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89話
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カリンの説明から戦闘技術を再現するのは難しいなんてものじゃない。
「(動きながら考えるのが難しい…!)」
ボストロールのくせして動きが機敏で躊躇なく武器を振るってくるから、真正面から攻撃すれば全部防がれるとおもった方がいいな。
__もっと炎の熱を高めろ…じゃないとボストロールの堅く厚い皮膚の奥に届かないぞ。
そんなことはわかってる…でも刃も通さないし、まだ炎の魔法を使いこなしてないのにどうしろってんだ。
「…っ!危なっ!? 」
私はボストロールのように硬い皮膚があるという訳では無い。だから正面から拳を振るってくる。
咄嗟に体を捻って回避すれば、反った背中の真横を太く逞しい腕がありえないスピードで通り過ぎて顔を引き攣らせた。
相手がどれ程の力を隠し持っているのかと想像するだけで顔を顰める理由にもなる。
ぎゅっとマントを握って素早く脱ぐと、私はボストロールの顔目掛けて投げ捨てた。
少しでも時間を稼いでさらに強く炎の魔法を使えるように考えろ、私!
まず私が出来ていなかったこと…それはイメージ。
炎…いや、私が今まで使ってたのはただの火に過ぎないちゃっちいものだ。
体内で魔力を練り上げて熱を上げろ
今まで以上の炎を生み出せ…私!
「私の最大限の出力で…フレイムナックル!」
脚に力を入れて一気にスピードを上げて高く跳ぶと、重力を利用して炎の錬成に集中した。
拳を握って振り下ろした物はただの鉄の拳には留まらない
「熱い鉄拳でその皮膚溶かしてやるっ!!」
顔に被っていたマントを取り外した直後の出来事に理解が追いついていないボストロールは私の目を見てた。
そうだ…しっかり見ておけ
お前を倒す私の勇姿を、そして自分の命が終わるその瞬間をカウントダウンしてろ。
絶望に反して清々しいまでに爽やかな笑顔を浮かべる私は、勢いよく拳を前に突き出した。
私の宣言通りに熱く燃える炎の鉄拳は肉の焼ける匂いと共に、ぐちゃぐちゃの拳の中に入ってくる血や臓器スラも焼きこがれてなくなっていくこの感覚が気持ち悪い。
こうもあっさりと終わると嫌だな
正直、昨日戦ったあのゴーレムの方がまだ厄介だったと思う
あれはありとあらゆる魔法を吸い込んで即エネルギーに変換させるからな。
「…!
嘘でしょ…。」
身体に突き刺さる細い腕を掴み力を入れる巨大な手は確実に骨を折る勢いで歯を食いしばった。
慌ててもう片方の手で奴の太い腕を離そうとするがビクともしない。
炎の魔法に集中し過ぎて身体強化の並行発動が出来ないから普通の力ではボストロールの腕を剥がせない。
「がぁ…っ!!
腕…離せぇ……」
ミシミシと腕が悲鳴をあげて確実にヒビが入った音が聞こえて涙が出てくる。
これじゃあ腕が無くなる…それだけは避けたい
こうなればヤケだ
「いい加減…燃えカスになれ!!」
掴まれた方の腕の痛みなんて無視してグッと再び拳を握ると、内側から全てを燃やすために魔力を練り直した。
油断がこんなことになってしまったのなら最後までやってやる
私はひたすら目の前の標的を燃やすために心と体を共に燃やした。
「あああああぁぁぁっ!!」
魔力をガスにしてボストロールを燃やし尽くす勢いで天高く登る煙
いよいよ鼻が可笑しくなる程に肉が焼け焦げていく過程に吐き気を催しそうだった…というより途中吐いていた。
そんな中、激戦の地に似合わないマヌケ顔のアイツが現れたんだ。
空よりも薄い水色の体と額の真っ赤な宝石を持つ人によっては可愛らしい魔物は、てちてちと歩いてきて私に飛びついてきた。
もうやめてくれ
そんな風にも聞こえたキュウ…という鳴き声と赤くなる額の宝石に私の戦意は喪失された。
だけど、気持ちはやめても体は止まらなかった。
轟々と燃える炎の止め方を私は知らない
気づいたらカリンも私の中からいなくなっていた。
つまりこの炎を止めることが出来る者は誰もいない
ようやく焦りの感情が湧いて出てきた
誰か私を止めてくれ
そう懇願しても、周りにいた奴は誰も動けずにいた。
ツキカゲすらもこの状況に驚きを隠せずにいてその場に立ち止まっていたんだ。
「助けて…誰か助け……」
刹那
私の目の前に現れた土星のような真っ黒い水晶と金の輪がゆらゆらと揺れて私の炎を吸い込んだ。
まるで昨日のゴーレムみたいだ
そんなこと言ってられないけどさ
急に意識が遠のいて限界が近づいて目の前が真っ暗になった。
その後何があったのかは覚えてない
「(動きながら考えるのが難しい…!)」
ボストロールのくせして動きが機敏で躊躇なく武器を振るってくるから、真正面から攻撃すれば全部防がれるとおもった方がいいな。
__もっと炎の熱を高めろ…じゃないとボストロールの堅く厚い皮膚の奥に届かないぞ。
そんなことはわかってる…でも刃も通さないし、まだ炎の魔法を使いこなしてないのにどうしろってんだ。
「…っ!危なっ!? 」
私はボストロールのように硬い皮膚があるという訳では無い。だから正面から拳を振るってくる。
咄嗟に体を捻って回避すれば、反った背中の真横を太く逞しい腕がありえないスピードで通り過ぎて顔を引き攣らせた。
相手がどれ程の力を隠し持っているのかと想像するだけで顔を顰める理由にもなる。
ぎゅっとマントを握って素早く脱ぐと、私はボストロールの顔目掛けて投げ捨てた。
少しでも時間を稼いでさらに強く炎の魔法を使えるように考えろ、私!
