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106話
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袋いっぱいにもらったアプレの実…基リンゴはアイテムボックスに入れてギルドに帰ることにした。
相変わらず私の隣を歩くのは歩くわかめではなくナザンカである。
それにしてもリンゴって言葉は存在したんだな、やはり私が向かおうとしている国は私と同じ世界から来た説が濃厚だ。
「そうだ…あなたは泊まる宿はあるの?」
「いきなりだな…まあ一応あるぞ
これでも剣の腕を見込んでもらって護衛の仕事をしてたからな。雇い主の屋敷に世話になってる。」
そうだったのか
でも彼の受けた仕事もそろそろ終わるらしい
本来の依頼内容はこの街の領主様が遠出をしていたから帰りの護衛をナザンカがしてたらしい。
コイツ盗賊のくせによく依頼したよな
「お前、俺が盗賊だと思ってんのか?」
なんで考えてることがわかるんだよ、顔か?顔に出てたのか?
私をバカにするような笑みでこちらを見てくるナザンカを睨みつけてやれば怖い顔するなと言ってきた。
「師がかなりの実力の持ち主で、そのお陰で俺も剣筋は良い方なんだよ。
でも言っただろ?剣を扱うものが片腕を失って居場所を失った。
一人でフラフラと旅してたら弱っちい盗賊が襲いかかってきて剣無しでぶっ飛ばしたら勝手についてきただけだ。」
なるほど、彼は一人で旅してただけなのになぜか盗賊に好かれてしまったと。
もう盗賊の長でいいじゃんそれ
「なんで部下は連れていないの?」
「ヘンリー王国でお尋ね者にされたから逃して散り散りにさせた。
盗賊なんざしてる暇があるなら畑で野菜を育てたほうが有意義だと言ったから今頃その言葉を鵜呑みにしてるだろうな。」
そう言っている彼の横顔はとても優しくて兄貴ヅラをしていた。
きっと盗賊に好かれる前から別の人達に好かれていたのでは無いかと勝手に思ってしまうほどにその顔は板についているようにも見えたから。
「そうだ、お前に聞きたいんだけどさ
お前なんでヤマトの国に行くんだ?」
ピタリと足を止めて前だけをぼーっと見つめた
東にある私のいた世界によく似た文化が存在する国「ヤマトの国」
こんな名前の国が存在するなんて違和感がある
異世界からの干渉なしには成り立つことのない国が東にあるのなら興味があるし、この目で確かめたい。
後は同胞探しとか、もしそこに元いた世界に帰る方法があるのなら試したい。
でも
試したところで何になるのだろう
私は元いた世界の家に帰りたいのかな
それともこの世界に留まりたいのかな
考えれば考えるほどにわからなくなってしまうものだ。
「…カーニャ?」
少しだけ黙り込んで考えてしまった
私の顔を覗き込むナザンカの目は空のようにきれいな色だ…何故か濁っているようにも見えるけど
「大丈夫、なんでも無いよでも東の国に行く途中にある世界中の本を集めた知識の国にも言ってみたいな。」
それはダーウィン王国で見た初代国王の手記に書いてあったとある文献について気になる事があるからだ。
しかし世界中の本が集まると言われているほどだから探し出すのも一苦労だろう。
「知識の国ヴィンチか…あそこは世界で最も巨大な図書館がある国で、知識を求めるのならヴィンチに行けとかいう世界共通の言葉が生まれたりするほどに有名だぞ。」
へーそうなんだ
ナザンカの突然の知識披露に感心していると、何処かから私を呼ぶ声が聞こえた。
