見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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136話

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慌ててギルドに戻れば、皆に心配された。

ロビーは人が少なくてこのタイミングなら食堂も空いてるかもと思い行けばビンゴ、スムーズに席に座ってご飯が食べられて一息つけた。


「大丈夫?ツキカゲに何かされてない?」


目が据わった様子もなく、なんの悪びれもなくツキカゲ後でぶん殴ろうか?みたいな顔で言ってくるマアヤに苦笑いを向けた。

やめろ、何もされてないから肩を握る力を緩めなさい。めっちゃ痛い


「落ち着きなさいよマアヤ。ツキカゲは幼稚だからカナを独り占めしたいのに出来ない現状に落ち着かないだけよ。」


流石はお姉さん、弟のことはよく理解しているようで

彼も一番の天敵と呼ぶほどに強い姉により本音を暴露されたのか顔を真赤にして黙り込んでしまった。

こうやって見ると幼い子どもを連想してしまうから可愛らしい。

するとぷくぅと頬を膨らませて潤んだ目でカミツレさんを睨むツキカゲは狙っているのではないかと思うほどにあざとくて吹き出してしまった。


「本当に昔っから可愛い弟ね~!昔カリンと喧嘩した時に負けてこんな顔して私に八つ当たりしてたわよね。」


なにそれ気になる。

真偽を確かめるためにバッとカリンの方を向くと少し考えた素振りを見せた後に「そういえば200年前にそんなことあった気がする。」と回答した。

私これからツキカゲのこと少年ツキカゲって呼ぼうかしら。


「もういい!皆大嫌いだ!」


なんか今度は駄々こね始めたんだけど。

すると急に体を発光させて目をぎゅっと瞑り、ようやく光が収まった頃には体を縮めて地団駄を踏むのはまさに五歳児

黒髪だと色々めんどくさいのは分かりきっているので茶髪に染めていたはずがまた黒髪に逆戻りしている。




…ちょっと待て




なんで急に体が小さくなったんだよ。

するとカミツレさんはあらあらとお母さんのような顔になった。

どうやらこの現象を知っているような態度だな。そしてそれはカリンも知っているようだ。


「これ…どういうこと?」

「これはね、魔力の節約現象なの」


節約?魔力を?

カミツレさんは苦笑しながら更に説明をしてくれた


「これは私達みたいに魔力を多く保有する者によく現れる現象でね。
魔力を大量に使って体の維持が難しいのに無理に体を動かすと体を小さくして体内を流す魔力効率をあげて回復に繋げるの。」

「そういえばカナが3日ほど眠っていた時も年相応の姿を保っていたがあれもぎりぎりの状態だったんだろうな。

…で、今回恥ずかしさも相まって興奮して体内を流す魔力を無駄に消費してこうなったんだろう。

俺も花の楽園で戦った時も無理して魔力を使って体を大きくしていたがすぐに魔力が足りなくなって一週間で元のドラゴンに戻っちまった。」


背丈はカリンと変わらないようで、地団駄を踏むのをやめて欲しかったのでこっちにおいでと言えば素直に従って当然のように膝に座ってきた。

何だこれ…中身も幼くなってないか?


「あー…素のツキカゲが出てしまってるわね。

普段は元の姿だからまだ理性が働いてまともに見えるけど実際はこのくらい駄々こねるわよ。」


あれか…大人と子供で同じ意味のセリフを言わせるとしたら。


大人「…俺様に出来ないことはない。」

子供「ツキカゲできるもんっ!」


つまりはこういうことか

あと私は子供のこと猫と犬の混合種だと思ってるから。

人懐っこい一面だったりはしゃぐ姿は犬、自分の思い通りにならないとすぐに拗ねる姿は猫


「今のツキカゲは可愛い、これが弄れたトカゲになるなんて思わなかった。」

「体が小さくなったからって中身まで幼児退行したと思うなよマアヤ」


思ったより流暢に喋るわねこの少年ツキカゲ

弄れ具合と生意気さと泣き虫の様が年相応になったと言えばわかりやすいだろうか。

これが本来のツキカゲと言うなら私はそれでも相棒としていたいと言える……のかな?

この現実を受け入れるには少々時間が必要みたい。彼もしばらくはこの姿みたいだしゆっくり受け入れよう。


「…あれ?そういえばカミツレさんもツキカゲと同じタイミングで魔力をごっそり消費したような?」

「私の場合は事前に自分の魔力を培養して作ったポーションをすぐに飲んだから平気なの。

ツキカゲの魔力は採取してなかったし培養も出来なかった。だからといって魔力回復のポーションなんて持ち合わせてなかったのよ。

そうね…ツキカゲの魔力回復は本人の意識によっては早くて3日、遅くて1週間でいつもの姿を保てる程度になってるはずよ。」


なるほどね、あくまで仮定を元にした推測に過ぎないってことか。

カミツレさんも今後の旅のことを踏まえて色んなポーションや魔道具のストックを用意すると言ってくれたし、今後の旅がより安全になるといいな。


「しばらくはこの国に滞在して皆の準備が整った時にまた東を目指しましょう。」

「極東の島国だっけ…?アザレアが好きそう。」



マアヤの言葉にピクりと反応してこちらを凝視するのはルビーのような3つの瞳

手には食事の為のナイフとフォークではなく分厚い本、外から見たらアンティーク風の本の表紙だけどあれはブックカバーであり、中身は日本語の教科書。

アザレアは旅に出てからずっと私のいた世界、というか国の言葉を勉強している。

私やマアヤの他に翻訳なしの異世界語オンリーで会話ができるツキカゲに質問することが増えた。

ナザンカの目がギラギラ光ってるのは気の所為だと思いたい。私だって少し複雑だけど美女のお願いは素直に聞いてしまうのよ。

そんな美少女は


「どうしたの、アザレア?」

「…いえ、少し聞き覚えのある言葉が聞こえた気がしたので。」


どういうわけか極東の島国に反応したのだ。それともアザレアが話題に出たからなのか?

自然な流れで膝に乗ったツキカゲに切り分けた肉を食べさせながら私はアザレアの顔から目が離せない。

その後は黙々と食事を進めて何事もなかったかのように笑っていた。




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