まず私が出来ていなかったこと…それはイメージ。
炎…いや、私が今まで使ってたのはただの火に過ぎないちゃっちいものだ。
体内で魔力を練り上げて熱を上げろ
今まで以上の炎を生み出せ…私!
「私の最大限の出力で…フレイムナックル!」
脚に力を入れて一気にスピードを上げて高く跳ぶと、重力を利用して炎の錬成に集中した。
拳を握って振り下ろした物はただの鉄の拳には留まらない
「熱い鉄拳でその皮膚溶かしてやるっ!!」
顔に被っていたマントを取り外した直後の出来事に理解が追いついていないボストロールは私の目を見てた。
そうだ…しっかり見ておけ
お前を倒す私の勇姿を、そして自分の命が終わるその瞬間をカウントダウンしてろ。
絶望に反して清々しいまでに爽やかな笑顔を浮かべる私は、勢いよく拳を前に突き出した。
私の宣言通りに熱く燃える炎の鉄拳は肉の焼ける匂いと共に、ぐちゃぐちゃの拳の中に入ってくる血や臓器スラも焼きこがれてなくなっていくこの感覚が気持ち悪い。
こうもあっさりと終わると嫌だな
正直、昨日戦ったあのゴーレムの方がまだ厄介だったと思う
あれはありとあらゆる魔法を吸い込んで即エネルギーに変換させるからな。
「…!
嘘でしょ…。」
身体に突き刺さる細い腕を掴み力を入れる巨大な手は確実に骨を折る勢いで歯を食いしばった。
慌ててもう片方の手で奴の太い腕を離そうとするがビクともしない。
炎の魔法に集中し過ぎて身体強化の並行発動が出来ないから普通の力ではボストロールの腕を剥がせない。
「がぁ…っ!!
腕…離せぇ……」
ミシミシと腕が悲鳴をあげて確実にヒビが入った音が聞こえて涙が出てくる。
これじゃあ腕が無くなる…それだけは避けたい
こうなればヤケだ
「いい加減…燃えカスになれ!!」
掴まれた方の腕の痛みなんて無視してグッと再び拳を握ると、内側から全てを燃やすために魔力を練り直した。
油断がこんなことになってしまったのなら最後までやってやる
私はひたすら目の前の標的を燃やすために心と体を共に燃やした。
「あああああぁぁぁっ!!」
魔力をガスにしてボストロールを燃やし尽くす勢いで天高く登る煙
いよいよ鼻が可笑しくなる程に肉が焼け焦げていく過程に吐き気を催しそうだった…というより途中吐いていた。
そんな中、激戦の地に似合わないマヌケ顔のアイツが現れたんだ。
空よりも薄い水色の体と額の真っ赤な宝石を持つ人によっては可愛らしい魔物は、てちてちと歩いてきて私に飛びついてきた。
もうやめてくれ
そんな風にも聞こえたキュウ…という鳴き声と赤くなる額の宝石に私の戦意は喪失された。
だけど、気持ちはやめても体は止まらなかった。
轟々と燃える炎の止め方を私は知らない
気づいたらカリンも私の中からいなくなっていた。
つまりこの炎を止めることが出来る者は誰もいない
ようやく焦りの感情が湧いて出てきた
誰か私を止めてくれ
そう懇願しても、周りにいた奴は誰も動けずにいた。
ツキカゲすらもこの状況に驚きを隠せずにいてその場に立ち止まっていたんだ。
「助けて…誰か助け……」
刹那
私の目の前に現れた土星のような真っ黒い水晶と金の輪がゆらゆらと揺れて私の炎を吸い込んだ。
まるで昨日のゴーレムみたいだ
そんなこと言ってられないけどさ
急に意識が遠のいて限界が近づいて目の前が真っ暗になった。
その後何があったのかは覚えてない
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