見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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142話

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ナザンカを勝手に盗賊の頭と呼んでた男どもは、今では盗賊から足を洗ってこの海に面した国「コロンブス」で農家見習いをしていた。

その中には私がボコボコにした奴もいたからとりあえず肩に手を乗せて「すまなかったな」と言っといた。

まぁあの時は黒髪黒目の幼女だったし今は大人の姿で茶髪だからわからないと思うがな。


「はぁ…疲れた。」


あの後、元盗賊達と分かれて馬車に乗り込むとリビングのソファに座り込むなりぐったりとして天井のランプをぼーっと見つめていた。


「確かにあの熱量はとんでもない。これでも飲んで落ち着いて。」


疲れ切ったナザンカに紅茶を淹れて差し出すマアヤにありがとうと呟くとゆっくりと起き上がって静かに飲み始めた。

こいつところどころ所作がちゃんとしてるんだよな。

彼を育てた人物が教育に手を抜かないタイプだったのだろうか…と考えてしまうけどこいつの出身が不明なので考えるだけ無駄である。


「今日はゆっくり休みましょう。明日は漁師の方のお手伝いに行ってくるから。」


ここに戻ってくる前に受付嬢に明日受けたいクエストを一緒に選んで予約しておいたのだ。

せっかくなのでマアヤの作る水中で呼吸できるポーションを試してみたいし素潜りのクエストにしてみた。


「マアヤ、ポーションって作るのにどのくらい時間がかかるの?」

「煮込む時間と考えるとだいたい2時間程は必要ね。カナがスイーツ作るのよりは時間かからない。」


確かに焼いたり冷やしたりする時間を合わせると一晩とか余裕でかかるけど…ポーションって二時間でできるんだ。

付け加えるように水中で呼吸するポーションがほしいなら一晩待ってほしいと言われた。それだけ時間があれば十分だから。

ひとまずマアヤにポーションづくりを依頼し夕食作ろうとキッチンを目指すと部屋からガキどもが駆け寄ってきた。

ツキカゲとカリンが両足ずつしがみついて上目遣いをしてきたので可愛い、ギルティだわ

これからご飯を作るのでできれば離れてほしい。


「ほらほら子どもたち、ママはこれから夕食を作るんだから離れなさい。」


ケラケラ笑いながら部屋から追いかけてきたカミツレさんが二人の首根っこを掴んで離してくれた。

カリンはしょうがないなみたいな顔をしてるけど、ツキカゲは下唇を噛んで悔しそうにしてた。

ここまで甘えん坊なツキカゲはなかなか無いぞ

笑ってはいるけど内心は困っていたからカミツレさんには感謝である。


「じゃあ今日は何を作ろうかしら…」


体が子供なドラゴンが二人いるし、大人もいる、奇跡的にアレルギー持ちがいないのである程度は自由が効くけど健康も気にして作ってみよう。


「よし、オムライス作っちゃおう。」


健康思考どこ行った?みたいな発想が急に出てきて自分でもわけがわからなくなってしまった。

キッチンの前に立ち、エプロンつけて手を洗う。

昔ながらの包むオムライスもいいし今風の乗せて割るタイプも捨てがたいな。

ワクワクしながら材料を引っ張り出していると後ろから声が聞こえた。


「オムライス…?」

「そっか、オムライスって言ってもわからないか。

私の故郷で生まれた料理で洋食といって良いのかわからない洋食だよ。」


まずは火の通りにくい玉ねぎやベーコンなどを炒めましょう。

次に米とケチャップをいれて更に炒めましょう。


チキンライスはこれで完了、次に作るのは卵の部分である。


フライパンに油を注ぎ入れて火をつけます、火の強さは中火くらいがちょうどよいでしょう。というか油を温めるのは中火が常識。

温まったら溶き卵を一度に入れてすぐにフライパン全体に広げよう。卵料理は特に時間との勝負だから。

もし包むタイプのオムライスを作るなら、卵を半熟状になるまで焼いて火を止めましょう。

チキンライスを慎重にのせて手前から優しくチキンライスにかぶせてあげて、更にひっくり返すように乗せましょう。

追い打ちをかけるようにケチャップをかけてば包んで美味しいオムライスの完成です。



「久しぶりに作ったけどうまく言ってよかったわ~」


むしろなんで今までオムライスを作ってこなかったか不思議である。

多分、ツキカゲ達を見て小さな子どもでも食べられる料理ってなんだろう?と考えた結果なのだろうな。

その後もじゃんじゃん卵とお米を消費してオムライスを作っていくと、皆に行き渡って早速食べる事になった。


頂きますの合図と一緒にスプーンで一口分掬い上げて口に運ぶとその美味しさに目を丸くした。

やっぱり私は天才ね。こんなにも美味しいオムライスを作れるんだもん。

マアヤは早速ポーションを作っているため彼女の分は作っていないけど少し時間が経ってから作ってあげようかな。

頬を抑えて嬉しそうにするカミツレさんの隣にはカリンが一回り小さなオムライスを食べていた。

ツキカゲは…私にあーんをしてもらってる。

こいつ300才児って呼ぼうかしら?

これほどまでに甘えてくるとは思わなかったけどここは私から言ってやろう。


「あら、カリンはちゃんと自分で食べられて偉いわね。」

「なんだよ急に…今までもこうだっただろ?」


確かに今までも自分で食べられていた。でもこれが狙いなんだよ。

私はニコニコと笑って続けた。


「いつもやってる当たり前ができることがすごいのよ。それにできることが増えると嬉しいから更に頑張れるよね。

カリンは偉いね~」


すると隣りにいたツキカゲは頬を膨らませて私からスプーンをひったくるように取って自分で食べ始めた。


ふっ…計画通りとはまさにこの事



「あら、ツキカゲも自分で食べられる様になったの?

すごいね!成長だね!」

「このくらいできるもん…!」


はあ可愛い

もしも自分が子供を産んだらこんな感じなんだろうな

そんなことを考えながら私もオムライスを口に運んだ。



「カナ~デザートは何?」

「ハマスイカが主役のフルーツポンチ」


こうやってご飯を食べて皆で笑い合う時間が大事なんだから。



ヘラヘラ出来る時間は何時まで続くんだろうね
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