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112話
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それはあまりにも儚くて美しい一人の少女
なぜこんなところに一人でいるのかはわからないけど、屋敷の離れにあるこの塔の上に閉じ込められているのだけはわかった。
「あの…あなたは一体」
白い肌に真紅の瞳がよく映えるうえに美しい声を持っている美少女を前にすると何を話せばよいのかわからなくなる。
この現象を私は美しいが為のチキンと呼ぶことにした…何いってんだ私は。
「待てこら…!」
どうやら私を追いかけに来た奴が一人
片手の力だけでこの塔を登ったのかと思うとアイツすごいよな。
それよりも私は彼に言いたいことが一つある
「ナザンカ…
あんたとんでもない美少女と交流を深めてたなんて聞いてないわよ!」
「はぁ?」
とぼけるなんて腹が立つなこいつ
こんなにも美しくて儚い美少女の究極系を見てしまうと金を払ったほうが良いのではないかと思ってしまう。
この野郎とワカメの首を締めたかったが乙女の視界に入れるには刺激が強い。
「ごめんなさい、少し荒ぶってしまったわ…
そりゃあ急に知らない人が自分の領域に入ってきたら誰だって警戒するわよね。」
できるだけ怖がらせないように離れて話しかけるが、まだ困惑してるみたい。
そして隣で額を抑えてため息をつくナザンカの態度にまだ苛立ちが収まらない。
「なぜここまで来ることが出来たのかはわかりませんが悪いお方では無いようですね。
私はアザレア、この塔に暮らす者です。」
暮らすって言っても周りの環境は一つの窓と必要最低限の個性を感じない質素な空間だ。
というかアザレアなんて素敵な名前をお持ちなようで少しときめいてしまった。
「あっ…!
私は山下加奈!山下が家名で加奈が私自身の名前。」
その瞬間、彼女の顔が歪んですぐに元の儚げな少女の顔に戻った。
そういえばこんなにも可愛らしい子が塔に暮らしているのだろうか。
箱入り娘で済むような場所では無いはずだ
「アザレアさんはどうしてここで暮らしているのですか?
ここはなんというか…一人で暮らすには寂しすぎるから。」
しかし彼女は首を傾げてクスクスと笑っていた。
まるでこの空間が当たり前過ぎて私の言葉に違和感を抱いてるみたい…というよりも実際にそう思ってるみたい。
「ここはとても快適な素敵な空間ですよ。
それに私がここにいるのは旦那様のお心遣いによるものです。」
すると今度はナザンカがアザレアさんの言葉に反応した。
体が震えているのは気のせいだはないはず
「…そうだ、これどうぞ!」
今朝作った薔薇のアップルパイを無限収納から取り出して差し出すと宝石を見るかのようにリンゴと同じ色の瞳を輝かせた。
元は私の分のアップルパイだけど可愛い子に貢ぎたいという思考に変換される私は随分やばいと思う。
おまわりさんこっちです
「なんて美しい薔薇の装飾…こんなに高価なものはいただけません。」
「この街で取れるアプレの実で作ったお菓子です。」
簡単なお菓子を作っただけでここまで感動されるとこちらとしてはもう少し真面目に作ればよかったと思う。
とりあえず食べてみなよと勧めていたらもったいなさそうにしている彼女だったが、ナザンカも勧めてくれた。
「大丈夫、毒はないから」
「ナザンカは私のことをなんだと思ってるの?」
こんな美少女にプレゼントするものが毒物とか…プレゼントする側の私も嫌なんだが。
でも彼の言葉のおかげでようやくアップルパイにかぶりついた彼女は目を丸くしたかと思えば私を見つめてなにか言いたげだった。
うん、ゆっくりで良いですよ
というかかわいいなこの子
「なんですかこの甘美な宝石は⁉
こんなにも素敵なものを見るのも食べるのも生まれて始めてです!」
真っ赤な瞳を輝かせたのをきっかけに私は気づいた
今まで私が見てきた彼女の瞳は感情を心に閉じ込めた人形のような瞳だったんだ…と
私はナザンカを壁に引っ張って耳元に話しかけた
「この子が外に出ない子なのはわかるけど、この数分で知識や常識に偏りがあるなんて思わなかったわ。」
「だから外に出してみたいと思ったんだよ。
だけど…塔を囲むように毒花が咲いていたらアザレアを連れていけない。」
確かにさっきマアヤが言っていたように毒花は耐性を持っている人か毒状態になったとしてもすぐに解毒薬を服用すれば対処できるって…
「そういえばマアヤを置いてきちゃった…」
塔の傍までは着いてきたけどそこからちゃんと着いてきたのか確認してなかったことを思い出して急いで窓辺に駆け寄ろうとした。
しかし
グイッ!
