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129話 隻腕の騎士の備忘録
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夢を見た、過去の記憶を思い出すための夢だった。
世の中はあまりにも不公平で理不尽で幼かった子供には酷く残酷な現実であった。
親もいなければ家もない、満足に食事も取れないので必死に物を盗んでは日々を過ごしていた。
こんなガキの自分でも付加価値を見出して誘拐して身売りに出すんだから笑える。
どんなに貧しくても普通とは違っても自由があったから生きる意思は残ってた。
もし自分が売られたらどんな奴に雇われたいかなんて妄想をするくらいにはまだ心の余裕があった。
いつしか来るであろう運命を受け入れるなんて当時の自分にあったのかは分からない。
「…こいつ、いくらだ?」
師であるジジイに出会うまでは
見た目はジジイなのに首から下は筋骨隆々で騎士の鎧が良く似合う。それなのに大きなマントを羽織って見えにくいようにしているのには訳があるのだろうか。
ガキの当時は見たことの無い鎧の紋章だが、今思えば彼は3つ離れた国から遠征でやって来たので知らないのも当然だった。
誘拐されて、商品にされて、買われて…それがたったの3日で起きたので混乱しそうである。
「なんでも子供のうちから育てれば立派になる。
見たところ病気もない、無駄に頑丈な腹のおかげで病気にもなった事ないみたいだな。」
べらべらと喋りながら自分の歩幅の大きさに気づかずにどんどん先に歩いていくので走って追いかけるのも精一杯
ふと考えたのは、逃げても良いのでは無いかというもの。
ピタリと立ち止まり素早く方向転換をすると一目散に逃げ出した。
全部が上手くいくなんて事はこの世の中ではありえないようですぐに失敗したのだが。
突然首を絞める痛みにその場で膝をつき、更には来た道を戻るように引っ張られたのだ。
目に見えない首枷と鎖がそこにはあったんだと気づいた瞬間、自分は絶対に逃げられないと運命が決まって絶望した。
「これは…!あの商人余計な事しかしねぇな。」
強制的に戻されてジジイの怒る顔を見て何がなんだか分からないガキの自分はその時起きた出来事をただ呆然と見ているだけだった。
気づけば自分を商品と扱った奴にジジイは苦情を言いに行ってさっさとこの魔の鎖を外せと言っていた。
商人はなぜそんな事をしなければならないのか訳が分からない様子だった。
するとジジイは堂々と周りにも聞こえる大声でこう言い出した。
「こいつは俺の後継者だ。我が子同然のガキに鎖をつける趣味は俺にはねぇ!」
めちゃくちゃなジジイだった
どうしてこんな事になったのか訳が分からないのに勝手に買われて勝手に詳細も知らない後継者にされたのだから。
でも初めて自分を我が子同然と言ってくれた。それが当時の自分にとって不思議すぎる感覚だった。
このジジイは自分を我が子と呼ぶのかと、自分はその言葉に甘えても良いものかと不安になった。
その後、ジジイは自分を奴隷ではなく後継者であり息子として扱うと言って魔の鎖を外してまた逃げるかもしれないガキに自由に動ける権利を与えた
だというのにこれから一緒に3つも離れた国に帰るぞと言い出したのだ。
「お前、名前と年は幾つだ?」
「……。」
答えなかったのでは無い、答えられなかったのだ。
誰も自分の名前なんて呼んでくれやしないし、自分がいつ生まれたのかも分からない。
とにかく生きるのに必死だったから全部後回しにしていた。
ジジイに何も分からないと正直に答えれば無理もないか…と呟いてため息をついた。
