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94話
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この世界で重厚感のあるカーペットを見るのは二度目だろうか。
一度目はツキカゲと脱獄したときにたどり着いた先が王の間で、私は長い髪の毛を利用して鱗に擬態してたっけか。
その時は己の足で踏み歩くことはなかったけど今は違う。
目の前にいる獅子のような威厳を見せる神々しささえ感じてしまう存在が、鎮座する椅子まで続くカーペットの上にいることすら恐れ多いと感じてしまうほどだった。
それにしても、とても整った顔立ちをした御方だな。
金色の髪色に夕日を連想させるオレンジ色のメッシュが入ってて神々しい他にも瞳は深い海の色にも見えるし、人によっては夜空の色と感じるだろう綺麗すぎる真っ直ぐな目だ。
「さて…君のことは聞いている。
君の時間を無駄遣いさせるわけにはいかないから本題に移させてもらう。
我が国のためにトロルの群生に立ち向かってくれたこと感謝する。」
突然話を進めて頭を下げてくるものだから驚いてしまった。
王様がこんなことをするものなのだろうか?絶対なにかあるぞこれ。
「あはー!昔っから変わんないね!」
なぜ隣にシロさんがいるのかは謎だけど、どういうわけか落ち着くのだ。
高貴な雰囲気が漂う空間に響き渡るシロさんの陽気な笑い声に対してジト目で姉を見る弟は、小さくため息をついていた。
「それはこちらのセリフだ…どんなに環境が変わってもシロは何も変わらないな。
お前の弟だったりその仲間だったり、連れてくる奴を見る度に腰が抜けそうだ。」
口調が崩れた様子からしてシロさんと仲良しなのはわかるんだけど、王様とシロさんは一体どんな関係なんだ?
「ねぇツキカゲ…今まで伝説のドラゴンとしてのシロさんしか見た事ないんだけど、シロさんと国王陛下って昔から仲良しなの?」
つま先立ちをしながらツキカゲの耳元で小音量で聞くと、返すように答えてくれた。
「シロはもう100年はこの国を縄張りにしてる。
歴代の王と交流を深めているんだよ」
何それスゴい
そういえばシロさんってこの王国が出来るきっかけとなった、チャールズ・ダーウィンを知ってたりするのだろうか?
いやでもこの国が出来たのって何年前だ?
何時ダーウィンが生まれたのかすら調べてないから頭を抱えるどころか、今の状態だとそれすらできない。
「そうだ…先日のトロル襲撃の件について気になることがひとつあった。
うちの弟にお願いして採取してもらったボストロールの残骸を調べてた時に妙なものを発見したのよ。」
突然真剣な顔つきになって話すシロさんの方を全員が向いた。
妙なもの…その言葉に王は顔を顰めて、ゆっくりと口を開き妙なものが何だったのかを聞いた。
すると先程まで大人しく立っていたマアヤがシロさんに近づいて、ポンチョの下にあるポーチから小瓶に入った何かを取り出してシロさんに渡した。
なんだあれ…何かの欠片なのはわかるけどよく分からない。
「シロさん…それは?」
「ボストロルの魔石とはまた違う魔石の欠片。
黒焦げのボストロルの中に入ってて調べたら外部の何者かが埋め込んだことがわかったのよ。
ツキカゲに聞いたんだけど、ボストロルにしては強かったんでしょ?変にしぶとかったし一切話さなかった…これってボストロルがやるような事じゃない。
何かしらあるわよ、この襲撃事件」
静かな空間にシロさんの声が響き、身震いすると黙り込んでいた王様が一度咳をした。
誰もが恐ろしい想像をしている現状をやめさせるために自身に注目を集めるあたり流石は王族と言ったところだろうか。
「この場で話すような内容ではないな…こちらでも調査の指示を出すが、今はカナ達に礼と共に褒美を与えたいと思ってる。」
そう言って隣にいた側近に耳打ちをするとすぐに動きだした。
一体何をするのだろうか…わからないけど私達に出来るのはその場でじっと待つことだけだった。
「そんなに身構えるものでも無い。ただの情報提供だよ。
カナとマアヤはトーマス帝国で指名手配された異世界召喚者であることは知ってた。
それに加えてカナは隣にいる暗黒竜と契約している人間だ。
この国に来たのは同じ異世界から来た者の手がかりを集めるのが目的なのだろう?」
どうやら私達の情報は相手に筒抜けのようで、全部知られているのか…怖
確かに私が旅をする理由はトーマス・アルバ・エジソンが教えてくれた場所に行くのも目的の中に入っている。
でも一番の理由は教えてくれた人の住む国から逃げることだから、異世界人仲間を探すのはついでに過ぎない。
「さすがは世界で最も平和な国を納める王なだけある。
情報提供のついでに約束してくれ
先を見据える王ならば、俺達がこの国に来たことをあの宗教国家には告げ口しないだろう?
