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117話
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地下室で見たものはあまりにも理解しがたいもの
罪のない民が毒の花園に入っただけで罪人扱いされて牢屋に閉じ込められるとは…でも毒の花は匂いを嗅いだりするだけで体を蝕む恐ろしいものであることがマアヤの力によって判明した。
どうして毒の花園に近づいてしまったのだろうか?
そう聞けば民は口を揃えてこう言った。
「忘れてはならない誰かが塔にいた気がしたから。」
塔にいるのはアザレアさんただ一人だ。でも塔に閉じ込められている理由もわからないのが現状だ。
私はまた聞くことにした
なぜ塔に誰かがいると思ったのですか?その者は誰ですか?
すると当然のように答えるんだ
「それはそれは誰よりも美しい宝石、あのお方が宝石を塔に隠した。」
なんというかふわふわし過ぎていて頭を抱えてしまう
宝石をアザレアと言い換えているのなら、誰がアザレアさんを塔に隠したんだろう?
でも体調が良くなる度に記憶の整理が追いついてきているようだ。
そんな中、一人目立つかのような大きい声を上げた少女の声が聞こえた。
「思い出した!女の子だよ!
ばあちゃんに何度もお話として聞かされた領主様が隠した女の子!」
こんなにも小さな女の子すら毒に体を蝕まれていたのかと思うと胸が痛くなる。
そして少女は周りの民に思い出してほしいと言った。
彼女は領主の手によって存在をなかったことにされた哀れな令嬢であることを。
「ばあちゃんだけじゃなくてこの街に暮らす人達なら皆知ってる!
領主様が最も愛した花嫁の子!」
その瞬間、すべてを思い出したのか地面に座り込んで涙を流す人々に何も知らない私達は困惑した。
少女の言葉が鍵となってこんな状況になるなんて予想できたほうがすごいだろう。
「思い出した…我ら花楽園の民は奪われてしまったんだ!」
「領主様の命令で亡くなった奥様とご子女様の記憶を奪って存在を隠したのじゃ…」
ひとまず落ち着いてほしいと皆をなだめていると、一体何を思い出したのかをわかりやすく説明してくれと頼んだ。
そこで聞いた話はあまりにも悲しい過去の記憶
領主が隠したかったのかなかったことにしたかったのかが明らかになる。
花の楽園とも言われているこの街が最も尊敬する領主様
領主様が愛した奥方はとても美しく大事に花園に囲まれて守られている様子から、街の民は領主様がどれほど奥方を愛していたのかわかりきっていた。
領主様の機嫌が良ければ街の花は元気になるのがこの街の当たり前の現象。
奥方が嫁入りしてからはずっとそんな日々が続いていた。
二人の間に子ができるまで
種族の違いは愛し合う者同士に取っては足かせがあまりにも邪魔であった。
もとから体の弱い奥方が出産までの道のりだけでも命がけ、母子ともに健康である確率は低すぎる。
領主様は子供の出産に反対した。
自分の子供と奥方の命を天秤にかける状況下の中で領主様は迷うことなく奥方を選ぶ程に奥方を大切に想っていた。
しかし母は強い
旦那、使用人、医者…大勢に反対されようとて彼女の意志を変えることは出来なかった。
領主様は何度も堕胎の計画を立てたが奥方は必死に腹の子を守り出産の日を迎えたのだ。
母の命と引換えに生まれた子供は小さく弱々しい呼吸を繰り返すだけのとても儚い生命体
赤い目と真っ白な短い髪の毛はすべて母親のもの、本当に奥方が産んだ子供だと思わされるほどに愛らしいものだった。
しかし、領主様は自身の子供を愛することができなかった
最も愛する奥方の命を奪ったのが目の前にいる娘であるという事実は苦痛以外の何でもなかったから。
だからといって殺すことは自分の愛した奥方を無駄死にさせた裏切りにもなってしまうと判断した領主様は娘を殺さずに存在をなかったコトにしたのだ。
高いレンガ造りの塔に閉じ込めるという方法で、すべての人々から娘に関する記憶を消し去って。
今でも彼女は一度も外に出ることなく毒花の園という名の檻の中で息をするのだ。
誰にも知られることなくずっと一人で永遠に
罪のない民が毒の花園に入っただけで罪人扱いされて牢屋に閉じ込められるとは…でも毒の花は匂いを嗅いだりするだけで体を蝕む恐ろしいものであることがマアヤの力によって判明した。
どうして毒の花園に近づいてしまったのだろうか?
