見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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33話

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朝が来た

自分専用の布団から出てきて背伸びをすると凝り固まった体がほぐれていった。


「ふぁ~

おはようツキカゲ」


既に起きて椅子に座ってる黒髪の彼にそういう


「……気分はどうだ?」


決まって挨拶よりも先に私の気分を聞いてくるのだ…まあそれが彼なりの挨拶なのだと考えれば可愛く見えてくる。


「今日も気分がいいわ…

今日はサラダとパンとベーコンエッグにしますかね」


そして私もいつも通り朝食のメニューを考えて彼に提案するのだ。


顔を洗って身支度を整えるといつものように厨房を借りに2階から階段を降りて1階に行くのだ。

朝早くに起きたはずなのに宿主の老夫婦はもう既に起床して朝食の準備をしていた。


「おはよう…

おや…今日も自分達で朝食を作るのかね?

だったら少し待ってておくれ」


椅子に座っていたおじいさんは私達の存在に気づくと杖を使って厨房に向かっていた。

よくある「おいばあさんや~」のあれをやっておばあさんを呼ぶ当たりこの世界はありきたりなもので出来ているような気がしてきた。


少し時間が経って今度は老夫婦2人で戻ってくると厨房を使っていいよと言ってくれたのでありがたく使わせてもらうことにしよう。


厨房を借りてインベントリから取り出したのは卵と厚切りベーコン…それと食パン


「ツキカゲはサラダを作って

私はベーコンエッグ作るからさ…」


しっかりと役割分担をして茶色い長髪を結ぶと用意されたフライパンをコンロにおいて火をつけた。

この世界のコンロは火の魔石を使ったスタイルが主流で温度調節は魔力でやるらしい

魔力がない人はどうする?

……と思ったけどそんな人は魔石を使わないコンロを使うらしい

差別とかそんな問題が発生しそうだけど


「カナ、サラダはこれでいいか?」


声が聞こえて振り向いてみれば既にツキカゲが美味しそうなサラダを作ってた。

なるほど、一般的な野菜だけのサラダではなく昨日私が酒のおつまみとしてこっそり買ったエビを使ったのか

確かに彼は私のインベントリからアイテムを出すことも出来ればしまうことも出来る

それは私とツキカゲがそのスキルをしてるからだ

まあ勝手に私のインベントリからエビを出して使ったことに関しては怒らないよ

ただね……


「酒のつまみがぁ……」


嘆きながらもサラダを作ったツキカゲを褒めて頭を撫でると少しだけ口角を上げてた。

くっそ可愛いな…サラダにエビを使ったことに対して怒れないじゃないか!

熱せられたフライパンでベーコンを焼くとその上から卵を割って落とした。

ベーコンの脂で卵がフライパンにこびりつくこともないから簡単に皿に移すことが出来る


「おぉ…美味そうだな

流石はカナだな」

「ありがとうねツキカゲ」


私は料理に関しては少しだけ自信があるんだ

褒めてくれたツキカゲのために今日はデザートにフルーツを切ってやるか



この素晴らしい朝食の出来に感動しているとあの存在を忘れていた。





「あっ…パン焼き忘れてた」

「………やりおったな」












相も変わらず私とツキカゲは冒険者ギルドに来てはクエストを受けるのだ。


「うーん…いつも思うのですがどうして御二方は首都でのクエストばかり受けるのですか?」


とうとう言われてしまった…

この国に来てから一週間…

私達はずっと首都かその周辺のばかりのクエストを受けているのだ


それも全て欲しい情報を手に入れるためだ

だが、この一週間有力な情報は手に入らなかった。

残念以外のなにものでもないこの感覚…ため息をつかざるを得ないのだ。


「……実はある人物を探してまして」


ここで話を振るのは、人間の前で話す時の態度のツキカゲだった。


「俺達よりも暗い茶髪でこの国の国旗とトーマス教の象徴とも言える白い花の紋章をつけたカナと同じくらいの年齢の女を探しているんだ」


その瞬間受付嬢さんの顔が明らかに強ばった

なんだと思い大丈夫ですか?と聞けばすぐにハッとして大丈夫だと言ってきた


絶対に大丈夫なわけが無い


「カナさん、ツキカゲさん…ちょっといいですか?」


そう言われて案内をされると少し嫌な予感がした。

一週間前にクエストで会ったあのおじ様な使用人もこの受付嬢さんも同じ表情をしていた。


ということはやはり私が探しているあの女性はなにかとんでもないことをしたのではないか?

そんな考察しか出来ない


コツコツと靴の音だけが響く廊下の中、緊張感があって少し体が震えてきた。

隣でツキカゲが私のために手を繋いでくれたけどそれでもやはり怖いものはある

それでもその怖さから逃げたくて私はツキカゲの手を強く握ったのだ。

そしてその時はやってきて…


「失礼します、ギルドマスターにお話したいことが…」










「入ってきなさい」


私は学習した

自分の発言には責任を持つべきだということを

安易にその言葉を発するのは良くないことを





「自己紹介をしようか…

私はこの帝国の4つあるギルドの中で東の担当をしているギルドマスターだ


名前をトルマー・エンジン


よろしくね、隣国の冒険者くん」



良質な皮の椅子に座る彼の上品な立ち振る舞いと口調は私の身体が震えるには十分だったことを
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