見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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130話

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 ナザンカは私よりも先に目を覚ましたらしい。

 彼も私と同じように毒にやられて動けなかったけどマアヤとカミツレのおかげで解毒が終わって体力回復の為に眠って一晩で目を覚ましたんだと。

 何その回復スピード…と思ったが私は毒の発生源の近くにいたし毒を吸った量も多いから回復に時間がかかるもんなんだと納得した。

 目覚めてすぐにナザンカのいる部屋に向かうと、そいつはいた

 いつもなら鉄製の胸当てをつけたり剣を装備している常に私に悪態をつくクソ野郎なのに、部屋にいるのは真っ白な襟付きシャツとベストを着て借りてきた猫のようにおとなしい好青年だった。

 深い緑色の長髪は綺麗に手入れされて後ろで三編みされて知的に見えるから全く知らない誰かなのでは?と思ってしまった。



「カナ…お前相変わらずチビだな。」

「良かった、お前は間違いなくナザンカだわ。」


 びっくりするくらい普段と変わらない減らず口の態度で話す私達に後ろからマアヤ「喧嘩するほど仲が良い…」と聞こえた。おだまりなさい

 スラッとした長い足を一歩前に出して、幼女の私に目線を合わせるようにしゃがむと彼は首を傾げていた。


「やっぱりお前…背丈が低すぎやしないか?」


 むしろこれでいつもと変わらない背丈とか言ったらこいつの目を疑うよ。

 私はでしょうねと口の端をヒクヒクと動かしながら呟いた。隣ではカミツレが体を震わせながら笑いをこらえていた。

 ようやくこらえていた笑いを開放するように声高らかに爆笑するにシフトチェンジをしたカミツレは勝手に私の事情を説明し始めた。


「カナは元々この姿なのよ。五歳の体と二十歳の精神…一緒に冒険するだけで面白そうよね。」


 面白そうとは言うけど、あんたお菓子につられてついて来ただけでしょうが。

 ジト目で勝手に人の秘密をバラすなと文句を言うと咳き込みを一つしてごめんと軽く謝ってきた。

 ため息を一つ、今度は私がちゃんと説明しますか。


「カミツレさんの説明は本当。私は二十歳なのに呪いなのか何なのかわからないまま五歳の体でこの世界に呼ばれたの。」

「それ言っても良かったの…?

 あっ、呼ばれたっていうのは私とカナが異世界から召喚されたってこと。」


 マアヤもちゃっかり秘密をばらして理解されやすいように説明していた。

 首を傾げていたナザンカも段々と目を丸くして驚きを隠す余裕もなく盛大に驚いていた。

 だけどすぐに落ち着いて納得はしていた


「異世界から来た…なんかわかる気がする。

 妙な造形の剣を信じられない量の魔力で纏っての戦いなんて俺でもやらないというか出来ない。

 それにあれ程の範囲を結界で覆うなんて普通はできるもんじゃねぇ、王宮魔術師と直属の部下を何人も集めないと同等かそれより劣るものができるかだからな。

 というか、任意の人物だけ結界内に入れるなんて出来るわけないだろうが!」


 へーそうなんだすごいね

 でもそんなに魔力の事情を理解してるなんて感心する。

 そういえば異世界に召喚された時、なぜ自分の体が小さくなってしまったのかわからずじまいだったな。


「なんで私は五歳の姿になっちゃったんだろうね、ツキカゲ」

「知らん」


 急に突っ撥ねてくるじゃん、なにか嫌なことでもあった?

 思いつくことなんてさっきまで泣いてたから機嫌が悪いとか?

 機嫌の悪いツキカゲに少し大人になれと注意するカミツレの姿が彼らを姉弟に見せてくれる。少しだけ羨ましく思えた。


「まぁ簡単な話、異世界から人間一人を呼び出すのは相当な魔力量が必要になる。だってこの世界に適した体を魔力で作り直して魂を入れなければならないんだから。

 マアヤとカナは同時に召喚された、本当に召喚したかったのはマアヤでカナは巻き込まれたと仮定するなら、大人のカナの体を作り直す魔力なんて足りなかったのよ。」


 なるほど、それなら納得である。

 私の体が五歳児なのは巻き込まれ召喚されたことによる偶然だったってことね。


「巻き込まれ召喚…ね、それも今思えば不可解な点が多くありますよ。」


 そう話すのはアザレアさんの叔父であり、かつてのクソ魔法野郎でもあるフラットさんだった。

 今の彼はこの街を復興するために一番働いてる人だとアザレアさんが教えてくれた。


「あの聖女召喚ではそれこそ私を筆頭とする王宮魔術師が聖女召喚の魔法陣の作成をし呪文を唱えていたのですが、毎回失敗続きで今日こそはと言う想いで行って成功したのです。

