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123話
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毒花の庭を抜け、木々に囲まれた屋敷が見えれば更に警戒を強めた。
「ナザンカ、フラットさん
領主について知っていることを教えて」
この街の領主について現在わかっていることは、フラットさんの実の兄で鬼人に進化した元人間であること、アザレアさんの父親であること。
そして、愛していた奥さんを亡くした悲しみで街中を巻き込んでアザレアさんに関する記憶を消したこと。
アザレアさんを思い出したら自分が妻を亡くしたことを思い出してしまう、そして愛しい妻を殺したのは自分の娘であることを認めたくなかったのだろう。
娘を殺したくない、でも娘を視界に入れたら怒りと悲しみで殺したくなるのだろう。
「ただの妄想に過ぎないわね…」
「失礼な、考察と言いなさい。
実際、兄はアザレアを大事にはしている
そうでなければあんな塔の周りに毒花を咲かせて毒耐性のある護衛を雇わないだろう。」
確かにフラットさんの解釈はあっているのかもしれない。
でも、それは愛と呼ぶには気持ちが悪いよ
「余所見とは随分と愚かだな」
その瞬間
ナザンカよりも一回り大きい影から放たれる殺気は背筋が凍るなんてものでは表現できないほどに恐ろしく、腕を小さく降るだけの動作は辺りの木々をなぎ倒し地面にヒビが入るほどだった。
危なかった、咄嗟にフラットさんが守りの結界を張ってくれなかったらどうなっていたことやら。
「フラットさんってそんなに強かった?」
「本当に私の神経を逆なでするようなことばかり言いますね…
伝説のドラゴン直々に魂を導かれて復活したのです、今の兄の攻撃に対応するほどには能力の底上げがされていますよ。」
確かに納得
私に負けるくらいだったのが今の強力な一撃を防ぐなんて信じられなかったから。
「悪魔族に愚弟に裏切り者…一体何をどうしたらそのような組み合わせになる?」
やっぱり私は悪魔族扱いなのね
そんなわけ無いでしょ、今は人間出会ってこれからも悪魔族になる気は全くと言って良いほどに無いのよ。
「兄弟揃って同じことを言う…というか領主さんってトーマス帝国出身?」
悪魔族の概念が広く知られているのはトーマス帝国だけかこの世界全体か…私が旅の中で黒目黒髪を見せた瞬間は少なかったから私のわからない常識が多すぎる。
「お前知らないのか?この街はトーマス帝国の人間が観光しやすいように作られた街だぞ?」
「つまりはこの街はトーマス帝国の支配下であり私と兄はトーマス帝国からこの街に移住して街を発展させてきた者なのです
いくら異世界人とは言え知っておくべき常識なのでは?」
君たちは私の敵なのか味方なのかはっきりしなさい
おだまりと言ってアイテムボックスからハリセンを取り出し頭をひっぱたくと、領主に向けてビシッと指をさした。
「言っておくけど私は悪魔族じゃない!
私の世界にはこの容姿は普通だったんだからね?そっちこそ異世界の常識ぐらい知っておくべきじゃないのかしら?」
「私が異世界の常識など知る必要ないだろう?
悪魔族は脅威の象徴…この街にいられては街に厄災が降り注ぐ。
今この場で始末してやる」
足を軽く踏み込んだときには、領主は私の目の前まで迫ってきていた。
これはまずいと認識したと同時に首を捕まれて真後ろの木に縫い付けるように強い衝撃で押さえつけてきた。
「あ…がぁ……!」
「カナッ!」
首を強く掴まれて息が出来ない
圧倒的な身長差で足は位置メートル以上浮いて不安定な体を首だけで支えることになっている。
痛くて苦しくてなんで私はこんな目にあっているのか、その理不尽さに涙が出た。
いや、これは生理的な涙だ
どうにか肺に残った酸素で脳を働かせて手に魔力を練ると手を銃の形にして闇魔法を放った。
ツキカゲと一緒に覚えた最効率魔法だ
どうにか首から手が離れても、浮いた足で上手く着地なんて出来ずに膝から崩れるように落ちた。
「ゲホッ…ゲホゲホ…!」
「小さなあがきだな…しかし愚弟とは比べ物にならないほどに圧縮された魔法弾は脅威
やはり悪魔族に違いない」
だから悪魔族じゃないっての
しつこい男に怒りでどうにかなってしまいそうだけど、冷静になってハルカゼを握った。
ふわりと舞う風はまるで大丈夫?と言っているようで優しい風が頬を撫でた。
今なら行ける
ぐっと足に力を入れて構えの姿勢を取ると、身体強化された体を名一杯動かして領主に攻撃を仕掛けた。
「春風旋回・蔓巻藤!」
体を捻って全体で風を纏うと、掠っただけだが領主に当たった。
更に相手が距離をおいたのを狙って春風乱舞で攻めた。
「しつこい上に小賢しい…さっさと私に倒されろ、悪魔族!」
「お断りよ!」
鬼のように鋭い爪を私に向けて突き立てるが、間に一本の剣が割り込んで私は後退をやめた。
私の仲間、何かと縁のある友人だった
「旦那様…俺はあんたが目を背けたいと思い続けていたアザレア嬢に恋したんだ。
あんたがいらないのなら、俺がお嬢を連れ去ってやるよ!」
堂々と娘さんを僕にくださいと言い出したナザンカの神経には驚かされた。
流石に領主も怒り狂う一歩手前まで来てるぞ
「黙れ…雇われ者の分際であの塔に登りよって…
貴様のような騎士団の恥が偉そうなことを口にするな!!!」
…は?
