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98話
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どうしてこんなところに万物の理から外れた魔法が書かれているのだろうか。
でももしかしたらこれでカリンが生き返るのなら試してみたい。
でも、これで失敗したらどうなるのだろう
私の意思だけで決めるわけにもいかないからどうすることもできない。
でもこの死者の蘇生方法は少しばかり、いや全くと行っていいほどに信憑性がない。
なんだコレ...ここまで来ると中世ヨーロッパで信じられていた黒魔術とそんなに変わらないぞ。
「ドラゴンの心臓に人魚の涙、それに世界樹の露とかで死者が蘇生できるとは思えないんだけど。」
「死者蘇生の魔法が存在しているとは思えないな...。」
「流石の私もありえないとすぐに判断するわ。」
この伝説のドラゴンである二人が言っているということはこれは妄想とか幻想の類なんだろうな。
成功した例も記載されてないから期待するだけ無駄だな。
ため息を少しばかり付きながらそっと本を閉じると元の場所に戻した。
「これ以上の滞在は迷惑がかかってしまうから出ていかないとね。」
「そうしてもらうと助かる。国の裏口に当たる秘密の出入り口があるからそこから出ると良い。」
気になってはいるのだが、王様は優しいのか優しくないのかよくわからない。
民は守りたい、しかし私達に失礼な態度は取りたくはないといった2つの心情が混ざっている。
それを察した私達は宝物庫の出口を目指した。
大丈夫、この国には素敵な人達で溢れていることを知っているからこそ迷惑をかけたくないのはこちらもそうだから。
「ツキカゲ、次は何処に行こうか?」
「そうだな...いくつか候補になりそうな地を知ってるからここを出たら伝える。」
次に向かう地はどんな色を見せてくれるのかが楽しみでワクワクして早足になりそうだけど、王様の存在を忘れてはいけないぞ。
ちらりと王様を見ては出口を目指すを繰り返していると、吹き出して笑う声が聞こえて振り返った。
「そんなにこちらを意識しなくても良いぞ。
ここで分かれることにはなるが、我らダーウィンの民は君達の功績を忘れることはない。
君たちの旅路が幸せでありますように。」
これはこれはありがたいお言葉だこと
こりゃあ何が何でも逃げ切らないと、絶対に幸せにならなければな。
前を向いていると私の横を通り王様直々に裏口までの道を案内するとかいう恐れ多すぎることをされながらも歩いていくと城壁が見えてきた。
門らしきものは見えないが、王様はずんずんと歩いていって一際大きな茂みに近づいてかき分けて行った。
一国の王様がこんなことをするなんて思わなかったけど、すぐに顔を出してこっちだと呼んできた。
「幼い頃に城から抜け出してはシロの家に行ってあらゆることを学んだ。
その時に使っていた穴がまだここにあったのを思い出したのだ。」
茂みの中を覗いてみると、たしかに大人一人は通ることのできる穴が空いている。
ここからなら抜け出せるだろう。
「ありがとうございます、私はともかくマアヤだけでもあの帝国のには渡したくなかったので。」
「礼など必要ない。先程も言ったが我々はカナに恩があることは事実。
何があっても我々はカナ達の行方なんて知らない。」
うわぁ...そう来たか
帝国に何を言われても行方はわからなくなったというのか。それはそれでありがたいな
「では行きます。皆、先に行って」
茂みをかき分けて通れるように手で抑えると、皆を先に行かせた。
「あっそうだ...あの時初代ダーウィン国王が書いていた手記にはあなた達子孫に当てた手紙と思われる内容もありました。
それを訳した文をツキカゲに書いてもらったから呼んでください。」
ちらりと王様を見て会釈すると低い体制を取って茂みの中に潜って行った。
ダーウィン王国。それはかつて獣人の間で流行した感染症を根絶し生涯をかけて獣人の研究を続けた者。
