84 / 171
82話
しおりを挟む
高密度の魔力弾を吸収したゴーレムはただ強いだけではなかった。
「春風乱舞っ!」
風を纏った刃を放とうがそれも吸収するのだ
「言っておくかあのゴーレムは魔力を吸収すればするほど強くなるから無闇に魔法を使うのは勧めない」
「それを早く言いなさい!」
てっきりツキカゲの魔力を吸っておなかいっぱいになったかなとか考えてしまったじゃん!
舌打ちをしながら一度魔力を練ることをやめて逃げに徹することに決めた私
それをツキカゲにすぐに指摘されて怒られたけど、あのゴーレムを強くしたのあんたでしょうが
「ひいいぃ!?
今あいつ信じられないスピードで攻撃してきたんだけど!!」
すべての攻撃を見極めてなんとか攻撃できたけど先程の攻撃は明らかに力もスピードも違う
どうにか紙一重で避けることができたけど、たまたまだからまた同じ攻撃が来たら避けられる自信がない。
考えろ、絶対に打開策はあるはずなんだ。だから考えろ
相手の全身を舐め回すようにじっくりと見て隙を探すんだ
「(どうしよう...全然隙がないんだけど)」
人は自分に勝算がないと焦りで周りが見えにくくなる
だからどんなに柔軟に動き回ろうが無駄になる瞬間というのは
油断したときに訪れる
目の前に壁と見間違えてしまう程に大きな硬い拳があれば誰だって自分のすべてが終わってしまうような気がするでしょ?
今まさにそんな風に考えてたよ
「がっ...!?」
全身に来る衝撃をどこかに逃がす余裕もなしに飛ばされた先にあるのはゴツゴツとした岩の壁
体中の痛みが骨にまで来るし意識が曖昧になってきた。
久しぶりにこんなにピンチだと感じたな...なんて考えをしてる時点でまだ余裕はありそうだけどね
でも口から吐き出されるのは余裕かました発言でも鳴き声でもない
生理的に流れる涙と喘ぐような呼吸だけが今の私にできること
なんでこんなことをしなくてはいけないんだよとか呑気なことを考えてる私をビンタしてやりたい気持ちを抑えながら、こちらに近づいてくるゴーレムに目を移した。
未だに吸収した魔力はまだまだ残ってるみたい
きっと魔力消費の効率がとてもいいのだろうな
「(もしかして...)」
この瞬間何かを理解して先程まで焦りがなくなって頭の中が冴えてきた。
乱れていた呼吸も気づけば整っていた
その瞬間すべての攻撃が驚異ではなくなったんだ
あんなに素早いと感じていた攻撃も、一発が重いと思っていたのも全部怖くない
世界の見え方というのはこんなにも変わるものなのか
脚に力を入れてゴーレムの懐に入り込んで腹あたりからめを離さない
ぐっ...と拳を握り全身を使って硬くなったそれを振りかざした
その瞬間、はじめてゴーレムにまともな攻撃が通用した気がする
そこで私の推測は正しいことが証明されて笑いが漏れてしまう
「なるほどね...単純な話だったんだ」
殴り飛ばされた巨体と拳を交互に見ながらツキカゲに言い放った。
こういうことであっているのだろう...と答えを求めるわけでもなく笑いながら
「あぁ~結構簡単に終わりそうね」
「そう思うのならさっさと片付けろ」
決して互いに目を合わせるわけでもなく呑気に話せば、いつの間にかゴーレムは立ち上がってまた攻撃を仕掛けようとしている
私は再び拳を固く握りしめた
とてもかんたんな話だ...だってやつは向けられた魔力は吸収できても身体強化を目的とした魔力は吸収できない
だから先程の攻撃は対処できなかったんだ。
あとはどうやってあのゴーレムを行動不能にするかだが...
「(吸収した魔力を全部消費させる...いやそんなのいつ終わるかわかんない
いっそのことコアを破壊するしかなさそうね)」
覚悟を決めて深呼吸をする
私だってやるときはやるしかっこいいところを見せたいと思ってしまう人間だ、ここは一発で決めたい
思い返してみろ私
ダンジョンに入る前に倒した岩サイをどうやって倒した?
あいつは火に弱いという弱点をついて倒した...が、そこには大事な心持ちってものがあったじゃない
炎を熱く燃やすのは魔力、拳を固く握るのは「根性」だ
「乙女の底力をなめるなよ...!
くらえド根性パンチっ!!」
再び突進するようにゴーレムの懐に入り拳を振るうと目の前で岩のように硬かったゴーレムの体が割れた。
ピシピシとひび割れる音もなく崩壊するように割れた
しかしそんなことで動じるようなやつではない
一度退避するために私を掴んで離そうとしたのだろう、太い腕がこちらに伸びてきた。
「捕まってたまるかってんだ...!」
素早い動きを活かして腕を避け、関節部分を拳で破壊する。
が、しかしそれでもゴーレムは動じない
感情の概念がないのだろうかと思ってしまうほどにこのゴーレムから感情の変化がない
無だけが奴にはあった
「(あった...!)」
割れた体の中に眠るように静かに存在するそれに触れようと手を伸ばした。
その時だった
「~=0)'(&%$#!!」
理解不能な言語のような何かを耳に入れたくなくて、咄嗟に距離をとって耳を手で塞いだ。
そして気づいたんだ
さっきの言葉のようにも感じられた声は初めて感じたゴーレムの感情でもあったのだと
「春風乱舞っ!」
風を纏った刃を放とうがそれも吸収するのだ
「言っておくかあのゴーレムは魔力を吸収すればするほど強くなるから無闇に魔法を使うのは勧めない」
「それを早く言いなさい!」
てっきりツキカゲの魔力を吸っておなかいっぱいになったかなとか考えてしまったじゃん!
