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134話
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それは、突然起こった無意味な出来事
否、私にとっては大問題である
「マアヤ~?ちょっといいかしら~?」
「…私じゃないわよ」
嘘おっしゃい
あからさまに視線を逸らしキュッと口を結ぶ様はどう見たって何かを隠している姿
私にはわかるんだ…こいつが何をしたのか、そして彼女の後ろで満足そうな顔をしているカミツレの手元を見たらわかる。
「なんでネットショッピングの購入履歴に化学実験器具のセットが入っているのよ!
しかも2セット!」
どうやってネットショッピングまで行き着いて購入出来たか…そんなのツキカゲをお菓子で誘導した以外にない。
だってさっき馬車の運転しに行く美味しそうにマフィンを食べてたもん!
「…支払いはカナの財布から」
「正直でよろしい、一気に金貨10枚無くなって2度見したんだから。」
問題なのは私に何も言わずに買ったことだ
「反省はしてるけど後悔はしてないよ。
おかげで純度の高いポーションができた。」
あの不味いポーションの純度を高めたところで不味いものは不味いんだよ
さらに洗礼された味になっててゲロ吐きそうになった。
「でもこのポーションを商業ギルドに納品すればそこそこの稼ぎになるでしょうね。」
そう言って来たのはカミツレさん
先程まで自室に籠ってポーションを作ってたところのようで薬の匂いがふわりと鼻を掠った。
「商業ギルドねぇ…冒険者ギルドの登録しかしてないから買取は基本的にそっちでやってるかも。」
「それは素材の買取でしょ?ここまで人の手が加わったものは商品として商業ギルドに納めるのが決まりなのよ。」
そうなんだ、知らなかった。
ツキカゲは冒険者ギルドしか教えてくれなかったからな~と思っているとナザンカが馬車の運転を交代して戻ってきた。
ナザンカはこの馬車…というより皆が集まるリビングに入ると顔を顰めて開口一番に
「感覚がおかしくなる。」
というのだ。
毎回の事なのだが気持ちがわからない訳でもない。
確かに馬車に入って更に存在するはずのないドアを開けたら屋敷のような広さの空間に繋がるのだから頭がバグってもおかしくない。
「いい加減慣れなよ。この馬車を使ってもう3日は経っているのよ?」
「お前は基本外に出ないからな。
だいたいこんな綺麗な貴族用の馬車に乗る機会がなかった。」
それ以前にこれは馬車と言えるのだろうか…なんだかキャンピングカーレベル100に乗ってる気分。
「…カナ、腹が減った。」
「あらもうそんな時間?」
私の足元に近寄りぎゅっと服の裾を掴むと上目遣いでおねだりする可愛い5歳児…ではなくカリン。
確かにお腹がすいたような…というかそんなに動かないからわからないんだよね。
「時間的にはお昼時だもんね。」
ステータスに表示されている時間を確認したマアヤは面倒くさそうな顔をしながらソファから立ち上がった。
一応この旅仲間の中で料理を担当するのは私とマアヤ、理由は料理出来るやつがそれくらいしかいないから。
ツキカゲは簡単なものは作れるけど、今は馬車動かしてるので除外。姉のカミツレはあらゆる魔道具は作れても料理はからっきしダメ。
ナザンカは片手しか使えないから料理は難易度が高い。
アザレアは幽閉されていたとはいえ箱入りお嬢様なので食材を調理するという考えすらなかった。
カリンは子供なので火を使わせたくない。彼が火傷するとか怪我するとかではなくキッチンが燃えるからな。
「今日は何を食べようかしら…」
「カルボナーラ」
珍しく即答してきたのはナザンカで他に意見を言うものはいなかった。
カルボナーラね…スパゲッティよりフィットチーネの方が美味しいよね。
そういえば前にもこんな事があったよな