なら初めにやる事はお前の個人証明だと言って適当な店に入りだした。
初めは本屋、でもジジイは「頭の良すぎる名前はお前に合わねぇ」なんて言って本屋を出ていった。
次に食材の並ぶ市場、次に武器、更には宿屋に行って宿の名前の由来なんか聞いてた。
どれもピンと来なかったらしい
それどころか本屋でガキの頭に読み書きを叩き込むための学習本を買って、3つも国を移動するからと食糧を買って、更には後継者には剣術を教えるからと子供の手にあった小さな木の剣を買った。
宿屋の部屋に入って軽装に着替えたジジイは俺を風呂に入らせて新しい服に着替えるように言ってきた。
後継者とか我が子と言われても結局は奴隷、命令には素直に従うべきだ。
「なんも思いつかねぇな…それどころか他の準備ばかり進む。」
「…何も知らない、あんたの事」
そういえばそうだったとジジイは笑ってた。
よいしょと腰掛けていたベッドから立ち上がると騎士のように敬礼をしてバカ真面目に挨拶をしてきたのだ。
当時はそのほとんどを理解出来ずに首を傾げてもっと分かりやすく説明しろと要望を出したくらいである。
「ガキに必要なのは教養だな…まあいい
俺はギルバード・フォレシュタイン。トーマス帝国で騎士をしている。
俺は結婚する気は無いが後継者は欲しいってことでお前を買ったという訳だ。」
本当は買う以外の方法で出会いたかったものだと言っていたが、不本意以外の何ものでも無いのでそっぽ向いた。
ジジイは何を思ったのか可愛げのあるやつと解釈して笑いガキの頭を雑に撫で回したのだ。
「可愛いやつだな~そうだ、花だ
可愛いガキの名前は花からつけよう」
とんでもないジジイ騎士だった
ふざけんなジジイと反発すれば、あちらは相当ショックだったようで少し俯いたがすぐに顔を上げて「俺は38歳だ!」と返してきた。
髭を剃ればまともに見えるはずなのになぜ剃らないのだろうか…未だに謎である。
翌日、筋骨隆々な騎士がこじんまりとした花屋にガキを連れて訪れた。
見た目ジジイの騎士ひとつひとつ花を見比べてどれがいいかなんて悩んでいたから花屋の店員は素晴らしいが誤った解釈をしていた。
「お孫さんと花探し…奥様へのプレゼントですか?」
「えっ…あ、いやその…その…。」
なぜ吃る
店員にまで勘違いどころかジジイ扱いされた事にショックを受けたジジイは半分泣きながらも適当な花を2輪、孫と勘違いされたガキの前に差し出した。
「これなんかどうだ?こっちがナスタチウムでこっちがサザンカだ。」
どちらも自分に全くあっていない色合いの花だ。
緑の葉とオレンジ色に咲き乱れるナスタチウムと、深い緑の葉と添えられたように咲くピンク色のサザンカはどう考えてもミスマッチである。
自分は深緑色のワカメのようにうねった髪の毛と空を写し取った水色の目を持つというのに目の前の花は自分に合ってないのだ。
「そうか?俺はお前にこんな花みたいになって欲しいな。
ナスタチウムの花言葉は勝利と愛国心、サザンカの花言葉はひたむきさと困難に打ち勝つ。
騎士らしいだろ?」
それは完全にジジイのエゴである。
そんなものに付き合ってられないと深くため息をついて花屋を出ていこうとした。
「待てサザンカ!…それともナスタチウムの方が…?」
「女々しい名前で呼ぶんじゃねぇよジジイ!」
こればかりは怒った。ふざけるなと
自分には今まで名前がなかったからいきなり自分自身を決めつけられたような気がして腹が立ったんだ。
「俺に名前はなかった、それが全てだったのに善人者振るのはやめろ!」
「善人者振るって…そうしねぇと騎士なんかやってられねぇんだから当たり前だろ?
