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141話
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ギルドに報告しに言った時のことだった。
どうも視線を感じるわね…今は髪の毛の色を茶に染めてるから大丈夫だと思うのだが。
あまり良い気分とは言えないわね…さっさとクエストの報告をして報酬を貰わないと。
「見つけましたぜ!」
そんな声と共に飛び出してきたのは複数人の男たち。
なんだろう…ゴブリンみたいな小物感がするのは私の気のせいか?
でも彼らがズンズンと進んで近づくのは私では無い、マアヤでもなかった。
「ようやく見つけましたよ、ナザンカのアニキ!」
まさかのナザンカでした
呼ばれた本人はと言うと、首を傾げてどちら様ですか?と言わんばかりの表情
こちらも訳が分からなくてナザンカに説明を求めた。
「ナザンカ…この小物感がすごい人達は誰なの?」
「誰って……
あぁ思い出した、こいつら俺の事を勝手にアニキって呼んでた盗賊共だ。」
思い出し方が雑だな
これには盗賊達も「ヒドイっす~!」と嘆いていた。
盗賊…アニキ……あぁ私も思い出した。
「ヘンリー王国のお貴族様が子供を攫って人身売買してた事件があったけど、そこの雇われ盗賊になった覚えない?」
「なんでそんな細かい情報を知ってるんだよお前…怖ぇよ!」
なんと心外な
確かにここまで細かい情報を言ったら怖がられるのも無理はないか。
「お前よく俺とコイツらが貴族に雇われてたの知ってたな…。」
「だってあそこの屋敷を壊滅させたの私とツキカゲ、あとカリンだもん。」
なんて説明をしたら何故かハッとした顔になって私の肩を掴んだ。
「あの時…俺の相手してた黒髪のお嬢ちゃんがカナ?
たしかにそんな気はしてたがまさかそれ程の奇跡…いやでも2頭のドラゴンが対峙してたのは俺も見てたし。
…そうか、お前だったのか。」
何故か自己解決したよこの人
偶然の出会いに笑を零しているところ悪いけど、私と君の出会いは最悪だったからね?
なんならカリンとの出会いも最悪だったし…この話はやめておくか。
それはそうと、気になる点は他にもあるぞ
「なんでヘンリー王国から遠い場所にあるコロンブスにこいつらがいるの?」
「確かに…ヘンリー王国で別れたあとの事は知らんが。」
すると、ようやく自分たちに意識が向いたと感じたのだろう。先程よりも嬉しそうな顔になり自信満々に話し始めたのだ。
「オレたち、あの日アニキに言われたことを守ってるんスよ。
この国で一から農家をはじめる為に老夫婦のところで世話になってるんスよ!」
「盗賊から足を洗って農家になった方が有意義だって言ったのアニキじゃないスか!」
そんな事言ったんだ…そしてナザンカはそれをすっかり忘れてたと。
可哀想過ぎるよ
するとナザンカはバツが悪そうにポリポリと頬をかいて目は何処を向いているのか呆れてしまうよ。
「あー…俺の言葉をそこまで真に受けるとは思わなかった。
あの時の俺は相当荒れてたからな…うん
すまなかった。」
素直に謝っているナザンカはレアなのではないか?
良かった彼にはまだ道徳心が残っていたよ。
するとジッと私の方を見つめて「またふざけたこと考えてねぇよな?」と聞いてきた時には少しだけ焦った。
ベツニソンナコトカンガエテナイヨー
必死にそっぽ向いて無実アピールすると私から意識が離れていった。
というか私と同じ考えの人が他にもいたようで
「アニキが俺達に謝った…!?」
「こんなのアニキじゃねーっ!」
「でもこれはこれで…」
「アニキ抱いてくれ~!」
おい誰かふざけてねぇか?
