見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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49話

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これは…どういうことなのだろうか?


ツキカゲと共に行動した結果、真彩さんのいる部屋に辿り着くことができた。

そして私はスキルを使っていない黒髪、黒目の5歳児の姿で話しかけると驚いた顔をしていた。


私と一緒に召喚された子という認識があるみたいで、私が生きていることが信じられなかったらしい

そりゃあそうか

私は召喚されて間もなく牢屋に入れられたからな

だけどおかしな点がある



何故、彼女はこの国を一度も出たことがないと言ったのだ?

私はヘンリー王国で彼女にあったことがある

その時見た顔も髪色も目の色だって覚えている

着ていた服も今着ているものと同じことだってわかる


ヘンリー王国で出会った彼女は間違いなく佐藤真彩本人だった。


何故覚えていないのか…その時ある一つの説が最も有力だということをツキカゲが言ってきた。


「カナの見間違いはない…しかしマアヤは覚えていない

ということは、この国の誰かがマアヤの記憶を改ざんしている可能性がある」



その時私は本能的に感じたんだ

ここに真彩さんを置いてはいけない

もしここに彼女がいればいずれ自身が何者かどうかも忘れてしまうような気がするのだ。


「ツキカゲ…真彩さんをここには置けないよ!

誰かがまた真彩さんの記憶を抜き取る前にここを脱出しないと…!」



その瞬間に感じ取ったその魔力は私の身体を震わせるには十分すぎるものだった。

この城に属する者は皆必ず光魔法が使える

それなのにどうしてここまで禍々しい魔力を帯びているのだろうか…

まるで本当の闇を感じ取っているみたいでさらに身体が震える


「カナ…ここは逃げるぞ」


ツキカゲの言葉に頷いて彼と手を繋ぐと影を操りそれを自身に纏わせた


………つもりだった



「そう簡単に侵入者を逃がすわけが無いでしょう…

我らの聖女様になにを吹き込むつもりですか?」


上手く体内で魔力を練り込むことも出来ずに元の影に戻った…それだけでなく私達の苦手な光魔法を使った檻で閉じ込めた

不敵な笑みを浮かべているあいつは何者だ…?


「なるほど王宮魔術師か…しかもあいつが一番強い上に厄介な魔法を使ってくる」


ツキカゲがそう言うなんて…じゃああの人が真彩さんの記憶を抜き取っているのか?


「あなたが真彩さんの記憶を書き換えた犯人なの…?

真彩さんは何も悪くないのに記憶を抜き取るなんて…!」

「…なんの事やらさっぱりですね

それにしても黒髪黒目の悪魔族がよくこの国にのこのことやって来ましたね

ここで始末して差し上げましょう!」


あまりにも偉そうに言っているから腹が立ってしまったけどこんな光った檻に閉じ込められてしまうと何も出来ない

試しに触れてみようとするとツキカゲに止められた


「アホ…手が消滅するどころじゃなくなるぞ」


なんて恐ろしいことを言うんだこのドラゴンは

あと止めてくれてありがとね


伸ばした手を引っ込め、この檻を出した張本人を睨むと彼はまた気持ち悪い笑みを浮かべていた。


「魔法が使えないでしょう?

それもそのはず…その魔法は闇魔法を封じる特殊な檻だからな!

これは我にしかできない特別な魔法なのだから

貴様らはそこで大人しくしてなさい!」


口が悪いのか悪くないのかよく分からない話し方をしたやつは真彩さんに近づくと手を差し伸べていた。


「さあ聖女様こちらへ…あんなドブネズミを見てはいけません

あいつらのことは忘れてしまいましょう…」


あの含みのある言い方…やはりあいつの魔法で真彩さんの記憶を書き換えていたのか。


「貴様…!」


こうなったらこの檻が壊せる術を今すぐにでも見つけなくては

…しかし、何度も身体の中で魔力を練り込もうとしても上手くできない

結局私は、悔しさで歯を食いしばり名前も知りたくないあの野郎を睨みつけることしか出来なかった。








「どうしてそこまでお前が焦らなければいけないんだ?

カナ、お前はどうしたいのだ?」







「えっ…?」



そういえばどうして私はこんなに焦っているのだろう


自分に危険が迫ってるからなのか?

それともツキカゲが厄介者がいると言ったから?



それとも



「全部だよ…!」


ニヤリと笑って腰に装備された愛刀のハルカゼを引き抜くとそれを右手に向けて思い切り刺した。

ドクドクと流れる赤い血に合わせて右手は私の脳に痛みを訴えかけてくる


「いった…!

やり過ぎたけどこのくらい血があればなんとかなるわよね?

この檻をぶっ壊して目の前にいる偽りの聖女様を誘拐するわよ…ツキカゲ!」


激痛に耐えながら笑顔を忘れずにそう叫ぶとそれを黙って見ていた彼が静かに笑ってた

王子様のように跪いた彼は私の血で濡れることを嫌がることなくその手を取り、キスするように口を近づけ血を舐めた。


「どのくらいの力でやればいい?」

「そうだね…とりあえずこの檻を壊してこの国の脱出経路を確保してくれたらいいよ

私は真彩さんを連れ去る前にあの王宮魔術師をぶん殴るから」


先程よりも冷静に話している様子を鼻で笑って馬鹿にしてくるのは王宮魔術師とかいう肩書きを持っているあいつ

わざわざ王宮魔術師とか言うのも面倒臭いからなんて言おうかな…?

あっそうだ…「クソ魔法野郎」と呼ぶことにしよう


治癒ヒール…!

さてと、これで怪我は無くなったからしっかりもハルカゼを握って戦うことが出来る

じゃあ頼んだわ、ツキカゲ」

「後で飯を食わせろ」


パキパキと音を鳴らしながら人間の皮膚を竜の鱗に変換させて姿を変えたツキカゲのたった一回の腕振りはこの狭い檻を簡単にぶっ壊した

呆然としているのは檻の向こうにいた真彩さんと彼女の手をとってるクソ魔法野郎


「なっ…

あなた達は何者なんですか!?」


その時私は悩んでしまった

あんなクソ魔法野郎なんかに私達が何者かを教えるのはどうなんだと思ってしまったから

だからここはまだ言わなくてもいいかという結果を出して手に持つハルカゼの剣先を相手に向ける





「私達はなんも変わらない…





ただの侵入者だよ」
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