ナスタチウム、いやサザンカ?」
だから花を名前にするのはやめろと怒った
その場から離れようとしても今度はジジイがひょいと軽々担いで阻止したのだ。
「まぁ待てよ、どうせこの国にいたところでまた売りに出されるのがオチだぞ。
それよりも俺についてきたほうが有意義ってものだ」
「あんたの事情なんて知ったこっちゃない!」
子供なりにプライドがあって、国を大事にしたい気持ちがあったはずなんだ。
でも今思えばあんな国は滅んで正解だったと思えるようなクズと呼ぶにふさわしい国、どうでも良いものである。
3つも離れたトーマス帝国に行くなんて大冒険でもあり不安でしかないのだ。駄々をこねるなんて当然だ。
「俺は絶対にあんたに従わない!」
「おい待てっ!」
また逃げた
宛なんてない、生まれた時から何も無い自分は逃げて住民しか知らないような裏路地を通って誰にも気付かれやしない隠れ家に身を潜めた。
誰の指図も受けたくない、自分の存在が消えてしまうような気がしたから。
膝を抱えて泣いて自分は自分であると強く言い聞かせた。
そしてあの時は憔悴していたのだろう
だって背後の気配にすら気づけないのだから
あぁ、子供とはなんて哀れなのだろうか
小さくて弱くて情けない、守るべき大人がいなければ簡単に食べられてしまう。
天涯孤独の子供は同じ子供同士の仲間と組んで行動するが、自分はそんなことしなかった。
よく他人にバカにされて喧嘩に持っていくと全てを圧倒させる強さでのし上がってきた。
だが多勢を前に一人ぼっちの自分は為す術もないのだ。
それは鬱憤晴らしか何度も殴る蹴るの繰り返しを身に受けて知らない場所へ連れて行かれた
朦朧とした意識の中見た景色は神殿のような場所で、自分の命の保身のための生贄にされるのではないかと思うようになってきた。
でも自分の命が脅かされていると自覚した瞬間わずかに残った体力で抵抗した。でも無駄だった。
自分はもう終わるのだと理解した時には視界が暗くなり意識を手放そうとしていた。
最後の最後、自分を包む温もりがなんなのかよく理解出来ずに
目が覚めた、自分は助かったらしい。
フカフカのベッドで眠って起きたら知らない場所、唯一わかるのは自称師匠兼親と名乗ったジジイが俺のそばを離れずに目覚めを待っていたということだ。
なぜそこまでして気にしてくるのかわからなかった。でもジジイ曰く「自分の貫く正義が息子を救い出す為の勇気をくれた。」そうだ。意味がわからない。
でもきっかけはこれだったんだ。
目の前にいる恩人がくれた全てを自分なりの形にして返したくなった。
だから俺は「ナザンカ」になった
騎士になる為に武術を学んで読み書きを覚えて戦略を学んだ。
辛い事や苦しい事は数えられない程あるが、その反面幸せな瞬間はもっと数えられない程あった。
子供時代の闇が晴れた一瞬の幸せだ。
世の中はあまりにも不公平で理不尽で幼かった子供には酷く残酷な現実であった。
親もいなければ家もない、満足に食事も取れないので必死に物を盗んでは日々を過ごしていた。
こんなガキの自分でも付加価値を見出して誘拐して身売りに出すんだから笑える。
どんなに貧しくても普通とは違っても自由があったから生きる意思は残ってた。
もし自分が売られたらどんな奴に雇われたいかなんて妄想をするくらいにはまだ心の余裕があった。
いつしか来るであろう運命を受け入れるなんて当時の自分にあったのかは分からない。
「…こいつ、いくらだ?」
師であるジジイに出会うまでは
見た目はジジイなのに首から下は筋骨隆々で騎士の鎧が良く似合う。それなのに大きなマントを羽織って見えにくいようにしているのには訳があるのだろうか。
ガキの当時は見たことの無い鎧の紋章だが、今思えば彼は3つ離れた国から遠征でやって来たので知らないのも当然だった。
誘拐されて、商品にされて、買われて…それがたったの3日で起きたので混乱しそうである。
「なんでも子供のうちから育てれば立派になる。
見たところ病気もない、無駄に頑丈な腹のおかげで病気にもなった事ないみたいだな。」
べらべらと喋りながら自分の歩幅の大きさに気づかずにどんどん先に歩いていくので走って追いかけるのも精一杯
ふと考えたのは、逃げても良いのでは無いかというもの。
ピタリと立ち止まり素早く方向転換をすると一目散に逃げ出した。
全部が上手くいくなんて事はこの世の中ではありえないようですぐに失敗したのだが。
突然首を絞める痛みにその場で膝をつき、更には来た道を戻るように引っ張られたのだ。
目に見えない首枷と鎖がそこにはあったんだと気づいた瞬間、自分は絶対に逃げられないと運命が決まって絶望した。
「これは…!あの商人余計な事しかしねぇな。」
強制的に戻されてジジイの怒る顔を見て何がなんだか分からないガキの自分はその時起きた出来事をただ呆然と見ているだけだった。
気づけば自分を商品と扱った奴にジジイは苦情を言いに行ってさっさとこの魔の鎖を外せと言っていた。
