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91話
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目の前ですやすやと眠る幼女のそばで、相棒は考え事をしていた。
先程までいたもうひとりの異世界人である真彩は薬を作るために一度シロの家に向かった。
それからただ時間が過ぎていき、何かが起こることもなかった。ツキカゲも頭の整理が未だにできていなかった。
「(あの時間違いなく炎は消えた...やはりこの魔物が関わっているとしか思えない。)」
彼が見つめる先にいるのは幼女が抱きしめても一切嫌がる素振りを見せない不思議な生き物のマオウだった。
昨日突然現れたと思いきや、暴走した炎を一瞬にして消し去ったのだ。
水で消火したわけでもなく、瞬間移動させたわけでもなさそうだった。
気になるのは毛のように細い尻尾の先についた黒い水晶だろうか。
常にゆらゆらと揺らしているマオウの尻尾は不思議なものを感じるのだ。
初めてマオウに出会ったツキカゲは、対して強力ではないが弱いわけでもない少しめんどくさいと感じてしまうような魔力をマオウは持っていると考えた。
当然である
マオウはカーバンクルではないのだから
普通のカーバンクルはマオウのようにワープする能力を持っていないだけでなく、魔法をなかったことにすることは出来ないのだから。
これはカーバンクルの姿を借りた別の生き物と考えたほうが合理的であるとツキカゲは頭の中で片付けた。
そしていつしか自分たちの敵にならないことを祈るとしよう。
「マオウ...お前が何であろうと、カナになにか危害が加わるようなことをするなよ?
したら永遠に闇に葬ってやる。」
小さな生き物に対して圧をかけるのはどうかとは思うが、これは同じ魔物同士のコミュニケーションと片付けたほうが良い。
伝説のドラゴンと言われるツキカゲの威圧を受けたマオウの顔は、やはり何の変化もなかった。
人によってはつまらない、また他の人によっては不気味であると考えてしまう。
そんなつぶらな瞳を見るツキカゲの反応は前者だった。
どうして加奈はこんな得体のしれない生き物を受け入れてしまったのか未だにわからないでいるツキカゲはとうとう考えることをやめた。
ドラゴンがこんなことに細かくこだわるなんて自分らしくないから椅子から立ち上がった。
「腹減った...カナのしまってた食料の中に何か残ってなかったか?
ついでになんか作れるようにしておくか。」
また彼は一人の人間によって変わっていく
その瞬間は誰にも見抜かれずに時だけが過ぎていくのだった。
先程までいたもうひとりの異世界人である真彩は薬を作るために一度シロの家に向かった。
それからただ時間が過ぎていき、何かが起こることもなかった。ツキカゲも頭の整理が未だにできていなかった。
「(あの時間違いなく炎は消えた...やはりこの魔物が関わっているとしか思えない。)」
彼が見つめる先にいるのは幼女が抱きしめても一切嫌がる素振りを見せない不思議な生き物のマオウだった。
昨日突然現れたと思いきや、暴走した炎を一瞬にして消し去ったのだ。
水で消火したわけでもなく、瞬間移動させたわけでもなさそうだった。
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当然である
マオウはカーバンクルではないのだから
普通のカーバンクルはマオウのようにワープする能力を持っていないだけでなく、魔法をなかったことにすることは出来ないのだから。
これはカーバンクルの姿を借りた別の生き物と考えたほうが合理的であるとツキカゲは頭の中で片付けた。
そしていつしか自分たちの敵にならないことを祈るとしよう。
「マオウ...お前が何であろうと、カナになにか危害が加わるようなことをするなよ?
したら永遠に闇に葬ってやる。」
小さな生き物に対して圧をかけるのはどうかとは思うが、これは同じ魔物同士のコミュニケーションと片付けたほうが良い。
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そんなつぶらな瞳を見るツキカゲの反応は前者だった。
どうして加奈はこんな得体のしれない生き物を受け入れてしまったのか未だにわからないでいるツキカゲはとうとう考えることをやめた。
ドラゴンがこんなことに細かくこだわるなんて自分らしくないから椅子から立ち上がった。
「腹減った...カナのしまってた食料の中に何か残ってなかったか?
ついでになんか作れるようにしておくか。」
また彼は一人の人間によって変わっていく
その瞬間は誰にも見抜かれずに時だけが過ぎていくのだった。
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