見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

文字の大きさ
上 下
116 / 171

114話

しおりを挟む
小さな私体を大きな体のツキカゲが抱きしめて動きも時間も止まったような感覚になった。


「人間のくせに…面倒事に首を突っ込んで無理してなんでも自分に取り込んで、俺の心さえもぐちゃぐちゃにして何が楽しいんだ。

それでお前が死んだら俺はどうなるかわかってるだろうが。」


私は忘れていた

ツキカゲとの考え方の違いで心すらも離れてしまった気がして一人で何でもやろうとした。

それがツキカゲも苦しめていることに気づかないまま

私は馬鹿であることは私自身も知っている。でも呆れるほどに大馬鹿者だった。

頑張って頑張って頑張り続けて誰かを傷つけたら意味ないじゃない。


「…ごめんね、遠くでなにをされているかわからないマアヤを助けたい一心で目の前にいるツキカゲを傷透けちゃった…。


ならここからやり直そっか、まだやり直せる

過去は変えられないけど今から作りたい未来を作ろうよ。

そのために私はこの世界を旅したい

元いた世界の手がかりと一緒にこの世界を知りたいな。」


ふわりと笑って体に回された腕を優しく撫でて解いた。

私が旅するために相棒の力が必要なことをすっかり忘れてた。


「また私の隣で教えてよ、私の知らないことを全部!」

「…ふっ

お前は初めてあったときから変わらない、俺のカナだ。

当然の一言以外に答えはない」


でしょうね

お互いにクスクスと笑って柔らかくなった雰囲気を感じると同時になぜ喧嘩をしていたのかわからなくなる。


「ごめんね…あなただって色々と考えがあったからカリンを…」

「そうか…あいつに名前を与えたのか。

感謝する、これでまたあいつに合うことができる」


ドラゴンの感覚がわからなくて首を傾げた。なぜ私が名前を与えることでツキカゲがカリンに会えるのかうまく理解できない。


「伝説のドラゴンの魂が流れ着く楽園に何故かカナは行くことができる。

おそらく異世界から来たという異質な要素が作用してカリンに会うことが出来たのだろう。

そしてお前は魂に直接名前を与えた。名前を与えられた魂は必ず名付け親のもとに惹かれるのが常識だからな。」


なんとまあファンタジーな…でも、私が名付けたカリンの魂は必ず私のもとに来るから必然的にツキカゲにも会うことができるのだろう。


「しかし気に食わないな…

俺様のカナだというのに魂だけになって密会して更には名をもらう…名前をもらうのは俺だけでいいだろうが。」


仲直りしたのと同時にめんどくさい彼氏みたいになったんだけど。

深くため息をついて抱きついてくるバカの頬を両側から引っ張ると目を見た。


「そんなのいいから…私マアヤの捜索とマーキングで疲れたからもう動けない。

あーあ、頼りになる相棒がいてくれたらな―」


その瞬間、ふわりと体が浮き上がって目線が高くなった。


「魔力の大量消費はシロに言えばポーションでもなんでももらえる。

だがお前はシロのもとに行くよりも先にマアヤを優先したいのだろ?」

「…!

当然だよ。」


鼻から垂れた血を指で拭ってまっすぐ人差し指をたてて子供のように笑った。


「いけ、ツキカゲ!」


まるで馬を動かすような無邪気な私 

それに必ず応えてくれるのはそばにいる相棒だった。


「飛ばすから耐えてみせろよ…!」

「…ってドラゴン化は流石にアウトっ‼」


そしてこいつは自重を知らない残念なイケメンドラゴンだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

傾国の悪女、リーゼロッテの選択

千 遊雲
ファンタジー
傾国の悪女、リーゼロッテ・ダントは美しすぎた。 第一王子を魅了して、国の王位争いに混乱をもたらしてしまうほどに。 悪女として捕まったリーゼロッテだが、彼女は最後まで反省の一つもしなかった。 リーゼロッテが口にしたのは、ただの一言。「これが私の選択ですから」と、それだけだった。 彼女は美しすぎる顔で、最後まで満足げに笑っていた。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...