見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

文字の大きさ
上 下
95 / 171

93話

しおりを挟む
翌日、ギルドに向かえば何やら忙しいようで役員がバタバタしていた。


「なにかあったんですか?」


受付嬢の元に行き聞いてみれば、目を丸くして「いたー!」とか叫んで私を指さしてきた。

まるで私が指名手配犯のようではないか

というか何をどうすれば私が指名手配犯になる?

やらかしたことといえば、ドラゴンと契約して脱獄したり、一国の聖女様を連れ去ったり…


あっれ~?心当たりしかないぞぉ?


「見つけましたよ…!昨日のトロル集団襲撃事件を解決した人間の冒険者!

黒髪の男女2人組は貴方達以外はこの国にはいませんから!」


どうやら指名手配犯とかではなく普通に私達を探していたみたい。

それにしてもトロル集団を討伐したことがそんなにすごいことかね?

すごいのはどちらかと言うとツキカゲでしょうが。

まあそんなことはどうでもいいや


「えっと…私達に用があるのですか?

これからこの子を使い魔の仮登録したいし、遺跡にも向かいたいので手短にお願いしたいのですが…。」

「わかっていますよ!働く人に時間の無駄遣いをさせてはいけない、この国では常識ですから!」


そうなんだ知らなかったよそれは

とりあえずマオウを抱き上げて事情説明をすると、受付嬢さんは使い魔の仮登録をして専用のスカーフを巻き付けてくれた。

すると信じられないことが起きた





「あのマオウが眉間に皺を寄せてる…」

「こいつって眉あったか?」


眉毛はないけど筋肉はあるみたいでスカーフを巻いた瞬間すごく機嫌が悪くなってしまった。

ゆらゆら揺れてるしっぽを床に叩きつけてるし完全にイライラしている様子が猫そのものだ。

こいつが食ってるのはドッグフードなのに態度は猫である…ナニコレ

もしかして首になにかが巻き付く感覚が苦手なのだろうか?

とりあえずここはポジティブな発言をして気をそらすようにしよう。


「マオウ似合ってるよ!額の魔石と同じ色でマオウの色だね!」


とにかく褒めちぎって声掛けを続けていると、少しずつ眉間のシワがなくなってしっぽがいつものように揺れている。

いい子だと優しく頭を撫でて笑うと、マオウは私の目をじっと見て再び抱き上げられるために前足を私の膝に乗せた。

どうもこういった態度は猫のようでわけがわからなくなるよ…でもそれがマオウなのだろう。





「あっ…そうでしたカナさん!

昨日の事件について我が国の王が礼を言いたいと伝言を預かっていたんでした!」


それ今言う?

絶対それ今言うべきことじゃないよね?もっと早く言うべきことだよ。

国王陛下からの伝言…どうしようか

場合によっては指名手配犯ってことがあちらにバレている可能性も視野に入れなければならないし、あとは私とマアヤは異世界から来た人間だし、ツキカゲは伝説のドラゴンだし!


「私とツキカゲに加えてマアヤが仲間入りしてパーティが作れると思った矢先に国王陛下からのお呼び出し…無理無理メンタル死んじゃう。」

「ツキカゲさん…カナってこんな性格してましたっけ?」


私の横で哀れみの目を向ける人々が怖いよ

マアヤは私の背を優しく撫でて安心させようとしてくれているし、抱っこされてるマオウは私の腰にしっぽを巻き付けてきた。

なぜ私の周りにはこんなにも優しい存在がいるんだ。

自分よりも相手を優先するマアヤの優しさに私は心を痛めた。


「マアヤもマオウも優しいねぇ...。ゴリゴリ削れた精神が修復されるよ

もういいや、ここは覚悟を決めて王様に会いに行こう!」


パチンと頬を両手で挟んで気合を入れる、とジタバタと足を動かしながらマオウが落ちた。

何も考えずにやった行動だからすぐに謝るとまたしっぽを床に叩きつけていらいらを表現していた。


「えっと...ごめんねマオウ」

「...。」


全く、マオウはよくわからない存在だから扱いが難しいな。

ツキカゲのほうが何倍も扱いやすいよ。

まあいいや、今は王様に会いに行ってさっさとやることを終わらせてしまおう。

じゃないと自分がやりたい事ができない。




「...で、どうやって王様と謁見することができるの?」

「あぁ駄目だこいつ。」


そんな額を抑えて俯かなくてもいいじゃん。

うちの黒髪の相棒は意外と人間らしいのかもしれない。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...