見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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99話

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木々たちの下をくぐり抜けた先にあったものは、息を飲むほどに美しい花畑だった。

まるでカリンが暮らす世界によく似ている。


「おまたせ皆」

「遅いぞカナ。俺様達は審査も受けずに無断で国を出た犯罪者だ。

急いでここを離れるぞ。」



先に国を出て待っていてくれた仲間たちに礼をして謝ると、マントのフード部分がモゾモゾと動き出した。

なんだと思って手を突っ込んで掴みだせばそこにはプラーンと首根っこを掴まれて大人しくしているマオウだった。


「さっきからいないと思ったら私のフードの中にいたのね。

此処から先は自分で歩くか誰かの方の上にでも乗ってなさい。」


そう行って地面に下ろすと私の足元にくっついて尻尾を左足に巻き付けてきた。

なんか妙な感じだな。毛のように細い尻尾の先にある小さな土星のような魔石と思われるそれは意外と温かくて人肌と同じである。


「これじゃあ歩きづらいよ...。」


困り顔でそう言えば理解したように急に前を歩きだして私は焦った。

急に動き出せば足に巻き付いた尻尾が邪魔してマオウが転ぶと思ったので反射神経をフルに使ってマオウを抱き上げたが、私の考えは少しばかり違ったようだ。


「マオウ...君の尻尾はどうなっているんだい?」


毛のように細い尻尾は根本からどんどん伸びて長くなっていく。何だこれキモチワル


「うーん...見たところ最長で10メートル伸びるみたいね。」


勝手にマオウを抱き上げて私から話して尻尾の長さを測定しているシロさんを見て私は気づいた。


「なんか尻尾の根元が掃除機のコードみたいに赤いラインがあるんだけど...。」


よくある掃除機のコードって限界まで引っ張るとここまでしか伸びないというサインでテープが巻き付けられてることがあるけど、そんな感じでマオウの尻尾の付け根にそんなのがあった。

なに?マオウって家電だったの?


「そういえば...シロさんはどうしてここに?

あなたまで一緒になって国を出る必要はないでしょう?」


私についてくる必要はない。それにシロさんはこの国の守り神的な位置にいるのでは?

この国と長年交流を深めていったはずの伝説のドラゴンまで国を出ていったら国民もこれから来るであろう帝国の者も怪しむに決まっている。


「あ~あの国はたしかに良い縄張りだったけど別に未練なんざないわよ。たった200年人間や獣人のように屋根の下で生活することは私にとって暇つぶしにしかならないもの。」


魔道具屋をやっているのを暇つぶしと言えるあたりこの人は本当に伝説のドラゴンなんだなと思える。

というか先程のシロさんの発言からして彼女もこの旅に同行する流れではないか?



「確認ですけどシロさんがこの国を出る理由は?」

「それはもちろんカナ達の旅についてくためよ!こんなにも面白い人間たちのそばにいれば食事に関しては問題なさそうだしね。」


結局このドラゴンも飯目当てかよ!

流石は双子の姉弟、思考が飯関連に偏るのは共通なのね。

そういえばシロさんの家にお世話になったときはスイーツをいたく気に入っていたような気がしたが、あれはあながち間違ってはいなかったのか。


「それじゃあコレからは私も一緒に旅するからよろしくね!」


そんなのってありかよ...。伝説のドラゴンとかいう規格外の存在はツキカゲがいるんだからシロさんまでいたらお腹いっぱいどころじゃないぞ。


「なら丁度いい。お前はこの旅で契約する奴を見つけるんだな。」

「めんどくさいわね...。そういえばツキカゲはもう見つけたんだっけね。

ほんと、いい人間を見つけたわよね。」



じっとこちらを見てきて来るシロさんはニヤリと笑ってくるから背筋が少しだけゾクッときた。

なに?私を見ちゃって恥ずかしいんだけど。



「あれ?契約者、王座...ええ?....あっ......あっあぁっ!?」



急にわけのわからん言動になっていしまったが、私の中に渦巻いた謎が一つ解決されると同時に顔を青ざめた。





「伝説とドラゴンと契約すると同時にその者は世界で6つしかない王座につく...これ解釈あってる?」

「なんでそれを知ってるんだ?説明した覚えがないぞ。」


あってるのかよ


    
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