いや、告げ口なんざするな。」
「ちょっとツキカゲ!」
いくらなんでも失礼すぎるでしょうが!
確かに王様はツキカゲが何なのかはわかっているし、ツキカゲも王様を怒らせたらここでも私達は指名手配されてしまう。
自分の発言に気をつけろと注意するために前に出ながらヒールの靴で彼の足を踏みつけると、説明ができないような小さな悲鳴を上げた。
「君は随分肝が座っているのだな...あらゆる種族が恐れる伝説のドラゴンをそのような扱いをするなんて。」
「食事を与えないと脅せば更におとなしくなるのでこんなの可愛いものです。
陛下、先程の竜の発言をお許しください。愚かな願いではありますが本気でございます。」
私の発言で何が変わるかなんて期待はせずに頭を下げると、王様はため息を付きながら頭を上げなさいを命じてきたので恐る恐る王様を見つめた。
「君がそんなことをすればこちらが危ういのだからそんなことはおやめなさい。
伝説のドラゴンは君が思っているほど扱いやすい存在ではないよ。」
まさかの説教を食らってしまった。
もしかして伝説のドラゴンという神聖な存在の扱いが悪かったというのか?この食欲おばけを神のように扱うのは逆にどうかとは思うけどここは王様の発言に首を立てに振るしかない。
「肝に銘じます。しかし、陛下の仰っていた情報というのは?」
ツキカゲのせいで忘れかけていたけど、王様は私達に情報を褒美として与えてくれようとしてたんだ。
「そういえばそうだった。
この城には地下深くに宝物庫があり、そこは当然私の許可なしに入ることは許されない。
先程、宝物庫を守る番人には言っておいた。見るだけ見てこの国から出ていくんだな。」
最後の冷たくも優しく感じる発言に、私達は頷くしかなかった。
一度目はツキカゲと脱獄したときにたどり着いた先が王の間で、私は長い髪の毛を利用して鱗に擬態してたっけか。
その時は己の足で踏み歩くことはなかったけど今は違う。
目の前にいる獅子のような威厳を見せる神々しささえ感じてしまう存在が、鎮座する椅子まで続くカーペットの上にいることすら恐れ多いと感じてしまうほどだった。
それにしても、とても整った顔立ちをした御方だな。
金色の髪色に夕日を連想させるオレンジ色のメッシュが入ってて神々しい他にも瞳は深い海の色にも見えるし、人によっては夜空の色と感じるだろう綺麗すぎる真っ直ぐな目だ。
「さて…君のことは聞いている。
君の時間を無駄遣いさせるわけにはいかないから本題に移させてもらう。
我が国のためにトロルの群生に立ち向かってくれたこと感謝する。」
突然話を進めて頭を下げてくるものだから驚いてしまった。
王様がこんなことをするものなのだろうか?絶対なにかあるぞこれ。
「あはー!昔っから変わんないね!」
なぜ隣にシロさんがいるのかは謎だけど、どういうわけか落ち着くのだ。
高貴な雰囲気が漂う空間に響き渡るシロさんの陽気な笑い声に対してジト目で姉を見る弟は、小さくため息をついていた。
「それはこちらのセリフだ…どんなに環境が変わってもシロは何も変わらないな。
お前の弟だったりその仲間だったり、連れてくる奴を見る度に腰が抜けそうだ。」
口調が崩れた様子からしてシロさんと仲良しなのはわかるんだけど、王様とシロさんは一体どんな関係なんだ?
「ねぇツキカゲ…今まで伝説のドラゴンとしてのシロさんしか見た事ないんだけど、シロさんと国王陛下って昔から仲良しなの?」
つま先立ちをしながらツキカゲの耳元で小音量で聞くと、返すように答えてくれた。
「シロはもう100年はこの国を縄張りにしてる。
歴代の王と交流を深めているんだよ」
何それスゴい
そういえばシロさんってこの王国が出来るきっかけとなった、チャールズ・ダーウィンを知ってたりするのだろうか?
