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84話
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シロさんの家に帰る途中、私は疲れが原因で幼い子どもの姿に戻ってしまった。
私が大人の姿を保つことが出来たのは魔力があったから
だがいくら魔力を多く持っていたとしても継続的に使えばいずれ尽きてしまうもの
よく塵も積もれば山となるという言葉があるけどまさにそれだと思う
「ごめんねツキカゲぇ」
今はツキカゲの背中に乗せてもらってゆらゆらとゆりかごのような心地良さに眠る一歩手前まで来ている。
「…カナ?」
「ん…ご飯は作る
着いたら起こして…」
意識が薄れていく中独り言のように呟いた私の瞼は重たくなって、ついには完全に閉じてしまった。
きっとツキカゲはマジで寝たのかと呆れてるだろうな
眠ったら目の前に広がるのは草原でした
なんで?また例の世界に来てしまったとでもいうの?
「カリン~!いたら返事しなさ~い!」
グッとお腹に力を入れながら息を吸い込むと大きな声で騒げば現れるだろうという安直な考えがどこまで通用するかはわからないけど、やるだけやってみようの精神で騒いでみた。
「...うるさい」
「ひぃっ!?」
背後からだるそうな声が聞こえて反射的に背筋を伸ばす。
どうしていつも彼は神出鬼没なのだろうか。
伸びた背筋を丸くして振り向くと予想通り赤毛の青年の姿をしたドラゴンがいた。
「カリン…あなた何時からそこにいたの?」
「お前がこの世界に来た時からずっといた。
だいたいお前がここに来たら俺はお前のそばに強制転移させられるんだよ」
なるほどそれで私の真後ろにいたということか。
異世界の常識なんて知らないし、だいたいこの世界の解明ができていない摩訶不思議な世界だから、当たり前だろとか言わないでね。
「全く…こんなことも知らないなんてお前は本当に伝説のドラゴンと契約した人間なのか疑うな。」
「悪かったわね無知で…こちとら異世界から召喚された人間ですからね~」
煽るように言ってくるから、煽り返せばムッとした顔をして頭をガシガシと掻いて私を横切って歩いて行く
置いていかれないように後ろについて歩いていると鬱陶しいとも感じていないらしく、ちらりと私を見て鼻で笑った。
「お前はチビだな」
「唐突の悪口とか大分タチ悪いわね…これでも20歳だし!
まぁ…異世界に召喚されてからは5歳児になっちゃったけどさ」
どうしてこんなことになったんだろう
そう何度も考えては諦めて現実を受け入れて今を生きているけどさ…いつか限界が来ると思うんだ。
「…何を勘違いしてるかは知らんが、今のお前は本来の姿なのではないか?」
バッと首を上げてカリンの方を見る
彼の言ってることが本当ならばと思い、何か鏡代わりになるものはないかと周りを見る。
なんてことをしてるとカリンがため息をついた。
「お前…この世界の性質を忘れるな
ここは伝説のドラゴンの魂が行き着く場所であり一種の精神世界だから記憶にあるものならなんでも生み出せるだろうが。」
「へ~そうなんだ」
私その辺分からないし…と言おうとしたがよく考えればカリンはいつも白紙のページの本を読んでいた。
本という形はわかっても内容はわからないのはカリンの記憶にあるものを生み出したからなのだろう。
「ならば出てこい鏡よ!」
「そこまでしろと言った覚えはない」
キレとスピードのある辛辣な言葉を貰いながら生み出した鏡を覗くと、そこに居たのは幼女の私ではなく見慣れた20歳の姿の私だった。
ここでは私の実際の年齢の姿でいることができるのか…いいことを知った気分だ。
ここの世界についてひとつ知れたことはかなりの収穫なのだろう。
「よし…カリンにはこれから伝説の楽園について教えてもらうよ!」
「そこまでする義理はないから却下」
また即答された…どうしてそこまで私に対して冷たいのさ、ツキカゲでもまだ私に対して優しいぞ。
「人間に物事を教えるなんて反吐が出る」
「更に酷い!」
なんてやり取りをしながらも結局時間切れで何も教わることなく現実の世界に戻ってしまった。
あの世界についてわかったことが少ない気がする…解明が出来ればカリンをあの世界から出せるかもしれない
だから頑張らないと
私が大人の姿を保つことが出来たのは魔力があったから
だがいくら魔力を多く持っていたとしても継続的に使えばいずれ尽きてしまうもの
よく塵も積もれば山となるという言葉があるけどまさにそれだと思う
「ごめんねツキカゲぇ」
今はツキカゲの背中に乗せてもらってゆらゆらとゆりかごのような心地良さに眠る一歩手前まで来ている。
「…カナ?」
「ん…ご飯は作る
着いたら起こして…」
意識が薄れていく中独り言のように呟いた私の瞼は重たくなって、ついには完全に閉じてしまった。
きっとツキカゲはマジで寝たのかと呆れてるだろうな
眠ったら目の前に広がるのは草原でした
なんで?また例の世界に来てしまったとでもいうの?