商人はなぜそんな事をしなければならないのか訳が分からない様子だった。
するとジジイは堂々と周りにも聞こえる大声でこう言い出した。
「こいつは俺の後継者だ。我が子同然のガキに鎖をつける趣味は俺にはねぇ!」
めちゃくちゃなジジイだった
どうしてこんな事になったのか訳が分からないのに勝手に買われて勝手に詳細も知らない後継者にされたのだから。
でも初めて自分を我が子同然と言ってくれた。それが当時の自分にとって不思議すぎる感覚だった。
このジジイは自分を我が子と呼ぶのかと、自分はその言葉に甘えても良いものかと不安になった。
その後、ジジイは自分を奴隷ではなく後継者であり息子として扱うと言って魔の鎖を外してまた逃げるかもしれないガキに自由に動ける権利を与えた
だというのにこれから一緒に3つも離れた国に帰るぞと言い出したのだ。
「お前、名前と年は幾つだ?」
「……。」
答えなかったのでは無い、答えられなかったのだ。
誰も自分の名前なんて呼んでくれやしないし、自分がいつ生まれたのかも分からない。
とにかく生きるのに必死だったから全部後回しにしていた。
ジジイに何も分からないと正直に答えれば無理もないか…と呟いてため息をついた。
なら初めにやる事はお前の個人証明だと言って適当な店に入りだした。
初めは本屋、でもジジイは「頭の良すぎる名前はお前に合わねぇ」なんて言って本屋を出ていった。
次に食材の並ぶ市場、次に武器、更には宿屋に行って宿の名前の由来なんか聞いてた。
どれもピンと来なかったらしい
それどころか本屋でガキの頭に読み書きを叩き込むための学習本を買って、3つも国を移動するからと食糧を買って、更には後継者には剣術を教えるからと子供の手にあった小さな木の剣を買った。
宿屋の部屋に入って軽装に着替えたジジイは俺を風呂に入らせて新しい服に着替えるように言ってきた。
後継者とか我が子と言われても結局は奴隷、命令には素直に従うべきだ。
「なんも思いつかねぇな…それどころか他の準備ばかり進む。」
「…何も知らない、あんたの事」
そういえばそうだったとジジイは笑ってた。
よいしょと腰掛けていたベッドから立ち上がると騎士のように敬礼をしてバカ真面目に挨拶をしてきたのだ。
当時はそのほとんどを理解出来ずに首を傾げてもっと分かりやすく説明しろと要望を出したくらいである。
「ガキに必要なのは教養だな…まあいい
俺はギルバード・フォレシュタイン。トーマス帝国で騎士をしている。
俺は結婚する気は無いが後継者は欲しいってことでお前を買ったという訳だ。」
本当は買う以外の方法で出会いたかったものだと言っていたが、不本意以外の何ものでも無いのでそっぽ向いた。
ジジイは何を思ったのか可愛げのあるやつと解釈して笑いガキの頭を雑に撫で回したのだ。
「可愛いやつだな~そうだ、花だ
可愛いガキの名前は花からつけよう」
とんでもないジジイ騎士だった
ふざけんなジジイと反発すれば、あちらは相当ショックだったようで少し俯いたがすぐに顔を上げて「俺は38歳だ!」と返してきた。
髭を剃ればまともに見えるはずなのになぜ剃らないのだろうか…未だに謎である。
翌日、筋骨隆々な騎士がこじんまりとした花屋にガキを連れて訪れた。
見た目ジジイの騎士ひとつひとつ花を見比べてどれがいいかなんて悩んでいたから花屋の店員は素晴らしいが誤った解釈をしていた。
「お孫さんと花探し…奥様へのプレゼントですか?」
「えっ…あ、いやその…その…。」
なぜ吃る
店員にまで勘違いどころかジジイ扱いされた事にショックを受けたジジイは半分泣きながらも適当な花を2輪、孫と勘違いされたガキの前に差し出した。
「これなんかどうだ?こっちがナスタチウムでこっちがサザンカだ。」
どちらも自分に全くあっていない色合いの花だ。
緑の葉とオレンジ色に咲き乱れるナスタチウムと、深い緑の葉と添えられたように咲くピンク色のサザンカはどう考えてもミスマッチである。
自分は深緑色のワカメのようにうねった髪の毛と空を写し取った水色の目を持つというのに目の前の花は自分に合ってないのだ。
「そうか?俺はお前にこんな花みたいになって欲しいな。
ナスタチウムの花言葉は勝利と愛国心、サザンカの花言葉はひたむきさと困難に打ち勝つ。
騎士らしいだろ?」
それは完全にジジイのエゴである。
そんなものに付き合ってられないと深くため息をついて花屋を出ていこうとした。
「待てサザンカ!…それともナスタチウムの方が…?」
「女々しい名前で呼ぶんじゃねぇよジジイ!」
こればかりは怒った。ふざけるなと
自分には今まで名前がなかったからいきなり自分自身を決めつけられたような気がして腹が立ったんだ。
「俺に名前はなかった、それが全てだったのに善人者振るのはやめろ!」
「善人者振るって…そうしねぇと騎士なんかやってられねぇんだから当たり前だろ?