「カナ!こんなところにいたのね。
そろそろ夕食の時間になるし帰ってごはん食べるわよ。」
「シロさん。先に宿に戻っていてください
冒険者ギルドで報酬金の受け取りをしてくるんで。」
大人の姿で私に話しかけてきた白髪美少女に隣りにいたナザンカはピクリとも顔の表情筋を動かそうとしない。
それよりも私の方をじっと見つめて騙しやがったな?とか言ってきた。
はっきり言ってそのお顔コワイ
「お前…カーニャって名前じゃあなかったのか?」
やっべそういえばナザンカの前では私はカーニャだったんだっけか。
これはもう正直に打ち明けよう、じゃないと私のメンタルがこれ以上のダメージを受け付けたくはないと叫んでる。
「えっとそれは…自己紹介の時に舌噛んで間違えたまま教えちゃったから。」
なぜ訂正しなかったのかというと私の素性を隠すにはちょうど良いと思ったからだ。
だって今の私の髪色は茶髪で目はブルーなんだぞ?加奈とか言う和名は今の私には合わないでしょ。
「カナ…何処かで聞いたことあるな」
…多分気の所為だと思います
私はあのトーマス帝国で指名手配犯だからな、同じ時期に同じ国にいたから手配書とか見ちゃった可能性あるよな。
「世界は広いんだから同じ名前の人間なんて幾人といるわよ。
ところで、あなたはカナの知り合い?」
シロさんのフォローに加えて自然と話しの話題を帰るとかいう高等テクニックに開いた口が塞がらない。
それにしても、シロさんってたくさんの人々の目を引くほどの美貌を持っているはずなのに全く頬を染めないし動揺すらしないとは…何者だよ。
「む…早くしないとギルドの営業時間が終わるぞ。」
「それよりもあなたが懐中時計を常備しているのが驚きなんだけど…。」
旅をしていると地図の他に方向や時間を確認するための道具を持つ必要があるのは最近になってわかってきたけどナザンカの持ってるやつが妙に良いやつなんだよな。
私なんてネットショッピングで一番この世界に自然に馴染むようなアンティークデザインの奴探したんだぞ
悲しいことにステータス画面から正確な時間の表示画面に移動できるから見かけだけなのよね。
「速くギルドに行ってきなさい。紅茶でも飲んで待ってるわ」
「それ要するに速く帰って飯作れってことよね?」
さらに言えば紅茶に合うお菓子を用意しろみたいな圧も感じる。
ため息を付きながらアイテムボックスから丁寧にラッピングされたマフィンを取り出すと一瞬にして手の中にあったそれがなくなった。
気づいたらシロさんの姿も無い、何と単純なドラゴンなんだ。
「お前の周りって変なやつしかいないよな…」
「それは君もカウントされていることを自覚しているよね?」
とにかくさっさとギルドに行って報酬金をもらいに行くんだよ。
こんなにもため息が付きたくなるのに夕焼け空はびっくりするほどにきれいだった。
相変わらず私の隣を歩くのは歩くわかめではなくナザンカである。
それにしてもリンゴって言葉は存在したんだな、やはり私が向かおうとしている国は私と同じ世界から来た説が濃厚だ。
「そうだ…あなたは泊まる宿はあるの?」
「いきなりだな…まあ一応あるぞ
これでも剣の腕を見込んでもらって護衛の仕事をしてたからな。雇い主の屋敷に世話になってる。」
そうだったのか
でも彼の受けた仕事もそろそろ終わるらしい
本来の依頼内容はこの街の領主様が遠出をしていたから帰りの護衛をナザンカがしてたらしい。
コイツ盗賊のくせによく依頼したよな
「お前、俺が盗賊だと思ってんのか?」
なんで考えてることがわかるんだよ、顔か?顔に出てたのか?
