見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

文字の大きさ
上 下
47 / 171

45話

しおりを挟む

「はぁ…おかしいと思ったんだ」


溜息をつきながら私は散らかった部屋の片付けをしていた

その理由?

そんなの部屋の真ん中で宙ずりにされてるやつに聞いてくれ


今から数分前

夜中に帰ってきたツキカゲと思われたそいつはどうも話が弾まなかった

まるで自分がツキカゲでは無いのがバレるのを恐れているかのような

全ての話に相槌を打つだけ


おかしいなと思ったのはそいつが全く食に興味を示さなかったことだ

いつものツキカゲなら夕食にするねと言った瞬間、食に関する話題を振ってくるんだ。


それにあの時見たステータスがおかしかった

まるで見られたら困るから隠しているかのようで違和感しか無かった。

最近、買い物目的でしか使ってないスキル電子世界インターネットで調べたらそれらしきものがあったよ


スキルの名前は「隠蔽」


その名の通りステータスの説明や数値、スキルなどを隠したり変えてしまったりするスキルだ。

要は見た目だけを騙すスキルである


あの時見た偽物のステータスはそこら辺にいる成人男性に近い数値だった。

大体私とツキカゲは契約関係にあるからどんなに隠蔽しようとしても本来のステータスしか見えないのだ。



「さてと…片付けは完了した

あんたの目的は何?」


マントに着いた埃を払い腰につけた愛刀ハルカゼを握りしめる


大丈夫、この子が着いてるから怖くない


自己暗示も効いたようで頭が冷静になってきた

部屋の真ん中で宙ずりになって私を見ると怯えた表情になるあたり、きっとこの黒髪が怖いんだろうな

さっきツキカゲに化けていた時も私のフードをとって僅かに驚いたように目を見開いていた。

いや、そんなことよりも大事なのは今この場にいない本物のツキカゲの行方だ


「じゃあ質問変えるか…

本物のツキカゲは今どこにいる?」


なぜこいつがツキカゲに成りすまして私に近づいたのかわからない

私がすぐに違和感に気づいたおかげで言ったら不味そうなことも言っていない

こいつは失敗したのだ。


「くっ…茶髪の男はコソコソと城の中を調べていた

しかもその男は闇属性の魔法を使っていたんだ!


私はその男を捕らえて調べた結果、この宿で同じ髪色の少女と生活しているとわかったのだ

そして私は上からの命令で変装薬を使って潜入捜査をした結果、お前みたいなガキに捕まったんだ!」


最後にヤケになるなよ…

なるほど、つまりツキカゲは城に捕われてしまい帰れなくなったと

こいつもツキカゲに化けて宿に来てみたら、茶髪の少女ではなく黒髪の幼女がいて驚いたと


そうかそうか……


「つまりお前は…いや、は馬鹿なことをしたということか」

「なに…?」


まだわからないのか…

私は溜息をつきながらスキル変装コスプレを発動させると茶色の長髪に青い瞳の少女に姿を変えた。


「なっ…!?」


これには私を騙そうとしたこいつも驚きを隠せないみたいだ。


「君にいいことを教えてあげる

私とツキカゲは城に潜入して情報を手に入れるのが目的でこの国にやってきた

黒髪は悪魔族の証…なんて言ったら私の暮らしていた世界なんて黒髪が当たり前だっつーの

いやそれよりも…

ツキカゲはどこに捕らわれている?」


今度は愛刀ハルカゼを引き抜いてやつの首元スレスレにそれを持っていく

さてどうする?

たとえ魔法で攻撃しても少しの衝撃でこいつが首に刺さってしまうことだってあるんだからな

こいつも思ってもみなかっただろうな

黒髪幼女がダガーナイフを使って脅してくるなんて…

しかも今はまでの言葉が全部幼女ボイスで流れてると考えてみろ…カオスだ。


「ひっ…罪人は全員プリズンランドに連行される!

やつもきっとそこだ!」


プリズンランド…ね

確か前にツキカゲが教えてくれたな

宗教国家トーマス帝国に罪人を捕らえておくための牢屋はない

かつてこの国が奪い取ったある領地を収容所として使い、そこに人々を閉じ込めるのだ

それは種族も関係なしに

そして私もこの世界に来たばかりの頃そこに閉じ込められたことがある


しかし、プリズンランドはこの国から離れた距離にある

私がそこに閉じ込められた時は場内を移動して地下に入った瞬間もう既に牢屋があった。


つまり…この国の城の地下にはプリズンランドにワープする魔道具があるということ

ワープゲートなんて珍しいを超えている

私ですらワープなんて出来ないぞ


「なるほど…ツキカゲはプリズンランドにいるのね

じゃああんたは用済みだ」

「………は?」


間抜けな声をあげた彼

まずは宙吊りの状態から解放して…だけど身動きは取れないようにまだ腕と足の縄は解かないようにする

そしたら部屋を暗くして魔力を練る


「影から闇を生み、その男を闇の中に飲み込みなさい

捕食イット!」


叫び声と共に沈んでいくやつの身体

どんなに叫ぼうと、もがこうとその努力は無駄に終わる

せいぜい闇の中で生きるがいいさ

私は人間の血をあまり浴びたくないんだよね


遅くなったけど、行きますかね


「ツキカゲ…今助けるからね!」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...