「カリン~!いたら返事しなさ~い!」
グッとお腹に力を入れながら息を吸い込むと大きな声で騒げば現れるだろうという安直な考えがどこまで通用するかはわからないけど、やるだけやってみようの精神で騒いでみた。
「...うるさい」
「ひぃっ!?」
背後からだるそうな声が聞こえて反射的に背筋を伸ばす。
どうしていつも彼は神出鬼没なのだろうか。
伸びた背筋を丸くして振り向くと予想通り赤毛の青年の姿をしたドラゴンがいた。
「カリン…あなた何時からそこにいたの?」
「お前がこの世界に来た時からずっといた。
だいたいお前がここに来たら俺はお前のそばに強制転移させられるんだよ」
なるほどそれで私の真後ろにいたということか。
異世界の常識なんて知らないし、だいたいこの世界の解明ができていない摩訶不思議な世界だから、当たり前だろとか言わないでね。
「全く…こんなことも知らないなんてお前は本当に伝説のドラゴンと契約した人間なのか疑うな。」
「悪かったわね無知で…こちとら異世界から召喚された人間ですからね~」
煽るように言ってくるから、煽り返せばムッとした顔をして頭をガシガシと掻いて私を横切って歩いて行く
置いていかれないように後ろについて歩いていると鬱陶しいとも感じていないらしく、ちらりと私を見て鼻で笑った。
「お前はチビだな」
「唐突の悪口とか大分タチ悪いわね…これでも20歳だし!
まぁ…異世界に召喚されてからは5歳児になっちゃったけどさ」
どうしてこんなことになったんだろう
そう何度も考えては諦めて現実を受け入れて今を生きているけどさ…いつか限界が来ると思うんだ。
「…何を勘違いしてるかは知らんが、今のお前は本来の姿なのではないか?」
バッと首を上げてカリンの方を見る
彼の言ってることが本当ならばと思い、何か鏡代わりになるものはないかと周りを見る。
なんてことをしてるとカリンがため息をついた。
「お前…この世界の性質を忘れるな
ここは伝説のドラゴンの魂が行き着く場所であり一種の精神世界だから記憶にあるものならなんでも生み出せるだろうが。」
「へ~そうなんだ」
私その辺分からないし…と言おうとしたがよく考えればカリンはいつも白紙のページの本を読んでいた。
本という形はわかっても内容はわからないのはカリンの記憶にあるものを生み出したからなのだろう。
「ならば出てこい鏡よ!」
「そこまでしろと言った覚えはない」
キレとスピードのある辛辣な言葉を貰いながら生み出した鏡を覗くと、そこに居たのは幼女の私ではなく見慣れた20歳の姿の私だった。
ここでは私の実際の年齢の姿でいることができるのか…いいことを知った気分だ。
ここの世界についてひとつ知れたことはかなりの収穫なのだろう。
「よし…カリンにはこれから伝説の楽園について教えてもらうよ!」
「そこまでする義理はないから却下」
また即答された…どうしてそこまで私に対して冷たいのさ、ツキカゲでもまだ私に対して優しいぞ。
「人間に物事を教えるなんて反吐が出る」
「更に酷い!」
なんてやり取りをしながらも結局時間切れで何も教わることなく現実の世界に戻ってしまった。
あの世界についてわかったことが少ない気がする…解明が出来ればカリンをあの世界から出せるかもしれない
だから頑張らないと
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