77 / 171
75話
しおりを挟む
少しだけ張った声に驚いて足を止めると首だけを向けた。
「あなたは珍しい光属性の人間だからこの闇属性のイヤリングをつければ間違いなく体を壊すわ
だけど私は道具屋よ?この程度の魔道具なんて簡単に改造できるのを忘れないでちょうだい」
にっと笑ったその顔はとても上品でそれでいていたずらっ子のようにも思える
大人の女性の姿と幼い少女の姿の両方を知っているからこそそう感じるのだろう
だからこそ私は彼女を信じることにした
「ならそのイヤリングを私にください
そしてカナのイヤリングの改造もお願いします」
「当然、中途半端にいじるなんてそれは改造なんて言わないのよ
こっちはもうとっくにいじったからマアヤがつけても大丈夫だからそれつけてカナのイヤリングを持ってきてちょうだい
その間に私はあなたの服を用意しておくから」
伸ばしてきた手にのせられた小さなイヤリングを見て私は自分の手に取るのを少し躊躇った。
あんな短時間にイヤリングの改造なんてできるのだろうか
いや、彼女はツキカゲさんのお姉さん
解析に加えて改造するなんて造作もないことなのだろう
だからこそ余裕な表情を私に見せつけるんだ。
「私にこの世界に来る前の記憶は一切ありません
ほんの少しの常識と身体が覚えていること、そして佐藤真彩という名前だけが私を異世界人と証明する全てです
私の知らないことを後で教えてくださいね」
黒いイヤリングを受け取り握りしめると、私は今度こそカナのいる部屋に向かった。
先程からいい匂いがするということはきっと料理をするためにキッチンにいるのだろう
鼻だけが頼りのこの迷路をクリアしよう
ゴールの先にいる彼女にイヤリングの真実を伝えないと
「カナ、米が炊けたぞ」
「オッケーじゃあ蒸らしている間にカツを作っちゃいましょうか」
土鍋で炊いた米の様子を見ているツキカゲの言葉を合図に油を熱していると、誰かがかけて来る足音が聞こえる
ドタバタと派手に鳴らしているからきっと誰かが慌てているのだろう
「そういえばこの家ってシロさんしか住んでいないの?」
「シロ以外に誰かがいるなんて聞いたことないな
感じ取れる魔力からしてマアヤだろう」
ツキカゲが言うのならそうなのだろう
マアヤが来たのならちょうどよかった、焼きたてのスコーンをマアヤにも食べて貰いたいからね
「カナさんっ!!」
バンッと勢いよく扉が開いてツキカゲの予想通りマアヤがそこにいた。
息を乱している彼女の右手には何かが握られているみたいだ…
一体どうしたのだろうと思い近づけば彼女は私に掴みかかって乱れた呼吸のまま何かを言ってきた。
ツキカゲは警戒してたけど私はその必要はないんじゃないかなって思ってマアヤに落ち着いてと言って一緒に深呼吸をした。
「...で一体何をそんなに慌ててるの?
まさかシロさんからセクハラか何かされたの...?」
「いえそうじゃなくて...今お話しても大丈夫ですか?」
ちらりとオーブンを見てまだクラッカーとスコーンはまだ焼き上がってないしカツもこれから揚げればいいから話を聞くくらいなら今でも構わない
「用があるならさっさと言え、これからカナは肉を揚げるんだからな」
「そんな言い方するならあなたの分の肉の量を減らすことだって出来るのよツキカゲ?」
冷たい態度をとるのなら容赦なしに食事の量を減らすのが私のやり方である
たとえその相手が伝説のドラゴンだろうとね
ようやく大人しくなったツキカゲを横に座らせてお茶を渡すとそれを飲んで心を落ち着かせたみたい
「ありがとうございます
...ってこんなに落ち着いてる場合じゃない!」
ほっと落ち着いたかと思えばまた声を荒げて椅子から立ち上がっていた。
「さっきから何をそんなに慌てているの?」
「これが慌てずにいないわよ!
