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87話
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マオウが仲間になった次の日、私はギルドに行って一時的な保護という名の仮契約の手続きをすることになった。
「ギルドに行ったら次はこの国が保管している遺跡を見に行こっか!
異世界人の形跡とかが残っていればいいんだけどね~。」
呑気にそう言いながら大人の姿でマオウを抱き上げている私を、ツキカゲは呆れ顔で見ていた。
「しかし気になる...。お前が犬と同じ扱いでいいのかと言って専用の餌を買ったときは衝撃が走ったぞ。」
なぜ彼がこんなことを言うのかというと、昨日の夕食のときにマオウに何を与えたらいいのかわからなくてとりあえずドッグフードを与えてみたところ、信じられない速さで平らげたのだ。
短くてぬいぐるみのような前足で、器を叩いておかわりを催促してきたから、本当に犬なのではないかと疑うようになってきた。
「カーバンクルも犬と同じ扱いでいいんだってことに気づいただけでも新しい発見だったね~。」
「カナは呑気だね...。シロさんがカナを心配してたよ」
ツキカゲとは反対の位置にいるマアヤの言葉に私はシロさんを想像した。
今日は家の中を整理するから夕方まで帰ってくるなと今朝、半強制的に追い出されてしまったばかりなのだ。
「それにしても...マアヤのその服似合ってるよ」
新調したばかりの彼女の服は機能性も良く、それでいておしゃれだった。
正体を隠すためにポンチョのフードを被った下ではウェーブのかかった短い髪の毛が見え隠れしており、丈の短いワンピースを身にまとい、生足だと色々と危ないので丈夫なスポーツタイツの上からヒザ下までの編上げブーツを履いている。
「このスポーツタイツはカナが買ってくれたものだからシロさんも興味津々だったね!」
「まあね...丈の短いワンピースなのに下に何も履かせないのはどうかと思ったから買ったんだけど。
気に入ってもらってよかったよ。」
苦笑しながらマアヤの笑顔を見たあとすぐに前を向くと、ギルドの看板が見えてきた。
そこには丁度、知り合いの冒険者がいてついでだから話しかけることにした。
「やっほーチロル!」
「あっ!お前はカナ!」
なんだよその反応は...もうちょっと嬉しがっても良いと思うんだけど。
私のもとに走ってきて肩を掴んできたリス獣人のチロル
突然のことで驚いたけど、なにか事情があることは察しがついたからなにかあったんだねとすんなりと聞けた。
「大変なんだ!ダーウィン王国の城門前にボストロルが出現したんだ!」
それは大変だ...なんて薄っぺらい発言で片付くほど簡単なことじゃあない
「聞きにくいんだけどさ...ボストロルが現れるってどのくらいやばいの?」
「そうだった...お前は引くほどに無知だったな。」
うるさいよ相棒
知らないことがあれば君に聞くのが契約なんだから教えてくれよ。
ため息を着いて私の頭を撫でると、ツキカゲはチロルに現状を聞いていた。
国家は動いているのかとか、ギルド側はどんな指示を受けたんだとか...ツキカゲは意外と冷静で人間並みの常識がある。
そうだ今は現状を聞くのが最優先かな
「ボストロルが現れたのは私達がクエストから帰って来た時で今私の仲間が足止めしてるの!
早く応援を城門前まで案内しないとだから私行かないと!」
なるほど、チロルは素早いリスの獣人だから情報伝達が得意なのか。
でも身軽で足が早くてもスタミナが無いのではないか?
だって彼女は息を切らしてるし足元がおぼつかない。
「...マアヤはシロさんを呼んで怪我人の手当をお願い。ツキカゲは私と城門前にいるボストロルをぶっ飛ばすわよ。」
抱っこしていたマオウを地面に降ろして頭を撫でると、言葉は通じないことを理解した上で私は説明をした。
「マオウはギルドの中にいて、何かあったらあなただけでも逃げなさい。」
優しく笑って手を離すと立ち上がってマアヤにマオウをお願いした。
さてと、行くとしますかね
軽くストレッチをして背中に力を入れると皮膚を突き破って生えた羽を伸ばした。
隣りにいたツキカゲも真似するように背中のみを本来の姿に戻すと先に飛び上がっていって、私も行かなくては焦りが生じた。
「じゃあ行ってくるね。
戻ったら遺跡に行って手がかりがあればいいね~!」
「呑気すぎるよ!」
ヘラヘラと笑って背中の羽を動かすと、ジャンプをして完全に地面から足を離す。
小さくなっていくマアヤ達や建物を横目で見ながらツキカゲを追いかけると遅いと怒られてしまった。
「遅れてごめんね
早速だけどボストロルについて教えて頂戴」
冷静な私は先程の呑気さが嘘のようでギラギラと光る黒い瞳は遠くに見える巨体を見つめていた。
「ギルドに行ったら次はこの国が保管している遺跡を見に行こっか!
