見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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95話

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先程の柔らかくも硬いカーペットとは違う石畳の地面

コツコツとヒールの鳴り響く廊下を抜けてたどり着いた先は固く閉ざされた鉄製の扉。

行く手を阻むのは扉だけでなく宝物庫を守る屈強な体つきが特徴的な馬の獣人二人。

馬の獣人と言っても人間の血が強いのか馬の要素は立派な足のみだ。


「先程、宰相のバンガル様から貴方様のことは聞きました。

今宝物庫の鍵をお開けしますのでしばしお待ちを」


とても丁寧な敬語を使ってくるものだから、そんなに気を使わないでほしいと言おうとしたがやめた。

いちいち突っ込んでいられるほど今の私達には時間はないと思ったから。


ガチャリと鍵が開く音が響き、重たい鉄の扉が開かれた先の光景を見て目を見開いた。

これはどう見ても



「遺跡?」



私が探し求めていたダーウィン王国の遺跡は宝物庫になっていました。

一体何をどう考えたら遺跡を宝物庫にしちゃおう!と言った結果になるんだ。

いやそもそもここは遺跡なのだろうか


「どうかしたのカナ?ここがあなたが行きたがっていたダーウィン遺跡よ。」


ここなのかよ

シロさんは私の方を見て首をかしげてそう言ってきたかと思えばそれに加えて説明もしてくれた。


「ダーウィン王国が建国されたきっかけはこの初代国王のチャールズ・ロバート・ダーウィンという人間。

もともと獣人が集まる村として慎ましく暮らしてきた人間の貴族だったんだけど、家族の誰よりも獣人に興味を示して観察している中で、獣人特有の病気を発見して解明して治療法まで見つけた獣人の英雄よ。」


なるほど、前世とはそんなに変わらないのね。

生まれ変わっても科学者としての魂は消えなかったと言うことか。

というかシロさんの説明はまだ続いてた。


「そんなダーウィンなんだけど、国民は今でも英雄であり神である彼を讃えて信仰しているみたいよ。

歴代の国王はダーウィンの意思を繋いできた証拠としてこの遺跡が守られてきた。







もしかしてカナ、観光するノリで遺跡を見れると思ってた?」



おおお思ってないけどぉぉぉぉ!?



自分が考えていたことを見抜かれ、一瞬にして体が硬直してしまい何も言い返せずにいると、図星であることがバレてため息をつかれた。

誰かがこんなことだろうと思ったとか言ってたけどその後すぐに私をフォローしてくれる人がいた。


「この遺跡にはダーウィンが遺した研究結果やらなんやらが保管されているからね…わかりやすく言うならこの空間そのものが国宝なのよ。」


なるほどね…そりゃあ簡単には入れないわ

私達は王様からの褒美として特別に入ることが出来たけど、本来は入れば重罪なんだろうな。

奥に進んで行くとそこに広がるのはダーウィンが遺してきたであろう手記の数々

よーく見るとイギリス英語で綴られている物もあるな。


「それは暗号文が書かれたメモね…未だに謎が解明されていない文なのだけど、カナはわかるの?」


じっと英文のメモを見ていた私の隣に来たのはシロさんだった。

未だに謎が解明されていないメモね…確かに筆記体で書かれている分難しいかもね。

それにアメリカ英語とイギリス英語では発音やスペルに違いがあるから気をつけて読まないと分からない事がある。

このメモに書かれているのは…


「“3日後の夜に仕掛ける…?”


どうやら何かをすることを忘れない為に書いたメモみたいだけど何を仕掛けるかまでは書かれてないわね。」


何気なく筆記体の英文を読み上げて呟くと、隣にいたシロさんはピタリと動きを止めた。

まるで私がスラスラと読んだことが衝撃的ですと言っているようでとてもわかりやすい表情だった。

そういえば、こちらの世界の人間は翻訳スキルがあっても私達の世界の文字は解読出来ないんだった。

出来る奴は私やマアヤのような異世界召喚者か、私達と同じ世界から転生してきた者ぐらいか。

マアヤは日本語とロシア語、あとはアメリカ英語なら読み書き出来るらしい…それはそれですごいな。


「あ…そっか、ツキカゲが普通に私が日本語で書いたレシピブック読んでたからそれを当たり前だと思ってた。」


ツキカゲは料理本で出た文字だけ読み書きが出来る。それが普通だと思っていた私は平然とこの英文を読んでしまった。

こりゃあ王様に呼び出されそうだな…それかシロさんに異世界の文字について教える羽目になるか?


「カナ…こっちはアメリカ英語になってるよ」

「えっ?どれどれ…。」


突然マアヤからそう言われて、今のシロさんから逃げれるチャンスだと思いシロさんの横を通ってマアヤの隣に立つと、目の前には確かにアメリカ英語で書かれた日記があった。

そこに書かれていたのは生前のダーウィンが隠したかった秘密の日記

今まで解読されてなかったのが奇跡であろう






彼が書いた日記…それはとても素敵な物語
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