それにしてもよくまあこんなに慕ってくれる部下がいるなんて。
ナザンカの何かが彼らを動かすのなら、それはカリスマ性と呼べるだろう。
「そういえば…なんでナザンカは盗賊の頭になったの?」
「俺は盗賊になった覚えはねぇよ。昔から騎士だった。
今は元って着いちまうけどな…」
そういえばそうだった。
彼は隻腕のナザンカと呼ばれるほどに強い騎士だったんだ。
剣は大切な人から貰った一級品、無駄のない筋肉の付き方と耐性持ちの体
剣1本でのし上がってきたのならそりゃあ強いよな。
「騎士をやめた直後の俺は結構荒れていてな。こいつらが奇襲した時も拳で制圧してそのままふらふらと放浪しようとしたんだけどな…
どういう訳かむさ苦しい男共がついてきて勝手に盗賊の頭にされてた。」
はた迷惑な話だこと…でも笑い話としては最高だな。
くすくすと笑ってそれはお疲れ様です(笑)と言ってやれば「はっ倒すぞ」と返された。
そう言って私に勝ったことないくせに…私は初対面でお前の金的攻撃した小娘ぞ?
「まぁいい…それよりお前たち、よく頑張ったな。
これからもそうやって戦いとか悪に手を出すことなく幸せになれよ。」
なるほど、ナザンカも完全な悪にはなれないんだ。だから自分で盗賊を名乗らないってことか。
彼の言葉に目を潤ませて…というか号泣して鼻水を出してる元盗賊達はナザンカに抱きついてた。
「ア"ニ"ギィィィ!!一生づい"で行ぎばずっ!」
皆して声が汚くて聞き取れなかったけど一生ついて行くと言ったのは聞き取れた。
ナザンカは心底嫌そうな顔をして離れろと言ってるけど男達は泣きじゃくって離れようとしない。
少し距離をとってげらげらと笑っているとナザンカに後で覚えてろよとコテコテの捨て台詞を吐かれた。
言ってるがいいさ、文句を言えばお前の夕食のデザートは無しだ!
ナザンカ達がぎゃあぎゃあと騒がしいのを遠くで見ながらギルドの受付嬢に報告をしに行った。
「お願いしまーす。」
「はい、確認しました。」
受付嬢もすごいよね、これ程に素晴らしいスルースキルを持っているんだから。
ニコニコ笑顔で私だけを見てくれてるのがありがたい。
そこのうるさい男共は他人です他人。ハイ
どうも視線を感じるわね…今は髪の毛の色を茶に染めてるから大丈夫だと思うのだが。
あまり良い気分とは言えないわね…さっさとクエストの報告をして報酬を貰わないと。
「見つけましたぜ!」
そんな声と共に飛び出してきたのは複数人の男たち。
なんだろう…ゴブリンみたいな小物感がするのは私の気のせいか?
でも彼らがズンズンと進んで近づくのは私では無い、マアヤでもなかった。
「ようやく見つけましたよ、ナザンカのアニキ!」
まさかのナザンカでした
呼ばれた本人はと言うと、首を傾げてどちら様ですか?と言わんばかりの表情
こちらも訳が分からなくてナザンカに説明を求めた。
「ナザンカ…この小物感がすごい人達は誰なの?」
「誰って……
あぁ思い出した、こいつら俺の事を勝手にアニキって呼んでた盗賊共だ。」
思い出し方が雑だな
これには盗賊達も「ヒドイっす~!」と嘆いていた。
盗賊…アニキ……あぁ私も思い出した。
「ヘンリー王国のお貴族様が子供を攫って人身売買してた事件があったけど、そこの雇われ盗賊になった覚えない?」
「なんでそんな細かい情報を知ってるんだよお前…怖ぇよ!」
なんと心外な
確かにここまで細かい情報を言ったら怖がられるのも無理はないか。
「お前よく俺とコイツらが貴族に雇われてたの知ってたな…。」
「だってあそこの屋敷を壊滅させたの私とツキカゲ、あとカリンだもん。」
なんて説明をしたら何故かハッとした顔になって私の肩を掴んだ。
「あの時…俺の相手してた黒髪のお嬢ちゃんがカナ?
たしかにそんな気はしてたがまさかそれ程の奇跡…いやでも2頭のドラゴンが対峙してたのは俺も見てたし。
…そうか、お前だったのか。」
何故か自己解決したよこの人
偶然の出会いに笑を零しているところ悪いけど、私と君の出会いは最悪だったからね?
