見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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82話

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高密度の魔力弾を吸収したゴーレムはただ強いだけではなかった。


「春風乱舞っ!」


風を纏った刃を放とうがそれも吸収するのだ


「言っておくかあのゴーレムは魔力を吸収すればするほど強くなるから無闇に魔法を使うのは勧めない」

「それを早く言いなさい!」


てっきりツキカゲの魔力を吸っておなかいっぱいになったかなとか考えてしまったじゃん!

舌打ちをしながら一度魔力を練ることをやめて逃げに徹することに決めた私

それをツキカゲにすぐに指摘されて怒られたけど、あのゴーレムを強くしたのあんたでしょうが


「ひいいぃ!?

今あいつ信じられないスピードで攻撃してきたんだけど!!」


すべての攻撃を見極めてなんとか攻撃できたけど先程の攻撃は明らかに力もスピードも違う

どうにか紙一重で避けることができたけど、たまたまだからまた同じ攻撃が来たら避けられる自信がない。

考えろ、絶対に打開策はあるはずなんだ。だから考えろ

相手の全身を舐め回すようにじっくりと見て隙を探すんだ


「(どうしよう...全然隙がないんだけど)」


人は自分に勝算がないと焦りで周りが見えにくくなる

だからどんなに柔軟に動き回ろうが無駄になる瞬間というのは






油断したときに訪れる





目の前に壁と見間違えてしまう程に大きな硬い拳があれば誰だって自分のすべてが終わってしまうような気がするでしょ?

今まさにそんな風に考えてたよ


「がっ...!?」


全身に来る衝撃をどこかに逃がす余裕もなしに飛ばされた先にあるのはゴツゴツとした岩の壁

体中の痛みが骨にまで来るし意識が曖昧になってきた。

久しぶりにこんなにピンチだと感じたな...なんて考えをしてる時点でまだ余裕はありそうだけどね

でも口から吐き出されるのは余裕かました発言でも鳴き声でもない

生理的に流れる涙と喘ぐような呼吸だけが今の私にできること

なんでこんなことをしなくてはいけないんだよとか呑気なことを考えてる私をビンタしてやりたい気持ちを抑えながら、こちらに近づいてくるゴーレムに目を移した。

未だに吸収した魔力はまだまだ残ってるみたい

きっと魔力消費の効率がとてもいいのだろうな


「(もしかして...)」


この瞬間何かを理解して先程まで焦りがなくなって頭の中が冴えてきた。

乱れていた呼吸も気づけば整っていた

その瞬間すべての攻撃が驚異ではなくなったんだ

あんなに素早いと感じていた攻撃も、一発が重いと思っていたのも全部怖くない

世界の見え方というのはこんなにも変わるものなのか

脚に力を入れてゴーレムの懐に入り込んで腹あたりからめを離さない

ぐっ...と拳を握り全身を使って硬くなったそれを振りかざした

その瞬間、はじめてゴーレムにまともな攻撃が通用した気がする

そこで私の推測は正しいことが証明されて笑いが漏れてしまう


「なるほどね...単純な話だったんだ」


殴り飛ばされた巨体と拳を交互に見ながらツキカゲに言い放った。

こういうことであっているのだろう...と答えを求めるわけでもなく笑いながら


「あぁ~結構簡単に終わりそうね」

「そう思うのならさっさと片付けろ」


決して互いに目を合わせるわけでもなく呑気に話せば、いつの間にかゴーレムは立ち上がってまた攻撃を仕掛けようとしている

私は再び拳を固く握りしめた

とてもかんたんな話だ...だってやつは向けられた魔力は吸収できても身体強化を目的とした魔力は吸収できない

だから先程の攻撃は対処できなかったんだ。

あとはどうやってあのゴーレムを行動不能にするかだが...


「(吸収した魔力を全部消費させる...いやそんなのいつ終わるかわかんない

いっそのことコアを破壊するしかなさそうね)」


覚悟を決めて深呼吸をする

私だってやるときはやるしかっこいいところを見せたいと思ってしまう人間だ、ここは一発で決めたい

思い返してみろ私

ダンジョンに入る前に倒した岩サイをどうやって倒した?

あいつは火に弱いという弱点をついて倒した...が、そこには大事な心持ちってものがあったじゃない

炎を熱く燃やすのは魔力、拳を固く握るのは「根性」だ


「乙女の底力をなめるなよ...!

くらえド根性パンチっ!!」


再び突進するようにゴーレムの懐に入り拳を振るうと目の前で岩のように硬かったゴーレムの体が割れた。

ピシピシとひび割れる音もなく崩壊するように割れた


しかしそんなことで動じるようなやつではない

一度退避するために私を掴んで離そうとしたのだろう、太い腕がこちらに伸びてきた。


「捕まってたまるかってんだ...!」


素早い動きを活かして腕を避け、関節部分を拳で破壊する。

が、しかしそれでもゴーレムは動じない

感情の概念がないのだろうかと思ってしまうほどにこのゴーレムから感情の変化がない


無だけが奴にはあった


「(あった...!)」


割れた体の中に眠るように静かに存在するそれに触れようと手を伸ばした。

その時だった




「~=0)'(&%$#!!」



理解不能な言語のような何かを耳に入れたくなくて、咄嗟に距離をとって耳を手で塞いだ。

そして気づいたんだ


さっきの言葉のようにも感じられた声は初めて感じたゴーレムの感情でもあったのだと



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