見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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97話

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「うわぁ...すっごいピュアなラブレターだね。」

「びっくり...こんなにも奥さんを愛してたんだ。」


二人で国宝である手記を読みながらキャーキャー言ってる女子二人の様子を見て、シロさんは腕を組んで顔をしかめていた。


「つまりその手記は初代国王が自分の妃に宛てた物ってこと?

他になにか大事な内容は書いてなかったの?」


そうだな...わかったことはダーウィンの奥さんはライオンの獣人で、そのお母さんから広がった病気を治すことができた本が英語で書かれていたくらいだろうか。


「ん?もしかして村に蔓延した肺炎を直した薬ってペニシリン?」

「あら...よくわかったわね。

確かに彼はこの肺炎を治すためにカビを利用して薬を作ったという文献が残っているわよ。その名前がペニシリン。」


異世界でそんな名前を聞けるなんて思わなかったわ。

たしかあれはダーウィンが亡くなった40年とか50年経った後に発見されたはいいけど、その後抗原作用があることが発表されたのはそこから20年後とかだったはずだ。

なぜ知ってるかというと、英語の長文問題を解いた時の内容がペニシリンに関することだった。


「ペニシリンに関する文献がこの世界に存在したのは驚きね。

三人の研究者はきっと私やマアヤと同じ世界から来た人間であると思われる。」


にしてもどうしてこの世界にペニシリンが存在しているかが本当に謎である。

考えられるのはこの手記に書いてある三人の研究者がこの世界に転生したのか、またはこのペニシリンに関してよく知っている医者がこの世界で作ったのか。


「でも、カナとマアヤが読み上げてくれたその手記に書いてあった三人の研究者は誰なのかしら?」

「そうだね...私の世界ではペニシリンを発見した人とそれを治療薬として完成させた人達がいるの。

発見した人をアレクサンダー・フレミング、彼の論文を見つけて治療薬にしたのが...ごめん二人いるんだけど名前忘れちゃった。」


この三人がいなければペニシリンは完成しなかったしこの世界で獣人のみに発症する肺炎の治療もできなかっただろう。

...にしてもこの手記にある治療薬の文献があるとされてる国になにか手がかりがありそうなんだよな。


「また目的地が増えたよ...。」

「一つ増えたところでだろ。今はこの宝物庫で手がかりになりそうなものを探すぞ。」


なんやかんやこの中で一番頑張っているツキカゲに言われて手に持っている手記の続きを読んでみたが、特にこれといった情報は得られなかった。

初めて出会った場所で奥さんにプロポーズして結婚して、子宝にも恵まれた感じの文が書いてあった。

しかしなぜ自分がこの地を治める王様になったかの理由が書かれてないな。


「シロさん、どうしてこの国が誕生したのかわかったりする?」

「詳しくはわからないわね。でも、歴史書の内容が正しいのなら初代国王の功績が認められて領主になった。

そこからは戦争にも巻き込まれたくないし、戦争なんて恐ろしいもの仕掛けたくないと言って近くの国の王に相談したらじゃああなたが国を作って王になってそういう政策を立てればいいじゃないと言われて王になったらしいわ。」


何その緩~い理由は?

初代王から続く平和主義の思想が建国理由につながるなんてそんな話あるのかよ。

まあでも彼が王になることは誰も何も文句は言わなかったんだろうな。


「まあ何だ...この手記に関しては以上なんだけど、奥さんに宛てた手紙にしては読ませる気がゼロね。」

「いや、初代王妃プロテア様は異界の文字を解読できた唯一の獣人だ。」



後ろから聞こえる低くも落ち着くその声は、あまりにも重厚感のあるもので全身が震えた。

その場にいたもの全員が振り向きひざまずくが、ただ二人はやらなかった。


「急に話しかけて申し訳ない。皆シロ殿とツキカゲ殿のようにしてくれ。」

「お許しくださりありがとうございます。陛下」


頭を上げて顔を除けば整った顔立ちと王者の風格がまあ良いこと。

よく考えてみればこの方はダーウィンの子孫なんだよね?王族というのはそういうものであるから。


「唯一の...つまり初代国王は王妃だけに文字を教え、そして王妃はそれを後世に遺さなかったということになりますが。」

「そう、プロテア様はこれらの国宝を誰の手にも渡らせぬために難読字を誰にも伝えずに亡くなった。

我々はこれらが世界を揺るがすほどに恐ろしいものと受け取り守り続けているのだ。」


守り続ける...王様の判断は正しいと言えるでしょうね

異世界の文化も技術もすべてを世間に広げることは良いものとは言えない。

前いた世界のなんてことのない高校生ですら、この世界では脅威になってしまう。

だからこそ慎重に行ったほうが良いしマアヤや私だって誰のものにもならないためにも。


「私達はどの国にも属してはならない。きっとこの国にだってトーマス帝国からの追っ手が来るはずだから逃げないと。」

「良い判断だ。こんなところに帝国が来訪なんてことが起きれば、間違いなく民は混乱してしまうだろう。

その前にもカナ達には出ていってもらいたい。



たとえボストロール達からの脅威を救った英雄であっても」


ギラギラとライオンのような目でにらまれるとどうしても萎縮してしまう。

しかし、王様の言うことも正しいのだ。

民を守るためにもたとえボストロールの群れの奇襲を退けた英雄でもさらなる脅威を呼び寄せるのなら平和のためにも出ていってもらいたいのが本音だろう。

言われなくても出ていくさ。それがこの国の平和のためならば。


「あ...カナ、これ見て。」


突然横に並ぶように私に近寄ってある手記を見せてきた。

そこに書かれた内容はまたしても英文で異界のものではない。

それより気になるのは今からこの国を出ていくんだという張り詰めた空気を打ち破った彼女の神経だろうか。


「あなたって意外と周りの空気を読まないわね。

ん?このメモって研究に関係あるものなのかしら?」

「でしょ?明らかに非科学的で魔法があってもありえないような内容だと思うの。」


そうだよねだってこれ









死者蘇生とか言う禁断魔法に関する記載があるのだから。


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