見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

文字の大きさ
上 下
82 / 171

80話

しおりを挟む
ツキカゲは淡々と岩サイの特徴や弱点を説明していた。

聞けば聞くほど生態は私の世界にいたサイと変わらんな

例えば硬くて分厚い皮膚を持っていたり、あの硬い皮膚の上に泥遊びで浴びた泥で固めた鎧を纏っている

鼻の上にある角はこっちの世界のほうが立派だな...とか呟きながら、突進してくるヤツの頭上を飛び越えるようにハイジャンプをきめた。


「岩サイのオスはは縄張りが広いうえに一切の侵入も許さない

縄張りに入ればしつこいぞ」


ほら、と言って指をさす方向には先程突進してきた岩サイがもう次の突進の準備をしていた。

もちろんどの生物にも弱点というものはある

もし私の知ってるサイならば弱点は熱なのではないか?


「サイは人間に比べて体温が低い、人間の微熱はサイにとっては高熱だからね...

よって岩サイの弱点は高温の炎と見た!」


我ながら名推理だと思う

すると再び突進してきた岩サイは真っすぐ私の方に走ってきた。

弱者からやるとか男じゃないぞ

なんてのんきなことを言う私の頭は狂っているが、ちゃんと自覚してるからセーフということで


「おお~カナは鋭いな

お前の言う通り岩サイは高温の熱に弱い青混じりの炎を吹いてたあいつはよく岩サイを焼き殺してたな

毎度シロに説教食らってたな」


熱が弱点なのはわかったけどあいつとは誰なんだ?

疑問を抱きながら再び跳んで突進を回避すると体中の温度を高めるように魔力の流れを早めた。

私たちがここに来た目的は強くなるためであって、とにかく目の前にいる魔物を倒して力をつけることである


「カリン直伝、フレイムナックル!」


魔力で最大まで高めた熱の塊を右手に握った拳に集めた

その炎を燃やす油は魔力、固く鉄のような拳を握るのは


「根性だああああああ!」


横腹目掛けて打った拳にまとわりつく炎はサイに乗り移り、奴を苦しめる事となった。

どんなに強靭な皮膚や鎧を纏っていたとしても、熱に弱いんじゃあ意味がないよね

しかもあの苦しみ様は皮膚が耐熱性じゃないとわかってしまうよ


「うーん...

これは上質な素材になるのかな?」

「まああいつよりかはマシだろ」


ドシンと派手に倒れてピクリとも動かなくなった岩サイを軽々と持ち上げているツキカゲの言葉に私は疑問を抱いた。


「さっきまでは戦闘中だったから聞けなかったんだけど、あいつって誰なの?」


するとまるで聞かないでほしいといった顔をするから聞くのをやめた

ツキカゲにとってのが思い出したくもない対象の人物なら聞かないでおくのが、相棒である私がするべき行動でしょう?

とにかく今日はまだ始まったばかりなんだ

もっといろんな魔物と戦ってみたい


「マアヤが頑張っている分私も頑張りたいんだよね」

「カナらしいといえばカナらしいな

ではこの先にあるダンジョンに挑んでみるのはどうだ?」


それがデートのお誘いだったら女性百人のうち百人が怒って顔にビンタするよ


「ふふっ...よろこんで」


今の私なら笑顔でそれを受け入れるよ

自然と上がった口角をそのままに彼が差し伸べる手をとり前に進むことにした

それが私の選択ならそれでいいでしょう

今からダンジョンに入るのが楽しみになってきたな

仲良く手をつないで歩く私はツキカゲに、これから行くダンジョンはどんな魔物がいるのか聞いた。


「先程とは違って随分と機嫌がいいな」


やっぱりわかってしまうのか


「いやぁ、誰かが前にいるってこんなに嬉しいことなんだなって今になって思うようになっちゃってさ...」


よく考えればこの国に来てからツキカゲと一緒にどこかへいくなんてなかったからな

人間というのは当たり前の出来事が失ってその時はじめて当たり前がどれほど尊いものだったのか気づく

残念なことに、失う前に当たり前がどれほど大切かを知るのは不可能に近い。


「一度ツキカゲと何日も離れて行動することになって、一人で何も知らない世界を頑張って知ろうとすることに、少し面倒くさいと感じてしまったり怖くてたくさんの勇気が必要に感じたときもあった...。」


でもおかげで気づくことができたんだ

隣にいる伝説のドラゴン程そばにいて安心するものはない、だから彼が側にいることが私にとってはなによりも精神安定につながる

私はしばらく相棒であるツキカゲのそばを離れる気はない


「...カナ?

どうかしたか?」


...なんでもないよ

その言葉よりも笑って首を横に振ったほうが伝わるんだろうね

その理由は相棒だから

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...