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50話
しおりを挟む私達が何者か…ただの侵入者だよ
黒い魔力を身に纏ったツキカゲは竜の翼と尻尾を生やすと姿を消した。
多分私の言う通りに行動するのだろう
それなら私も動かないとね
「さてと…この国の王宮魔術師様の御自慢の檻は壊れた
これであんたをぶん殴ることが出来るよ」
冷静な頭で、悲しみを感じさせることない笑顔で歩き始めるとクソ魔法野郎は焦った顔をして逃げようとしていた。
「聖女様…ここは私におまかせして貴方様はお逃げください!」
なんてありきたりな台詞なんだろうか
ここは俺に任せて先に行け!…という台詞はゲームでしか聞いたことがない
腹を抱えて笑ってしまった。
まさかそんなフラグ立てをするなんて思わなかったから…
まず、あの台詞は自分の命と引き換えに相手を倒すか攻撃を食い止める魔法の言葉だからな…自分がやられることを覚悟して言ったのだろうか?
「ふふっ…まあいいや
とにかくあんたはここでやられる運命って訳だ」
さっさと私に倒されなさい
その時突然私の足元に風が生まれた
窓も空いてなければ部屋のドアも空いてなかった…当たり前だ
この風は私の魔法で生み出した特別な風
私は元々闇属性の素質があり、その上ツキカゲとの契約で闇属性の魔法が強力だ。
しかし、それだけ強力というわけでは無い
実は、ハルカゼを装備している間は風属性の魔法も強力になるのだ。
鑑定スキルを使って調べてみてもそれは私だけのための効果らしく、よく説明を読んでみたら「山下加奈専用の効果」なんて書いてあった。
「やっと見つけたんだ…絶対に手放さない
春風乱舞!」
風を纏ったその刀を高く掲げ振り下ろした
その斬撃はまっすぐやつに向かって勢い良く飛ばされ爆発のような音が聞こえた。
確実にやったな
力を持たない普通の人間だったらな
「流石に無理があるか…」
舞い上がる土埃の中で立つ影
増大する魔力はあまりにも強力で少し身震いする
少しずつ視界がクリアになってきた先にあったのは、結界を張って私の攻撃を防いだ。
「悪魔族がぁ…聖女様を汚すことは許されないのです!
ん?…あぁそうか
貴様の存在を消し、聖女様の記憶からもお前の存在を消せばいいのか
そのために私の魔法がある!」
なんて恐ろしいことを言うかと思えば…
自慢の杖を前に突き出したかと思えば体内で魔力を練り込みそれを攻撃に変換した。
「その身体を貫け、光の一撃!!」
いかにもこの国の王宮魔術師が使いそうな魔法だ…ん?
「(なんで魔法ばかり使うんだ?
確か魔術は原理がわかっているもので、魔法はその原理がわかってないものだよね?)」
何故やつはこの国の王宮魔術師をやってるんだ?
不思議に思いながらも光の一撃を跳んで回避した私が次にやったのは闇魔法の発動だった。
「標準設定…よし
こちらも貫きなさい、闇の弾丸!!」
指を銃の形にして人差し指の先に魔力を溜め込むとそれを勢いよく発射した。
「なっ…私の光魔法よりも速いだと!?
くっ…シールド!」
あらら、結界で攻撃を防がれてしまったか
それにしても、見たことない魔法を見ていますと言っているような驚き方をするクソ魔法野郎
そうだよ…私が考えた魔法だよ!
なんとなーくで魔力を練って指先にそれを移したらそれっぽいのが出来たからそれを改良して完成させた私の魔法だ
この世界には銃というものがないらしい
あるのは弓やら大砲やら…小型の飛び道具は無いみたいだ。
もし、ネットショッピングとかでモデルガンとか買ってそれをこの世界の人に見せたら驚くんだろうな…。
「隙ありっ…光の矢!」
「おっと…影の中に退避~!」
余裕そうに近くの家具だった物の影に素早く入ってそれを回避するとそこから狙いを定めて再び闇の弾丸を撃った。
「くっ…その魔法、厄介ですね
だから悪魔族は嫌いなんだ…!」
また結界で攻撃を防がれてしまった…私もまだまだというのか
なんて呑気なことを考える悪い癖はやめてしまおうか
「ふむ…ならもっと魔力量を増やして撃ってみるか」
「なっ…あれは本気ではなかったと!?
舐められたものですねぇ…!」
どうやら、漏れた本音を聞かれただけでなく相手を怒らせてしまったようだ。
「怒ってるところ悪いけど、こちらも真彩さんが欲しいんだよね
力とかじゃなくて、同じ異世界召喚された人間として…!」
右手にハルカゼを握り、左手は銃の形にして戦闘態勢をとる
これで終わらせてやる…どんな理由であろうと人の記憶を取ってはいけないんだ。
それをしっかり教えないとダメだ
「とりあえずその面一発殴らせろ…
説教はそこからだ!」
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