見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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96話

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人間は好きな人を何度もコロコロと変える生き物だ。

それは他の種族からすれば残酷な生き物にも見てるけど、より強く長く生きる方が一緒にいて幸せになる…そう信じる思想が心のどこかにあるから完全に否定することはできないのけだ。



私の名はチャールズ・ロバート・ダーウィン



ここに記すのは私が生涯歩んできたその記録と、私の愛しい家族に向けたメッセージでもある。

私は幼い頃から、いや前世から尽きることのない探究心は今世の両親にも迷惑をかけてしまうこととなった。

まずはじめに私は獣人の村に引っ越したという運命に感謝した。

そこに暮らす人々が皆獣人で人間がいると浮いてしまうような状況だった。

でもそんな視線を気にしているのは私の両親と弟たちだけで私が一番異様な子供だっただろう。

誰よりも獣人の生活様式に興味を抱いてただひたすらに観察と考察を繰り返す毎日で越して3日も経てば私は村中から変人扱いされていた。

おそらく獣人の目だけでなく人間の目からも奇妙な人間であったことはジジイになった今になって自覚するようになった。

今ならもっとスマートに獣人を観察することができるよ。


まあそんな子供時代を送っていたある日、私は出会ってしまったのだよ。

忘れもしないあれは越して来て五年経った春のこと、私は15歳の時運命の彼女に出会った。

獣人村に越してきてだいぶ馴染んてきたからと言う理由だけで森に入った私は見事に道に迷って帰れなくなってしまったのだが、それがなければ彼女に出会うことはなかっただろう。

あれは獅子の獣人だ。

前世でも見たことがある、獣だが威厳のある顔立ちに背筋がゾクゾクとした。

それと同時に疑問に思ったのはなぜこんなにも胸が高鳴るのだろうかというもの。

今ならわかる、この瞬間に私は彼女に恋をしたんだ。

森で道に迷った私と普段からよく使ってる道を歩いていた彼女が出会ってまずこういってしまった。


「是非観察させてはくれないか?」

「何いってんのあんた?」


最初の会話がこんなにもロマンのかけらもないなんて笑ってしまうね。でもそれをきっかけに知りたいという欲が湧いて仕方がなかったんだ。

毎日同じ時間に始めて会ったあのなんてことない道で君に会いに行っては呆れた顔をされたけど、君と話すことができるという事実に嬉しくなって君が嫌がっていることにも気づけずにただ面白いと思える話題をその場で考えながら話す毎日が楽しかったんだ。

いつからか私が森で道に迷っていたら本当に帰れなくなってしまうと君は困りながら言って家を教えてくれたよね。


彼女の家に行けることが嬉しいと思う反面、家に近づくごとに暗い顔をするのが気になってどうしたのと聞けば何でもないと返したから余計に気になった。

その理由を知った時、僕は自分の察しの悪さに失望したよ。

彼女は病気で動けない母親のために毎日身を粉にして働いていたことに気付けなかったのだから。

私は彼女の母親を診せてほしいとお願いした。前世の記憶が役立つかもしれないという理由は言えなくてもなにか力になれるのならという私の気持ちに気づいて彼女は母親に合わせてくれたのだ。

ベッドで浅い呼吸をしながらも眠る母親もまた獅子の獣人でつい彼女ほどときめかなかった。が、興味を惹かれるような美貌だっだのは覚えている。

脈拍や心音を聞いてわかるのは肺炎になりかかっていることと、これなら今の自分にも助けることができる状態であることだった。

早速治療しようと準備をしようとしたが、それを拒んだのは母親だった。

治療にはお金がかかることが自分の娘に重荷になることが嫌だったらしい。

でもそんなこと関係ない

お金なんて生きていればいくらでも稼げるし、今すぐ大金を用意しろなんて言ってない。

生きて自分の娘が成長する姿を見ろだとか、色々と説得をすればようやく治療を受けることを承諾した母親はとても状態が悪かった。

説得するのに少しばかり時間がかかってしまったが絶対に助けると彼女と約束したからにはやるしかない。

肺に入った菌を母親が吐き出した痰から調べて見たはいいが特効薬になるものを作らなければならない。

たくさんの文献を漁るうちに私の愛する彼女まで肺炎にかかってしまい絶望してしまった。

世界中の文献が集まる国の図書館に一人で行って本を読み漁るうちにとある三人の研究者の文献を見つけたんだ。

それはカビが約百種の菌を溶解することができることを本にして残ってることに驚いたが、その本に使われていた言語に更に驚いた。

前世で散々見てきた英語だったからだ。

それを自分のノートに写して村に帰るなりひたすらに肺炎菌を殺すためのカビを利用した薬を作った。

ようやく完成した頃には肺炎が村中に蔓延していたことに絶望していた。

でも、人間である私の家族は無事だった...つまり獣人にしか発症しない感染症だったのだ。

私が16歳の時、獣人のためにたくさんの薬を製造してたくさん投与して肺炎菌の根絶のために努力した。

新たな病気を見つける度に研究をしては薬の開発をして、気づいたときには獣人専門の医者になってた。

当時私が20歳の頃だった。

たくさんの獣人に感謝されて、私が困っているときは助けてくれた。

それは彼女だってそうだ。私はあの日を堺に生活習慣が不規則になってしまい、誰かに言われないと食事もしないし寝ようともしない。

だからいつも呆れた顔で私に決まった時間に食事をさせるし寝かせてくれた。

毎日毎日休むことなく私に尽くしてくれた彼女に感謝してもしきれなかった。

だから私は彼女がいないと何もできないことを告げるとこにした。

いつまでも一緒にいたい、いつでも真正面から愛を伝えたい。

だから結婚しよう、思った時には研究の手をピタリと止めて椅子から立ち上がっていた。

そうやって告白しようか...そこから考えてそのへんのメモ用紙に計画書を書こうとした。

しかし、こんなに真面目に計画しようとするなんて恥ずかしくて誰にも知られたくなかった。

だから前世で使っていた文字でこれだけを書くんだ。


「三日後に仕掛ける...。」


三日後に開かれる収穫祭で村中が盛り上がるから彼女を何処かへ連れて行っても不審には思われないだろう。

満月の輝く美しい夜に、私は彼女を連れてあの道に向かった。

ずっとこうやって手を繋いで歩幅を合わせて歩くことを願っていた。願うことならこの思いだって伝えたい。




「初めてあったあの日、君に恋したんだ。

プロテア、私と結婚してください」
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