「あんた前に食べたカルボナーラ覚えてくれてたんだ。」
「あぁ…そういえばあれお前が作ったんだっけか。」
そうだよトーマス帝国では世話をしたわよ
なんとなくで作ったカルボナーラを美味しそうに食べてお金を払おうとしていた記憶は新しい。
ここ数ヶ月で起こった出来事があまりにも内容が濃すぎてナザンカとの思い出も薄く感じていたよ。
「じゃあお昼ごはんはカルボナーラにするか。」
「卵黄落とせ」
本当にナザンカはあのときの食べ方を気に入ったんだな。
というか卵を生で食べるという危険極まりない行為になんの疑問も持たないのはどうなのだろうか。
私の考えは他の人も抱いていたようで、怯えたような顔をしてナザンカを見つめる美少女がいた。
「ナザンカ…!卵を火に通さずに食すなんて自殺行為ですよ⁉」
「うん、それが常識なのよ」
しかしナザンカもそれはわかっているようだが少しばかり顔を俯かせた。
これは地雷だったのだろうか…過去の出来事が関係しているのだろうか。
「この旅仲間に、カナに出会うまでは食い物で死ぬのは日常茶飯事みたいな街で育ったからな…卵だってガキの頃は高級品の扱いだったし。
でも、カナが扱う食材はどれも安全だとわかっているから何でも食える。
俺の価値観を良いものに変えてくれたカナの作るものになんの不満もねぇよ。」
ナザンカ…なんやかんやで君は良い奴なんだなと思わされるよ。
ずっと生意気でダサくていざって時は助けてくれる男
カミツレさんやマアヤといった美人がいるにも関わらず、アザレアにしか好意を見せない変わり者。
「…そゆこと。私が用意したものなら大丈夫だから。」
照れ隠しに顔を逸らしてキッチンに向かうと材料の確認をすることにした。
その日は一日機嫌が良かったので出てくる料理も量が多かったし旅の道中で遭遇した魔物は全部私が一撃で仕留めた。
マアヤからはわかりやすい女と言われてしまうし、カミツレはこのノリで化学実験器具セットの件はチャラにしようとしたがそれとこれとは別だからな覚えておけ。
今日も私達は平和です。
否、私にとっては大問題である
「マアヤ~?ちょっといいかしら~?」
「…私じゃないわよ」
嘘おっしゃい
あからさまに視線を逸らしキュッと口を結ぶ様はどう見たって何かを隠している姿
私にはわかるんだ…こいつが何をしたのか、そして彼女の後ろで満足そうな顔をしているカミツレの手元を見たらわかる。
「なんでネットショッピングの購入履歴に化学実験器具のセットが入っているのよ!
しかも2セット!」
どうやってネットショッピングまで行き着いて購入出来たか…そんなのツキカゲをお菓子で誘導した以外にない。
だってさっき馬車の運転しに行く美味しそうにマフィンを食べてたもん!
「…支払いはカナの財布から」
「正直でよろしい、一気に金貨10枚無くなって2度見したんだから。」
問題なのは私に何も言わずに買ったことだ
「反省はしてるけど後悔はしてないよ。
おかげで純度の高いポーションができた。」
あの不味いポーションの純度を高めたところで不味いものは不味いんだよ
さらに洗礼された味になっててゲロ吐きそうになった。
「でもこのポーションを商業ギルドに納品すればそこそこの稼ぎになるでしょうね。」
そう言って来たのはカミツレさん
先程まで自室に籠ってポーションを作ってたところのようで薬の匂いがふわりと鼻を掠った。
「商業ギルドねぇ…冒険者ギルドの登録しかしてないから買取は基本的にそっちでやってるかも。」
「それは素材の買取でしょ?ここまで人の手が加わったものは商品として商業ギルドに納めるのが決まりなのよ。」
そうなんだ、知らなかった。
ツキカゲは冒険者ギルドしか教えてくれなかったからな~と思っているとナザンカが馬車の運転を交代して戻ってきた。
ナザンカはこの馬車…というより皆が集まるリビングに入ると顔を顰めて開口一番に
「感覚がおかしくなる。」
というのだ。