異世界人の形跡とかが残っていればいいんだけどね~。」
呑気にそう言いながら大人の姿でマオウを抱き上げている私を、ツキカゲは呆れ顔で見ていた。
「しかし気になる...。お前が犬と同じ扱いでいいのかと言って専用の餌を買ったときは衝撃が走ったぞ。」
なぜ彼がこんなことを言うのかというと、昨日の夕食のときにマオウに何を与えたらいいのかわからなくてとりあえずドッグフードを与えてみたところ、信じられない速さで平らげたのだ。
短くてぬいぐるみのような前足で、器を叩いておかわりを催促してきたから、本当に犬なのではないかと疑うようになってきた。
「カーバンクルも犬と同じ扱いでいいんだってことに気づいただけでも新しい発見だったね~。」
「カナは呑気だね...。シロさんがカナを心配してたよ」
ツキカゲとは反対の位置にいるマアヤの言葉に私はシロさんを想像した。
今日は家の中を整理するから夕方まで帰ってくるなと今朝、半強制的に追い出されてしまったばかりなのだ。
「それにしても...マアヤのその服似合ってるよ」
新調したばかりの彼女の服は機能性も良く、それでいておしゃれだった。
正体を隠すためにポンチョのフードを被った下ではウェーブのかかった短い髪の毛が見え隠れしており、丈の短いワンピースを身にまとい、生足だと色々と危ないので丈夫なスポーツタイツの上からヒザ下までの編上げブーツを履いている。
「このスポーツタイツはカナが買ってくれたものだからシロさんも興味津々だったね!」
「まあね...丈の短いワンピースなのに下に何も履かせないのはどうかと思ったから買ったんだけど。
気に入ってもらってよかったよ。」
苦笑しながらマアヤの笑顔を見たあとすぐに前を向くと、ギルドの看板が見えてきた。
そこには丁度、知り合いの冒険者がいてついでだから話しかけることにした。
「やっほーチロル!」
「あっ!お前はカナ!」
なんだよその反応は...もうちょっと嬉しがっても良いと思うんだけど。
私のもとに走ってきて肩を掴んできたリス獣人のチロル
突然のことで驚いたけど、なにか事情があることは察しがついたからなにかあったんだねとすんなりと聞けた。
「大変なんだ!ダーウィン王国の城門前にボストロルが出現したんだ!」
それは大変だ...なんて薄っぺらい発言で片付くほど簡単なことじゃあない
「聞きにくいんだけどさ...ボストロルが現れるってどのくらいやばいの?」
「そうだった...お前は引くほどに無知だったな。」
うるさいよ相棒
知らないことがあれば君に聞くのが契約なんだから教えてくれよ。
ため息を着いて私の頭を撫でると、ツキカゲはチロルに現状を聞いていた。
国家は動いているのかとか、ギルド側はどんな指示を受けたんだとか...ツキカゲは意外と冷静で人間並みの常識がある。
そうだ今は現状を聞くのが最優先かな
「ボストロルが現れたのは私達がクエストから帰って来た時で今私の仲間が足止めしてるの!
早く応援を城門前まで案内しないとだから私行かないと!」
なるほど、チロルは素早いリスの獣人だから情報伝達が得意なのか。
でも身軽で足が早くてもスタミナが無いのではないか?
だって彼女は息を切らしてるし足元がおぼつかない。
「...マアヤはシロさんを呼んで怪我人の手当をお願い。ツキカゲは私と城門前にいるボストロルをぶっ飛ばすわよ。」
抱っこしていたマオウを地面に降ろして頭を撫でると、言葉は通じないことを理解した上で私は説明をした。
「マオウはギルドの中にいて、何かあったらあなただけでも逃げなさい。」
優しく笑って手を離すと立ち上がってマアヤにマオウをお願いした。
さてと、行くとしますかね
軽くストレッチをして背中に力を入れると皮膚を突き破って生えた羽を伸ばした。
隣りにいたツキカゲも真似するように背中のみを本来の姿に戻すと先に飛び上がっていって、私も行かなくては焦りが生じた。
「じゃあ行ってくるね。
戻ったら遺跡に行って手がかりがあればいいね~!」
「呑気すぎるよ!」
ヘラヘラと笑って背中の羽を動かすと、ジャンプをして完全に地面から足を離す。
小さくなっていくマアヤ達や建物を横目で見ながらツキカゲを追いかけると遅いと怒られてしまった。
「遅れてごめんね
早速だけどボストロルについて教えて頂戴」
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