急に私の首根っこを掴んで一瞬にして引き寄せられたから何がなんだかわからん…が、しかし一番に理解したのは一本しかないナザンカの腕が私の動きを制止していたということだけ。
「できるだけ小さくなって俺の影に隠れろ。
言っておくがお前は侵入者であり、俺もこの塔に登ることは許されていないんだよ。」
その声に私は察した
この状況はかなりマズイのならもうマアヤは…
強く唇を食いしばって窓辺を見つめるとナザンカに言われた通りマントの影に隠れた。
幼女の姿に戻っても見えないから大丈夫でしょ
「…なぜカナさんは体が小さくなったのですか?」
隠れて姿が見えないはずなのに正体バレたんだが
なぜこんなところに一人でいるのかはわからないけど、屋敷の離れにあるこの塔の上に閉じ込められているのだけはわかった。
「あの…あなたは一体」
白い肌に真紅の瞳がよく映えるうえに美しい声を持っている美少女を前にすると何を話せばよいのかわからなくなる。
この現象を私は美しいが為のチキンと呼ぶことにした…何いってんだ私は。
「待てこら…!」
どうやら私を追いかけに来た奴が一人
片手の力だけでこの塔を登ったのかと思うとアイツすごいよな。
それよりも私は彼に言いたいことが一つある
「ナザンカ…
あんたとんでもない美少女と交流を深めてたなんて聞いてないわよ!」
「はぁ?」
とぼけるなんて腹が立つなこいつ
こんなにも美しくて儚い美少女の究極系を見てしまうと金を払ったほうが良いのではないかと思ってしまう。
この野郎とワカメの首を締めたかったが乙女の視界に入れるには刺激が強い。
「ごめんなさい、少し荒ぶってしまったわ…
そりゃあ急に知らない人が自分の領域に入ってきたら誰だって警戒するわよね。」
できるだけ怖がらせないように離れて話しかけるが、まだ困惑してるみたい。
そして隣で額を抑えてため息をつくナザンカの態度にまだ苛立ちが収まらない。
「なぜここまで来ることが出来たのかはわかりませんが悪いお方では無いようですね。
私はアザレア、この塔に暮らす者です。」
暮らすって言っても周りの環境は一つの窓と必要最低限の個性を感じない質素な空間だ。
というかアザレアなんて素敵な名前をお持ちなようで少しときめいてしまった。
「あっ…!
私は山下加奈!山下が家名で加奈が私自身の名前。」
その瞬間、彼女の顔が歪んですぐに元の儚げな少女の顔に戻った。
そういえばこんなにも可愛らしい子が塔に暮らしているのだろうか。
箱入り娘で済むような場所では無いはずだ
「アザレアさんはどうしてここで暮らしているのですか?
ここはなんというか…一人で暮らすには寂しすぎるから。」
しかし彼女は首を傾げてクスクスと笑っていた。
まるでこの空間が当たり前過ぎて私の言葉に違和感を抱いてるみたい…というよりも実際にそう思ってるみたい。
「ここはとても快適な素敵な空間ですよ。
それに私がここにいるのは旦那様のお心遣いによるものです。」
すると今度はナザンカがアザレアさんの言葉に反応した。
体が震えているのは気のせいだはないはず
「…そうだ、これどうぞ!」
今朝作った薔薇のアップルパイを無限収納から取り出して差し出すと宝石を見るかのようにリンゴと同じ色の瞳を輝かせた。
元は私の分のアップルパイだけど可愛い子に貢ぎたいという思考に変換される私は随分やばいと思う。
おまわりさんこっちです
「なんて美しい薔薇の装飾…こんなに高価なものはいただけません。」
「この街で取れるアプレの実で作ったお菓子です。」
簡単なお菓子を作っただけでここまで感動されるとこちらとしてはもう少し真面目に作ればよかったと思う。
とりあえず食べてみなよと勧めていたらもったいなさそうにしている彼女だったが、ナザンカも勧めてくれた。
「大丈夫、毒はないから」
「ナザンカは私のことをなんだと思ってるの?」
こんな美少女にプレゼントするものが毒物とか…プレゼントする側の私も嫌なんだが。
でも彼の言葉のおかげでようやくアップルパイにかぶりついた彼女は目を丸くしたかと思えば私を見つめてなにか言いたげだった。
うん、ゆっくりで良いですよ
というかかわいいなこの子
「なんですかこの甘美な宝石は⁉
こんなにも素敵なものを見るのも食べるのも生まれて始めてです!」
真っ赤な瞳を輝かせたのをきっかけに私は気づいた
今まで私が見てきた彼女の瞳は感情を心に閉じ込めた人形のような瞳だったんだ…と
私はナザンカを壁に引っ張って耳元に話しかけた
「この子が外に出ない子なのはわかるけど、この数分で知識や常識に偏りがあるなんて思わなかったわ。」
「だから外に出してみたいと思ったんだよ。
だけど…塔を囲むように毒花が咲いていたらアザレアを連れていけない。」
確かにさっきマアヤが言っていたように毒花は耐性を持っている人か毒状態になったとしてもすぐに解毒薬を服用すれば対処できるって…
「そういえばマアヤを置いてきちゃった…」
塔の傍までは着いてきたけどそこからちゃんと着いてきたのか確認してなかったことを思い出して急いで窓辺に駆け寄ろうとした。
しかし
グイッ!
急に私の首根っこを掴んで一瞬にして引き寄せられたから何がなんだかわからん…が、しかし一番に理解したのは一本しかないナザンカの腕が私の動きを制止していたということだけ。
「できるだけ小さくなって俺の影に隠れろ。
言っておくがお前は侵入者であり、俺もこの塔に登ることは許されていないんだよ。」
その声に私は察した
この状況はかなりマズイのならもうマアヤは…
強く唇を食いしばって窓辺を見つめるとナザンカに言われた通りマントの影に隠れた。
幼女の姿に戻っても見えないから大丈夫でしょ
「…なぜカナさんは体が小さくなったのですか?」
隠れて姿が見えないはずなのに正体バレたんだが
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