見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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36話

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ツキカゲに担がれたままふと後ろを見てみた

良かった…追手は来ないみたいだ


「ふぅ…ありがとうねツキカゲ」


今まで私のことを担いでくれたツキカゲにお礼をいうと早く部屋に入ろうと急かしてきた。

そうか…そういえば私が耳元で変装するための魔力が尽きるとか言ったんだった

それで正体バレたら大事になってしまうからツキカゲはダッシュで宿に向かってくれたんだ。



まぁ魔力が尽きると言ったのは嘘だけどね



それを言ってしまうと私がどうなるか想像したくないので黙っておくことにした。

そうだ、明日の朝ごはんはツキカゲの好物にしよう

部屋に入って元の幼女の姿に戻ると私はリラックスするために背伸びをした

今日はずっと皿洗いをしては少しだけ休憩してを3回も繰り返していたからね

体力はあるけど精神的に疲れたからすぐに眠れそうだよ

でもダメだ

ご飯を食べないとね


「カナ、インベントリにあった材料でなんか作った

食べてから寝ろ」


そう言って皿に盛り付けられた料理を見ると私は飛び起きた。

本当にツキカゲが作ってくれるなんて思わなかったよ…


「ありがとうツキカゲ!

早く座って食べようよ」


空腹とツキカゲが作ってくれたという嬉しさでつい急かすと彼は少しだけ口角を上げて笑っていた。

私はそれが嬉しくて心が踊る


「では…いただきます!」


わくわくしながら皿に盛り付けられたサラダや肉を見る

前と比べると成長したんだというのがわかる


早速良い色に焼き上げられた肉をナイフで切り取りフォークでさして口に運んだ


「…どうだ?」


心配そうにこちらを見つめなくても大丈夫だよ…


「すん……っごく美味しい!!

程よい肉の焼き加減でパサパサしてないし固くもない!

本当に成長したね!」


肉汁が口の中に広がるのを楽しみながらツキカゲにそう言うとまた口角をあげていた。

前なんて肉を焼いても正直言って美味しくなかった

それにスープもただの水煮を飲んでるみたいだった…。

そこからツキカゲは努力してここまで来たんだ

なんだか感動モノだな


「カナ…ありがとうな

お前のおかげで俺様は変わることが出来た」


変わることが出来た…か

確かにそうだね



「私も変われたよ…

ツキカゲがいたから変われたんだよ!

もし私がひとりぼっちだったら…きっとあの城で奴隷として生きるか理不尽な理由で死ぬかだったもん

私は…初めてであった仲間がツキカゲでよかったよ!」


ニカッと笑い手を伸ばすとツキカゲの頭を撫でた


「……はぁ

まったくお前はそうやって俺様に要らんことを言ってくるんだ」


むっ…要らんこととはなんだよ

それじゃあ私がツキカゲに対して悪いことを言っているみたいじゃないか


なんて考えていると彼は自身の頭の上にのせられた手をとりその甲にキスを落とした。


「ん!?

つっ…ツキカゲさん?

一体なにを…」

「…お前はそうやって俺様に要らんこと言ってお前を手離せないようにさせるんだ

食事も戦いも…しまいにはその言葉だ

お前がいるから俺様は簡単にお前を諦めたくないし手離したくない

いいかカナ…俺様はお前を死なせないからな」


最後に言ったことは恐ろしいはずなのに私は少しだけ顔が緩んだ

だってあんなに優しい笑みと声をされたら誰だって顔が緩んでしまうだろう


そんな優しい笑みも優しい声も私のものだ

いや、私だけのものだ


「私だってツキカゲを手離したくないしそんなつもりは一切ない

絶対にあなたを死なせないからね…」


この子は私の愛しい子

この艶のある黒髪も少し長めの前髪の隙間から見える金色の瞳は彼の存在を教えてくれるもの

今は隠さないといけないけど、この国を出て行ったらまたいつもの姿に戻ろうね













俺様はドラゴン…ただのドラゴンでは無い

この世に6つしかない王座のひとつを守る伝説のドラゴンだ

その王座はこの世界が誕生してからあったとされる特別なもの

それを守るためには最強の存在が守るべきだと考えられ、最強種族であるドラゴンがその使命を任された。


炎、水、風、大地、光

そして闇


ただ闇を喰らい続けた俺様は闇の王座を守ることになった

何故そんなのに選ばれたのか…それにはちゃんと意味があった

一つ目はドラゴンだったから

そして二つ目は俺様が先代の闇の王座を守る伝説のドラゴンを喰ったからだ。

お陰で100年は闇を喰らわなくても生きていけた

それに全種族が俺様を恐れた

だけどその後が地獄だった


ある日、俺様の身体は突然動かなくなったのだ


原因はわからない…

あるとするなら100年分の闇が尽きかけたというのだろうか

その身を守るために身体を小さくして無駄にエネルギーを消費させないようにした

だからなんだろうな

人間に捕まって狭苦しい牢に閉じ込められてしまったのは


確か私が人間に捕まったのはトーマス帝国のすぐ側だったか

身体を小さくして子供のドラゴンと変わらないサイズになったから誰も俺様が伝説のドラゴンとは気づかなかったらしい

今思うと本当にマヌケな話だ


牢に入れられて気づいた

ここはトーマス帝国では無いと

確かその帝国には牢はない

罪人を捕らえる時は必ず国の核とも言える城の地下にある「ゲート」という魔道具を使って別の地にワープするのだ。

そしてワープした先にある牢に罪人を入れると


俺様は罪人ではないが、子供のドラゴンと間違た人間は俺様が将来成長して暴れることを恐れたのだろう

だから牢に入れた



そして次にやってきたのはお前だった

最初は俺様と同じ牢に入れられた可哀想な餓鬼としか思ってなかった。

それほどあいつの命は軽く見られていたのだろうな…

だけど俺様にはお前の存在はとても大きく感じられた。

その艶のある黒い長髪も潤んだ黒い瞳から目が離せなかった

お前は只者じゃない…


その理由はすぐにわかった

お前は異世界召喚者だったんだ


まさかその存在を城に侵入してきた悪魔族と勘違いするなんてな…

どちらかと言うと人間の方が悪魔だったりしてな…

自分の私利私欲のためにしか動かない最悪の種族だ

時には同じ人間なのに平気で暴力を振る…それが人間だ



なのに何故かその気持ちも少しずつ薄れていった



それは…


カナ


お前がいたからだ



お前が俺様に要らんことを教えてくるから人間と上手く接していこうと思えるようになった

人間の料理が美味いと思えるようになった

そしてカナ…お前の存在がとても大切な存在だと気づけるようになった

だから俺様はお前のために尽くす事を誓おう


たとえこの先どんな悪意がお前を傷つけようとしても俺様がお前を守る


この身をかけてもな
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