見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

文字の大きさ
上 下
86 / 171

84話

しおりを挟む
シロさんの家に帰る途中、私は疲れが原因で幼い子どもの姿に戻ってしまった。

私が大人の姿を保つことが出来たのは魔力があったから

だがいくら魔力を多く持っていたとしても継続的に使えばいずれ尽きてしまうもの

よく塵も積もれば山となるという言葉があるけどまさにそれだと思う


「ごめんねツキカゲぇ」


今はツキカゲの背中に乗せてもらってゆらゆらとゆりかごのような心地良さに眠る一歩手前まで来ている。



「…カナ?」

「ん…ご飯は作る

着いたら起こして…」



意識が薄れていく中独り言のように呟いた私の瞼は重たくなって、ついには完全に閉じてしまった。

きっとツキカゲはマジで寝たのかと呆れてるだろうな















眠ったら目の前に広がるのは草原でした

なんで?また例の世界に来てしまったとでもいうの?


「カリン~!いたら返事しなさ~い!」


グッとお腹に力を入れながら息を吸い込むと大きな声で騒げば現れるだろうという安直な考えがどこまで通用するかはわからないけど、やるだけやってみようの精神で騒いでみた。


「...うるさい」

「ひぃっ!?」


背後からだるそうな声が聞こえて反射的に背筋を伸ばす。

どうしていつも彼は神出鬼没なのだろうか。

伸びた背筋を丸くして振り向くと予想通り赤毛の青年の姿をしたドラゴンがいた。


「カリン…あなた何時からそこにいたの?」

「お前がこの世界に来た時からずっといた。

だいたいお前がここに来たら俺はお前のそばに強制転移させられるんだよ」


なるほどそれで私の真後ろにいたということか。

異世界の常識なんて知らないし、だいたいこの世界の解明ができていない摩訶不思議な世界だから、当たり前だろとか言わないでね。


「全く…こんなことも知らないなんてお前は本当に伝説のドラゴンと契約した人間なのか疑うな。」

「悪かったわね無知で…こちとら異世界から召喚された人間ですからね~」


煽るように言ってくるから、煽り返せばムッとした顔をして頭をガシガシと掻いて私を横切って歩いて行く

置いていかれないように後ろについて歩いていると鬱陶しいとも感じていないらしく、ちらりと私を見て鼻で笑った。



「お前はチビだな」

「唐突の悪口とか大分タチ悪いわね…これでも20歳だし!

まぁ…異世界に召喚されてからは5歳児になっちゃったけどさ」


どうしてこんなことになったんだろう

そう何度も考えては諦めて現実を受け入れて今を生きているけどさ…いつか限界が来ると思うんだ。


「…何を勘違いしてるかは知らんが、今のお前は本来の姿なのではないか?」


バッと首を上げてカリンの方を見る

彼の言ってることが本当ならばと思い、何か鏡代わりになるものはないかと周りを見る。

なんてことをしてるとカリンがため息をついた。


「お前…この世界の性質を忘れるな

ここは伝説のドラゴンの魂が行き着く場所であり一種の精神世界だから記憶にあるものならなんでも生み出せるだろうが。」

「へ~そうなんだ」


私その辺分からないし…と言おうとしたがよく考えればカリンはいつも白紙のページの本を読んでいた。

本という形はわかっても内容はわからないのはカリンの記憶にあるものを生み出したからなのだろう。


「ならば出てこい鏡よ!」

「そこまでしろと言った覚えはない」


キレとスピードのある辛辣な言葉を貰いながら生み出した鏡を覗くと、そこに居たのは幼女の私ではなく見慣れた20歳の姿の私だった。

ここでは私の実際の年齢の姿でいることができるのか…いいことを知った気分だ。

ここの世界についてひとつ知れたことはかなりの収穫なのだろう。


「よし…カリンにはこれから伝説の楽園レジェンドパラディンについて教えてもらうよ!」

「そこまでする義理はないから却下」


また即答された…どうしてそこまで私に対して冷たいのさ、ツキカゲでもまだ私に対して優しいぞ。


「人間に物事を教えるなんて反吐が出る」

「更に酷い!」


なんてやり取りをしながらも結局時間切れで何も教わることなく現実の世界に戻ってしまった。

あの世界についてわかったことが少ない気がする…解明が出来ればカリンをあの世界から出せるかもしれない


だから頑張らないと
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...