 いつもとは明らかに消費する魔力量が多かったし…それも唱える呪文を勝手に誰かが変えてそれを補う呪文を追加したりしたからでしょうね。

 でも成功した…と思えば二人呼び出されてどちらも聖女ではない。

 一方は魔力の多い光属性を持つマアヤ様、もう一方は子供にしては以上に魔力の多い悪魔族のカナ殿。」


 だから私は悪魔族じゃないっての

 ムッとした顔でそれを否定しようとするがフラットさんは被せるように説明を続けた。


「古くから、悪魔族の特徴は決まっていました。

 黒い髪と黒い瞳、そしてありえない量の魔力量を小さな体に宿した化け物…それがトーマス帝国を中心とした我々の当たり前だったのです。」


 当たり前の考えというのは変えるのが難しい、それが長い歴史の中で語り継がれていたのならなおさら。

 でもやっぱり言われている側からすればつらいものだな。

 するとマアヤはハッとして自然と下がった顔を勢いよく上げた。


「思い出した…悪魔族が何をしたのか。」


 マアヤの発言に私は意識を向けたし、フラットさんは顔をしかめて額を手で抑えた。

 更にフラットさんは彼女が何を言いたいのかわかっているようで言わない方が良いなどと言って止めていた。

 それほどに重要な情報であるならある程度の人払いとか必要なのではないか?


「…悪魔族は、トーマス帝国に対して恨みを抱いていました。

その日、聖女召喚をして呼ばれたのは女性ではなく男、貴重な魔力を大量に消費して全くの別人を呼び出してしまったことにより、当時の帝王はその場にいた王宮魔術師は良くてクビ、最悪死刑だったと記録が残っています。

 更には召喚された男は国外追放…餞別の品すら渡さなかったのですから余計に怒ったでしょうね。」


 なんてことをしたんだ当時のトーマス帝国の人達は…今よりも過激じゃんか。

 でも私が召喚された時、なぜすぐに牢屋に入れたのか?

 私を悪魔族と認識していたのならその場で殺されてもおかしくなかっただろうし。

 悪魔族を生かしておけば碌なことにならないと過去に学んでいたはずなのに。


「フラットさんって私が召喚された瞬間、見えていましたか?

 私不法侵入した子供と間違えられて牢屋に入れられたんですけど?」

「…それも不可解な点の一つなのです。確かにトーマス帝国ではカナ殿の容姿は子供であろうとその場で始末されてもおかしくはない。








 しかし私ですらあなたの姿を認識できなかった」






フラットさんの言葉に理解していないのは私だけではないようで、誰もが首を傾げていた。

なぜ私が召喚された時にフラットさんが私を認識出来なかったのだろうか

するとなにか思いついのかカミツレがフラットさんにこんなことを聞いたのだ。


「認識阻害の可能性は考えられるかしら?」

「認識阻害とは違う気がします…召喚の儀を行う空間を護衛する兵士には認識されていた、しかし悪魔族と認識できなかっただけなのです。」

「認識阻害ではなく認識の操作…幻の類を視野に入れておくと良いかもな。」


更にはツキカゲまで会話に入ってきたよ

目を覚ましてからツキカゲのキャラがわからなくなってきたよ…君は陰キャなの?俺様キャラなの?泣き虫なの?

というか当の本人を無視して考察を繰り返すとは私をなんだと思っているんだこいつらは


「暇だね…」

「本人がそれ言ったらおしまい。

そういえばカナはお腹空かないの?」


確かに私はお腹が空いている…というかマアヤの言葉に対して私の腹は思い出すように鳴り出した。

恥ずかしいったらありゃしない

フラットさんとドラゴン姉弟を置いて部屋を出るとアザレアさんにキッチンへ案内して欲しいと言った。

アザレアさんは「食事は料理人に作らせますよ?」と言われてしまったが、多分私の食べたいものは私しか作れないからと答えたらすぐに案内してくれた。

さてと、美味しいご飯を作って食べるとしますかね。



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