の敵に囲まれたら逃げまくって、遠距離からパチンコ攻撃。
鉄球が無くなってからは石ころを弾にしていたが、それでも十分に10階は探索できた。
丸1日頑張ってレベルは24になっていた。1日に2ずつ上げられれば1か月ほどで40に到達できる。
もちろんレベルが上がれば上がるほど、経験値も大量に必要になるので、
そう簡単には上がらなくなるのだろうけど、とにかくコツコツやるしかなかった。

一旦、素材などを売りに街へ戻って魔石などを換金したが、金貨1枚程度にしかならなかった。
やはり、あのメンバーが強いのと、下層の素材が高いのだろう。
一応、F級で受けられる討伐クエストもいくつか達成できたので合わせて報告すると、
受付の方からE級を飛び越してD級まで上がれると言われた。
リースのギルマス権限でD級までは試験なしで行けるらしい。
ちなみにC級に上がるなら試験を受けられるとのことだった。

ダンジョンから上がって、自分がスキルスクロールを使うことを忘れていたので、
一度家に戻った。『隠密おんみつ』と『気配探知けはいたんち』。
スクロールを使ってみた。

ギルドカードを確認すると確かに特技が追加されていた。

  シュウイチ・サカイ
  役職:村人 Lv.23
  HP: 83/90  MP:82/82  PW:61  SP:59  CL:----  HL:34  LC: 74
  特技:隠密、気配探知

スキルは問題なく使えるようだ。魔法と違い聖痕などには影響を受けないのだろう。
一度初期化されて無くなったスキルではあるが、気配探知に関しては、もうほぼ熟練といった経験はある。
習得してすぐに使ってみたが、転移させられる前くらいの精度で使えることが分かった。
『感覚』というものも、もしかしたら引き継がれた『CL』の内容に依存するかもしれない。

翌日、教会のニテを訪ね、D級冒険者になったことなどを話して10階層以降にも少しずつチャレンジすることを伝えた。

その日は、建築ギルドと生産者ギルドに寄って、色々と現代の技術に関して話をしてきた。
ソシアに雑貨代を返すように言うと、先日の麻痺毒の件で助けてもらったから、十分にチャラだと言われた。

もう少しすれば、もう一人の私は王都で魔法陣の写しを取る。
魔法陣は魔法を使えなくても内在する魔力により発動が可能なはずなのだが、
ステータスを見る限り、MPはかなり低くなってしまっているので、若返りの魔法陣などはコスト的に難しいだろう。
魔法が使えない以上、魔法陣を使えば無理やりにでも魔力枯渇を起こせるので、最悪はそれでコツコツMPを上げていくしかない。
その場合、王都に作った私の自宅がそのまま使えれば、いいのだが、もう一人の私と鉢合わせする可能性も否定できない。
どちらにしてもまだ王都へ旅立つには目的のレベルには達していないわけだし、まだしばらくチェスターにいることにしようと思った。

それからさらに1週間、午前中は買い物をした後、
フェダやカリテの所に行っていろいろな道具や設備を伝え、
昼からはダンジョンに潜り深夜に帰宅。その繰り返し。

もう一人の私は、モンドさん達とも別れて王都に飛び立っているだろう。
既に空間魔法も覚えて、レベルも40を超えているはずだが、今の私はやっと30になったくらいだ。
最近では15階層までは余裕でソロ踏破できるようになっている。
貯金は金貨10枚ほど、フェダが麻痺毒のお詫びになんか作らせろとうるさいので刀を作ってもらった。
今までは片手剣だったのだが、それを小太刀代わりにして、背中にはフェダ特製の大太刀を背負っている。
キジュにもお願いして、ルマンから魔法陣関連の本や『鑑定眼』のスクロールを送ってもらった。
ルマンとチェスターの定期便のおかげで頼んだものは1週間ほどで届く。
今の私の貯金では正直『鑑定眼』のスクロールは買えないのだが、キジュが『ゴミ処理場』や『側溝』のお礼だとしてくれた。
ちなみに『側溝』は街の道路の脇に雨水などの排水の為に設置するように進言した。
道の中央を少し盛り上げ、レンガ敷にして、その両脇には『側溝』がある。側溝の水は街の南側の農作地帯付近のため池にたまる。
おかげで街の道がぬかるまなくなったし、農業用水が確保できるようになったと喜んでいた。

『側溝』以外にも『下水道』の仕組みも教えたが、ほぼ街を掘り返す必要があるため徐々に行っていくらしい。
こんなことならこれから王都で開発されるであろう、魔道トイレや魔道キッチンをケチケチせずに広めておけばよかったと少し思った。
一応、ルマン伯へお願いの手紙も出してもらった。
私が依頼人であることは言わずに、キジュの名前で出してもらった。

まず、もう少しすると私から伯爵への推薦をくれと頼まれるので承諾してほしいという事。
それを承諾したらなるべく早めに王都に出発してほしいという事。
私が魔道ライターや魔道水筒、魔道ペンなどを作っているはずなので、
少し多めにもらってチェスターに送ってほしいという事などを書いておいた。

これは私の記憶の範囲で前回の出来事を思い出し、なるべく影響がない範囲で書いて見た。
魔道キッチンや魔道トイレも一応ルマン伯にも差し上げたはずだが、いいものなので使って欲しい思って
催促しなかった。
魔道具を催促した理由は、魔道ライターや魔道水筒などの仕組みを私は知っているから、
一つあれば複製が作れるからである。
一応魔道陣は闇魔法の使えるウカンデさんに刻んでもらえるので、
最終的に私がやっていたようにプレートに魔法陣を刻んでもらって
それを組み込むようにすれば簡単に量産できると考えていた。
屑魔石を使った簡易版も、王都に先駆けて作れるのである。

更に2日経ち、少しづつ状況は好転してきた。今日、魔法陣の本が届いた。

何より嬉しかったのは、ウカンデさんが色々調べて、
闇魔法が使えなくても魔法陣を刻む方法を教えてくれたことが大きい。
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