私をバカにするような笑みでこちらを見てくるナザンカを睨みつけてやれば怖い顔するなと言ってきた。
「師がかなりの実力の持ち主で、そのお陰で俺も剣筋は良い方なんだよ。
でも言っただろ?剣を扱うものが片腕を失って居場所を失った。
一人でフラフラと旅してたら弱っちい盗賊が襲いかかってきて剣無しでぶっ飛ばしたら勝手についてきただけだ。」
なるほど、彼は一人で旅してただけなのになぜか盗賊に好かれてしまったと。
もう盗賊の長でいいじゃんそれ
「なんで部下は連れていないの?」
「ヘンリー王国でお尋ね者にされたから逃して散り散りにさせた。
盗賊なんざしてる暇があるなら畑で野菜を育てたほうが有意義だと言ったから今頃その言葉を鵜呑みにしてるだろうな。」
そう言っている彼の横顔はとても優しくて兄貴ヅラをしていた。
きっと盗賊に好かれる前から別の人達に好かれていたのでは無いかと勝手に思ってしまうほどにその顔は板についているようにも見えたから。
「そうだ、お前に聞きたいんだけどさ
お前なんでヤマトの国に行くんだ?」
ピタリと足を止めて前だけをぼーっと見つめた
東にある私のいた世界によく似た文化が存在する国「ヤマトの国」
こんな名前の国が存在するなんて違和感がある
異世界からの干渉なしには成り立つことのない国が東にあるのなら興味があるし、この目で確かめたい。
後は同胞探しとか、もしそこに元いた世界に帰る方法があるのなら試したい。
でも
試したところで何になるのだろう
私は元いた世界の家に帰りたいのかな
それともこの世界に留まりたいのかな
考えれば考えるほどにわからなくなってしまうものだ。
「…カーニャ?」
少しだけ黙り込んで考えてしまった
私の顔を覗き込むナザンカの目は空のようにきれいな色だ…何故か濁っているようにも見えるけど
「大丈夫、なんでも無いよでも東の国に行く途中にある世界中の本を集めた知識の国にも言ってみたいな。」
それはダーウィン王国で見た初代国王の手記に書いてあったとある文献について気になる事があるからだ。
しかし世界中の本が集まると言われているほどだから探し出すのも一苦労だろう。
「知識の国ヴィンチか…あそこは世界で最も巨大な図書館がある国で、知識を求めるのならヴィンチに行けとかいう世界共通の言葉が生まれたりするほどに有名だぞ。」
へーそうなんだ
ナザンカの突然の知識披露に感心していると、何処かから私を呼ぶ声が聞こえた。
「カナ!こんなところにいたのね。
そろそろ夕食の時間になるし帰ってごはん食べるわよ。」
「シロさん。先に宿に戻っていてください
冒険者ギルドで報酬金の受け取りをしてくるんで。」
大人の姿で私に話しかけてきた白髪美少女に隣りにいたナザンカはピクリとも顔の表情筋を動かそうとしない。
それよりも私の方をじっと見つめて騙しやがったな?とか言ってきた。
はっきり言ってそのお顔コワイ
「お前…カーニャって名前じゃあなかったのか?」
やっべそういえばナザンカの前では私はカーニャだったんだっけか。
これはもう正直に打ち明けよう、じゃないと私のメンタルがこれ以上のダメージを受け付けたくはないと叫んでる。
「えっとそれは…自己紹介の時に舌噛んで間違えたまま教えちゃったから。」
なぜ訂正しなかったのかというと私の素性を隠すにはちょうど良いと思ったからだ。
だって今の私の髪色は茶髪で目はブルーなんだぞ?加奈とか言う和名は今の私には合わないでしょ。
「カナ…何処かで聞いたことあるな」
…多分気の所為だと思います
私はあのトーマス帝国で指名手配犯だからな、同じ時期に同じ国にいたから手配書とか見ちゃった可能性あるよな。
「世界は広いんだから同じ名前の人間なんて幾人といるわよ。
ところで、あなたはカナの知り合い?」
シロさんのフォローに加えて自然と話しの話題を帰るとかいう高等テクニックに開いた口が塞がらない。
それにしても、シロさんってたくさんの人々の目を引くほどの美貌を持っているはずなのに全く頬を染めないし動揺すらしないとは…何者だよ。
「む…早くしないとギルドの営業時間が終わるぞ。」
「それよりもあなたが懐中時計を常備しているのが驚きなんだけど…。」
旅をしていると地図の他に方向や時間を確認するための道具を持つ必要があるのは最近になってわかってきたけどナザンカの持ってるやつが妙に良いやつなんだよな。
私なんてネットショッピングで一番この世界に自然に馴染むようなアンティークデザインの奴探したんだぞ
悲しいことにステータス画面から正確な時間の表示画面に移動できるから見かけだけなのよね。
「速くギルドに行ってきなさい。紅茶でも飲んで待ってるわ」
「それ要するに速く帰って飯作れってことよね?」
さらに言えば紅茶に合うお菓子を用意しろみたいな圧も感じる。
ため息を付きながらアイテムボックスから丁寧にラッピングされたマフィンを取り出すと一瞬にして手の中にあったそれがなくなった。
気づいたらシロさんの姿も無い、何と単純なドラゴンなんだ。
「お前の周りって変なやつしかいないよな…」
「それは君もカウントされていることを自覚しているよね?」
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