カナの!そのイヤリング!早く外して!」
突然何をいうかと思えば何を言うんだ君は
首を傾げながらも言われたとおりイヤリングを外すと彼女にこれでいいのかと聞いた。
「何がしたいのかはわからないけどこれをつけないと力の制御がうまく行かないのよね」
イヤリングがないと無駄にオーラを放出して周りの魔物が逃げてしまうから魔物討伐クエストに不向きとなってしまうんだよね
右耳につけていたイヤリングを彼女に渡すと、安心した表情で手に持つそれを見つめていた。
「実は、ずっと借りてたパーカーの中に入ってた黒のイヤリングをシロさんが見てくれたのよ
そしたら...」
「そこからは私が説明するわよ」
彼女の話を遮って現れたのは白い髪の毛をひとつ結びにしてお決まり仁王立ちをしてこちらを見てくる一人の幼女がいた。
「シロさん?」
「あなたは珍しい光属性の人間だからこの闇属性のイヤリングをつければ間違いなく体を壊すわ
だけど私は道具屋よ?この程度の魔道具なんて簡単に改造できるのを忘れないでちょうだい」
にっと笑ったその顔はとても上品でそれでいていたずらっ子のようにも思える
大人の女性の姿と幼い少女の姿の両方を知っているからこそそう感じるのだろう
だからこそ私は彼女を信じることにした
「ならそのイヤリングを私にください
そしてカナのイヤリングの改造もお願いします」
「当然、中途半端にいじるなんてそれは改造なんて言わないのよ
こっちはもうとっくにいじったからマアヤがつけても大丈夫だからそれつけてカナのイヤリングを持ってきてちょうだい
その間に私はあなたの服を用意しておくから」
伸ばしてきた手にのせられた小さなイヤリングを見て私は自分の手に取るのを少し躊躇った。
あんな短時間にイヤリングの改造なんてできるのだろうか
いや、彼女はツキカゲさんのお姉さん
解析に加えて改造するなんて造作もないことなのだろう
だからこそ余裕な表情を私に見せつけるんだ。
「私にこの世界に来る前の記憶は一切ありません
ほんの少しの常識と身体が覚えていること、そして佐藤真彩という名前だけが私を異世界人と証明する全てです
私の知らないことを後で教えてくださいね」
黒いイヤリングを受け取り握りしめると、私は今度こそカナのいる部屋に向かった。
先程からいい匂いがするということはきっと料理をするためにキッチンにいるのだろう
鼻だけが頼りのこの迷路をクリアしよう
ゴールの先にいる彼女にイヤリングの真実を伝えないと
「カナ、米が炊けたぞ」
「オッケーじゃあ蒸らしている間にカツを作っちゃいましょうか」
土鍋で炊いた米の様子を見ているツキカゲの言葉を合図に油を熱していると、誰かがかけて来る足音が聞こえる
ドタバタと派手に鳴らしているからきっと誰かが慌てているのだろう
「そういえばこの家ってシロさんしか住んでいないの?」
「シロ以外に誰かがいるなんて聞いたことないな
感じ取れる魔力からしてマアヤだろう」
ツキカゲが言うのならそうなのだろう
マアヤが来たのならちょうどよかった、焼きたてのスコーンをマアヤにも食べて貰いたいからね
「カナさんっ!!」
バンッと勢いよく扉が開いてツキカゲの予想通りマアヤがそこにいた。
息を乱している彼女の右手には何かが握られているみたいだ…
一体どうしたのだろうと思い近づけば彼女は私に掴みかかって乱れた呼吸のまま何かを言ってきた。
ツキカゲは警戒してたけど私はその必要はないんじゃないかなって思ってマアヤに落ち着いてと言って一緒に深呼吸をした。
「...で一体何をそんなに慌ててるの?
まさかシロさんからセクハラか何かされたの...?」
「いえそうじゃなくて...今お話しても大丈夫ですか?」
ちらりとオーブンを見てまだクラッカーとスコーンはまだ焼き上がってないしカツもこれから揚げればいいから話を聞くくらいなら今でも構わない
「用があるならさっさと言え、これからカナは肉を揚げるんだからな」
「そんな言い方するならあなたの分の肉の量を減らすことだって出来るのよツキカゲ?」
冷たい態度をとるのなら容赦なしに食事の量を減らすのが私のやり方である
たとえその相手が伝説のドラゴンだろうとね
ようやく大人しくなったツキカゲを横に座らせてお茶を渡すとそれを飲んで心を落ち着かせたみたい
「ありがとうございます
...ってこんなに落ち着いてる場合じゃない!」
ほっと落ち着いたかと思えばまた声を荒げて椅子から立ち上がっていた。
「さっきから何をそんなに慌てているの?」
「これが慌てずにいないわよ!
カナの!そのイヤリング!早く外して!」
突然何をいうかと思えば何を言うんだ君は
首を傾げながらも言われたとおりイヤリングを外すと彼女にこれでいいのかと聞いた。
「何がしたいのかはわからないけどこれをつけないと力の制御がうまく行かないのよね」
イヤリングがないと無駄にオーラを放出して周りの魔物が逃げてしまうから魔物討伐クエストに不向きとなってしまうんだよね
右耳につけていたイヤリングを彼女に渡すと、安心した表情で手に持つそれを見つめていた。
「実は、ずっと借りてたパーカーの中に入ってた黒のイヤリングをシロさんが見てくれたのよ
そしたら...」
「そこからは私が説明するわよ」
彼女の話を遮って現れたのは白い髪の毛をひとつ結びにしてお決まり仁王立ちをしてこちらを見てくる一人の幼女がいた。
「シロさん?」
1
お気に入りに追加
688
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる