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2章 中年は村で暮らす。
第7話 白い石と村って話
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誤字訂正、ご意見ご感想などもお待ちしております。
作者の励みになります。
これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
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この村に私が来て1年ほど経った。
村にあった木造の家々は土壁の大きな家に代わっていた。
しいて言えばいくつか2階建ての家が増えた感じだ。
最近では改築依頼もなく、遊びを失った子供たちもまた昔のように遊んでいた。
そんなある日、カリテが付いてきてほしいというので森の中についていくと
私がお願いしていた白い石の超巨大版というか、白い岩山がそこにあった。
「これってシュウが言ってた石と一緒?」
足元に転がる白い小石を手に取りながら、私に見せてくる。
私がその石を確認するとまさしく目当ての石がそこにはあった。
足元一面に転がっている。
というか目の前の岩山全部がその石と同じものかもしれない。
村からはさほど遠くない。歩いて30分ほど。
村からみて草原とは反対側にある森の奥。
魔物や獣はほとんどいない。
まぁ少しいても村の近くなのでみんなの食料になる程度。
「カリテありがとう。これであってるよ。ちょっと沢山持って帰ろう。」
そういって私はそのあたりに転がる白い石を袋一杯に詰めて村に戻った。
カリテと一緒に数羽の鳥を狩って、石を入れた皮袋をもって家に帰ると、
家の前にはキジュ村長とステイン先生が私の帰りを待っていた。
「おぉ待っておったぞ。」
「おかえりなさい。シュウさん、カリテ」
「ただいま戻りました。村長なにかありましたか?」
獲物を片手にカリテが村長と先生のもとで話している。
私は1歩後ろで『何事だろう?』といぶかしげにしている。
「ちょっと今後のことでな、シュウと話したいと思っての。」
村長がそんなことを言いながら私を見てくるので、
『はぁ。どうぞ。』とばかりに私の家の中に招いた。
4畳ばかりの居間に囲炉裏を囲んで4人座るともう部屋がいっぱいな感じだ。
カリテは慣れた感じで台所に向かうと、狩ってきた獲物の解体を始めた。
石を入れた皮袋を玄関横に置き、瓶の飲み水を木の器ですくって
二人の前に置いた。
「シュウが壁の作り方をカリテに教えてくれたので、村もだいぶ発展した。」
そういったキジュはニコッと私に笑顔を振りまいてくる。
まぁ私からすれば多少、前より村らしくなったかな程度に感じる。
「はい。私も以前よりなんだか安心して眠れますわ。」
ステイン先生も土壁の家を気に入ってくれているらしい。
ちなみにステイン先生の家はこの村で一番広い床面積の家だ。
まぁ自宅兼寺小屋といった感じなので、子供たちが20人くらいは一度に入れる部屋がある。
「そこで相談なんだが、村の周りの壁の土壁にしてはくれないか?」
キジュは笑顔の奥で少しギラギラした瞳で私に問いかけた。
「私も子供たちがあんなに楽しそうに村を良くしてくれているのですごく嬉しいんです。」
ステイン先生は子供たちが生き生きとして村の作業を行っているのがたまらなく良かったようだ。
「はぁ。土壁にするのは構いませんが、基本的に今の丸太の壁に土を盛っていくだけになりますが。。。」
なんか押しの強いというか2人からズイズイ寄られて、私は逃げたい感じになっていた。
「土を張るのは構わないけど、駄賃はもらえるのか?」
奥の台所で鳥を捌き終えたカリテがひょいと顔を出しながらキジュに視線を送った。
少し、『ちッ』といった舌打ちが聞こえそうな感じでキジュはカリテを見ると話しを続けた。
「報酬は村の食糧庫から出す。まぁみんなのためになることだから問題ない。」
確かにカリテが言うのももっともである。
今までは改築依頼をした村人から報酬をもらって、
働いてくれた子供たちやその時間狩りや採取に行けなかった補填をするわけで
報酬がない仕事は誰もやらない。まぁ物々交換だから価値が決まっているわけではないが。
キジュが言っている村の食糧庫とは、狩りや採取を行った時にその一部を蓄えて置き、
狩りや採取に出れない老人や母子世帯、病人などに分けるためにみんなで共同で運営している食糧庫のことである。
キジュから言質をとったカリテはニマーッとして私にウンウンと首を縦に振って見せる。
こんな感じで村の一大事業が立ち上がったわけだ。
「村の外壁の件は了解した。ただもうちょっと待ってほしい。ちょっと試したいことがあるんだ。」
私がそういうと、3人とも『ん?』と首を傾げた。
私はおもむろに立ち上がり玄関横の皮袋から白い石を取り出した。
「ちょっとこれを使おうと思ってね。」
「それは裏山の白い石じゃねえか。そんなもんよりもう少し西にある黒い石の方が使えるんじゃないか?」
キジュは不思議そうにその白い石を見る。
彼らにとっては『使えない石』『使い道のない石』でしかないから。
ちなみに彼が言ってる『黒い石』は鍛冶のフェダがよく使っている石炭や赤鉄鉱という鉄鉱石のことで、
フェダがいることで鉄器に変えたりしてよく使っている。
魔物や獣が少ないこともあり、10歳や11歳の子は狩りの練習がてらにそれを取りに行くことがよくあった。
だからこそ、もう一つの『白い石が何になるのか?』と不思議そうにしているのである。
「これは多分、石灰岩だ。」
私がそういうと3人はさらに首を傾げて『んん?』っとなった。
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