なんならカリンとの出会いも最悪だったし…この話はやめておくか。
それはそうと、気になる点は他にもあるぞ
「なんでヘンリー王国から遠い場所にあるコロンブスにこいつらがいるの?」
「確かに…ヘンリー王国で別れたあとの事は知らんが。」
すると、ようやく自分たちに意識が向いたと感じたのだろう。先程よりも嬉しそうな顔になり自信満々に話し始めたのだ。
「オレたち、あの日アニキに言われたことを守ってるんスよ。
この国で一から農家をはじめる為に老夫婦のところで世話になってるんスよ!」
「盗賊から足を洗って農家になった方が有意義だって言ったのアニキじゃないスか!」
そんな事言ったんだ…そしてナザンカはそれをすっかり忘れてたと。
可哀想過ぎるよ
するとナザンカはバツが悪そうにポリポリと頬をかいて目は何処を向いているのか呆れてしまうよ。
「あー…俺の言葉をそこまで真に受けるとは思わなかった。
あの時の俺は相当荒れてたからな…うん
すまなかった。」
素直に謝っているナザンカはレアなのではないか?
良かった彼にはまだ道徳心が残っていたよ。
するとジッと私の方を見つめて「またふざけたこと考えてねぇよな?」と聞いてきた時には少しだけ焦った。
ベツニソンナコトカンガエテナイヨー
必死にそっぽ向いて無実アピールすると私から意識が離れていった。
というか私と同じ考えの人が他にもいたようで
「アニキが俺達に謝った…!?」
「こんなのアニキじゃねーっ!」
「でもこれはこれで…」
「アニキ抱いてくれ~!」
おい誰かふざけてねぇか?
それにしてもよくまあこんなに慕ってくれる部下がいるなんて。
ナザンカの何かが彼らを動かすのなら、それはカリスマ性と呼べるだろう。
「そういえば…なんでナザンカは盗賊の頭になったの?」
「俺は盗賊になった覚えはねぇよ。昔から騎士だった。
今は元って着いちまうけどな…」
そういえばそうだった。
彼は隻腕のナザンカと呼ばれるほどに強い騎士だったんだ。
剣は大切な人から貰った一級品、無駄のない筋肉の付き方と耐性持ちの体
剣1本でのし上がってきたのならそりゃあ強いよな。
「騎士をやめた直後の俺は結構荒れていてな。こいつらが奇襲した時も拳で制圧してそのままふらふらと放浪しようとしたんだけどな…
どういう訳かむさ苦しい男共がついてきて勝手に盗賊の頭にされてた。」
はた迷惑な話だこと…でも笑い話としては最高だな。
くすくすと笑ってそれはお疲れ様です(笑)と言ってやれば「はっ倒すぞ」と返された。
そう言って私に勝ったことないくせに…私は初対面でお前の金的攻撃した小娘ぞ?
「まぁいい…それよりお前たち、よく頑張ったな。
これからもそうやって戦いとか悪に手を出すことなく幸せになれよ。」
なるほど、ナザンカも完全な悪にはなれないんだ。だから自分で盗賊を名乗らないってことか。
彼の言葉に目を潤ませて…というか号泣して鼻水を出してる元盗賊達はナザンカに抱きついてた。
「ア"ニ"ギィィィ!!一生づい"で行ぎばずっ!」
皆して声が汚くて聞き取れなかったけど一生ついて行くと言ったのは聞き取れた。
ナザンカは心底嫌そうな顔をして離れろと言ってるけど男達は泣きじゃくって離れようとしない。
少し距離をとってげらげらと笑っているとナザンカに後で覚えてろよとコテコテの捨て台詞を吐かれた。
言ってるがいいさ、文句を言えばお前の夕食のデザートは無しだ!
ナザンカ達がぎゃあぎゃあと騒がしいのを遠くで見ながらギルドの受付嬢に報告をしに行った。
「お願いしまーす。」
「はい、確認しました。」
受付嬢もすごいよね、これ程に素晴らしいスルースキルを持っているんだから。
ニコニコ笑顔で私だけを見てくれてるのがありがたい。
そこのうるさい男共は他人です他人。ハイ
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