ナザンカの行動にも驚いた、もっと驚いたのはお前
「ナザンカ…騎士団にいたの?」
「ナザンカ、フラットさん
領主について知っていることを教えて」
この街の領主について現在わかっていることは、フラットさんの実の兄で鬼人に進化した元人間であること、アザレアさんの父親であること。
そして、愛していた奥さんを亡くした悲しみで街中を巻き込んでアザレアさんに関する記憶を消したこと。
アザレアさんを思い出したら自分が妻を亡くしたことを思い出してしまう、そして愛しい妻を殺したのは自分の娘であることを認めたくなかったのだろう。
娘を殺したくない、でも娘を視界に入れたら怒りと悲しみで殺したくなるのだろう。
「ただの妄想に過ぎないわね…」
「失礼な、考察と言いなさい。
実際、兄はアザレアを大事にはしている
そうでなければあんな塔の周りに毒花を咲かせて毒耐性のある護衛を雇わないだろう。」
確かにフラットさんの解釈はあっているのかもしれない。
でも、それは愛と呼ぶには気持ちが悪いよ
「余所見とは随分と愚かだな」
その瞬間
ナザンカよりも一回り大きい影から放たれる殺気は背筋が凍るなんてものでは表現できないほどに恐ろしく、腕を小さく降るだけの動作は辺りの木々をなぎ倒し地面にヒビが入るほどだった。
危なかった、咄嗟にフラットさんが守りの結界を張ってくれなかったらどうなっていたことやら。
「フラットさんってそんなに強かった?」
「本当に私の神経を逆なでするようなことばかり言いますね…
伝説のドラゴン直々に魂を導かれて復活したのです、今の兄の攻撃に対応するほどには能力の底上げがされていますよ。」
確かに納得
私に負けるくらいだったのが今の強力な一撃を防ぐなんて信じられなかったから。
「悪魔族に愚弟に裏切り者…一体何をどうしたらそのような組み合わせになる?」
やっぱり私は悪魔族扱いなのね
そんなわけ無いでしょ、今は人間出会ってこれからも悪魔族になる気は全くと言って良いほどに無いのよ。
「兄弟揃って同じことを言う…というか領主さんってトーマス帝国出身?」
悪魔族の概念が広く知られているのはトーマス帝国だけかこの世界全体か…私が旅の中で黒目黒髪を見せた瞬間は少なかったから私のわからない常識が多すぎる。
「お前知らないのか?この街はトーマス帝国の人間が観光しやすいように作られた街だぞ?」
「つまりはこの街はトーマス帝国の支配下であり私と兄はトーマス帝国からこの街に移住して街を発展させてきた者なのです
いくら異世界人とは言え知っておくべき常識なのでは?」
君たちは私の敵なのか味方なのかはっきりしなさい
おだまりと言ってアイテムボックスからハリセンを取り出し頭をひっぱたくと、領主に向けてビシッと指をさした。
「言っておくけど私は悪魔族じゃない!
私の世界にはこの容姿は普通だったんだからね?そっちこそ異世界の常識ぐらい知っておくべきじゃないのかしら?」
「私が異世界の常識など知る必要ないだろう?
悪魔族は脅威の象徴…この街にいられては街に厄災が降り注ぐ。
今この場で始末してやる」
足を軽く踏み込んだときには、領主は私の目の前まで迫ってきていた。
これはまずいと認識したと同時に首を捕まれて真後ろの木に縫い付けるように強い衝撃で押さえつけてきた。
「あ…がぁ……!」
「カナッ!」
首を強く掴まれて息が出来ない
圧倒的な身長差で足は位置メートル以上浮いて不安定な体を首だけで支えることになっている。
痛くて苦しくてなんで私はこんな目にあっているのか、その理不尽さに涙が出た。
いや、これは生理的な涙だ
どうにか肺に残った酸素で脳を働かせて手に魔力を練ると手を銃の形にして闇魔法を放った。
ツキカゲと一緒に覚えた最効率魔法だ
どうにか首から手が離れても、浮いた足で上手く着地なんて出来ずに膝から崩れるように落ちた。
「ゲホッ…ゲホゲホ…!」
「小さなあがきだな…しかし愚弟とは比べ物にならないほどに圧縮された魔法弾は脅威
やはり悪魔族に違いない」
だから悪魔族じゃないっての
しつこい男に怒りでどうにかなってしまいそうだけど、冷静になってハルカゼを握った。
ふわりと舞う風はまるで大丈夫?と言っているようで優しい風が頬を撫でた。
今なら行ける
ぐっと足に力を入れて構えの姿勢を取ると、身体強化された体を名一杯動かして領主に攻撃を仕掛けた。
「春風旋回・蔓巻藤!」
体を捻って全体で風を纏うと、掠っただけだが領主に当たった。
更に相手が距離をおいたのを狙って春風乱舞で攻めた。
「しつこい上に小賢しい…さっさと私に倒されろ、悪魔族!」
「お断りよ!」
鬼のように鋭い爪を私に向けて突き立てるが、間に一本の剣が割り込んで私は後退をやめた。
私の仲間、何かと縁のある友人だった
「旦那様…俺はあんたが目を背けたいと思い続けていたアザレア嬢に恋したんだ。
あんたがいらないのなら、俺がお嬢を連れ去ってやるよ!」
堂々と娘さんを僕にくださいと言い出したナザンカの神経には驚かされた。
流石に領主も怒り狂う一歩手前まで来てるぞ
「黙れ…雇われ者の分際であの塔に登りよって…
貴様のような騎士団の恥が偉そうなことを口にするな!!!」
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ナザンカの行動にも驚いた、もっと驚いたのはお前
「ナザンカ…騎士団にいたの?」
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