獣人を愛し、獣人に愛された彼はいつしか獣人の村を発展させ国へと進化させた王
彼の意思は子孫に受け継がれて行き、今日も民の幸せを願い続けている。
「カナ...君はとても興味深い人間だ。
何度も生死を繰り返してきた私だが君のように不思議な何かを持っている人間は初めて出会った。」
もうそこにはいない彼女の背中を思い出しては目を閉じて懐に手を入れる。
先程目が覚めたばかりで目を擦る小動物を愛おしく見つめて指先で頭を撫でると気持ちよさそうにした。
「日本人なんて見たのはいつぶりだろうね。もう随分と昔のことのようだからわからない。」
この者、名をチャーリー・ロン・ダーウィン
真の名はチャールズ・ロバート・ダーウィン。人神である
生涯を終えた彼は獣人達の信仰の力により人神となってしまったものである。
どうして彼が現国王なのか、それは暇つぶしに人間の姿になって転生しようとして生み出した器が現国王だったからという単なるうっかりである。
それに便乗するようにダーウィンの妻は小動物のように見える魔物に転生し、そばにい続けているのだ。
「初めての異世界人と思ったけど、よく考えたら君は異世界から転生してきた私と結婚したからそこまで驚かなかったね。」
優しく撫でてはケラケラと笑っていると、後ろから彼を呼ぶ声が聞こえた。
そろそろ会議の時間かな
マントを翻し、城の中へと向かうと鳴らす靴音が変わり、横に宰相が並ぶように近寄ってきた。
「先程トーマス帝国から連絡がありました。
指名手配犯の悪魔族の情報があればほしいと言うものです」
「もう来たのか...こちらはボストロールの奇襲に関する会議があるというのに仕事が増える一方だな。」
ため息混じりの発言を宰相に指摘されてしまい口を閉じると会議室に続く廊下を歩き続ける。
「陛下、少しは緊張感を持ってもらいたい。貴方様はこの国を守るべき御方なのですから。」
「何度も言われても困るよ。」
前世が国王だったからなんて理由は使えそうにないが国王としての使命を果たしてやるさ。
彼の名はチャーリー・ロン・ダーウィン
獅子の獣人の姿を模した人神であり、真の名はチャールズ・ロバート・ダーウィンである。
でももしかしたらこれでカリンが生き返るのなら試してみたい。
でも、これで失敗したらどうなるのだろう
私の意思だけで決めるわけにもいかないからどうすることもできない。
でもこの死者の蘇生方法は少しばかり、いや全くと行っていいほどに信憑性がない。
なんだコレ...ここまで来ると中世ヨーロッパで信じられていた黒魔術とそんなに変わらないぞ。
「ドラゴンの心臓に人魚の涙、それに世界樹の露とかで死者が蘇生できるとは思えないんだけど。」
「死者蘇生の魔法が存在しているとは思えないな...。」
「流石の私もありえないとすぐに判断するわ。」
この伝説のドラゴンである二人が言っているということはこれは妄想とか幻想の類なんだろうな。
成功した例も記載されてないから期待するだけ無駄だな。
ため息を少しばかり付きながらそっと本を閉じると元の場所に戻した。
「これ以上の滞在は迷惑がかかってしまうから出ていかないとね。」
「そうしてもらうと助かる。国の裏口に当たる秘密の出入り口があるからそこから出ると良い。」
気になってはいるのだが、王様は優しいのか優しくないのかよくわからない。
民は守りたい、しかし私達に失礼な態度は取りたくはないといった2つの心情が混ざっている。
それを察した私達は宝物庫の出口を目指した。
大丈夫、この国には素敵な人達で溢れていることを知っているからこそ迷惑をかけたくないのはこちらもそうだから。
「ツキカゲ、次は何処に行こうか?」
「そうだな...いくつか候補になりそうな地を知ってるからここを出たら伝える。」
次に向かう地はどんな色を見せてくれるのかが楽しみでワクワクして早足になりそうだけど、王様の存在を忘れてはいけないぞ。
ちらりと王様を見ては出口を目指すを繰り返していると、吹き出して笑う声が聞こえて振り返った。
「そんなにこちらを意識しなくても良いぞ。
