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57話
しおりを挟むそれにしても随分とあっさり認めたな
彼は自分がトーマス・アルバ・エジソンだということを認めた
隠す意味も無くなったから自分の存在を認めたんだ
「名前もそれっぽかったし…
それにあなたはこの国
この国で崇められてる神の名前を呼び捨てするなんて恐ろしいなんてものじゃないその上を行くからね」
そりゃあ誰だって自分を呼び捨てする…これは当たり前のことだ
「一般の人間を演じるために神をしっかりと敬えば良かったものを…」
「なんというか…嫌だったんだよ
まるで自分を過大評価しているみたいでな」
その気持ちはわからんでもない
もし私が神様だったら…というのを考えると嫌な気分になる
いやいやそれよりも聞くべきことがあるだろうが私!
「何故…神でもあるあなたがこの国にいるのですか?」
そう…純粋な疑問だった
この世界を管理するであろう神様がこんな所で人間のフリをして生活をするなんていくらなんでもおかしいのでは?
そしたら彼は私に教えてくれたんだ
まるで親が子供に物語を聞かせるかのように
……約束を守るために私はここにいる
もう随分前の事…といっても数百年は経っているだろうか
この世界に転生した私は一人の人間であり家族がいた…そして親友がいた
互いに夢を語り合うような親友だった
私の親友の名前はサロス=ゴルム…この帝国の初代皇帝だ
彼は言った…いつかお前と一緒に大きな国を作ろう!
私は彼は王になるにふさわしい器だと確信した
だから彼のために国づくりの為に尽くしたんだ…
私は30という若さで亡くなった後も、サロスは諦めずに国づくりのために身を削った。
だが、彼はこの帝国ができる直前に病にかかったのだ…
人間として死んだ私が出来ることはなんだろうか…ずっとずっと考えた。
そして見つけたんだよ
この世界を管理する神々のうちの一人になれば彼を救えるのではないかと…だから私は創造神ロザリオに願った
人間として生きていた私が神として生きることを許可して欲しいと
その願いを聞き入れたロザリオは私を神としての力を与えてくれた…とても嬉しかったのを覚えている
力を手に入れた私はたった一人の親友の病を治すために神になった。
それを知ったサロスはとても驚き、そして私を国の象徴にしたのだ
私としては神になった私を利用してもらって構わなかった
どの時代でも栄えた国の裏では宗教の力が強大だったことを私は知っていたから
「これがこの国の誕生秘話というもの…初代皇帝のサロスと神になった私がいたからこの国がある
まあサロスはとっくの昔に死んで今はあいつの子孫がその意志を継いでる
時々こうやってサロスとふるさとの様子を見に行っているのだが…
まさかかつての私が暮らしていた世界の住人が異世界召喚されるとは思わなかった」
あからさまに面倒なことになったと考えているようなため息をついているトルマーさん
……ではなくトーマス・アルバ・エジソン
まさか自分の子孫が禁忌にも近いことを長年やっていたということに対して余程お怒りのようで…オーラが完全にそれだ。
「もしかして…自分の子孫が異世界召喚をしていたことを知ったのは最近なのですか?」
「……恥ずかしながらね
我らが暮らしていたあの世界の技術はこの世界にははやすぎるのだよ
せっかく私がこの世界にあった道具を作って作り方を教えてやったのに…さらなる発展を求めて別世界の人間に頼るとは思わなかった
一応私、英智の神なのに」
これは驚いた
確かにトーマス・アルバ・エジソンが神様になるなら英智の神がピッタリだ
「まぁまぁ…でも私はこの世界に間違えて呼ばれたとしても怒ってはいませんよ」
そう言えば彼は目を丸くしていた
まさかそんなことを言われるとは思ってもみなかったからだろうね
今言ったことは事実
私はこの世界に来たことを後悔していない…と言ったら嘘になってしまうかもしれない
本当は前までいた世界に置いてきた家族や友人が心配だ
一応私は大学生だしあっちで行方不明扱いされて留年…最悪の場合自動的に退学させられているかもしれない
だけど…私はツキカゲに出会ったからこの世界を憎もうにも憎めない
「なんやかんやで私はこの世界を好きになろうとしているんです…
たとえこの体が小さくても
黒髪と黒目のせいで悪魔族扱いされても…」
その場が静かになってしまった
私は静かなのは好きだけど静か過ぎるのは好きではないんだ。
もっと彼と話したいことは沢山あるけどもう時間だ
「もう行かないと…では私はここで」
再び開いた窓から飛び降りる準備をしていると私の手をとる誰かの腕があった
わかってる…今になって彼は何かを伝えようとしているんだ
一体何を話したいのですか?
「カナ…君に教えておくよ
この世界にはかつて私が暮らしていたあの世界から転生してきた人間がいる
もしかしたら力を貸してくれるかもしれない」
「……えっ?」
その瞬間だけ驚きを超えて思考が止まってしまったのを何となく覚えていた。
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