いやでもこの国が出来たのって何年前だ?
何時ダーウィンが生まれたのかすら調べてないから頭を抱えるどころか、今の状態だとそれすらできない。
「そうだ…先日のトロル襲撃の件について気になることがひとつあった。
うちの弟にお願いして採取してもらったボストロールの残骸を調べてた時に妙なものを発見したのよ。」
突然真剣な顔つきになって話すシロさんの方を全員が向いた。
妙なもの…その言葉に王は顔を顰めて、ゆっくりと口を開き妙なものが何だったのかを聞いた。
すると先程まで大人しく立っていたマアヤがシロさんに近づいて、ポンチョの下にあるポーチから小瓶に入った何かを取り出してシロさんに渡した。
なんだあれ…何かの欠片なのはわかるけどよく分からない。
「シロさん…それは?」
「ボストロルの魔石とはまた違う魔石の欠片。
黒焦げのボストロルの中に入ってて調べたら外部の何者かが埋め込んだことがわかったのよ。
ツキカゲに聞いたんだけど、ボストロルにしては強かったんでしょ?変にしぶとかったし一切話さなかった…これってボストロルがやるような事じゃない。
何かしらあるわよ、この襲撃事件」
静かな空間にシロさんの声が響き、身震いすると黙り込んでいた王様が一度咳をした。
誰もが恐ろしい想像をしている現状をやめさせるために自身に注目を集めるあたり流石は王族と言ったところだろうか。
「この場で話すような内容ではないな…こちらでも調査の指示を出すが、今はカナ達に礼と共に褒美を与えたいと思ってる。」
そう言って隣にいた側近に耳打ちをするとすぐに動きだした。
一体何をするのだろうか…わからないけど私達に出来るのはその場でじっと待つことだけだった。
「そんなに身構えるものでも無い。ただの情報提供だよ。
カナとマアヤはトーマス帝国で指名手配された異世界召喚者であることは知ってた。
それに加えてカナは隣にいる暗黒竜と契約している人間だ。
この国に来たのは同じ異世界から来た者の手がかりを集めるのが目的なのだろう?」
どうやら私達の情報は相手に筒抜けのようで、全部知られているのか…怖
確かに私が旅をする理由はトーマス・アルバ・エジソンが教えてくれた場所に行くのも目的の中に入っている。
でも一番の理由は教えてくれた人の住む国から逃げることだから、異世界人仲間を探すのはついでに過ぎない。
「さすがは世界で最も平和な国を納める王なだけある。
情報提供のついでに約束してくれ
先を見据える王ならば、俺達がこの国に来たことをあの宗教国家には告げ口しないだろう?
いや、告げ口なんざするな。」
「ちょっとツキカゲ!」
いくらなんでも失礼すぎるでしょうが!
確かに王様はツキカゲが何なのかはわかっているし、ツキカゲも王様を怒らせたらここでも私達は指名手配されてしまう。
自分の発言に気をつけろと注意するために前に出ながらヒールの靴で彼の足を踏みつけると、説明ができないような小さな悲鳴を上げた。
「君は随分肝が座っているのだな...あらゆる種族が恐れる伝説のドラゴンをそのような扱いをするなんて。」
「食事を与えないと脅せば更におとなしくなるのでこんなの可愛いものです。
陛下、先程の竜の発言をお許しください。愚かな願いではありますが本気でございます。」
私の発言で何が変わるかなんて期待はせずに頭を下げると、王様はため息を付きながら頭を上げなさいを命じてきたので恐る恐る王様を見つめた。
「君がそんなことをすればこちらが危ういのだからそんなことはおやめなさい。
伝説のドラゴンは君が思っているほど扱いやすい存在ではないよ。」
まさかの説教を食らってしまった。
もしかして伝説のドラゴンという神聖な存在の扱いが悪かったというのか?この食欲おばけを神のように扱うのは逆にどうかとは思うけどここは王様の発言に首を立てに振るしかない。
「肝に銘じます。しかし、陛下の仰っていた情報というのは?」
ツキカゲのせいで忘れかけていたけど、王様は私達に情報を褒美として与えてくれようとしてたんだ。
「そういえばそうだった。
この城には地下深くに宝物庫があり、そこは当然私の許可なしに入ることは許されない。
先程、宝物庫を守る番人には言っておいた。見るだけ見てこの国から出ていくんだな。」
最後の冷たくも優しく感じる発言に、私達は頷くしかなかった。
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