そう聞けば民は口を揃えてこう言った。
「忘れてはならない誰かが塔にいた気がしたから。」
塔にいるのはアザレアさんただ一人だ。でも塔に閉じ込められている理由もわからないのが現状だ。
私はまた聞くことにした
なぜ塔に誰かがいると思ったのですか?その者は誰ですか?
すると当然のように答えるんだ
「それはそれは誰よりも美しい宝石、あのお方が宝石を塔に隠した。」
なんというかふわふわし過ぎていて頭を抱えてしまう
宝石をアザレアと言い換えているのなら、誰がアザレアさんを塔に隠したんだろう?
でも体調が良くなる度に記憶の整理が追いついてきているようだ。
そんな中、一人目立つかのような大きい声を上げた少女の声が聞こえた。
「思い出した!女の子だよ!
ばあちゃんに何度もお話として聞かされた領主様が隠した女の子!」
こんなにも小さな女の子すら毒に体を蝕まれていたのかと思うと胸が痛くなる。
そして少女は周りの民に思い出してほしいと言った。
彼女は領主の手によって存在をなかったことにされた哀れな令嬢であることを。
「ばあちゃんだけじゃなくてこの街に暮らす人達なら皆知ってる!
領主様が最も愛した花嫁の子!」
その瞬間、すべてを思い出したのか地面に座り込んで涙を流す人々に何も知らない私達は困惑した。
少女の言葉が鍵となってこんな状況になるなんて予想できたほうがすごいだろう。
「思い出した…我ら花楽園の民は奪われてしまったんだ!」
「領主様の命令で亡くなった奥様とご子女様の記憶を奪って存在を隠したのじゃ…」
ひとまず落ち着いてほしいと皆をなだめていると、一体何を思い出したのかをわかりやすく説明してくれと頼んだ。
そこで聞いた話はあまりにも悲しい過去の記憶
領主が隠したかったのかなかったことにしたかったのかが明らかになる。
花の楽園とも言われているこの街が最も尊敬する領主様
領主様が愛した奥方はとても美しく大事に花園に囲まれて守られている様子から、街の民は領主様がどれほど奥方を愛していたのかわかりきっていた。
領主様の機嫌が良ければ街の花は元気になるのがこの街の当たり前の現象。
奥方が嫁入りしてからはずっとそんな日々が続いていた。
二人の間に子ができるまで
種族の違いは愛し合う者同士に取っては足かせがあまりにも邪魔であった。
もとから体の弱い奥方が出産までの道のりだけでも命がけ、母子ともに健康である確率は低すぎる。
領主様は子供の出産に反対した。
自分の子供と奥方の命を天秤にかける状況下の中で領主様は迷うことなく奥方を選ぶ程に奥方を大切に想っていた。
しかし母は強い
旦那、使用人、医者…大勢に反対されようとて彼女の意志を変えることは出来なかった。
領主様は何度も堕胎の計画を立てたが奥方は必死に腹の子を守り出産の日を迎えたのだ。
母の命と引換えに生まれた子供は小さく弱々しい呼吸を繰り返すだけのとても儚い生命体
赤い目と真っ白な短い髪の毛はすべて母親のもの、本当に奥方が産んだ子供だと思わされるほどに愛らしいものだった。
しかし、領主様は自身の子供を愛することができなかった
最も愛する奥方の命を奪ったのが目の前にいる娘であるという事実は苦痛以外の何でもなかったから。
だからといって殺すことは自分の愛した奥方を無駄死にさせた裏切りにもなってしまうと判断した領主様は娘を殺さずに存在をなかったコトにしたのだ。
高いレンガ造りの塔に閉じ込めるという方法で、すべての人々から娘に関する記憶を消し去って。
今でも彼女は一度も外に出ることなく毒花の園という名の檻の中で息をするのだ。
誰にも知られることなくずっと一人で永遠に
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