見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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47話

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まったくイライラする

俺様はただこの城にあるものを見せてもらおうとしただけだ。

こっそり気配を消して姿も消して潜入調査していたはず…完璧なはずだった。


それなのに俺様は捕まった


まさかあそこまで魔力探知に優れた人間がいるなんて思わなかったからな

しかも俺様を怒らせたこの人間

俺に魔法を完全に封じ込める首輪を見せつけてきたんだ…まるでその魔道具は自分のものだと主張するように

俺様はそれが許せなかったんだ

怒りに身を任せて拘束も兵士達もぶっ飛ばし大臣という肩書きだけの人間を壁まで追い詰め胸ぐらを掴んだ。


「おい人間…この魔道具はどこで手に入れた?

お前がこれを持ってるのはおかしいことなんだよ…!」


相手が大臣だろうとなんだろうと関係ない

第一、俺様はドラゴンだ

人間の決めたルールに従う理由は無いはずだ



「こっこの魔道具は私が作らせたものだ…!

そして金を払って手に入れたものだからこれは私のもの……ヒィッ!?」


しまった…あまりにもイライラしてこいつ顔の横にある壁を殴ってしまった。

あいつがこんな人間のために魔道具を作るなんてありえないことなんだ。

なのに何故こんな所にこれが?

まぁいい…

俺様がこの魔道具を回収すればいいだけのことだ


「おい人間…この紋章の魔道具は他にあるか?」

「あっ…ある訳ないだろ!

その魔道具は奪い取った……あ…」


なるほど…まさかこんなに早く吐くとは思わなかった

だがこちらからすれば好都合だ

ニヤリと笑ってこいつから手を離すと指を鳴らした。


「なっ…なんだそれは!?」


指を鳴らした方の手に集まるのは影に溜め込んだ闇の魔力

それを人差し指に圧縮して小さな球体にすると魔道具を奪い取ったと吐いた人間に向けた。

それにしても…

泣き叫び、喚き散らかす人間はこれほどうるさいとは思わなかった。

さっさと黙らせようと軽く指に力を入れると指先に集めたエネルギーが発射され、それはうるさい人間の脳天に見事命中した。


「(カナから教わった闇魔法の新しい使い方をここで試すことになるとは思わなかったな…

これなら魔力の消費も少なく済むし、効率が良いな)」


カナに感謝しながら人間の手に握られた魔道具を拾うとそれを懐にしまった。

そういえば…ここはどこなのだろうか?


周りは薄暗く、俺様が来た方向とは逆の方向を見ればさらに暗い

まるで誰もいないように見える…だけど感じるこの気配

ちょうど俺様が夕方に感じたことのある感覚は少しだけ心地良いようにも感じられる


だがカナの隣にいる程に心地よいものはない


今感じている気配は気休めにもならんな


「……また行くことになるとはな」


何度目になるか分からないため息をついて足を動かすと少しずつ影を見に纏いやがてその場から姿を消す

さすがにこれ以上は暴れるのはダメだと思う

こんなのがカナにバレれば刺身抜きどころではすまないからな


「(もう少し調べよう…)」














城内に侵入して様子を見ればこれか…

あたりは薄暗く、月の光だけが頼りのこの廊下には生臭い血の匂いがした。

闇魔法の下位に属する暗視魔法を使って見ればさらに酷い状況がよくわかる

鋭い爪で斬られたような跡に脳天を見事に撃ち抜かれた跡

そして微かに残る闇の魔力

明らかにこれはあいつの仕業である


「まさかこんな所で争うなんて…」


ため息をついて魔力感知を使うと廊下の隅っこで誰かが体育座りをしている気配を感じ取った。

………何故こんな所で体育座りをして身を潜めているんだ?


「なにしてんの…」

「……俺様悪くない」


何言ってんだこいつ

どう考えたってあの惨状を作り出した犯人の手を掴むと私は彼に視線を合わせて座った。


「油断して捕まったの?」

「あぁ…」


「……やられたからやり返したの?」

「あぁ…」


「また情報を集めに行くの?」

「あぁ…」


同じ答えしか発することの無いその口

私はポケットに入った飴玉を取り出し彼の口に放り込んだ。

歯にあたってコロンとなる飴を少し幸せそうに舐める彼を見て私も小さく笑うと話を続けた。










「ツキカゲ…今度は私と行かない?」

「……あぁ!」


今度こそは2人で行こう

たとえ契約関係にあったとしても、その間だけは私達は一心同体、最強のコンビだ。

足に力を入れて立ち上がると繋いだ手をしっかりと握り直す


絶対にこの手は離さないようにしなくては…


「じゃあさっさと情報を集めて帰りますかね」

「目的地はこの先にある部屋…そこに情報がある…行くぞ」


月の光が差し込み僅かに明るくなった廊下の中、体内で練りこんだ魔力を近くの影に流し込めばまるで私達を守るかのように包み込んだ。

影の中に沈んでいく体はやがてその場から消えそこにはいくつもの死体しか残っていなかったのだ。
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