舌打ちをしながら一度魔力を練ることをやめて逃げに徹することに決めた私
それをツキカゲにすぐに指摘されて怒られたけど、あのゴーレムを強くしたのあんたでしょうが
「ひいいぃ!?
今あいつ信じられないスピードで攻撃してきたんだけど!!」
すべての攻撃を見極めてなんとか攻撃できたけど先程の攻撃は明らかに力もスピードも違う
どうにか紙一重で避けることができたけど、たまたまだからまた同じ攻撃が来たら避けられる自信がない。
考えろ、絶対に打開策はあるはずなんだ。だから考えろ
相手の全身を舐め回すようにじっくりと見て隙を探すんだ
「(どうしよう...全然隙がないんだけど)」
人は自分に勝算がないと焦りで周りが見えにくくなる
だからどんなに柔軟に動き回ろうが無駄になる瞬間というのは
油断したときに訪れる
目の前に壁と見間違えてしまう程に大きな硬い拳があれば誰だって自分のすべてが終わってしまうような気がするでしょ?
今まさにそんな風に考えてたよ
「がっ...!?」
全身に来る衝撃をどこかに逃がす余裕もなしに飛ばされた先にあるのはゴツゴツとした岩の壁
体中の痛みが骨にまで来るし意識が曖昧になってきた。
久しぶりにこんなにピンチだと感じたな...なんて考えをしてる時点でまだ余裕はありそうだけどね
でも口から吐き出されるのは余裕かました発言でも鳴き声でもない
生理的に流れる涙と喘ぐような呼吸だけが今の私にできること
なんでこんなことをしなくてはいけないんだよとか呑気なことを考えてる私をビンタしてやりたい気持ちを抑えながら、こちらに近づいてくるゴーレムに目を移した。
未だに吸収した魔力はまだまだ残ってるみたい
きっと魔力消費の効率がとてもいいのだろうな
「(もしかして...)」
この瞬間何かを理解して先程まで焦りがなくなって頭の中が冴えてきた。
乱れていた呼吸も気づけば整っていた
その瞬間すべての攻撃が驚異ではなくなったんだ
あんなに素早いと感じていた攻撃も、一発が重いと思っていたのも全部怖くない
世界の見え方というのはこんなにも変わるものなのか
脚に力を入れてゴーレムの懐に入り込んで腹あたりからめを離さない
ぐっ...と拳を握り全身を使って硬くなったそれを振りかざした
その瞬間、はじめてゴーレムにまともな攻撃が通用した気がする
そこで私の推測は正しいことが証明されて笑いが漏れてしまう
「なるほどね...単純な話だったんだ」
殴り飛ばされた巨体と拳を交互に見ながらツキカゲに言い放った。
こういうことであっているのだろう...と答えを求めるわけでもなく笑いながら
「あぁ~結構簡単に終わりそうね」
「そう思うのならさっさと片付けろ」
決して互いに目を合わせるわけでもなく呑気に話せば、いつの間にかゴーレムは立ち上がってまた攻撃を仕掛けようとしている
私は再び拳を固く握りしめた
とてもかんたんな話だ...だってやつは向けられた魔力は吸収できても身体強化を目的とした魔力は吸収できない
だから先程の攻撃は対処できなかったんだ。
あとはどうやってあのゴーレムを行動不能にするかだが...
「(吸収した魔力を全部消費させる...いやそんなのいつ終わるかわかんない
いっそのことコアを破壊するしかなさそうね)」
覚悟を決めて深呼吸をする
私だってやるときはやるしかっこいいところを見せたいと思ってしまう人間だ、ここは一発で決めたい
思い返してみろ私
ダンジョンに入る前に倒した岩サイをどうやって倒した?
あいつは火に弱いという弱点をついて倒した...が、そこには大事な心持ちってものがあったじゃない
炎を熱く燃やすのは魔力、拳を固く握るのは「根性」だ
「乙女の底力をなめるなよ...!
くらえド根性パンチっ!!」
再び突進するようにゴーレムの懐に入り拳を振るうと目の前で岩のように硬かったゴーレムの体が割れた。
ピシピシとひび割れる音もなく崩壊するように割れた
しかしそんなことで動じるようなやつではない
一度退避するために私を掴んで離そうとしたのだろう、太い腕がこちらに伸びてきた。
「捕まってたまるかってんだ...!」
素早い動きを活かして腕を避け、関節部分を拳で破壊する。
が、しかしそれでもゴーレムは動じない
感情の概念がないのだろうかと思ってしまうほどにこのゴーレムから感情の変化がない
無だけが奴にはあった
「(あった...!)」
割れた体の中に眠るように静かに存在するそれに触れようと手を伸ばした。
その時だった
「~=0)'(&%$#!!」
理解不能な言語のような何かを耳に入れたくなくて、咄嗟に距離をとって耳を手で塞いだ。
そして気づいたんだ
さっきの言葉のようにも感じられた声は初めて感じたゴーレムの感情でもあったのだと
0
お気に入りに追加
689
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる