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75話
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少しだけ張った声に驚いて足を止めると首だけを向けた。
「あなたは珍しい光属性の人間だからこの闇属性のイヤリングをつければ間違いなく体を壊すわ
だけど私は道具屋よ?この程度の魔道具なんて簡単に改造できるのを忘れないでちょうだい」
にっと笑ったその顔はとても上品でそれでいていたずらっ子のようにも思える
大人の女性の姿と幼い少女の姿の両方を知っているからこそそう感じるのだろう
だからこそ私は彼女を信じることにした
「ならそのイヤリングを私にください
そしてカナのイヤリングの改造もお願いします」
「当然、中途半端にいじるなんてそれは改造なんて言わないのよ
こっちはもうとっくにいじったからマアヤがつけても大丈夫だからそれつけてカナのイヤリングを持ってきてちょうだい
その間に私はあなたの服を用意しておくから」
伸ばしてきた手にのせられた小さなイヤリングを見て私は自分の手に取るのを少し躊躇った。
あんな短時間にイヤリングの改造なんてできるのだろうか
いや、彼女はツキカゲさんのお姉さん
解析に加えて改造するなんて造作もないことなのだろう
だからこそ余裕な表情を私に見せつけるんだ。
「私にこの世界に来る前の記憶は一切ありません
ほんの少しの常識と身体が覚えていること、そして佐藤真彩という名前だけが私を異世界人と証明する全てです
私の知らないことを後で教えてくださいね」
黒いイヤリングを受け取り握りしめると、私は今度こそカナのいる部屋に向かった。
先程からいい匂いがするということはきっと料理をするためにキッチンにいるのだろう
鼻だけが頼りのこの迷路をクリアしよう
ゴールの先にいる彼女にイヤリングの真実を伝えないと
「カナ、米が炊けたぞ」
「オッケーじゃあ蒸らしている間にカツを作っちゃいましょうか」
土鍋で炊いた米の様子を見ているツキカゲの言葉を合図に油を熱していると、誰かがかけて来る足音が聞こえる
ドタバタと派手に鳴らしているからきっと誰かが慌てているのだろう
「そういえばこの家ってシロさんしか住んでいないの?」
「シロ以外に誰かがいるなんて聞いたことないな
感じ取れる魔力からしてマアヤだろう」
ツキカゲが言うのならそうなのだろう
マアヤが来たのならちょうどよかった、焼きたてのスコーンをマアヤにも食べて貰いたいからね
「カナさんっ!!」
バンッと勢いよく扉が開いてツキカゲの予想通りマアヤがそこにいた。
息を乱している彼女の右手には何かが握られているみたいだ…
一体どうしたのだろうと思い近づけば彼女は私に掴みかかって乱れた呼吸のまま何かを言ってきた。
ツキカゲは警戒してたけど私はその必要はないんじゃないかなって思ってマアヤに落ち着いてと言って一緒に深呼吸をした。
「...で一体何をそんなに慌ててるの?
まさかシロさんからセクハラか何かされたの...?」
「いえそうじゃなくて...今お話しても大丈夫ですか?」
ちらりとオーブンを見てまだクラッカーとスコーンはまだ焼き上がってないしカツもこれから揚げればいいから話を聞くくらいなら今でも構わない
「用があるならさっさと言え、これからカナは肉を揚げるんだからな」
「そんな言い方するならあなたの分の肉の量を減らすことだって出来るのよツキカゲ?」
冷たい態度をとるのなら容赦なしに食事の量を減らすのが私のやり方である
たとえその相手が伝説のドラゴンだろうとね
ようやく大人しくなったツキカゲを横に座らせてお茶を渡すとそれを飲んで心を落ち着かせたみたい
「ありがとうございます
...ってこんなに落ち着いてる場合じゃない!」
ほっと落ち着いたかと思えばまた声を荒げて椅子から立ち上がっていた。
「さっきから何をそんなに慌てているの?」
「これが慌てずにいないわよ!
カナの!そのイヤリング!早く外して!」
突然何をいうかと思えば何を言うんだ君は
首を傾げながらも言われたとおりイヤリングを外すと彼女にこれでいいのかと聞いた。
「何がしたいのかはわからないけどこれをつけないと力の制御がうまく行かないのよね」
イヤリングがないと無駄にオーラを放出して周りの魔物が逃げてしまうから魔物討伐クエストに不向きとなってしまうんだよね
右耳につけていたイヤリングを彼女に渡すと、安心した表情で手に持つそれを見つめていた。
「実は、ずっと借りてたパーカーの中に入ってた黒のイヤリングをシロさんが見てくれたのよ
そしたら...」
「そこからは私が説明するわよ」
彼女の話を遮って現れたのは白い髪の毛をひとつ結びにしてお決まり仁王立ちをしてこちらを見てくる一人の幼女がいた。
「シロさん?」
「あなたは珍しい光属性の人間だからこの闇属性のイヤリングをつければ間違いなく体を壊すわ
だけど私は道具屋よ?この程度の魔道具なんて簡単に改造できるのを忘れないでちょうだい」
にっと笑ったその顔はとても上品でそれでいていたずらっ子のようにも思える
大人の女性の姿と幼い少女の姿の両方を知っているからこそそう感じるのだろう
だからこそ私は彼女を信じることにした
「ならそのイヤリングを私にください
そしてカナのイヤリングの改造もお願いします」
「当然、中途半端にいじるなんてそれは改造なんて言わないのよ
こっちはもうとっくにいじったからマアヤがつけても大丈夫だからそれつけてカナのイヤリングを持ってきてちょうだい
その間に私はあなたの服を用意しておくから」
伸ばしてきた手にのせられた小さなイヤリングを見て私は自分の手に取るのを少し躊躇った。
あんな短時間にイヤリングの改造なんてできるのだろうか
いや、彼女はツキカゲさんのお姉さん
解析に加えて改造するなんて造作もないことなのだろう
だからこそ余裕な表情を私に見せつけるんだ。
「私にこの世界に来る前の記憶は一切ありません
ほんの少しの常識と身体が覚えていること、そして佐藤真彩という名前だけが私を異世界人と証明する全てです
私の知らないことを後で教えてくださいね」
黒いイヤリングを受け取り握りしめると、私は今度こそカナのいる部屋に向かった。
先程からいい匂いがするということはきっと料理をするためにキッチンにいるのだろう
鼻だけが頼りのこの迷路をクリアしよう
ゴールの先にいる彼女にイヤリングの真実を伝えないと
「カナ、米が炊けたぞ」
「オッケーじゃあ蒸らしている間にカツを作っちゃいましょうか」
土鍋で炊いた米の様子を見ているツキカゲの言葉を合図に油を熱していると、誰かがかけて来る足音が聞こえる
ドタバタと派手に鳴らしているからきっと誰かが慌てているのだろう
「そういえばこの家ってシロさんしか住んでいないの?」
「シロ以外に誰かがいるなんて聞いたことないな
感じ取れる魔力からしてマアヤだろう」
ツキカゲが言うのならそうなのだろう
マアヤが来たのならちょうどよかった、焼きたてのスコーンをマアヤにも食べて貰いたいからね
「カナさんっ!!」
バンッと勢いよく扉が開いてツキカゲの予想通りマアヤがそこにいた。
息を乱している彼女の右手には何かが握られているみたいだ…
一体どうしたのだろうと思い近づけば彼女は私に掴みかかって乱れた呼吸のまま何かを言ってきた。
ツキカゲは警戒してたけど私はその必要はないんじゃないかなって思ってマアヤに落ち着いてと言って一緒に深呼吸をした。
「...で一体何をそんなに慌ててるの?
まさかシロさんからセクハラか何かされたの...?」
「いえそうじゃなくて...今お話しても大丈夫ですか?」
ちらりとオーブンを見てまだクラッカーとスコーンはまだ焼き上がってないしカツもこれから揚げればいいから話を聞くくらいなら今でも構わない
「用があるならさっさと言え、これからカナは肉を揚げるんだからな」
「そんな言い方するならあなたの分の肉の量を減らすことだって出来るのよツキカゲ?」
冷たい態度をとるのなら容赦なしに食事の量を減らすのが私のやり方である
たとえその相手が伝説のドラゴンだろうとね
ようやく大人しくなったツキカゲを横に座らせてお茶を渡すとそれを飲んで心を落ち着かせたみたい
「ありがとうございます
...ってこんなに落ち着いてる場合じゃない!」
ほっと落ち着いたかと思えばまた声を荒げて椅子から立ち上がっていた。
「さっきから何をそんなに慌てているの?」
「これが慌てずにいないわよ!
カナの!そのイヤリング!早く外して!」
突然何をいうかと思えば何を言うんだ君は
首を傾げながらも言われたとおりイヤリングを外すと彼女にこれでいいのかと聞いた。
「何がしたいのかはわからないけどこれをつけないと力の制御がうまく行かないのよね」
イヤリングがないと無駄にオーラを放出して周りの魔物が逃げてしまうから魔物討伐クエストに不向きとなってしまうんだよね
右耳につけていたイヤリングを彼女に渡すと、安心した表情で手に持つそれを見つめていた。
「実は、ずっと借りてたパーカーの中に入ってた黒のイヤリングをシロさんが見てくれたのよ
そしたら...」
「そこからは私が説明するわよ」
彼女の話を遮って現れたのは白い髪の毛をひとつ結びにしてお決まり仁王立ちをしてこちらを見てくる一人の幼女がいた。
「シロさん?」
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