毎回の事なのだが気持ちがわからない訳でもない。
確かに馬車に入って更に存在するはずのないドアを開けたら屋敷のような広さの空間に繋がるのだから頭がバグってもおかしくない。
「いい加減慣れなよ。この馬車を使ってもう3日は経っているのよ?」
「お前は基本外に出ないからな。
だいたいこんな綺麗な貴族用の馬車に乗る機会がなかった。」
それ以前にこれは馬車と言えるのだろうか…なんだかキャンピングカーレベル100に乗ってる気分。
「…カナ、腹が減った。」
「あらもうそんな時間?」
私の足元に近寄りぎゅっと服の裾を掴むと上目遣いでおねだりする可愛い5歳児…ではなくカリン。
確かにお腹がすいたような…というかそんなに動かないからわからないんだよね。
「時間的にはお昼時だもんね。」
ステータスに表示されている時間を確認したマアヤは面倒くさそうな顔をしながらソファから立ち上がった。
一応この旅仲間の中で料理を担当するのは私とマアヤ、理由は料理出来るやつがそれくらいしかいないから。
ツキカゲは簡単なものは作れるけど、今は馬車動かしてるので除外。姉のカミツレはあらゆる魔道具は作れても料理はからっきしダメ。
ナザンカは片手しか使えないから料理は難易度が高い。
アザレアは幽閉されていたとはいえ箱入りお嬢様なので食材を調理するという考えすらなかった。
カリンは子供なので火を使わせたくない。彼が火傷するとか怪我するとかではなくキッチンが燃えるからな。
「今日は何を食べようかしら…」
「カルボナーラ」
珍しく即答してきたのはナザンカで他に意見を言うものはいなかった。
カルボナーラね…スパゲッティよりフィットチーネの方が美味しいよね。
そういえば前にもこんな事があったよな
「あんた前に食べたカルボナーラ覚えてくれてたんだ。」
「あぁ…そういえばあれお前が作ったんだっけか。」
そうだよトーマス帝国では世話をしたわよ
なんとなくで作ったカルボナーラを美味しそうに食べてお金を払おうとしていた記憶は新しい。
ここ数ヶ月で起こった出来事があまりにも内容が濃すぎてナザンカとの思い出も薄く感じていたよ。
「じゃあお昼ごはんはカルボナーラにするか。」
「卵黄落とせ」
本当にナザンカはあのときの食べ方を気に入ったんだな。
というか卵を生で食べるという危険極まりない行為になんの疑問も持たないのはどうなのだろうか。
私の考えは他の人も抱いていたようで、怯えたような顔をしてナザンカを見つめる美少女がいた。
「ナザンカ…!卵を火に通さずに食すなんて自殺行為ですよ⁉」
「うん、それが常識なのよ」
しかしナザンカもそれはわかっているようだが少しばかり顔を俯かせた。
これは地雷だったのだろうか…過去の出来事が関係しているのだろうか。
「この旅仲間に、カナに出会うまでは食い物で死ぬのは日常茶飯事みたいな街で育ったからな…卵だってガキの頃は高級品の扱いだったし。
でも、カナが扱う食材はどれも安全だとわかっているから何でも食える。
俺の価値観を良いものに変えてくれたカナの作るものになんの不満もねぇよ。」
ナザンカ…なんやかんやで君は良い奴なんだなと思わされるよ。
ずっと生意気でダサくていざって時は助けてくれる男
カミツレさんやマアヤといった美人がいるにも関わらず、アザレアにしか好意を見せない変わり者。
「…そゆこと。私が用意したものなら大丈夫だから。」
照れ隠しに顔を逸らしてキッチンに向かうと材料の確認をすることにした。
その日は一日機嫌が良かったので出てくる料理も量が多かったし旅の道中で遭遇した魔物は全部私が一撃で仕留めた。
マアヤからはわかりやすい女と言われてしまうし、カミツレはこのノリで化学実験器具セットの件はチャラにしようとしたがそれとこれとは別だからな覚えておけ。
今日も私達は平和です。
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