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69話
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時々思ってしまう
なぜあの加奈という少女の存在が私をここまで安心させるのか
私は自分が何者なのか分からない
出身も育った環境も家族や友人も…自分がどういう人間だったのかすらわからなかった
つまり記憶喪失…それだけは自覚出来たのだ。
それを察して理解してから数日が経過して少しずつわかったことがある
今隣で彼女の戦う姿を見守っているツキカゲさんは加奈さんを信頼している
戦う彼女の姿を無表情で見ているんだけど金色に輝く瞳だけはコロコロと表情が変わるみたいに目を細めたりするんだ。
どうしてそこまで彼女をよく見るんだろう
「ツキカゲさんは…加奈さんのことが好きなんですね」
ついそんなことを呟いていた
しかしツキカゲさんは私の言葉なんて気にしてないように…というよりはじめから聞いてないように感じられた
やはり私のことなんて気にしてないみたい
「…マアヤ、よく見てろ
カナは最後には必ず勝利するんだという証明とも言えるその瞬間を」
そう言われて顔を上げるとそこには加奈さんが相手の動きを完全に読み取りリスの獣人に一発のパンチをくらわせた。
勝った、本当にこの人の言った通り彼女が勝ったのだ
たった一回のパンチを当てて勝ったのだ
「すごい…!
加奈さんって何者なんですか?」
ただそう口にしてしまった
私はただ純粋に山下加奈という人物を知りたいと思ったのだ
そしてそんな私の質問に答えてくれたのはツキカゲさんだった
「カナは俺様にとっては契約者だ
そしてこの世界で最も大事だと思える人間だからな…お前だってカナの存在がどれほど大事かわかるはずだ。」
ツキカゲさんはそう言ってたけど私にはいまいちよく分からない
私にとっても加奈さんは本当に大事な存在になるのだろうか
ただ今は勝利した喜びを表情と仕草で表している彼女をぼーっと見つめているだけであった。
「(加奈さん…あなたは私に何を与えてくれるの?)」
その一殺那
_____ドクンッ
私の中を駆け巡るなにかが活発になった気がした
目を見開き胸を抑えると額から一筋の汗を流し、息を乱す
しかしそれもすぐに治まり心臓も呼吸も全てが正常通りになり顔をしかめた。
一体自分の身に何が起きたのかわからないまま加奈さんを見つめた。
どうも彼女を見ていると胸が苦しいみたい
この苦しみを味わうことのないように、彼女を見るのはやめよう
その行為が無意識に出来るようになるまで
リスの獣人チロルを拳でぶん殴って、勝利を手にすると約束通り冒険者ギルドを案内してもらう事となった
「むぅ…カナがあんなに強いなんて思わなかった」
「ふふっ…強いって言ってくれてありがとう」
私の身に宿るスキルというのはツキカゲがくれたものであって私自身のものでは無い
昨日みたいに影という影を使いこなしてチョコちゃんを探すことだって背中にドラゴンの羽を生やして空を飛ぶことだってツキカゲと契約したから出来ることなのだから
だから私は純粋なパンチ一発でチロルを倒した
私がそうしたかったからだ
私は私だ
ツキカゲからもらった力に染められている感覚がして怖くなってしまったから、そんな小さな反抗でもあるんだろうな
ごめんねツキカゲ…私はまだどこかであなたを恐れているのかもしれないの
こんな醜い人間と契約して貴方はいいのかなって思うこともあるんだよね
「さてと、到着したよ
ここがダーウィン王国で一番でっかい冒険者ギルドだよ!」
チロルの足が止まったのに気づいて顔を上げると、そこには大きな建物があった
看板にはでかでかと「冒険者ギルド」と表記されており、世界共通のギルドマークがある
そして中に入れば獣人の冒険者が沢山いた
「さすが獣人の国の冒険者ギルド…もふもふだらけだね」
「喜んでいいのかわかんないよそれ…」
率直な感想を述べればすぐにチロルに返されてしまい口を噤んだ
ここまで案内してくれたチロルに感謝して早速目的を果たすとしよう
「すみませんこの子の登録をしたいのですが…」
「冒険者登録ですね、少々お待ちください」
受付に行けばうさ耳の可愛らしい女性がにっこりと笑って後ろへ下がって行った。
どうやらここも何か魔道具を使ってギルドカードを発行するのかな?
隣にいる真彩さんの緊張する表情は少しだけ可愛く思える
「緊張する?」
「…!
はい…まあ緊張しますね……」
そらそうだ
記憶なくして突然こんな獣耳パラダイスに連れてこられて戸惑うのも無理はない
きっと彼女はこの世界に来る前の記憶全てが無くなっているのだろう
あるのはこの世界で積み上げた知識のみ…それを考えると辛いものである
しかしツキカゲの話によると、ステータスの画面の操作の仕方が私と全く一緒らしい
と、いうことはつまりスマートフォンやパソコンなどといった機械類の操作は体が覚えているのだろうか
「お待たせしました!では登録される方はこちらにお願いします」
おや…どうやら準備ができたみたいだ
なぜあの加奈という少女の存在が私をここまで安心させるのか
私は自分が何者なのか分からない
出身も育った環境も家族や友人も…自分がどういう人間だったのかすらわからなかった
つまり記憶喪失…それだけは自覚出来たのだ。
それを察して理解してから数日が経過して少しずつわかったことがある
今隣で彼女の戦う姿を見守っているツキカゲさんは加奈さんを信頼している
戦う彼女の姿を無表情で見ているんだけど金色に輝く瞳だけはコロコロと表情が変わるみたいに目を細めたりするんだ。
どうしてそこまで彼女をよく見るんだろう
「ツキカゲさんは…加奈さんのことが好きなんですね」
ついそんなことを呟いていた
しかしツキカゲさんは私の言葉なんて気にしてないように…というよりはじめから聞いてないように感じられた
やはり私のことなんて気にしてないみたい
「…マアヤ、よく見てろ
カナは最後には必ず勝利するんだという証明とも言えるその瞬間を」
そう言われて顔を上げるとそこには加奈さんが相手の動きを完全に読み取りリスの獣人に一発のパンチをくらわせた。
勝った、本当にこの人の言った通り彼女が勝ったのだ
たった一回のパンチを当てて勝ったのだ
「すごい…!
加奈さんって何者なんですか?」
ただそう口にしてしまった
私はただ純粋に山下加奈という人物を知りたいと思ったのだ
そしてそんな私の質問に答えてくれたのはツキカゲさんだった
「カナは俺様にとっては契約者だ
そしてこの世界で最も大事だと思える人間だからな…お前だってカナの存在がどれほど大事かわかるはずだ。」
ツキカゲさんはそう言ってたけど私にはいまいちよく分からない
私にとっても加奈さんは本当に大事な存在になるのだろうか
ただ今は勝利した喜びを表情と仕草で表している彼女をぼーっと見つめているだけであった。
「(加奈さん…あなたは私に何を与えてくれるの?)」
その一殺那
_____ドクンッ
私の中を駆け巡るなにかが活発になった気がした
目を見開き胸を抑えると額から一筋の汗を流し、息を乱す
しかしそれもすぐに治まり心臓も呼吸も全てが正常通りになり顔をしかめた。
一体自分の身に何が起きたのかわからないまま加奈さんを見つめた。
どうも彼女を見ていると胸が苦しいみたい
この苦しみを味わうことのないように、彼女を見るのはやめよう
その行為が無意識に出来るようになるまで
リスの獣人チロルを拳でぶん殴って、勝利を手にすると約束通り冒険者ギルドを案内してもらう事となった
「むぅ…カナがあんなに強いなんて思わなかった」
「ふふっ…強いって言ってくれてありがとう」
私の身に宿るスキルというのはツキカゲがくれたものであって私自身のものでは無い
昨日みたいに影という影を使いこなしてチョコちゃんを探すことだって背中にドラゴンの羽を生やして空を飛ぶことだってツキカゲと契約したから出来ることなのだから
だから私は純粋なパンチ一発でチロルを倒した
私がそうしたかったからだ
私は私だ
ツキカゲからもらった力に染められている感覚がして怖くなってしまったから、そんな小さな反抗でもあるんだろうな
ごめんねツキカゲ…私はまだどこかであなたを恐れているのかもしれないの
こんな醜い人間と契約して貴方はいいのかなって思うこともあるんだよね
「さてと、到着したよ
ここがダーウィン王国で一番でっかい冒険者ギルドだよ!」
チロルの足が止まったのに気づいて顔を上げると、そこには大きな建物があった
看板にはでかでかと「冒険者ギルド」と表記されており、世界共通のギルドマークがある
そして中に入れば獣人の冒険者が沢山いた
「さすが獣人の国の冒険者ギルド…もふもふだらけだね」
「喜んでいいのかわかんないよそれ…」
率直な感想を述べればすぐにチロルに返されてしまい口を噤んだ
ここまで案内してくれたチロルに感謝して早速目的を果たすとしよう
「すみませんこの子の登録をしたいのですが…」
「冒険者登録ですね、少々お待ちください」
受付に行けばうさ耳の可愛らしい女性がにっこりと笑って後ろへ下がって行った。
どうやらここも何か魔道具を使ってギルドカードを発行するのかな?
隣にいる真彩さんの緊張する表情は少しだけ可愛く思える
「緊張する?」
「…!
はい…まあ緊張しますね……」
そらそうだ
記憶なくして突然こんな獣耳パラダイスに連れてこられて戸惑うのも無理はない
きっと彼女はこの世界に来る前の記憶全てが無くなっているのだろう
あるのはこの世界で積み上げた知識のみ…それを考えると辛いものである
しかしツキカゲの話によると、ステータスの画面の操作の仕方が私と全く一緒らしい
と、いうことはつまりスマートフォンやパソコンなどといった機械類の操作は体が覚えているのだろうか
「お待たせしました!では登録される方はこちらにお願いします」
おや…どうやら準備ができたみたいだ
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