見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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62話

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今の話は本当なのだろうか…?


「おい人間…!お前がチョコをどこかへ隠したんじゃないのか?」


何故そんなことになるんだよ

意味がわからん

私は昼間からずっとここにいたんだからチョコちゃんを誘拐してどこかへ隠す時間もなければ暇もない

いや、私がそんなことをしていたからチョコちゃんは行方不明になってしまったのか

結局は私のせいだ

探そう…今ここで動かないとダメだ


「私…チョコちゃんを探してきます!」


綺麗になった調理器具をインベントリにしまい、マントとハルカゼを取り出すと裏口から飛び出した。

本当にチョコちゃんがいない…最後に私がチョコちゃんを見たのは昼間

あれから何時間も経っている

さっきから心臓がバクバク鳴っていてうるさい


「……いや、落ち着け私

絶対になにか手がかりがあるはず…!」


ここら辺の地図はステータスにあるメニューから見ることが出来る

それを利用すればなにかわかるかもしれない

表示されたのはダーウィン王国の一区域

現在地である宿を中心に様々な店のアイコンが表示されている

ここからできるのは物理的に動くことの無い店までのナビゲーションと登録した人物の現在地の表示なのだが…


「人物表示…はダメだチョコちゃんを登録してない

やってるのはツキカゲだけだし…!」


ため息をついて地図を閉じると、私は体内の魔力を練った。

日が傾いているから周りには沢山影がある

なら前にツキカゲが教えてくれたこれも使えるだろう

目を閉じ集中しろ私

足元から放出される黒い魔力を周りの影と繋げるんだ。


「視覚の接続完了…」


脳内に展開されるのは多くのモニター

これは私が繋げた影が私の目となってその場の景色を見せてくれるのだ

灯りの傍にできた影や路地裏の影

それは大きさなんて関係ない影さえできていればその場の現状を私が見ることが出来る

名付けるのなら「影の監視カメラ」

影ある所に私の目ありだ

にしても…だ


「(頭が痛い…常に集中してないと接続が切れてしまいそう)」


目を閉じて多数の場所の様子を見るからなのか頭がおかしくなる

頭痛と戦いながらもチョコちゃんを探しているとある一枚のモニターに目がいった。

それは私がただ宿の傍でしゃがみこんで目を閉じているんだ

自分の姿を第三視点で見るとこうなるのか…なんだかシュールだな

それにこれを使っていると身の回りで起きた事がわからないからツキカゲの傍でやるのがいいな

とてもいい発見をしたな


……いやそんなことよりも今はチョコちゃんだろ私!


ハッとして再びチョコちゃんの捜索をしているとようやく見つけた彼女の姿

小柄で小さな耳をぴょこぴょこと動かしながら走っている

別の影の視点に切り替えてその様子を追ってみる

どう考えたってあれは焦りを感じている表情だ

なぜそんなことが?

彼女の後ろがどうなっているのか気になり見てみると私は驚いた


「まじかよ…チョコちゃん追われていたのか!」


小さな少女を追いかけるのはどうみたって盗賊

なんでいい歳した大人が子供を裏路地に追い詰めるのか…






本当にチョコちゃんが危ない!!

すぐに裏路地の影の場所を地図に記録すると私は多くの影との接続を切った

ふらつく体で立ち上がると今度は背中に力を入れて集中した。

あんなピンチな状況に陥った少女を助けるには飛んで行った方がいい



「お前…何をしてるんだ?」

「…!あんたはさっきの」


突然話しかけてきたのはさっきのリスの獣人

先程から私を見ていたのだろう

まるで変人を見るかのような冷たい視線が私を突き刺してくる…心が痛いよ

そんなことしてる暇はない、そして目の前にいる獣人にも詳しく説明している暇は無いのだ。


「チョコちゃんを見つけました…状況が状況なので飛んで救出します!」

「はぁ?

飛ぶってまさかお前…!」


そのまさかだよ

背中に生えた羽を大きく広げると私は脚に力を入れた

強化された体と内側で倍増するエネルギーを脚に…そしてそばにある宿よりも高くジャンプをするんだ。


「ちょっ…まってうわぁぁぁぁぁぁ!?」


…なんでお前が私にしがみついているんだよ

私の腰あたりにしがみついているのはさっきまで私に冷たい視線を向けてきたリスの獣人

この高さから落とすのも危ないので手を掴んでその勢いでお姫様抱っこをすると私は目的地まで飛んだ。

場所はここから4キロメートル先にある市場の路地裏

きっと路地裏も迷路になっているはずだ

チョコちゃんはそれを利用してあの盗賊から逃げた…と


「私のスキルでチョコちゃんの場所は特定した!

お前は武器持ってるんだろうな?」


目的地に向かう途中、私は腕に抱えた獣人に問いかけた

着ているやつからしてこの獣人は冒険者

装備しているのはダガーナイフだろう


「さっきからお前は偉そうに…」


ブツブツと呟きながらも私は目的地を真っ直ぐ見つめて背中の羽を大きく動かした。

待っててね…チョコちゃん!
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