ナスタチウム、いやサザンカ?」
だから花を名前にするのはやめろと怒った
その場から離れようとしても今度はジジイがひょいと軽々担いで阻止したのだ。
「まぁ待てよ、どうせこの国にいたところでまた売りに出されるのがオチだぞ。
それよりも俺についてきたほうが有意義ってものだ」
「あんたの事情なんて知ったこっちゃない!」
子供なりにプライドがあって、国を大事にしたい気持ちがあったはずなんだ。
でも今思えばあんな国は滅んで正解だったと思えるようなクズと呼ぶにふさわしい国、どうでも良いものである。
3つも離れたトーマス帝国に行くなんて大冒険でもあり不安でしかないのだ。駄々をこねるなんて当然だ。
「俺は絶対にあんたに従わない!」
「おい待てっ!」
また逃げた
宛なんてない、生まれた時から何も無い自分は逃げて住民しか知らないような裏路地を通って誰にも気付かれやしない隠れ家に身を潜めた。
誰の指図も受けたくない、自分の存在が消えてしまうような気がしたから。
膝を抱えて泣いて自分は自分であると強く言い聞かせた。
そしてあの時は憔悴していたのだろう
だって背後の気配にすら気づけないのだから
あぁ、子供とはなんて哀れなのだろうか
小さくて弱くて情けない、守るべき大人がいなければ簡単に食べられてしまう。
天涯孤独の子供は同じ子供同士の仲間と組んで行動するが、自分はそんなことしなかった。
よく他人にバカにされて喧嘩に持っていくと全てを圧倒させる強さでのし上がってきた。
だが多勢を前に一人ぼっちの自分は為す術もないのだ。
それは鬱憤晴らしか何度も殴る蹴るの繰り返しを身に受けて知らない場所へ連れて行かれた
朦朧とした意識の中見た景色は神殿のような場所で、自分の命の保身のための生贄にされるのではないかと思うようになってきた。
でも自分の命が脅かされていると自覚した瞬間わずかに残った体力で抵抗した。でも無駄だった。
自分はもう終わるのだと理解した時には視界が暗くなり意識を手放そうとしていた。
最後の最後、自分を包む温もりがなんなのかよく理解出来ずに
目が覚めた、自分は助かったらしい。
フカフカのベッドで眠って起きたら知らない場所、唯一わかるのは自称師匠兼親と名乗ったジジイが俺のそばを離れずに目覚めを待っていたということだ。
なぜそこまでして気にしてくるのかわからなかった。でもジジイ曰く「自分の貫く正義が息子を救い出す為の勇気をくれた。」そうだ。意味がわからない。
でもきっかけはこれだったんだ。
目の前にいる恩人がくれた全てを自分なりの形にして返したくなった。
だから俺は「ナザンカ」になった
騎士になる為に武術を学んで読み書きを覚えて戦略を学んだ。
辛い事や苦しい事は数えられない程あるが、その反面幸せな瞬間はもっと数えられない程あった。
子供時代の闇が晴れた一瞬の幸せだ。
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