ここで分かれることにはなるが、我らダーウィンの民は君達の功績を忘れることはない。
君たちの旅路が幸せでありますように。」
これはこれはありがたいお言葉だこと
こりゃあ何が何でも逃げ切らないと、絶対に幸せにならなければな。
前を向いていると私の横を通り王様直々に裏口までの道を案内するとかいう恐れ多すぎることをされながらも歩いていくと城壁が見えてきた。
門らしきものは見えないが、王様はずんずんと歩いていって一際大きな茂みに近づいてかき分けて行った。
一国の王様がこんなことをするなんて思わなかったけど、すぐに顔を出してこっちだと呼んできた。
「幼い頃に城から抜け出してはシロの家に行ってあらゆることを学んだ。
その時に使っていた穴がまだここにあったのを思い出したのだ。」
茂みの中を覗いてみると、たしかに大人一人は通ることのできる穴が空いている。
ここからなら抜け出せるだろう。
「ありがとうございます、私はともかくマアヤだけでもあの帝国のには渡したくなかったので。」
「礼など必要ない。先程も言ったが我々はカナに恩があることは事実。
何があっても我々はカナ達の行方なんて知らない。」
うわぁ...そう来たか
帝国に何を言われても行方はわからなくなったというのか。それはそれでありがたいな
「では行きます。皆、先に行って」
茂みをかき分けて通れるように手で抑えると、皆を先に行かせた。
「あっそうだ...あの時初代ダーウィン国王が書いていた手記にはあなた達子孫に当てた手紙と思われる内容もありました。
それを訳した文をツキカゲに書いてもらったから呼んでください。」
ちらりと王様を見て会釈すると低い体制を取って茂みの中に潜って行った。
ダーウィン王国。それはかつて獣人の間で流行した感染症を根絶し生涯をかけて獣人の研究を続けた者。
獣人を愛し、獣人に愛された彼はいつしか獣人の村を発展させ国へと進化させた王
彼の意思は子孫に受け継がれて行き、今日も民の幸せを願い続けている。
「カナ...君はとても興味深い人間だ。
何度も生死を繰り返してきた私だが君のように不思議な何かを持っている人間は初めて出会った。」
もうそこにはいない彼女の背中を思い出しては目を閉じて懐に手を入れる。
先程目が覚めたばかりで目を擦る小動物を愛おしく見つめて指先で頭を撫でると気持ちよさそうにした。
「日本人なんて見たのはいつぶりだろうね。もう随分と昔のことのようだからわからない。」
この者、名をチャーリー・ロン・ダーウィン
真の名はチャールズ・ロバート・ダーウィン。人神である
生涯を終えた彼は獣人達の信仰の力により人神となってしまったものである。
どうして彼が現国王なのか、それは暇つぶしに人間の姿になって転生しようとして生み出した器が現国王だったからという単なるうっかりである。
それに便乗するようにダーウィンの妻は小動物のように見える魔物に転生し、そばにい続けているのだ。
「初めての異世界人と思ったけど、よく考えたら君は異世界から転生してきた私と結婚したからそこまで驚かなかったね。」
優しく撫でてはケラケラと笑っていると、後ろから彼を呼ぶ声が聞こえた。
そろそろ会議の時間かな
マントを翻し、城の中へと向かうと鳴らす靴音が変わり、横に宰相が並ぶように近寄ってきた。
「先程トーマス帝国から連絡がありました。
指名手配犯の悪魔族の情報があればほしいと言うものです」
「もう来たのか...こちらはボストロールの奇襲に関する会議があるというのに仕事が増える一方だな。」
ため息混じりの発言を宰相に指摘されてしまい口を閉じると会議室に続く廊下を歩き続ける。
「陛下、少しは緊張感を持ってもらいたい。貴方様はこの国を守るべき御方なのですから。」
「何度も言われても困るよ。」
前世が国王だったからなんて理由は使えそうにないが国王としての使命を果たしてやるさ。
彼の名はチャーリー・ロン・ダーウィン
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